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とある3年4組の卑怯者

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123 我慢

 
前書き
 このエピソードに藤木茂は登場しない・・・、と思いきや、後半からの登場、驚いたのではないでしょうか?しかし、みどりちゃんの学校の話だとそうなるのも無理はありませんね。28~31話は藤木は直接の登場無し、55~58話も藤木は終わりの部分での登場でしたから。 

 
 堀は藤木に電話した。
『もしもし』
「あ、藤木君。私よ、堀よ」
『堀さん!?久しぶりだね』
「えっと、明日一緒にスケートしに行ってもいいかしら?」
『スケート?うん、もちろんさ!』
「ありがとう。あと吉川さんもいいかな?」
『うん、いいよ』
「ありがとう、それじゃあね・・・」
 堀は電話を切った。
(藤木君、ありがとう・・・)
 堀は早く藤木に会いたい気分だった。かつて不幸の手紙で干された藤木を救った時と逆のパターンにはなったが、堀は藤木に会って心を落ち着かせられると思っていた。
 堀は再び藤木からの返事、みきえからの手紙を見た。そして泣きたくなってきた。
(みきえ、私今本当に学校が辛い。みきえ達の所へ戻りたいわ・・・。あの時のように・・・)
 堀は転校前の楽しい日々を思い出していた。


 翌日、みどりは堀の家へと向かっていた。途中で泉野と会い、堀を呼んだ。
「おはよう、二人とも・・・」
 堀は二人の顔を見て驚いた。二人とも顔に痣を作っていた。
「ど、どうしたの!?」
「実は昨日、帰る時に小倉や熊谷、栄張が待ち伏せしていてやられたんだ・・・」
「そんな、これも私のために・・・。ごめんね・・・」
「いえ、堀さんが謝る事はありません!あの人達が悪いんです!」
「この事は倉山君や西原にも言ったよ・・・。もうあいつら止められなくなったよ・・・」
 三人は登校していった。三人共学校が恐ろしい気分だった。しかし、ここで不登校になれば奴らの思う壺である。さらに堀はここで今日我慢すればスケート場で藤木と会える。堀は何としても今日は耐える事を決めた。そしてみどりや泉野もまたボロボロになりながらも堀を防衛しなければならないという使命にかられていた。

 みどり達は途中で麦田と合流した。
「あ、おは・・・、って吉川さん、泉野君、どうしたの!?」
「昨日堀さんの机と下駄箱を見張りした帰りに小倉さん達に待ち伏せされてやられたんです・・・」
「ひ、酷いわ!もう許せないわね!!」
 麦田も怒りがこみ上がった。四人で登校して、教室に入ると、西原が出迎えた。
「おはよう。吉川さん、泉野君、昨日は辛かったわね。倉山君が1組の麹江君や4組の東山君に言っておいてくれたわ」
「ありがとう。でもまだ懲りないかもしれないと思うな・・・」
「そうね・・・」
 不安が深まる一同だった。

 1組の教室では麹江が小倉と熊谷を問い詰めていた。
「おい、二人とも、3組の生徒たちを殴ったって!?」
「うるせえな!!」
「ウエッ、お前には関係ねえだろ!!」
「関係がどうのこうのじゃなくてお前らがやってる事はただのいじめだ!!いい加減にしろ!そんなことして楽しいのか!?やめる様子がないなら今度はお前達の親に言いつけるからな!!」
 麹江はそう言って二人から離れた。
「ったく、めんどくさい奴だな!」
「ウエッ!!」

 4組の教室では東山が栄張に聞いていた。
「栄張、いい加減に堀に危害を加えるのをやめないか!」
「あア!?るせえナ、ぶっ殺すゾ!!」
「何でも殴ればいいってわけじゃねえだろ!わかってんのか!?」
「うるっせエ!!」
 栄張は東山を殴り飛ばした。周りにいた女子が「キャア!」と悲鳴を上げた。東山はそれでも言葉を続ける。
「ほらそうやって殴る!手を出すからお前は嫌われんだよ!」
「ア!?黙レ、てめえハ!!」
 栄張はさらに東山を殴ろうとする。その時藤里が栄張を羽交い絞めにした。
「やめろ!なぐれっばいいってもんじゃねえだろ!!落ち着けよ!!」
「邪魔すんナ、おイ!!」
 4組の教室内が乱闘状態となる。狭間と志賀秋江(しがあきえ)が大急ぎで先生を呼ぶ事態になった。

 1時間目の終了後、みどりと堀は矢部、桐畑、西原と会話をしていた。西原が話し出す。
「さっき、4組の栄張が乱暴したって」
「ええ!?」
「昨日の事で東山君が注意しようとしたらすぐ殴って教室が荒れた状態になっていたんですって。狭間さん達が先生を呼ぶ事態になったそうよ」
「酷いわね、あんなの」
「ええ、あんな暴れるくらいなら平井君の方がまだ増しだわ」
(そういえば、平井さんも乱暴ですけど、理由なくすぐ殴るような人ではありませんからね・・・)
 みどりも栄張よりは平井のほうが増しだと思った。以前社会化実習の時、平井と同じ班になった時は、怖くてびくびくしてしまったが、倉山達のサポートもあり、うまくやっていく事ができた。もし平井ではなく栄張だったら終始殴られてばかりいたかもしれないと思った。

 その後、堀は狙われないようにクラスメイトと集団で行動した。何とか襲われる事なく済んだ。昼休み、堀はみどりに声を掛けた。
「あの、吉川さん・・・」
「何でしょうか?」
「私、今日藤木君と一緒にスケートしに行こうと思うんだけど、吉川さんもどうかしら?」
「藤木さんとですか?はい、是非お供します!!」
 みどりは喜んだ。藤木と一緒にスケートができるなら学校の嫌な事も忘れる事ができると思い、ワクワクするのだった。
(藤木さんと一緒にスケート何て、ああ何て光栄な事かしら・・・)
 みどりはスケート場で藤木と楽しい一時を過ごす事を妄想した。

 昼休み、校庭の隅で小倉と熊谷は榎像、新林、阪手、栄張らと会議をしていた。
「ぬぁあ、どうすんだ?堀に手を出せなくなっちまったぜ!!」
「俺もそれで迷ってたんだよ」
「3組の教室も見張られてるし、昨日はウチのクラスの豊崎が邪魔しやがってマジふざけんなだし!」
 阪手は不満をぶちまけた。
「ウエッヘッヘッ、いい手があるぜ!」
 小倉がにやけた。
「なんだ、小倉?」
「学校の中じゃ危ねえんだ。外なら堀をボコボコにできるぜ!」
「ああ、いいね!」
 阪手が賛成した。
「ただし、他の奴に告げ口させないように気を付けろよ。ウエッ」
「おう!」
 全員の意見は纏まった。

 藤木は学校の授業が終わるとスケート場へ向かった。
(久しぶりに堀さんに会うのは楽しみだな。全国大会の事とかその先の世界大会がカナダだって事も教えてあげよう!)
 藤木は堀との再会に胸を躍らせた。

 みどりと堀は泉野や保谷、日山、俣野、滝頭達と帰っていた。
「それで今日はですね、私と堀さんと二人でスケートしに行くんです!」
 みどりは意気揚々と話した。
「それで、私の好きな人も一緒に滑るんです!」
「吉川さんに好きな人いたんだ」
 日山が驚いた。みどりは堀と会うまでは学校に友達がいなかったのだから他の皆が気づかないのも当然である。
「そ、そうなんです。違う学校にいるんですけどね・・・。その人スケートが上手なんです」
「へえ、楽しめるといいわね!」
「はい!」
 みどりが嬉しそうに言った。

 堀は家に着くとスケートの準備を始めた。そして、みどりが来るのを待った。やがてみどりが迎えに来て二人はスケート場へ向かった。そして、後ろから声が掛けられた。
「よお、お前ら」
 二人は振り向いた。その途端、恐怖を感じた。そこには榎像と新林がいた。
「な、何ですか!?」
「おめえらが何かしたからしばこうと思ってな!」
「『何か』じゃ分かりません!詳しく言ってください!」
「うるせえ!!『何か』は『何か』だよ!」
「ちょっと、おめえ、こっち来やぐぁりぇ!!」
 新林が堀の手首を掴んだ。
「嫌!放して!」
「やめてください!」
 みどりは新林の手をほどこうとした。
「邪魔すんな、コラ!」
 榎像がみどりの顔面に拳を突きつけた。みどりは痛みで顔を抑えた。榎像が容赦なく殴り付けて来てみどりは堀と新林から離されてしまった。続いて榎像が堀のみぞおちを殴り付けた。堀がその場で踞た。二人は堀を連れて行こうとした。
「どこへ連れて行く気ですか!?」
 みどりが追いかけた。
「ああ!?うりゅせえ、ついてくんじゃねえ!!」
 新林が目玉をギョロギョロさせて怒鳴った。榎像が目障りだと思ってみどりを殴り、塀に彼女の顔を叩きつけた。
「これ、誰かに言ってみろ!ただじゃおかねえからな!」
 榎像はそう言って去った。みどりは堀が連れて行かれてこれまでにない恐怖を覚えた。
(堀さんが・・・。どうしましょう!?)
 みどりはどうすればいいか右往左往した。ここで誰かに言ったら自分もより酷い目に合わされる。しかし、堀は自分以上に醜い目に合っているだろう。このまま見捨てる事はできない。脅しか本当にやられるかなど構わず、みどりは決死の覚悟で助けてくれる人を探し出した。
(堀さん、待っててください!絶対に助けます!!) 
 

 
後書き
次回:「集団暴行(リンチ)
 拉致された堀は小倉達からとてつもないリンチを受ける。みどりは必死で助けられる人を探しては堀の行方の捜査を依頼する・・・。

 一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!! 
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