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魔法少女リリカルなのはStrikerS 前衛の守護者

作者:niko_25p
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第四十七話 命の理由 2

なのは達が病院での騒動を治めていた頃、フェイトははやてに呼び出されていた。

はやての口から説明された事とは……





魔法少女リリカルなのはStrikerS 前衛の守護者、始まります。





フェイトside

言いたい事があるとはやてに呼び出され、私は部隊長室に出向いていた。

そこで伝えられた事とは、

「臨時査察って、機動六課に?」

地上本部からの査察があると言う事だった。

「うん。地上本部にそういう動きがあるみたいなんよ」

困った。今、このタイミングで査察が入るとは思ってもみなかった事だ。

あるとしたら、もっと前にあってよかった筈なのに何で今更?

悩んでいる私とは対照的に、はやてはお茶を飲んで落ち着いている。

「地上本部の査察は、かなり厳しいって……」

深刻に捉える私に対して、はやては随分余裕があるように見える。

「うちはただでさえ、ツッコミどころ満載の部隊やしなぁ。私のボケ倒しで逃げられたらええんやけどな」

そう言って、はやてはアッハッハッと笑う。

さすがにこれには呆れてしまった。

「そんな呑気な。今、配置やシフトの変更命令が出たりしたら、正直致命傷だよ?」

ようやくフォワードも形になってきて、これからと言う時なのに、なんではやてはこんなに落ち着いていられるのだろう?

「まあ、何とか乗り切るよ。心配しなくても大丈夫や」

ん?

何か根拠があるのか、はやては自信満々に言ってきた。

と言う事は、いつもの悪い癖が出ているのかな?

はやては時々、私達に内緒で何か企てる時がある。機動六課設立の時もそうだった。

後で気がついて驚かされる事も、何回もあった。

たぶん、何か手があるんだと思う。

はやてがそう言うなら、たぶん大丈夫なんだと思うけど……

けど、確認しておかないといけない事もある。

「ねえ、これ査察対策にも関係してくるんだけど、六課設立の本当の理由、そろそろ聞いてもいいかな?」

前から疑問だった事を私は聞いてみた。機動六課に集まっている過剰な戦力。

機動六課設立の理由は、ロストロギア対策。

主な任務はエネルギー結晶体レリックの確保。

でも、それは表向きの理由だ。それだけで、六課の戦力の過剰さは説明できない。

わざわざリミッターまでつけて……いや、それだけじゃない。

六課スタッフもそうだ。

シャーリーは補佐官だけでなく、デバイスマイスターの資格も有り、さらに通信主任の権限も持っている。

アルトはオペレーター兼メカニックだけど、ヘリのライセンスも持っていて、いざとなれば人員搬送もできる。

ルキノも、次元航行艦アースラでの通信士の経験があり、VX級次元航行艦の操舵資格を持っている。

つまり、一人で何役もこなせる人員を集めたんだ。

これって結構な裏技だよ。これだけ優秀な人材を、不自然無く集められるなんて。

逆に言えば、有事に対して機動六課だけで対応しきれる体制を整えていると言う事だ。

つまり、はやてはそう言う状況を想定している。機動六課稼働期限内に……

「……そうやね。まあ、ええタイミングかな?」

ちょっと苦笑いして、はやてが話し始める。

「今日、これから聖王教会本部、カリムの所に報告に行くんよ。クロノ君も来る」

「クロノも?」

「うん。なのはちゃんと一緒についてきてくれるかな?そこでまとめて話すから」

私はジッとはやての目を見る。もう隠し事はしない、そう言う目だ。

「うん、分かった。なのはが戻ってきたら、また来るよ」

「了解や」

どんな話になるのかは分からないけど、これではやての考えが分かるんだろう。

でも、クロノも絡んでいたなんて、なんで教えてくれなかったんだろ?





outside

フェイトは部隊長室から出てオフィスへと向かっていた。

その時に、ゾロゾロとフォワードメンバーが歩いているのを目にする。

その先頭にはアスカがいた。

「あ、アスカ。帰ってきてたんだ。なのはも戻っているのかな?」

アスカに話しかけるフェイト。

「えぇ。今さっき帰ってきたばっかで、高町隊長も部屋にいる筈です」

心なしか、アスカは落ち込んだように見える。

実は病院から戻ってくる時、ヴィヴィオがなのはから離れず仕方なくつれて帰ってきたのだが、車の中で何度かアスカが話しかけたのだが、怖がられてしまって若干ヘコんでいるのだ。

「そうなんだ。それで、みんなはどこに行くの?」

「高町隊長の部屋です」

「へ?」





フォワードメンバーとフェイトがドアをくぐった時……

「うわぁぁぁぁぁぁぁん!」

元気な、大きい泣き声が聞こえてきた。

予想外の事に、アスカを除いた面々が驚く。

「えーと、なのはさん?」

少女に泣き付かれているなのはを見て、スバルが硬直する。

『あ、みんな、来てくれたんだね。この子は昨日保護した子で、名前はヴィヴィオ。なんか、離れてくれなくなっちゃったんで、ちょっと相手になってくれないかな?』

ヴィヴィオの頭を撫でながら、なのはが助けを求めてくる。

「なるほど……そう言う事でしたか。なら、おまかせください!」

アスカが不適に笑う。

「おお!アスカ、自信有り気!」

いかにもできますよオーラを醸し出すアスカに、スバルの期待度が上がる。

「伊達に隊長の訓練を受けてきた訳ではありません!と言う事で、年齢の近いエリオ、キャロ、行け!」

「え?は、はい!」「えーと、ヴィヴィオちゃん、一緒に遊ぼう?」

ビッとGOサインを出すアスカに、素直に従うエリオとキャロ。

「なのはさんの訓練、全然関係ないじゃない!つーか、アスカが行かないんかい!」

動こうとしないアスカにツッコむティアナ。体質改善はできていないらしい。

(だってさ~、帰りの車のなかで空振りだったんだもん)

そう口にはできないアスカであった。

で、結果……

「うわぁぁぁぁあぁぁぁん!!」

「すみません……」「ダメでした……」

○ ヴィヴィオ VS エリキャロ ×

惨敗を喫したエリキャロコンビ。

「ぐぬぬ……やるな、ヴィヴィオ。なら、精神年齢が同じスバルと、ツンデレ担当のティアナ、GO!」

「よーし、ヴィヴィオ~、遊ぼうよ!」「誰がツンデレか!スバルも精神年齢同じって言われてるでしょ!?」

スターズFがアタックをかける。が、

「ぎゃあぁぁぁぁんん!」

○ ヴィヴィオ VS スターズF ×

「ごめーん」「無理よ……」

敗北するスターズF。

「隊長。機動六課フォワードチーム、全滅しました」

ピッと敬礼し、回れ右をするアスカ。

「じゃあ、そういう事で……」

その場から逃げようとするアスカを、4本の手が掴みかかる。

「どこに行くんですか?」「まだ一人残っていますよ?」

エリキャロがジト目でアスカを見る。

「何もしないで逃げるの?」「アスカもアタシ達と同じ痛みを味わいなさい」

スターズFがアスカをクルリとむき直させ、ヴィヴィオの前に突き出す。

「い、いや、ちょっと!」

どん!

抵抗空しく、つんのめったアスカはヴィヴィオの目の前に押し出された。

ビクッ!

それを見ていたヴィヴィオが、なのはの後ろに隠れてしまう。

(ダメだよな~、車の中で散々やって怖がられてたんだから……ん?)

諦めかけていたアスカが、ヴィヴィオの変化に気づいた。

さっきまで泣いていたのが、多少グズってはいるが泣きやんでいるのだ。

相変わらずアスカがヴィヴィオを見ると、なのはの後ろに隠れてしまうが、それでもチラチラとアスカを見ている。

考えてみれば、なのは以外は初めて見る顔ばかりで、唯一アスカだけが車の中で一緒だったので知っている顔になる。

(もしかして……)

アスカはその場に胡座をかいた。目線がヴィヴィオと同じくらいになる。

『隊長、ちょっと待っててください』

アスカは念話でなのはに伝えると、ヴィヴィオと視線を合わせる。

ヴィヴィオはまたなのはの後ろに隠れてしまう。

「ヴィヴィオ」

静かに、なるべく優しく語りかけるようにアスカは言った。

「……」

ギュッとなのはの服を強く掴むヴィヴィオ。

「ヴィヴィオ」

アスカはもう一度声をかける。

「……」

ヴィヴィオはなのはの後ろに隠れつつ、チラリとアスカを見た。

(興味はあるみたいだな……じゃあ、なるべく怖がらせないようにしないと)

一呼吸おいて、アスカは再びヴィヴィオに話しかける。

「ヴィヴィオ。オレの名前は、アスカ・ザイオンだ。アスカ」

アスカは自分を指さして言った。

「……」

怖々、と言った感じでヴィヴィオはアスカを見る。

車の中では怖がっていただけのヴィヴィオが、初めてアスカに興味を抱き始めているようだ。

「アスカ」

もう一度、アスカは同じ行動をした。

少しだったがヴィヴィオが反応してくれたので、アスカは嬉しくなり、自然と笑顔になる。

ジッとアスカを見つめるヴィヴィオ。そのオッドアイの瞳を、アスカは受け止める。

「……アスカ……お兄ちゃん……」

「!!!オレを、お兄ちゃんって呼んでくれるのか?」

飛び上がって喜びたい所をグッと堪えて、アスカは粘り強く話しかける。

コクン

まだ、なのはにしがみついているヴィヴィオだったが、しっかりと頷いた。

(知らない顔ばかりで、心細いんだろうな……)

そう確信を得るアスカ。

「ヴィヴィオ、お友達にならないか?ヴィヴィオが寂しくならないように、一緒に遊ぼうよ」

「お友達……」

ヴィヴィオは友達という言葉に反応する。

「うん、お友達だ。ヴィヴィオがお友達になってくれると嬉しいな」

アスカはそう言って右手を出した。

「……」

ヴィヴィオはジィーッとその手を見ている。

「……」

アスカはそのままの体勢でヴィヴィオを待つ事にする。だが、ヴィヴィオは動かない。

「ダメ、かな?」

車で怖がられたが、この場では返事をくれた。だから期待したが、ヴィヴィオはそれ以上の行動をしない。

内心、かなり落ち込むアスカ。ほんの少しだったが、右手が下がる。

すると、それまでなのはにしがみついていたヴィヴィオが離れて、アスカに近づいて行った。

「ヴィヴィオ?」

ヴィヴィオが離れた事に驚くなのは。

ヴィヴィオはアスカの前まで歩き、そしておっかなびっくり手を伸ばして、アスカの右手に触れた。

「……オレと、お友達になってくれるの?」

アスカがヴィヴィオに尋ねる。

「……うん」

小さい声で、それでもはっきりとヴィヴィオが答えた。

「そうか、ありがとう」

アスカは微笑んで、両手でヴィヴィオの小さい手を包み込む。

ヴィヴィオも、はにかんだ笑みを浮かべた。

『やったね、アスカ君』

解放されたなのはが胸をなで下ろす。

『いや、まだこれからだよ。はやてが一緒に聖王教会に来てくれって言ってたから』

ホッとしたのもつかの間、フェイトの言葉になのはが戦々恐々とする。

その念話はアスカにも聞こえている。

「ヴィヴィオ、ちょっと大事な話があるんだ。聞いてくれるかな?」

慎重に言葉を選びながら、アスカは話しかける。

「隊長はこれから用事があって出かけないといけないんだ。お留守番をしなくちゃいけなくなるけど……」

「いやだぁ!」

アスカが言い終わらないうちに泣き出しそうになる。

アスカはそっとヴィヴィオの頭に手を乗せた。

「だから、ヴィヴィオには魔法のおまじないを教えてあげるよ」

「おまじない?」

「うん」

アスカはヴィヴィオを抱き上げ、なのはの前に立った。

「これから隊長は”行ってきます”って言って出かけるから、ヴィヴィオは”行ってらっしゃい”って言うんだ。そうしたら隊長は絶対に帰ってくるから。”ただいま”って。そうしたら”おかえりなさい”って迎えてあげるんだよ。それが、おまじない。隊長が出かけている時には、オレがヴィヴィオの側にいるよ」

アスカはそう言ってなのはを見る。

「うん。ヴィヴィオが待っていてくれるんなら、私は絶対に帰ってくるよ」

なのはも、優しくヴィヴィオを撫でる。

「……本当?」

不安気になのはを見るヴィヴィオ。

「うん、本当」

なのはは安心させるように笑いかける。

「だからオレとお留守番。ヴィヴィオがいいよって言ってくれたら、嬉しいな」

抱き上げたヴィヴィオに、そう言うアスカ。

「……うん、いいよ」

ヴィヴィオがコクンと頷く。

「ありがとね、ヴィヴィオ。ちょっとお出かけしてくるだけだから」

「うん……」

目に涙を溜めながらも、ヴィヴィオはもう一度頷いた。

その姿に、いじらしさを感じるなのはとアスカ。

「うん、いい子だよ、ヴィヴィオは。じゃあ、”行ってきます”ヴィヴィオ」

なのはがソッとヴィヴィオの頬を撫でる。

「うん……”行ってらっしゃい”」

必死に泣くのを堪えているのだろう。声が震えている。

だが、それでもヴィヴィオは待っていると言った。

「いい子だ、ヴィヴィオ」

アスカがヴィヴィオをギュッと抱きしめる。

「アスカ君、ヴィヴィオをお願いね」

「エリオ、キャロ。アスカを手伝ってあげてね」

一段落ついて、なのはとフェイトはヴィヴィオをライトニングFに任せて部屋から出て行こうとした……が、そこから覗く者が一人いた。

「って、はやてちゃん?」

ドアの向こうから誰かが覗いていたと思ったら、それはニヤニヤしたはやてだった。

「いや~、ええもん見せてもらったわ」

「見てたんなら助けてよ~」

そんな声が廊下から聞こえていたが、それもすぐに消えた。

「……で、お前達はいつまでそうやっているつもりだ?」

「「orz」」

ヴィヴィオを抱えたアスカが、床に手をついてうなだれているティアナとスバルを見る。

「ま、まさかアスカに負けるなんて……」「うぅ~、傷ついたよ~」

スターズFは思いっきり敗北感に苛まれていた。

「ライトニングの分の書類、頼んだぞ」

ヴィヴィオを抱き上げている手前、勢いのあるツッコミを入れるわけにはいかず、そう告げるにとどめるアスカ。

「さあ、ヴィヴィオ。オレの仲間を紹介するよ」

アスカは抱えていたヴィヴィオを、エリオとキャロの前に下ろした。

「こっちの赤毛の人が、エリオお兄ちゃん、ピンク髪がキャロお姉ちゃんだ」

お兄ちゃんとお姉ちゃんと紹介されたエリキャロは一瞬驚いたが、すぐに嬉しそうに笑った。

「エリオです。お友達になってくれるかな?」

「キャロです。私もヴィヴィオとお友達になりたいな」

二人の言葉に、ヴィヴィオはビックリしたような顔になる。

そして、はにかんだ笑みを浮かべた。

「うん」

嬉しそうに、ヴィヴィオが笑う。

「すごいぞ、ヴィヴィオ。いっぺんに3人もお友達ができたぞ」

と和やかなライトニングF。

『んで、いつまでここにいるつもりだよ?スバル、ティアナ』

呆然とこちらを見ている二人に、呆れた視線を送るアスカ。

『……分かってるわよ……書類は片づけておくから……』

アスカに負けた敗北感からか、ガックリと肩を落としてティアナが部屋から出ていく。

『うぅ……後でアイスおごって、アスカ』

『なんでやねん!』

傷心のスバルの念話に、全力でツッコミ念話を送るアスカであった。





ヘリに乗り込んだ部隊長と隊長二人。

「ごめんね、お騒がせして」

なのはがフェイトとはやてに謝る。

「流石のエース・オブ・エースも、泣く子には勝てへんみたいやね」

はやてが笑って答える。

「にゃはは」「うふふ」

それにつられるように、なのはとフェイトも笑った。

「しかし、あの子はどうしようか?何なら、教会に預けておくんでもええけど?」

いつ出動がかかるか分からない管理局内部で保護し続けると言うのは現実的ではない。はやてはなのはに言うが、

「平気。帰ったら私がもう少し話して、何とかするよ」

なのはは、答えを早急に出す事を良しとしなかった。

「そうか」

なのはの答えを聞き、はやてはそれ以上は言わなかった。

「今は、周りに頼れる人がいなくって不安なだけだと思うから」

「そうだね……でも、アスカが側にいてくれているから」

心配そうななのはの肩に手を置くフェイト。

「帰りに車の中でも、実は見てたんだよね、ヴィヴィオ」

「アスカの事を?」

「うん。帰りは私とヴィヴィオが後部座席で、アスカ君が助手席で、たまにアスカ君が振り返ってヴィヴィオに話しかけるんだけど、ヴィヴィオが怖がっちゃってね。でも、アスカ君が前を向くと、ジッと見てたんだよ」

それを聞いたはやてがピンとくる。

「きっと、男の子やのに髪が長いから不思議に思ってたんとちゃうか?」

「あ、そうかも」

3人は楽しそうに笑った。





六課オフィスで、スバルとティアナは書類整理をしていた。

ティアナはカタカタと軽快にキーを打っている。

それに比べ、スバルはカタ、カタと実に頼りない。

タンッ!

「はい、おしまい」「はやっ!」

まだかなりの量が残っているスバルが驚いてティアナを見る。

「モタモタしないの。少し分けなさい、やってあげるから」

「ありがとう、ティア!書類仕事にがて~」

ティアナからの助け船に乗っかるスバル。遠慮なくティアナの端末に書類を送る。

「今日はライトニングの分も引き受けちゃったしね。それでも、保育士モドキより気楽だわ」

受け取った書類を片づけ始めるティアナ。

「えー、私は結構楽しかったけどなー、っと……」

普通に話をしていたスバルが、昨日の戦闘記録を見て固まる。

「ああ、それ昨日の」

横からティアナも、それを見る。

「アルトが記録した各種の詳細データ付き。あれだけの事をしでかして、使ってたのは魔力じゃなくて、別系統のエネルギー……」

スバルの声が、落ち込むように沈む。

「そんなのを身体の中に内包しているって事は……やっぱり、こいつら……え?」

ふと気配を感じてスバルがティアナを見ると……

「ていっ!」

「ぷぎっ!?」

ティアナのデコピンがスバルに炸裂した!

その不意打ちにバランスを崩したスバルがイスから転げ落ちる。

「ティ、ティア??」

床で尻餅をついているスバルが、訳も分からずティアナを見上げる。

「バカね。こいつらが何なのかを考えるなんて、アタシらの仕事じゃないでしょ?判断するのはロングアーチスタッフと隊長達。アタシらが作ってんのは、その判断材料としての報告書。分かったらサッサと作業!」

床でヘタっているスバルに、ティアナは檄を飛ばす。

「うぅ~、はぁーい」

スバルはおでこをさすりながら席に戻り、また書類に向かう。

それを確認したティアナが言葉を続けた。

「それに、確定が出たとしてもアンタが悩む事じゃないでしょ。シャンとしてなさい」

書類作成をしながら、ティアナはぶっきらぼうに言う。

スバルには分かっていた。この親友が自分の事を心から心配している事を。だからこそ、素っ気なく、でも優しく気遣ってくれているのだ。

「ティア……うん、アリガト!」

それが分かるから、スバルは嬉しそうに笑う。

「うっさい!」

どんなにツンツンしても、その赤くなった頬だけはごまかせないティアナであった。

しばらくキーボードを打つ音だけがしていた。

「それにしても、アスカがあんなに子供の相手が上手いなんて思わなかったなぁ」

スバルがな、なのはの部屋での事を思い出す。

「そうね……」

(アスカは幼い時に次元漂流して、両親と死に別れてる……突然何も無い状態で放り出されているから、きっとあの子……ヴィヴィオの心細い気持ちが分かるのね)

ピタッとティアナの指が止まる。

「ねぇ、ティア。アスカって、良いお父さんになりそうだよね?」

スバルが突然そんな事を言うもんだから、ティアナが大いに慌てた。

「へ?は?お、お父さん?!」

「うん。子煩悩なお父さんになると思うよ」

スバルは特に気にせずに話を進める。

(お、おちゅ……落ち着けアタシ!別に結婚とか言ってる訳じゃないでしょ!そ、そう、ただの会話。アスカが良いお父さんになりそうだよーって話でしょ!)

なぜか動揺しそうになるのを、必死に抑えるティアナ。

そこに、アルトが現れる。

「あれ?こんな所にいていいの?」

深呼吸して落ち着こうとしているティアナを不思議そうに見ている。

「え?なんで??」

何でそんな事を聞くのかが分からないスバルが聞き返した。

「昨日保護した子のお世話をしてるんじゃなかったのかなって思ったんだけど」

どうやら、アルトはフォワード全員でヴィヴィオの面倒を見ていると思ってたらしい。

「それだと書類仕事をする人がいなくなってしまいますから。アタシとスバルでコッチを担当してるんです」

落ち着きを取り戻したティアナが、アルトにそう説明する。

「ああ、そうだったんだ。データ、大丈夫だった?」

昨日まとめたデータが気になったのか、アルトは二人に聞いた。

「はい、問題ありません。ところで、アルトさんは何をしているんですか?」

オフィスで仕事、と言うふうでも無いアルトに、ティアナが尋ねる。

「私はこれからなのはさんの部屋にお届け物。アスカにお菓子とジュースを持ってきてって頼まれたんだ」

アルトはそう言って、お菓子などが入っているビニール袋を持ち上げてみせる。

「ああ、ヴィヴィオのオヤツだね」

「ヴィヴィオって言うんだ。可愛い名前だね」

スバルとアルトが話をしている中、ティアナは全然別の事を考えていた。

(わざわざアルトさんに頼まなくても、アタシに言えばいいのに!)

少しムクれるティアナ。

「じゃあ、私はいくから、仕事がんばってね」

アルトがオフィスから出て行く。

「……」

(何かおかしい……アタシ、昨日からアスカの事になると……なんか…)

ティアナは、その感情の正体を掴みかねていた。 
 

 
後書き
いつも読んでくださり有難うございます。
閲覧数を見て、大変励みになっております。
これからも、ぜひ読んでいただけるように頑張っていきます。

今回は、アニメと微妙に色々違った展開になっています。
査察があるにもかかわらず、はやてが余裕をかましてますね。
この理由はだいぶ後になってわかりますので、しばらくお待ちください。

後はざっと飛ばして、やっぱりティアナの心情ですかね。
もっと素直になればいいのに、でもティアナですから。アルトの動向が気になっているようです。
ここにきて、ティアナのヒロインゲージが結構きてますね。

ストックがそろそろヤバイ感じですが、なるべく更新していきたいと思います。

次くらいで命の理由編を終わらせたいですね。
その次はナンバーズ側のオリジナル回の予定となります。 
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