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とある3年4組の卑怯者

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122 抗争(たたかい)

 
前書き
 堀へのいじめが続くみどりの学校。堀は苦しさから藤木に会いたくなり、彼に手紙を出す。翌日、みどりと堀、泉野が4組の栄張に絡まれ、校内で大乱闘を起こされてしまった!! 

 
 5組の榎像と新林は堀を責めた後、自分のクラスの教室へと戻った。その際、先程の喧嘩を止めに入った広瀬や学級委員の石内武(いしうちたけし)に呼び止められた。
「おい、二人共さっき堀に何したんだ?」
 石内が聞いた。
「あ!?うりゅせえ!!」
 新林は目玉をギョロギョロさせて怒鳴った。
「てめえにはかんけえねえだろ!!」
「とにかく1組の小倉や熊谷、4組の栄張みたいにいじめに加担するなよ」
「るっすうえな!!」
「分かったのかよ!?」
 広瀬が聞いた。
「うりゅせえっつっとぅってんだよ!!!」
「黙れコラ!しばくぞ!!」
「このやろ!!」
 広瀬は殴ろうとしたが、石内に止められた。
「広瀬、もういい。わかんなかったら先生やこいつらの親に言えばいい」
「そうだな」
 広瀬と石内は二人から離れた。
「ちっ、榎像、づぉおすんだよ?」
「小倉達とそーだんするっきゃねえな」

 堀は下校時、倉山から呼び止められた。
「堀、今日は俺が帰るよ。吉川、今日はなんか用ないかい?できれば下校時刻まで堀の机やロッカーを三境(みさかい)と監視してほしいんだが」
 倉山はみどりに頼んだ。
「私がですか!?わ、分かりました!」
 みどりは本心では堀と帰りたかったが、堀を守るためなら断るわけにもいかなかった。
「すまんな。明日は別の奴にやらせるからさ」
「いえ、いいんです。堀さんのためなら何でもします!」
 こうしてみどりは三境祐也(みさかいゆうや)と共に教室に残った。
「あの、三境さん・・・」
「何だよ?」
「私、お母さんに遅くなるって電話しても宜しいでしょうか?」
「分かった。早く戻ってこいよ」
「はい!」
 みどりは急いで電話機の設置場所へと向かった。

 放課後の校庭のジャングルジムにて新林と榎像は小倉に熊谷と顔を合わせていた。
「おい、どうすんだよ!堀にガードがついちまったぜ!」
「そうだな・・・。めんどい事しやがって」
「ウエッ、堀の奴、死ねばいいのに!」
「まあ、俺達で考えとくからそれまで待っててくれよ」
 熊谷は新林と榎像を帰らせた。

 新林と榎像はむしゃくしゃしたように帰っていた。
「ったく、堀の奴、調子に乗りやがって!!」
「うぁあ、あにょやりょ~、すっぽんぽんにしてギッタギタにしてやりぃつぇ~ぜ!!」
 その時・・・。
「アァ!?堀がなンだってェ!?」
 新林と榎像は背筋が凍りついた。振り向くとみどりや堀のクラスメイトで乱暴な不良のような男子・平井やすあきだった。
「オメェラ、そンなに堀がムカつくってェ!?」
「ああ、そうだ!ぶっ殺してやりてえくれえだよ!おめえも一緒にやるか!?」
 榎像は平井が自分達堀の存在を憎む側につく事を期待した。平井は乱暴者だが、自分達の味方になってくれたら彼女をボコボコにしやすくなるし、スパイのような役割を担ってくれるかもしれないと二人は希望に満ちた。
「アァ・・・!?わりィけどよォ、オレは気に食わねェヤツは目の前でしばくようにしてンだ。テメェらみてェな事はする気ねェンだよ!!」
 平井は指をボキボキ鳴らした。
「テメェらのやってる方がよォ、ムカつくンだよ!!」
 新林と榎像は嫌な予感がした。その場から逃げようとしたが、間に合わず、二人共顔に物凄いパンチを喰らってしまった。平井は殴った後、二人を放置してそのまま帰った。

 堀は倉山と保谷、矢部、桐畑、滝頭、笠間と集団下校した。
「ごめんね、いつも付き合わせて」
「いいんだよ、ただ今日は泉野に昇降口の監視をやらせているから俺が家まで送る形になってしまうがね」
「いいのよ、倉山君は本当に学級委員らしく行動してくれてありがたいわ」
「あ、ああ・・・」
 倉山は少し照れた。確かに学級委員としてのプライドが高いというわけではないが、クラスの為に尽くさなければという責任感はあった。彼は以前クラスに馴染め出した頃のみどりと社会科実習で一緒の班になった時も、彼女の手助けをしていた。堀に会うまでの彼女なら些細な事で泣くので放置していたかもしれないが・・・。
 他のクラスメイトとも別れ、堀と倉山は堀の家に着いた。
「ありがとう。さようなら」
「ああ、じゃあな」
 倉山は帰って行った。

 みどりは電話で親に遅くなると告げたのち、教室に急いで帰った。
「異常はございませんか?」
「大丈夫だよ」
 三境は答えた。
「しかし、心配ですね・・・」
「ああ、小倉達もまだ残ってるんだろうな・・・」
 その時、二人は何かの視線を感じた。振り向くとそこには阪手がいた。
「何か用ですか?」
「は?あるわけないじゃん!!」
 阪手がうっとおしそうに答えた。
「悪いけど堀さんのいない所で悪戯なんてそんな卑怯な事させませんよ!」
 みどりは釘を刺そうとした。
「皆もゆがやったって証拠あんの?」
「ありませんけど、堀さんの事悪く言ってんじゃないですか!」
「うるさいな!!」
「どっか行ってください!」
「どうしようかもゆの勝手でしょ!」
 みどりと阪手は睨み合った。三境も阪手を睨む。
「この教室には入れないぞ」
 その時、阪手の後ろから男子の声がかかる。
「おい、阪手。ふざけたマネはやめろ」
「は!?うるさい!お前は黙れ!」
 阪手に声をかけたのは彼女と同じ2組の豊崎大貴(とよざきたいき)だった。
「黙って欲しけりゃバカなことはやめるんだな」
「うるさい!」
「じゃあ、その場から離れろ」
「うるさい!」
 その時、豊崎が阪手の服の襟と左腕を掴んで引っ張った。そして、3組の教室の出入り口から遠ざけるように引き離して遠くへ投げた。おそらく口じゃ意味がないと思って手を出したと思われた。そしてみどりと三境に向かって話しかける。
「すまんな、二人共。ウチのバカが迷惑かけて」
 豊崎はそう言って離れた。

 堀は家に入ると母親から呼ばれた。
「お帰り、こずえ。そうだ、藤木君とみきえちゃんから手紙が来てたわよ」
「え?うん、ありがとう」
 堀は手紙が来たと知って少し嬉しくなった。自分の部屋の机に置いてある手紙を見た。早速藤木の返事を見た。

 堀さん
 
 手紙をありがとう。僕もまた君に会いたいと思っていたんだ。また一緒に滑る事を楽しみにしているよ。明日にでも一緒に滑らないかい?もし用事があるなら別の日でも構わないよ。そうそう、君は僕の住所を手紙で見たと思うけど、電話番号は知らなかったよね。書いておいたからそこに電話でいいかどうか教えてくれるかい?

 藤木

 堀はその手紙の下の部分に藤木の家の電話番号と思われる場所を発見した。
(藤木君・・・、ありがとう!私明日にでも会いたいわ!)
 堀は次に転校前の学校の親友だった雪田みきえからの手紙を開けた。

 こずえ

 最近元気にしている?この前は私達もこずえやこずえの友達の吉川さんとも遊べて楽しかったです。そうそう、凄いニュースがあるの。あの時は顔を合わせられなかったけど桂川美葡(かつらがわみほ)ちゃんの事覚えてる?スケートが得意で大会に出たんだけど、関東大会で金賞を獲ってね、全国大会へ出場したんだって!凄いでしょ?じゃあ、元気でね。

 みきえ

(美葡ちゃんがスケートで全国へ!?藤木君と同じじゃない!藤木君にも教えてあげよう!もしかしたら全国大会で会えるかもしれないわ・・・!!)
 堀は胸を躍らせた。藤木に会う事が非常に楽しみだった。

 下校時刻となり、みどりと三境は帰る事になった。その時、昇降口に泉野を見つけた。
「あ、泉野さん。そこにいたのですか」
「ああ、吉川に三境君。うん、堀の下駄箱を見張るように倉山君から言われていてね」
「そうだったんですか・・・。大変ですね」
 三人は下校した。その時、校門前で小倉と熊谷、栄張が待ち伏せするように立っていた。
「ウエッ、お前ら何してんのかなあ?」
「何って帰るとこだよ」
 三境が答えた。
「はあ!?阪手からおめえらのクラスが教室と昇降口を監視してんの聞いてんだよ!」
「おイ、テメエら今日は調子乗りやがってふざけんじゃねえゾ!!」
「お前らが堀をいじめるのが悪いんだろ!」
「うるせエ!てめえら全力でぶっ殺ス!!」
 小倉達が突進してきた。みどり達は反撃しようとするも腕力では勝てずにやられてしまった。三人が去ると、みどり達はよろけながら立ち上がった。
「だ、大丈夫ですか!?」
「いや・・・」
 三人とも殴られ蹴られ放題で痣ができ、鼻血や口から血を出していた。
(う・・・、許せない、あの人達!!)
 みどり達は痛みを堪えながら帰った。 
 

 
後書き
次回:「我慢」
 みどり達が理不尽に熊谷達から制裁を喰らった事で心を痛める堀。しかし、堀は藤木と再会する時が待ち遠しく、放課後みどりと共にスケートしに行く事にするのだが・・・。

 一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!! 
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