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名探偵と料理人

作者:げんじー
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第三十八話 -学園祭翌日-

 
前書き
このお話は原作 第26巻 が元となっています(?)

ほとんどオリジナルに近いです。学園祭後のお話です。 

 
翌朝、俺はいつもより少し早めに起きて朝食の準備をしていた。

「あれ?おはようさん、龍斗。今日はいつもより早いんやな」
「ああ、おはよう紅葉。もうすぐできるからゆっくりしてて」
「はいな。そういえば今日は何をするん?学園祭後って事で皆浮き足立ってて授業なんてできんやろ?」
「ああ。終日学園祭の片づけと各クラスでの反省会だな。…でも昨日の殺人事件がどう影響してくるか…」
「せやなあ。でも大丈夫やない?きっちり龍斗がアフターケアしたんやし」
「だといいけどな…」
「それで?学園祭の後片付けをするのは分かったけど今日はなんで早起きなん?」
「ん?ああ、せっかく新ちゃんが元に戻れたんだし蘭ちゃんと二人っきりで登校させてあげようかなって。先に出ておけば顔を合わせて断るより気まずくならないでしょう?」
「そう言えば新一君元に戻ったんやね」
「……でも。多分あれは一時的だと思うよ?昨日の夜会ってきたけど細胞がだいぶ不安定だった。多分今夜にも…」
「そんな!?それ、新一君には伝えたん?」
「いや。今回は博士たちがバックアップしてたから任せようかなって。新ちゃんに言って精神の揺らぎがどんな影響を及ぼすか分かったもんじゃないからね」
「……そっか。でも蘭ちゃんも辛い目に会うことになるんやな。せっかく会えたのに」
「新ちゃんは。蘭ちゃんの事を想って死ぬかもしれない覚悟を持って解毒薬を飲んだんだ。ちゃんとフォローするさ」
「蘭ちゃん…」

そう言ったきり紅葉は黙りこくってしまった。でもこと恋愛に関して俺の出来る事はほとんどない。経験豊富ってわけでもないしね。俺も紅葉の事で思い悩むことだってある。これでいいのか?あの時の言葉は言い過ぎてないか?冷たい態度になってたんじゃないか?悩みは尽きない。近くにいる恋人同士でもそうなのだから、まだ両片思いの様相の二人だと離れている時間は気が気じゃないんじゃないかな…もしかしたら、今夜にでも?


「俺達は俺達でできるフォローをしてあげよう?特に紅葉は蘭ちゃんからの恋愛相談に乗ってあげられるだろうし」
「…分かった。そうする」
「お願いね……さあ、朝食が出来た!これを食べて早めに学校へ行こう」


――


学校に行く途中、盗撮されている気配を感じて不自然にしゃがんだりして紅葉に怪訝な顔をされたりしたが無事学校についた。最近多いんだよねえ。紅葉とのデートの待ち合わせとかで街中に立っていると勝手に撮りはじめようとしたり(まあその時は顔をそむけたりしているが)、デート自体に付きまとったり(こっちも顔が映らないようにしている)、本当にもっと別なことに気を回せばいいのにとは思う。街頭にある監視カメラはどうしようもないが人がこっちに意識を持って「撮る!」という「意」を感じ取るのはそう難しい事ではないしまあいいんだけどね……「意」の先取りは父さんの得意技だからなあ。本当にあの人リアルチートだわ。

「おお!おはよう、緋勇!!」
「おはよう、大岡さん!」
「おはよう、皆」
「おはようさん」

少し早めに来たにも関わらず、クラスにはクラスメイトが半分ほど来て各々お喋りに興じていた。クラスに入ると俺の席の近くでたむろってた中道が話しかけてきた。

「昨日は有難うなあ。あんな美味えビーフシチュー食べたのは初めてだった!お土産のマカロンも家族に大好評でな、今度の世界大会は家族みんなで応援するってよ!」
「家もおんなじこと言ってた!それに昨日食べてからなんだか調子がいいのよね。だからこんなに早く来ちゃった!」
「え?日高も?私もなのよ。昨日あんなことがあって絶対今日は学校来れないなーって思ってたのに」
「たーしーろー。それは言っちゃったら、次が無くなるんだぞ!?」
「あ…」

恐る恐る俺の方を見てくる田代。俺は苦笑しながら、

「明言してないし、ぎりぎりセーフかな?しっかりしてくれよ、もう」
「ごめんごめん。やっぱりちょっと気が昂ぶってるみたい。なんでだろ?」
「そりゃあ、あれだ。うめえもんくった後は体が絶好調になってだけだ」
「えー。サッカー馬鹿で単純馬鹿の中道はそうかもしれないけど私ら乙女はそんな単純じゃないんですぅ」
「なんだと~!」

あー。実は中道が言っていることが正解だったり。
トリコ世界の食材を使った料理は味もだけど、心身に多少なりとも影響を与えることがある。はだがつるっつるになったり、視力が望遠鏡顔負けになったり、一月潜水できるようになったり、ね。まあ今回は体調が良くなっただけみたいだけど。
席に荷物を置き、ふと紅葉の方を見ると彼女は彼女でクラスメイトに囲まれていた。あっちもどうやら昨日の料理が話題になっているようで、毎日食べられるのがうらやましいとか、いつもはどんなものがでてくるのかとか、それは緋勇君が育てたのかとか…いや、最後のそれはセクハラだろう?いや紅葉も、「確かに龍斗の料理を食べてからまたおおきくなったんやけど…」なんて律儀に答えなくていいから。それ聞いた女子たちが一斉にこっち見たから!男子もこっち見んな!にやにやするなー!!

「ひーゆーうーくーん?大岡さんが言っている事は本当なのかなあ?」
「えっと……どうなのかな?」
「はぐらかさないでよ、ほらほら吐く吐く!」

吐くと言われましても、美味しいバランスの良い食事と適度な運動は成長期なこの時期には多大な影響を与える…としか言えないんだけど。
そう、分かりやすく伝えているんだけどなんか「豊胸食」なるものがあるんじゃないかという話になってるし。

「あー、もう!埒が明かない!!どうなのよ、鈴木。そこら辺の事は!?」

え。いつの間にやら俺の隣に来ていた園子ちゃん。あっれ?登校してたんだ。俺らが来たときにはいなかったけど。

「んっんー!皆の衆、よく聞きなさい!!龍斗君の料理は確かに美味しいし、紅葉ちゃんを見ておっきくなるのを夢見るのは分かる、分かるけどね…」

そう言われてクラスメイトは紅葉の胸を一斉に見る…こらこら。それはセクハラだぞ皆。するっと視線からかばうように動くと紅葉が背中に引っ付いてきた…おーう、朝から刺激が強い…

「紅葉ちゃんも言ってたでしょう?また、って。それに思い出して。彼女が転入してきた一月の事を」

その言葉にはっとした様子なのは、俺に詰問していた酒井。

「そ、そういえば大岡さんって…」
「そう!最初から私達には到底太刀打ちのできないバストを持ってたのよ!!」

その言葉に「ガーン!」といった女子たち。そしてなぜか「おおー!」と拍手をしている男子たち。そして真っ赤になって顔を俺の肩にうずめる紅葉。あーもうなにがなんだか。

「そんな…持つべきものは最初から持っていて持たざる者には絶望しかないというの…」

ああ…そういえば、一番熱心に聞いていた酒井は…まあ、うん。今後の成長に期待?なすれんだーな体型だな…。

「あー、もう。分かった分かった。そんなに気になるって言うのなら食生活を変えてみろ。本気でどうにかしたいなら相談に乗るから。それ「本当!!?」…本当だ。だから落ち着いて。それから、皆。朝からセクハラ発言しすぎ。みんな紅葉に言うことは?」

そう言って、俺の後ろに隠れていた紅葉を前に出した。上気した頬、若干の涙目、膨れたほっぺた…うん、かわいい。

「「「「「「「「ごめんなさい!」」」」」」」」

うん、やっぱりいいクラスだよ。2年B組は。


後日、俺が渡した一月のレシピの食生活と生活習慣を実践した酒井は2カップの成長を成し遂げたらしい。泣いて感謝の言葉を重ねてきた。…そ、そこまでかい。


――

「おー?なんだ、工藤!復帰してすぐ嫁さん同伴ですかーー?」
「うっせーぞ、会沢!そんなんじゃねーよ!!」
「ひゅーひゅー!」

騒動が一段落してしばらく。新ちゃんと蘭ちゃんが登校してきた。さっきの騒動の余韻か、早速からかいに入るクラスメイト達。新ちゃんも迷惑そうな顔してるけど内心は嬉しいそうだな…ん?『今夜八時、米花センタービル展望レストラン』?なんだなんだ?…あ、まさか朝考えてたことが実際に起こるのか!?

「おらーっ!オメーらいい加減にしやがれ、ほら散った散った!!ったくよー」
「いいじゃないか、皆に歓迎されてるのさ」
「は。どうだか」

そのセリフは笑顔で言うもんじゃないよ?分かってるくせに。

「あ、そうそう龍斗。アイツには一応の説明はしといたぜ」
「アイツ?」

どうやら朝、コナンに変装した哀ちゃんも新ちゃんの家に来ていたらしく話す時間があったそうだ。その際、俺が宮野明美さんの事を独自に調べていたからこその発言であったことを説明してくれたと。コネクションの幅という意味では龍斗はオレ以上だ、という言葉に納得していたそうだ…よかった。完全には信用はして貰えていないだろうけど疑われたままだとフォローするにも向こうから拒否されてしまっちゃうからね。

「それで?今日は二人っきりでの登校でしたけどどうでしたか」
「あー!テメーやっぱりそう言うつもりだったかのか!!一緒に行こうって誘おうとしたら伊織さんにはだいぶ前に出られました、って言われてどうしたかと思えば!!」
「まあまあ」
「そのにやにやした顔をヤメロ!ったく。まあなんつーか、久しぶりにTHE日常!って感じで…良かったよ、本当に」

そう、しみじみと呟いた新ちゃん。そうだよねえ。何気なさ過ぎてみんな忘れがちだけど変わりない日常ってのはかけがえのないものなんだよね。

「そうそう、今夜は…頑張ってね♪」
「な!聞こえてた…って龍斗なら聞こえてるかあ。耳打ちだってーのにまったくもう…」

本当に、頑張ってな。想いをしっかりと伝えてあげて。

「そうだ、工藤!今度来た英語の先生がちょーイケてんだぜ?」
「ナイスバディな外人さん♡」
「え、まじ?」

お、中道に会沢。そう言えば新しく来たジョディ先生。あの人って確かFBIの人だったっけか。本当最近は原作の内容を思い出さなくなってきたなあ。いい傾向だとは思うけど、思わぬところで足元をすくわれないといいけどな…


――


「おや、緋勇君。どうしましたか?」
「どうも、シャロンさん」
「…もう、タツト?誰かがいるかもしれないのに」
「大丈夫だよ、こちらに聞き耳を立てる人はいないし音を拾うような電波も出てないし」
「電波って、貴方はまったくもう…それで?何をしにきたの?」
「ああ。劇へのお礼、かな?最後までは出来なかったけどみんな納得できる出来になったのは最後のシャロンさんの指導があったからだってみんな言ってますよ」

そう、最後だけだけど騎士役の代役をお願いした際にそのまま演技指導もして貰えた。なんでもできるイケメン医師ってことで新出先生のファンがうちのクラスに増加したほどだ。

「あら、そうなの?」
「ええ。もしかしたらファンレターなんてものが来るかもしれない、ってくらいには」
「それは大変ね」

そう言って、くすくす笑うシャロンさん。うん、手の当て方といい、笑い方と声といい、完全に女性なんだけど新出先生だからなあ。違和感ばりばりだ…っと。

「ということで、新出先生。2年B組の生徒一同は先生のご協力に感謝しています。今はまだ予定ともいえない、あるかもわからないんですけどお疲れ様会が開かれるかもしれないのでその時は来ていただけますか?」

俺が呼び方を変えたことですぐに察しがついたのだろう。声色を新出先生に戻して、

「ええ。その時があれば是非とも参加させていただきますよ」

「Oh. Dr.アライデとヒユウ君じゃアリませんか~。どうしたのですかー?こんな廊下で」
「あ、ジョディ先生。実はですね…」

そう、俺が呼び方を変えたのはジョディ先生が歩いてこちらに向かってきたのに気づいたからだ。俺の背中側から来たので表情は見えなかったけど一瞬感じた気配は警戒、か。初めからシャロンさんに当たりをつけて帝丹高校に潜入してたのか?…ダメだ思い出せない。
シャロンさんは俺と話していた内容(劇の協力についての感謝を伝えに来たこと)を説明していた。

「そういうことダったんですネー。でもヒユウ君?学園祭の片づけはまだまだ残ってますヨー?先生と雑談してサボったりしたらイケませんネ?」
「Sorry.ごめんなさい、ジョディ先生。それじゃあクラスの方に戻りますね。新出先生、本当にありがとうございました」
「いえいえ」

俺は二人の先生と別れ、クラスへと戻って行った。後ろから若干訝しがるジョディ先生の視線を受けながら。




――



結局、新ちゃんは蘭ちゃんに思いを告げること叶わずに元に戻ってしまったそうだ。というのも、展望レストランでまたしても(?)殺人事件に遭遇してしまい、そわそわしている所を蘭ちゃんに推されて首を突っ込みそのままタイムアップを迎えてしまったそうだ。あ、それと展望レストランを選んだのは優作さんと有希子さんの思い出の場所での験担ぎだったそうだ。ほへー、あそこでプロポーズをねえ。
事件解決には有希子さんが「いいこと、新ちゃん?前に女の子はトイレで口紅を整えるのは食事かキスした後のときって教えたの覚えてる?…だけどね?それには続きがあってキスを求める時もするのよ?蘭ちゃんがトイレに立って口紅をしてきたら『あなたに私の跡をつけたい』ってサインなのよー♡ちゃんと見逃さないようにするのよ!」というのを家を出る前に言われ、その言葉がヒントととなりスピーディーにすんだそうなのだが。そのまま哀ちゃん曰く「15分早く」元に戻ってしまったそうだ。あなたの新陳代謝は優秀なのねって言われて、全然嬉しくねえ!って言い返したそうだが…ゴメン、それ多分俺のせいだわ。

「新ちゃん…」
「ん?どうした龍斗」
「俺、新ちゃんに借り作っちゃったよ…」
「???」

ぽかんとする新ちゃん。いや、本当ゴメン。埋め合わせは絶対するから。




でもね、告白すっ飛ばしてプロポーズは早いと思うよ?

 
 

 
後書き
日高、田代は原作から、酒井は適当に付けました。

ビーフシチューの新一への効果(身体の調子が良くなる=小さくなるまでの時間短縮)は有希子さんが居ることによる事件解決までの短縮で相殺されて、結局トイレで小さくなってます。 
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