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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Epica17守られのお姫様~One day~

†††Sideヴィヴィオ†††

「うぅ~、やっぱり冬だと昼間でもちょっと寒いね~」

「うん。早く体を動かして温まろうか~」

わたしの通ってるザンクト・ヒルデ魔法学院は今、今年最後の冬季休校(なのはママ達の国の言葉を借りれば冬休み)中。長い期間の休みだからこそ、来年のインターミドルチャンピオンシップに向けてトレーニングをしっかりやります。あ、もちろん宿題は済ませて、だよ。

「じゃあノーヴェが来るまで、ストレッチとランニングをやっておこうか」

「うんっ! コロナ、ペアになって~!」

「いいよ~、リオちゃん!」

今この場、フライハイト邸の裏庭(と言っても、わたしの家の敷地より何倍も広い)に居るのはわたし、フォルセティ、コロナ、リオ、そして「ヴィヴィオさん。お願い出来ますか?」とわたしを誘ってくれた「はい、アインハルトさん♪」の子供5人と、私服姿のディード。この家の末娘なイクスは、わたし達がへとへとで疲れることを見越して、お姉さんのオットーと一緒に色々と作ってくれてるみたい。

「ではフォルセティ様は、私とペアを組みましょうか」

「あ、うん、お願いします、ディード」

(フライハイト家にお泊りに来てから3日目。シャルさんが使う地下のプライベートジムのおかげで、体が鈍ることはないけど・・・)

精神的にみんなにごめんなさいってなっちゃう。わたしやフォルセティ達がフライハイト家にお泊りしてる理由は、全部わたしにあるからだ。わたしは聖王女オリヴィエのクローンということで、最後の大隊っていう人たちに狙われてる。
そして冬休みとなれば学院に居られないし、なのはママやフェイトママが仕事で居ない時間も独りで過ごすことに。一応はフォルセティの家、八神家にお泊りする話も出てたけど、はやてさん達が家を空けるとどうしても子供だけになっちゃう。

(その辺りを心配してくれたイクスがシャルさんに頼んでくれて、シャルさんは快諾。わたしの為だけにオットーやディードをボディーガードとして付けてくれた。それにこの家は、シャルさんの新しい部隊の騎士さん達の合宿所として使われてるから、安全度で言えばたぶん・・・管理世界の中でもトップクラスだと思う)

実際にこれからシャルさんやルシルさん、アイリ達が帰ってくるって言うし。フォルセティもアインハルトさんも、コロナやリオ、オットーやディードがいてくれる、守ってくれる。不安の中でもわたしがいつも通りにいられるのは、みんなのおかげだよ。

「よろしくお願いします、アインハルトさん!」

「はい、よろしくお願いします」

アインハルトさんとペアを組んでストレッチをする。冬は筋肉が凝りやすくなるから念入りにやっておかないと。ストレッチを終えた後は、本当に広い敷地内をランニング。驚くべきことに敷地内にちゃんとしたランニングコースがあって、アインハルトさんが目を輝かせてたのを思い出す。

「オットー。これより敷地内をランニングします。用事があれば呼んでください」

『了解。敷地内とはいえ気を付けて』

ディードがオットーに連絡を入れ終えて、子供の中で一番足の速いフォルセティが先頭を走り出して、ディードがわたし達みんなを見守るように最後尾を走る。

「「「「「1、2、ファイト!」」」」」

「「「「「3、4、ファイト!」」」」」

掛け声を出しながらコースの半分3kmを走る。フォルセティがペースを作ってくれてるから、コロナも足を止めることなく付いてこられてる。そうして30分間のランニングを終えて、「ではお嬢様方。ジムの方へ移動しましょう」ってディードが言って、わたし達を地下のジムへ案内するために歩き出した。

「でもホントすごいよね、イクスのお家! ジムはあるし、プールはあるし、ランニングコースはあるし、お風呂は大きいし、ベッドは柔らかいし、あと料理は美味しいし!」

「ふふ。リオちゃん、初日でもおんなじ事を言ってたよ?」

「コロナだってそう思うでしょ?」

「う~ん、まぁ・・・それはそうだけど」

「いやぁ~。1年前まではこんな風に過ごせるなんて思いもしなかったよ。ホテルアルピーノでの合宿もうそうだしさ~。うん、ホントもう・・・ヴィヴィオ、フォルセティ様様~♪」

どこで覚えてきたのか、手を合わせてわたしとフォルセティを拝んできたリオ。するとコロナまで「ありがとうございます~♪」ってノってきた。それで終わりならまだ良かったんだけど、リオは「アインハルトさんもそう思いますよね?」なんて、変なフリまでしちゃう始末。

「え? あ、はい、そうです、ね・・・。えっと、ありがとうございます」

「いやいやいや、そんな事しなくていいですからね、アインハルトさん!」

アインハルトさんも、若干戸惑いながらもわたし達に手を合わせてお礼を述べた。だからわたしは慌てて止めて、フォルセティは「リオ。アインハルトさんにまで変な事させるようなこと言っちゃダメ」って、リオを叱った。

「それに、お礼を言うなら冬休み期間中、ずっと僕たちを泊めてくれるようにシャルさんのお母さんやシャルさんに頼んでくれたイクスだよ。イクス様様~、ありがや~」

「だねっ。ありがたや~」

フォルセティまでリオにノっちゃって、イクスが居るであろう厨房の方に向かって拝み始めた。するとコロナまで「ありがたや~」って拝んで、アインハルトさんも少し考えてから拝もうとし始めたから、「もう! みんなストーップ!」って止めさせた。苦笑いしてるフォルセティやリオに呆れながらも、ディードに続いて西館のエントランスホールに入る。この屋敷は◇―H―◇みたいな形をしていて、東館に地下駐車場、西館の地下にプールとジムがある。

「なんだかさ。使用人の人たち、あたし達とすれ違うたびに足を止めてお辞儀するよね」

「なんだか悪い気がしちゃうよね」

「お嬢様方は、シャルやイクスの大切なお客様ですので。申し訳ないですが、慣れていただければ幸いです」

わたしもリオやコロナと同じ思いだったけど、使用人のみなさんのプロとしてのあり方を知って、やめてもらえるようにお願いしようとしてたわたしは、そのお願いを胸の奥にしまいこんだ。
それからエレベータを使って地下に降りて、真っ直ぐに伸びた廊下に出る。右手にプールの更衣室に繋がるスライドドア、左手に目的のジムへと繋がるスライドドア、一番奥の突き当たりは休憩室へと繋がるスライドドアがある。わたし達はジムへのドアを潜って、男子・女子に分かれた更衣室へ。

「フォルセティ~、ちゃんと男の子の更衣室へ入らないとダメだからね~♪」

「っ! う、うるさいなリオ! 最初の失敗を何度も掘り返すのはちょっとどうかと思うけど!?」

リオにからかわれたフォルセティの声が、男子更衣室と女子更衣室を隔てる壁を越えて聞こえてきた。フライハイト家にお泊りすることになっての初日、今日みたくジムを借りての練習ということになった。そのとき、最後にジムに到着したフォルセティが、着替え中だったわたし達の居る女子更衣室に入ってきちゃって。

(あの時はまだ男子・女子の札が無かったから、間違って入ってきちゃってもしょうがなかったよね・・・)

その時の事を思い出しちゃったわたしの顔が熱くなる。その、着替え中を・・・下着姿を見られちゃったわけだし。見ればコロナも顔を真っ赤にしていて、わたしの視線に気付くと「せっかく忘れようとしてたのに~!」ってリオをポコポコ殴った。

「お先に行っていますね」

そんな中、アインハルトさんは着替えを済ませて颯爽とジムへと続くドアを潜って行った。でもわたしは見逃さなかった。アインハルトさんの耳が真っ赤だったことに。アインハルトさんも見られちゃったもんね。普段はクールだけど、さすがに男の子に下着姿を見られたら・・・ね。

「わ、わたし達もすぐ行きます!」

更衣室での思い出浸りを即終わらせて、ジャージを脱いでフィットネスウェアへと着替えてからわたし達もジムへと入る。地下とは思えない広さで、格闘技の練習が出来るようにテニスコート6枚分のエリアがあって、その反対側にトレーニング器具がずらりと設けられた同じ広さくらいのエリアがある。その2つのエリアを隔てるように強化ガラスの壁がある。

「じゃあノーヴェが来るまで、それぞれ自主練ってことで」

ノーヴェを監督として活動してるチームナカジマのリーダーになったわたしが、不在のノーヴェに代わってみんなに指示を出す。初めは最年長で一番強いアインハルトさんがリーダーでいいんじゃないかな、って考えてたんだけど、すべての始まりはわたしだって事で、満場一致でわたしがリーダーになった。

「リオ、ちょっとミット打ちに付き合って」

「ん、いいよ! ミット借りま~す!」

コロナもインターミドルに出場することを決めて、ゴーレム創成だけじゃなくてフィジカルトレーニングもしっかり始めた。コロナはゴーレムを主力として戦うスタイルだけど、インターミドルのルールで、ゴーレムを創成し終えた状態で持ち込めないみたい。だからステージに立って、戦闘開始してから創成しないといけない。その間、コロナは無防備になる。その対処が、コロナ自身が格闘・魔法戦を出来るようになること、だ。

「しっかり鍛えて、みんなと一緒に都市本戦!」

「おー! 都市本戦!」

ミットを殴って、パシンパシン!と景気の良い打撃音を出す中、コロナが大声でチームナカジマの目標を発した。今のままだとエリートクラスの地区予選で落ちるってノーヴェに言われてるわたし達。あのアインハルトさんですら都市本戦までは進めないって言われちゃったし。

(だからこそ今よりもっと強くなって、都市本戦を目指す!)

ギュッと握り拳を作って燃えてるところに、「ヴィヴィオさん」ってアインハルトさんに呼ばれた。手にしてるのはコロナ達が使ってる両手にはめるミット。

「お相手よろしいですか?」

「はい、もちろんです!」

ミットを打つ方、持つ方は交代で行うことになって、まずはアインハルトさんが打つ方、わたしが持つ方に。アインハルトさんの打撃は本当に重いから、わたしも気合を入れないと吹っ飛ばされちゃう。静かなジムにパシン! バシン!と打撃音だけが鳴り響く中、器具が置かれたエリアからドォン!って大きな音が。

(フォルセティだ)

天井から吊るされてるサンドバックを殴っては蹴って、それはもうぐわんぐわん揺らしてる。フォルセティもフォルセティで、以前にも増して格闘技が強くなっちゃってるんだよね。何せ、お父さんのルシルさんやお姉さんのアインスさんみたく、オールラウンダーな魔導騎士を目指すって決めたから。

(前にも言ってたけど、強くなるのはわたしを守るため・・・。嬉しいのは嬉しいんだけど、やっぱりなんだか申し訳ないって気持ちをあったりするわけで・・・)

でもだからこそ、わたしも強くなろうって思える。アインハルトさんと交代して、今度はわたしがミットを打つ。それからそう間もなく「悪い。ちょっと遅れた」ってジャージ姿のノーヴェとも合流。いつもは自信ややる気に満ちてるノーヴェなんだけど、今日は少し疲れてるみたい。その理由は・・・判ってるけど。

「「「「「お疲れ様です!」」」」」

「お疲れ様です、ノーヴェ姉様」

「お、おう。お疲れ・・・。えーっと、今日のトレーニングスケジュールは・・・」

聞いても良いのか判らない。でもわたしは「スバルさん、どうでしたか・・・?」って、意を決して聞いてみた。ディードはチラッとノーヴェを見て、ノーヴェは少し俯いた後、「いつも通りの姉貴(スバル)だった」って漏らした。
わたしを狙ってる最後の大隊、そこにスバルさんが所属していた。すずかさんやノーヴェ達のお姉さんであるトーレさん、クアットロさんと交戦して、そして逮捕されちゃったみたい。そのニュースを観た時、本当に信じられなくて何度を目をこすった。

「スバルが犯罪者になるなんて信じられっかよ。ヴィヴィオも、フォルセティも知ってるだろ。あの正義感の塊みたいなスバルを」

スバルさんは、わたしやフォルセティがお世話になった機動六課っていう部隊で、なのはママの部下だった。そしてわたしにとって最初のコーチでもある。だからこそノーヴェと同じ気持ちだ。

「ノーヴェ姉様。スバル姉様はやはり本物だったのですね・・・?」

「母さんや父さんにギンガが本物だって言うんだ、間違いねぇよ。それに、トーレ姉の話じゃスバルが戦闘で振動破砕を使って、セッテ姉を倒したらしい」

「振動破砕を、ですか。あれはスバル姉様にしか使えない特殊なスキルですし。私やオットーのような替えの利くものではありません」

「ああ。記憶の方もしっかりとスバルのもんだったし、偽者じゃないってことは確かだ」

ノーヴェとディードの会話をちょっと離れたところで聞くわたし達。フォルセティが「じゃあ洗脳とかかな・・・」って小声で漏らしたら、「それが判らねぇんだよな」ってノーヴェが溜息を吐いた。

「魔法や何かしらの術で洗脳された奴は、必ず脳波に何かしらの異常が出るらしいんだよ。でもスバルの診断は異常なし。だから局は、スバルは自分の意思で最後の大隊に下った、って判断を下そうとしてる」

「そんな!」

わたしは堪らずそう叫んだ。最後の大隊は犯罪者を容赦なくその手にかけてる。そんな組織の一員として立件されたら、スバルさんも人殺しの罪を一生背負わなくちゃいけなくなる。

「大丈夫だ、ヴィヴィオ。すずかさんやウーノ姉たちが何とかしてスバルが最後の大隊に入った経緯を調べて、洗脳されてる証拠っていうのを出すって言ってくれてるし。あのヴァスィリーサ中将だって、局の上層部に待ったを掛けてくれてる。大丈夫さ、きっと・・・!」

ノーヴェが自分にも言い聞かせるようにそう言ってわたし達に微笑んで見せた後、「おし! 暗い話はこれくらいだ!」って手をパンパン!と強く打った。それからはノーヴェによる直接トレーニングで午前の部は終了になった。

「お疲れ~」

ヘトヘトになりながら、わたしは同じように疲れてるみんなに労いの声を掛けると、『みなさーん! お昼ご飯でーす!』って、ジム内にイクスの声が響いた。ガラスの壁に、可愛いエプロン姿のイクスが映るモニターが展開されてた。

『ノーヴェさん! お昼ご飯が出来ました♪』

「おう、ありがとう、イクス! んじゃあお前ら、風邪ひかねぇようにシャワーを浴びて、すっきりしてから食堂へ移動だ」

「「「「「はいっ!」」」」」

更衣室の中にシャワールームへ移動しようとした時、「あ・・・!」ってアインハルトさんが声を上げて足を止めると、そのまま肩膝立ちしちゃった。わたし達は「どうしたんですか?」って歩み寄る。

「シューズの底の部分が抜けてしまいました・・・」

アインハルトさんの言うように、シューズの底がペランと捲れてた。ノーヴェが「お前の断空は足を起点にするからな」って唸った後、わたしとコロナとリオの足元――シューズを見て考え込んだ。子供だけで顔を見合わせてると、ノーヴェは「よし」って頷いた。

「そろそろ帰ってくるだろうシャルさん達と相談して、午後は備品の買出しに行こう」

「ホント!? やったー!」

お泊りに来てから外出なんて出来なかったから、わたしは万歳して喜んだんだけど、フォルセティは「ヴィヴィオを連れて行っても大丈夫なのかな・・・?」って腕を組んで首を傾げた。フライハイト邸に居る限りは間違いなく安全だけど、一歩外に出ればいつ狙われてもおかしくない。

「冬休み中、ずっと家の中って言うのも辛いかも・・・」

「ヴィヴィオさんの精神が参ってしまっては元も子もないような・・・」

「そうだよね。イクスん家は広いし、トレーニングには困らないけど、ちょっと飽きてきちゃうよね」

「それに、ヴィヴィオがお留守番だと、ヴィヴィオがコレだっていう物が買えないし・・・」

わたしの事を考えてくれるアインハルトさん達に、フォルセティも「僕もそれは理解してるけどさ」って、本当にわたしの身を案じてくれてるんだって判ることを言ってくれた。

「だからさ。シャルさんの騎士隊の誰かに護衛として付いてきてもらえねぇかな、って」

「お仕事帰りで頼むのはちょっと気が引けちゃうよ、ノーヴェ」

「そりゃそうだけどさ。さすがにあたしやオットー、ディードの3人じゃ心許ないだろ? ま、お前が襲われたら命を懸けて護り切ってやるけどさ」

「そこまで覚悟決めてもらえるのは嬉しいけど、ちょっと重いよ・・・」

「ま、シャルさん達に一度相談してみて、ダメなら別の方法を考えよう」

というわけで、午後からのお出かけは保留ってことに。とりあえずお昼ご飯を作ってわたし達を待ってくれてるイクスの居る食堂へ向かうために、更衣室の一角に設けられてるシャワー室で汗を流す。汗臭くなってた体を綺麗さっぱりにして、「お嬢様方の服は洗濯しておきますね」ってディードが、わたし達が脱いだ服の入った籠を手に更衣室から出て行った。

「みんなー! 僕、先に行って、いろいろ準備を手伝ってくるからー!」

フォルセティってやっぱり男の子だよね。シャワーもパパッと済ませて行っちゃった。けどわたし達女の子は、カラスの行水みたいな適当な真似は出来ないししたくない。格闘少女でも立派な乙女なのです!

「ふぅ、さっぱり~♪」

「適度な疲労なところに、お腹いっぱいご飯食べたら絶対寝ちゃうよ~」

「あー、確かに寝ちゃうかも~」

「ではお2人はお留守番していますか?」

「それは嫌!」「嫌です!」

談笑しながらの楽しいシャワータイムを終えて、アインハルトさんにからかわれるリオとコロナに笑いながら、バスタオルで体を拭きつつロッカーに向かってると、「あれ、もう上がり?」って声が後ろから聞こえてきて、両脇の下からニュッと腕が伸びてきた。そしてわたしの胸を鷲掴んで、ムニムニ揉んできた。

「にゃぁぁぁ~~~~~~っ!?」

思わず叫んで蹲ると、「どうしました!?」アインハルトさんと、「ヴィヴィオ!?」ノーヴェが、タオルを体に巻くことなく裸でシャワールームから飛び出してきた。2人に遅れてコロナとリオも来てくれて、わたしの背後をポカンと見てる。

「うん、とっても気持ち良い揉み心地だった。大きくなったね~、ヴィヴィオ」

「あなたは馬鹿なの!? 忍び寄った挙句にいきなり背後から胸を揉むなど!」

「ヴィヴィオは一応、我らが聖王陛下なのですよ!」

「セクハラは無いわ~、さすがに無いわ~」

振り向けばそこに居たのはシャルさん、トリシュさん、アンジェさん、そしてわたしの肩にバスタオルを掛けてくれたルミナさん、それに「驚かせてごめん。ノーヴェとアインハルトは、とりあえず前を隠そうか」って言って、2人にバスタオルを渡そうとしてるセレスさん、あと後ろの方であくびしてるクラリスさんの6人。みんなが現在の管理世界内にその名を轟かせる有名な騎士だ。

「ヴィヴィオ。あなたも服を着てきなさい。イリスには後で謝らせるので」

「え、あ、はい。じゃあ・・・」

アンジェさんにそう言われたわたしやアインハルトさん達は、ロッカーにしまわれてた服に着替え終えて、正座させられてるシャルさんの前に並ぶように言われた。なんだろ、この公開処刑みたいな感じ・・・。

「イリス」

「・・・はい。えー、ヴィヴィオ。後ろからおっぱいを揉んで、本当にすいませんでした」

(ど、土下座ーーーー!?)

おでこを床にコツンと当てて謝ったシャルさんに、わたしは居た堪れなくなって「もういいです! 気にしてないですから!」って、土下座をやめるように慌てシャルさんの両肩に手を置いた。

「許してくれる?」

「ゆ、許しますから! もうやめてください!」

「ヴィヴィオの優しさに感謝してください、イリス」

「ありがとうございますー!」

アンジェさんって、わたしの事になると結構キツイ性格になっちゃう。聖王として敬ってくれてるんだよね。最初はヴィヴィオ陛下なんて呼ばれてたけど、なんとか呼び捨てにしてもらえるように説得、そして承諾してくれた。

『あの~。お料理冷めちゃいます・・・』

とそんな時、イクスから通信が入った。隣にはフォルセティが居て、『ちょっと遅くない?』ってジト目で見てきた。だから「ごめんね!」って謝って、シャルさん達に「失礼します!」って一礼してから、わたし達は更衣室を後にするべく駆け出した。

「あの、シャルさん。ちょっと相談が・・・」

ノーヴェがさっきの買い物の件についてシャルさんに話し出したのが聞こえて、わたしは「みんなは先に行ってて!」ってコロナ達に伝えてから逆走し始めると、「みんなでお願いしましょう」ってアインハルトさんやコロナ、リオも付いて来てくれた。

「シャルさん! 今日の午後からみんなでお買い物がしたいです! お疲れかと思いますが、付いて来てくれると嬉しいです!」

「「「お願いします!」」」

シャルさん達に頭を下げたら、「いいよ♪ うちの隊、今日の午後から明日の正午まで非番だし」って快諾してくれた。
 
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