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人徳?いいえモフ徳です。

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七匹め

「ふぅ…もう出ていいよルルさん」

ルルさんの肩を叩く。

「し、シラヌイ君…いま…のは?」

「隠し玉だよ。ルルさんにも秘密ね」

僕がやったのは水素爆鳴気だ。

学校の実験でやる水素と酸素の爆発。

それを大規模でやったにすぎない。

穴から出ると、ダマオ達は倒れて眼を回していた。

「今度こそ勝ちだな」

ルルさんと一緒に穴から出ると、土だらけだった。

「何事か!」

衛兵と思われる人達がやって来た。

「これはお前達の仕業か!」

「はい。でも…」

衛兵が僕たちに剣をむけた。

「拘束する!」

はぁ!?悪いのは明らかにあっちだろうが!

「なんでだよ!こいつらが先に仕掛けてきたんだぞ!」

「それでもだ!」

ちっ…しょうがない…

「クリエイトアクア!
フェイズトランストゥソリッド!」

大量の水を生み、凍らせて障壁にする。

厚さは30センチで、高さは二メートル。

俺たちを中心に半径二メートルの円だ。

「はぁっ…はぁっ…やべ…マジで…魔力が…」

「シラヌイ君!」

フラッときたところをルルさんが受け止めてくれた。

激しい眠気に意識が落ちる最中、お婆様の声を聞いた気がした。

side out









「お主ら!何をしておるか!」

庭にタマモと国王アルフレッドが足を踏み入れた。

「相談役殿!?国王陛下!?」

「何事か」

と国王が尋ねた。

「は!ダマオ王子殿下が倒れていらしたので、その犯人と思われる者を追い詰めた所、氷の障壁によって阻まれています」

「ほう?ダマオをか?して敵はどんな奴じゃ?言うてみぃ。儂直々に出ようではないか」

「城のメイドと金髪の獣人の子供です!」

「なんじゃと!?」

タマモは即座に大ジャンプし、氷の障壁の内側に飛び込んだ。

そしてメイドが抱かれている孫を見つけた。

「シラヌイ!シラヌイ!無事かシラヌイ!」

タマモはメイドに眼をむけた。

「何があったか全て話せぃ!」

「はい!」

ルルがダマオが来てからの事を全てを話すと、タマモはプルプルと肩を震わせた。

「ルルと言うたか…お主には罪はない」

「……」

「シラヌイが守ろうとしたお主を儂が傷つけはせんよ…」

タマモが氷の障壁を叩き割った。

「おいアルフレッド」

「どうしたタマモ」

「此度の件。どうやらダマオが原因らしいのじゃが…」

「そうか。きつく言っておく。詳しくは後でそのメイドに聞こう」

タマモがルルからシラヌイを受け取り、歩きだした。

「ダマオ達は地下牢に繋いでおけ」

「ですが…」

「国王アルフレッドが命ずる。行け」

「はっ!」

衛兵がダマオ達を抱えて地下牢へ向かった。












シェルムに与えられている部屋には、アルフレッド、タマモ、シェルム、ルル、そしてソファーで寝ているシラヌイがいた。

ルルは三人に、この部屋の掃除から全てを話した。

「そうですか…ルルさん。災難でしたね…」

「いえ!シラヌイ様に守っていただけなければ私は…」

「言わなくてもいいですよ」

シェルムが優しくルルを止めた。

「アルフレッド」

「ああ、そうだな…。ダマオはこれで王位継承権剥奪だな」

「継承権をどう迂回させるか揉めておったからの…ま、丁度よいわい」

「タマモ。それより孫は大丈夫なのか?」

「ただの魔力切れじゃ。寝れば治る」

「魔力切れ…ですか…」

シェルムがぽつんと呟いた。

「流石はお主とブライの息子じゃのぅ。
あれだけの魔法を乱発して魔力切れで済むとは」

「ええ…そうですね…。ルルさん」

シェルムがルルに呼び掛けた。

「は、はい!」

「見た目だけでいいのでシラヌイが使った魔法を教えてください」

ルルが魔法の見た目を説明した。

「それと…その…」

「どうしたルルよ?まだ何かあるのか?」

「ダマオ様と戦う前に、シラヌイ様はこれをお造りになりました」

ルルが真球水晶を取り出した。

「なんじゃそれは。ガラス玉か?」

「私もはじめはそう思ったのですが、シラヌイ様は『砂利から造った水晶』と仰りました」

「なんと!錬金術までつかうとは!」

ルルがタマモに水晶を手渡した。

「ほー…よく出来ておるわ…」

シェルム、アルフレッドも水晶を見た後、タマモはルルに水晶を返した。

「それはシラヌイがお主に渡した物。
大事にとっておれ」

「はい!」

「もう行ってよいぞ」

「失礼しました」

ルルが退室し、部屋にはタマモ、アルフレッド、シェルムだけとなった。

「ふぅ…すごいのぅ…シラヌイは…」

「お母様」

「なんじゃシェルム」

「お母様は何か知っているのですか?」

シェルムの目は真剣だった。

「くく…シラヌイめ…自分からバラすような真似しおってからに…」

「お母様。話していただけますね?」

「おお、わかっておるわかっておる」

タマモはシラヌイが転生した者だと、シェルムに告げた。

「シェルム。確かにシラヌイには前世の記憶がある。しかしシラヌイは確かに昨日までのシラヌイでもあるのじゃ」

「ええ…例え前世の記憶があってもシラヌイは私とブライの息子ですから」

「よい。それでよい」

じゃが、とタマモは続けた。

「今のシラヌイは危うい。若い正義感と子供の好奇心と大人顔負けの知識を持っておる。
落ち着くまではあまり眼を離せんのぅ…」

そこでアルフレッドが案を出した。

「ならば毎日この城に連れてくればいいではないか。そして先のメイドをつければよい」

「「…………」」

「ダメか?いい案だとおもったんだがなぁ…」

「まぁ…やってみるかの…」

「そうですね…」

「そもそも私が聞いてよかったのかタマモ?」

「うん?面白いから良いはないか?
のぅ?アルフレッド?」

タマモはあっけらかんと言った。

「変わらんなぁ、タマモは」

「抜かせ。建国の時から儂は変わっておらぬわ」

「そうですねぇ…お母様は昔からこうですからねぇ…」

「俺18代国王だからな?お前らの言う『昔』って百年単位だからな?」

「アル坊。口調崩れておるぞ」

「おっと…」

「確かに、私もブライも長命種ですからねぇ~。あと千年は生きますし、シラヌイはもっと生きるでしょうねぇ~」

アルフレッドが、しみじみと呟いた。

「九尾の娘に家出したハイエルフか…。
さらにその息子…この国は当分…私の四代先までは安泰だな…」 
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