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魔法少女リリカルなのはStrikerS 前衛の守護者

作者:niko_25p
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第四十六話 命の理由 1

outside

シグナムが運転する車に、なのはは同乗していた。

昨日、保護した少女の様子を見に聖王病院へと向かっている所だった。

「すみません、シグナムさん。車出してもらっちゃって」

なのはが申し訳なさそうに言う。

「なに、車はテスタロッサからの借り物だし、向こうにはシスターシャッハがいらっしゃる。私が仲介した方が良いだろう」

「はい」

シグナムの言葉に、なのはは素直に頷く。

これでは、どちらが上司だか分からないが当人達にしてみれば自然の事であった。

「しかし、お前まで来るとはな」

シグナムはバックミラーで後部座席に鎮座するアスカを見る。

「いいじゃないですか~。オレだけ直接その子を見てないなんて不公平ですよ~!」

アスカがブーたれる。

アスカにしては珍しく、なのはとシグナムを相手取って同行させろとワガママを言ったのだ。

「心配なんだよね、あの子の事」

なのはが後ろのアスカに言う。

「……親もいなく、何もない状態で放り出されたってのは、ガキの頃に経験がありますから。不安でいっぱいだと思いますよ。少しでも力になってやりたいんです」

「「……」」

アスカは幼い頃に次元漂流してミッドチルダに流れ着いた。

親と死に別れ、管理局に入った経緯がある。

それを知っているなのはとシグナムは、なんて声を掛けていいか迷ってしまったのだ。

アスカも余計な事を言ったと思い、顔をしかめる。

しばし沈黙が流れた。


「しかし、調査が済んで、何かしらの白黒がついたとして、あの子はどうなるのだろうな」

シグナムは、ふと口にする。

「……当面は六課か聖王教会で預かるしかないでしょうね。受け入れ先を探すにしても、長期の安全確認が取れてからでないと」

事務面で言えばその言う通りだが、できれば早い段階で親代わりの人を見つけてやりたいと、なのはは思う。

「男だったら、099で引き取ってもよかったんですけどね」

どこかおどけたようにアスカが口を挟む。

「お前みたいなのを増やす訳にもいくまい?」

「ヒドイっす、シグナム副隊長」

シグナムのツッコミにアスカがボヤいた。

それが良かったのか、全員が笑い出した。

重くなっていた空気が、少し晴れた感じがした時だった。

緊急回線のアラームが鳴り、モニターが開かれた。

「騎士シグナム!聖王教会、シャッハ・ヌエラです!」

慌てた様子のシャッハが映る。

「どうされましたか?」

普段、あまり取り乱す事のないシャッハが慌てているのを見て、シグナムの表情が引き締まる。

「すみません。こちらの不手際がありまして、検査の合間にあの子が姿を消してしまいました」

「「えっ!」」「……」

その事態になのはとシグナムは声を上げ、アスカは窓の外に目を向けた。

「すぐにそちらに向かいます!」

通信を切ったシグナムがアクセルを踏み込む。

「大事なければ良いのだが」

「そうですね……」

シグナムもなのはも、心配そうであるが、ただ一人、アスカはぜんぜん緊張感の無い事を考えていた。

(シスターが怖かったんじゃないかなぁ~、なーんて言ったらヒドイ目にあうから言わないけどね……)





魔法少女リリカルなのはStrikerS 前衛の守護者、始まります。





アスカside

病院の駐車場に到着するなり、シスターシャッハが駆け寄ってきた。

相当焦ってるみたいだな。

「申し訳ありません!」

駆け寄るなり、高町隊長とシグナム副隊長に、シスターは深々と頭を下げた。

って言うかさ、隊長の背中に隠れてしまうオレの背丈っていったい……

「状況はどうなってますか?」

身長について軽くヘコんでいるオレをさて置き、高町隊長がシスターに聞いている。

「はい。特別病棟とその周辺の封鎖と避難は済んでいます。今のところ、飛行や転移、侵入者の反応は見つかっていません」

シスターの説明に、少なくとも病院内にはいるって事が分かる。

「外には出られない筈ですよね……では手分けして探しましょう。シグナム副隊長とシスターシャッハは建物の中を、私とアスカ君は外を探します」

よし、高町隊長と二人っきりでの探索だ!テンション上がる~って思っていたら……

「アスカ、来ていたのですか?」

シスターの一言で一気に冷めてしまったよ。

「いましたよ!さっきから!」

オレは、高町隊長とシグナム副隊長の肩の間から背伸びして答えた。

もうちょっと背丈が欲しい……割とマジで。

「では、気をつけて行きましょう」

シグナム副隊長とシスターが病院の中に入って行くのを、オレは見届けた。

「オレ達も探すとしますか。小さい女の子が一人だなんて、きっと心細いと思ってますよ」

「そうだね。早く見つけて、安心させてあげようね」

オレと高町隊長も、この広い庭を手分けして探す事にした。

まあ、子供一人、すぐに見つかるでしょ。





outside

病院内を探すシグナムとシャッハが並んで廊下を歩く。

万が一を考え、ツーマンセルでの行動を取ったのだ。

「検査では、一応危険は無かったのですよね?」

シグナムがシャッハに尋ねる。

「ええ。魔力量はそれなりに高い数値でしたが、それも普通の子供の範疇でした」

シャッハの答えに、シグナムはその長い眉を潜めた。

「しかし、それでも……」

慎重に保護……いや、場合によっては封印処理までを含めた処置をしなくてはならないかもしれない。

シグナムはそれを憂いていた。

どんな理由があるにせよ、魔力のある者を、それを使えなくさせるというのは歪な事である。

「悲しい事ですが、人造生命体なのは間違いないです。どんな潜在的な危険をもっているかは……」

シャッハの言葉にも、苦しげな色が混じる。

「私達の手で、なんとしても保護しなければ……」

仮に魔法的暴走が起これば、周囲の被害はもちろん少女の生命も危ない。

シャッハは、非情な手段を用いても少女を確保するつもりでいた。





病院の周囲では、なのはとアスカが手分けして少女を探し回っていた。

「ダメです。裏手にはいませんでした」

一度なのはと合流したアスカが報告する。

「こっちにもいなかったよ。もしかして、病院の中なのかな?」

なのはが病院を見上げると、ちょうどシグナムとシャッハが窓越しに歩いているのが見えた。

まだ見つかった様子はない。

「かくれんぼが得意な子みたいですね」

冗談ぽっくアスカが言った時だった。中庭の茂みがガサッと音を発てた。

「「あ……」」

アスカとなのはがそちらを見ると、茂みの中から病院服を着た少女が出てきた。

二人にに気づくと、少女はビックリしたように手にしていたウサギのヌイグルミをギュッと抱きしめた。

それは、なのはが売店で購入し、寂しくないようにと少女の枕元に置いていったヌイグルミだった。

「ああ、こんな所にいたの」

なのはが優しく微笑んで少女に目を向ける。

(ここは任せた方がいいな)

アスカはそう判断して一歩引き下がる。

なのはもそれを感じ取り、少女に一歩近づいた。

「心配したんだよ」

少女を怯えさせないよう、ゆっくりと近づくなのは。





病院内の廊下の突き当たりで、シャッハはそれを目にした。

「あれは!」

窓から外を見下ろすと、探している少女がそこに確認できる。

その少女に、なのはが無防備に近寄ろうとしているではないか。

「逆巻け!ヴィンテルシャフト!」

シャッハは咄嗟にデバイスを起動させ、騎士甲冑を身に纏う。

「シスターシャッハ?」

シグナムの声に答えず、シャッハは3階から移動系魔法でなのはの前まで飛び出す。

「シャッハさん!?」

突如目の前に現れたシャッハに驚くなのは。アスカも、突然の事に動けないでいた。

「くっ!」

シャッハは少女を睨み、ヴィンテルシャフトを構えて一歩前に出る。

「ヒィッ!」

短い悲鳴を上げて少女が後ずさる。その間合いを詰めるように、シャッハがまた一歩前に出た。

「あぅ……あぁ……」

ポトリ

少女は手にしていたヌイグルミを落として、その場に尻餅をついてしまう。

目に涙を溜め、怯えた表情でシャッハを見上げる。

「え……?」

その普通の反応に戸惑うシャッハ。

「何やってんですか!シスター!」

ハッと我に返ったアスカが、少女とシャッハの間に割って入る。

「な……アスカ、そこをどきなさい!」

目の前に立ち塞がったアスカにシャッハは叫ぶ。

だがアスカは引かない。

「落ち着いてください、シスターシャッハ。あんなに怯えているじゃないですか。ガチの戦闘態勢で何をしようっていうんですか!」

そう言ってアスカはシャッハの両手を押さえる。

「は、離しなさい!何をしているのか分かっているのですか、アスカ!」

振り払おうとするシャッハだが、アスカも必死に食らいつく。

「あんな幼い子相手に力ずくもないでしょう!お願いします、シスター。引いてください!」

「どんな危険があるか分からないんですよ!?」

「だからってイキナリ殴り合いはダメですって!」

実力で言えばシャッハの方が数段上だが、アスカも負けてられない。

などともみ合っているアスカとシャッハを、なのはが収める。

「シスターシャッハ。ちょっとよろしいでしょうか?」

静かに、はっきりとなのはが言う。

「え……はい」

その穏やかな表情に当てられるように、シャッハが落ち着きを取り戻す。

それを見て、アスカはシャッハを押さえるのをやめた。

二人が静かになるのを確認して、なのはは少女に向き直る。

「ごめんね。ビックリしたよね?」

なのはは地面に落ちたヌイグルミを拾い上げ、埃を払う。

「大丈夫?」

まだ尻餅をついている少女に、ヌイグルミを手渡す。

「あ……」

少女はオズオズと手を伸ばし、ヌイグルミを受け取る。そして、マジマジとなのはを見る。

「立てる?」

なのはが少女に手を差し伸べる。少女はなのはの手を取り、立ち上がった。

なのはは少女についた埃を払い落としてあげる。

『緊急の危険は無さそうです。ありがとうございました、シスターシャッハ』

『は、はい……』

そう言われては、シャッハは引くしかなかった。

「初めまして、高町なのはって言います。お名前、言える?」

なのはは少女と同じ目線まで腰を落として、優しく言う。

「……ヴィヴィオ」

少女、ヴィヴィオはなのはの目を見つめて答えた。

「ヴィヴィオ、いいね。可愛い名前だ」

ニコリとなのはが笑う。

まだ涙目のヴィヴィオだったが、身体から硬さが抜けていた。

「ヴィヴィオ、どこか行きたかった?」

なぜ病室からいなくなったのかを、なのはは聴きだそうとする。

「ママ……いないの……」

消えそうな小さい声で、ヴィヴィオが言う。

「……!あぁ、それは大変。じゃあ、一緒にさがそうか?」

一瞬、強ばった表情を浮かべたが、すぐに微笑んでヴィヴィオを見つめるなのは。

その優しい眼差しに安心したのか、ヴィヴィオは小さく頷いた。

「うん……」





その様子を、少し離れた場所でアスカとシャッハ、そして合流したシグナムが見ていた。

「よーくよーくよーくよーくよーくよーくよーくよーくよーくよーくよーくよーく見ておくとですよ。あれが正しい幼女とのコミュニケーションっスからね!シスターシャッハ!」

アスカが隣で小さくなっているシャッハをジト目で見る。

「うぅ……はい……」

シャッハは縮こまってアスカの説教を食らっていた。

「何でもかんでも力ずくで解決できる訳じゃないんですよ?さっきは正直言って、シスターが幼女を襲っているって児童相談所に通報しようかと思ったとですよ?」

「そ、それはご勘弁を……」

普段とはまるで逆の立場になっているアスカとシャッハ。

「よ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~く高町隊長を見て、大いに反省してください」

「うぅぅぅ……勉強させていただきます……」

ガックリとうなだれるシャッハ。

「それぐらいでいいだろ、アスカ。とりあえず、なのは隊長が何とかしてくださったのだから」

しばらく様子を眺めていたシグナムだったが、あまりのシャッハのヘコみ具合に苦笑しながら助け船を出す。

「……もうちょっと、ダメっすか?」

「調子にのるな!」

ゴチン!

「まあ、今回はこれぐらいでいいでしょう……痛い」

シグナムからの愛の鞭を喰らったアスカが引っ込む。

「私も、まだまだ修行が足りません……」

落ち込んだ様子で、シャッハがポツリと呟く。

「まあ、そう落ち込まずに、シスターシャッハ。無事に終わったのですから」

シグナムがシャッハを慰めている時、ヴィヴィオを抱き上げたなのはが困ったように3人に近づいてきた。

「どうしよう……離れてくれなくなっちゃった」

「「「はぁ!?」」」 
 

 
後書き
切り所が分からなかったので、ここで一回切ります。
今回は病院でヴィヴィオを見つける所まで書いてみました。いかがだったでしょうか?

今回はシャッハさんがアスカに説教を喰らってましたね。シャッハさんのポンコツ具合が加速しているような気がします。
縮こまっているシャッハさんはカワイイです。
シグナムさんがピシッと絞めてくれたので、なんとかまとまった感じですね。
それにしても、相変わらず色気も緊張感もないなぁ~。

 
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