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名探偵と料理人

作者:げんじー
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第三十七話 -学園祭、事件の後始末-

 
前書き
このお話は 26巻 を元にほぼオリジナルとなっております。
学園祭の後の、何があったのかが明らかになります。ちょっと説教が入ります。 

 
さて、体育館で倒れた新ちゃんは無事に目を覚ました。自身の体がまだ高校生である事に戸惑っているようだけど今のところ問題は無さそうだ。…っと。

「それじゃあ、俺はお仕事に行ってくるよ」
「え?」
「ああ。そやったな。龍斗、がんばってや。オレらも後から行くさかい」
「久々やし、ウチも楽しみにしとるよ」
「まあ量的に小腹を膨らませる程度になるとは思うけどね。楽しみにしてて?新ちゃんは…後で家に持っていくから起きといてよ?」
「??」
「じゃあ、ウチも手伝います。注いだりするのに人手は必要やろ?」
「ん?ああ、そうだね。じゃあお願いするよ、紅葉」
「任せといて。それじゃあ皆、また後でお会いしましょう?」

そういうと俺と紅葉は家庭科室へと向かった。さあて、料理人としての腕を振るいますか。


――


学園祭二日目の夜、オレは保健室からそのまま工藤邸…まあオレん家に帰ってきた。蘭達はドレスの着替えや荷物を取りに保健室で別れ、服部たちも龍斗に会いに行った後そのまま大阪に帰るという事で保健室で別れた。
…それにしても、本当に元の姿に戻れるとはな。戻れたはいいがこれはこれで今までのようにはいかなくなったな。普段の生活でも気を配らなきゃいけねえし。最近だと勝手に人の写真撮ってネットに上げる不届きものが多いし…龍斗の苦労がようやく分かったぜ。アイツも有名人だからな。普段出かけるときは軽い変装してて、めんどくさがってる姿を何度も見てたし。…龍斗、か。オレも話したいことがあるがいつ来るのやら。それにしても仕事ってなんだったんだ?

「それで?オレが気絶している間に何があったんだよ?龍斗は仕事って言ってけど」
「あんらぁ~?何よ、その口のきき方は。実の母親に向かって」
「…オレが気絶している間に何があったのでしょうか?お母様」
「そうそう、母親は敬う物よ?新ちゃん」
「はいはい…」
「それで、何があったかだったわね?新ちゃんが気絶した後、体育館内は結構騒然となってたわよ?連行される犯人と警察の方に幾分か目線はいってたけど流石にあんなど派手に推理ショーしていた張本人が倒れるだもの。私も肝が冷えたわ。すぐに駆けつけたかったんだけど新ちゃんの近くにいた龍斗君が駆け寄ろうとした私に目線で『大丈夫ですから』って語りかけたから踏みとどまったわ」
「龍斗が?」
「ええ。私も変装してたんだけど、昔から彼にはばれるのよねえ。それに私が教えた変装術も私以上にこなしちゃうし…才能って怖いわねえ」

ああ、そういえば母さんが変装してても龍斗はいっつも一目で見破ってたな。

「最近だと変声術もマスターしてんぞ、あいつ」
「あっらまあ!ますます置いてきぼりにされちゃうわね。私が変装術を教わったお師匠みたいじゃない…っと。話が脱線しちゃったわね。それで龍斗君なんだけど、このままだと新ちゃんの事がばれちゃうと思ったんでしょうね。マイクを借りてこう言ったのよ。
『皆様、このような不幸なことで折角の学園祭の思い出が残ってしまうのは本意ではありません。しかも我が2年B組の劇の時間にそれが起こったなどと私としても心苦しい。そこでどうでしょう?先の彼が言ったようにこの場の皆様の心のうちに留めて頂けるのなら、今から皆様に私の料理を振る舞いたいと思います。これは世界大会に向けて試作したものですが味は保証します!さらに私が世界大会で優勝した暁には、皆様にはパーティにご招待します!その参加の条件はただ一つ!たった今起きた事件を誰にも話さない、発信しないこと。勿論、校内の人間にもです。つまり犯人も、解決した工藤新一についても一切なかったことにすること。もし、今後ネットに犯人…の名前は出るかもしれないので工藤新一の名前が流れた場合、世界大会後のパーティは開催いたしません!…優勝する保証はない?もし、これから振る舞う料理を食べた後にそう思うのならそして変な噂を立てられたいのならどうぞ?ですが後悔はさせませんよ?』ってね。
彼の言っていた仕事って言うのはその料理を振る舞う事じゃないかしら?多分、今回の事件で工藤新一の名前は世間には出ないと思うわよ?龍斗君の料理を食べて、しかも次の機会が約束されてるのにそれをふいにする人間なんて存在しないわよ。それに元々事件についての事も言われてたしね。新ちゃん、龍斗君と服部君に感謝しておきなさいよ?」
「…ああ」

全く。いつも迷惑ばかりかけてんなあ…オレ

「あーあー。新ちゃんが帰るってんで私も食べ損ねちゃったのよ?龍斗君のお料理!私、海外に住んでるから新ちゃんほど食べる機会に恵まれてないのに~!!」
「まあまあ。龍斗の奴、母さんが来てたことに気付いてたんだろ?だったらちゃんとなんか持ってきてくれるって」
「…そうよね!?あの子、本当にいい子だからそういう気づかいしてくれるわよね!?はぁ、楽しみだわ~世界大会に向けての龍斗君のお料理~♪」

はあ、さっきまで落ち込んでたくせに今は小躍りして…我が母親ながら単純な『ピンポーン』…ことで。来たか。

「あら、来たみたいね。私、迎えに行ってくるわね」
「ああ、頼むよ母さん」

さて、何を言われるかな。





体育館での呼びかけの通り、家庭科室で俺は事件に巻き込まれた人たちに料理を振る舞っていた。料理を作る、注ぐ、連絡先を聞く、列の整備をすると人手が俺と紅葉の二人じゃ足らなくて幼馴染み’sとシャロンさんに手を借りてしまったのは失敗だった。まあ皆笑顔で手伝ってくれたのが幸いだけど。事件が起きてから5時間たった19時。関係ない人間は先生方と警察が帰していたので校内に残っていたのは事件に巻き込まれた人だけだったのが良かった。もし他の人も残っていたら家庭科室に伸びる列に便乗して並ばれて収拾がつかなくなるところだった。
俺が家庭科室について作ったのは雨で大分気温が低くなっていたのでビーフシチュー、パン、そしてお土産にもできるマカロンだ。まあ世界大会用に試作したなんて真っ赤な嘘で裏のチャンネルに入って大急ぎで作ったんだけどね。…牛肉の在庫で一番低ランクが白毛シンデレラ牛の肉だったのでそれを使ったんだが、そこはご愛嬌ということで。それ以外だと捕獲レベルが三桁以上だしね。
結果、振る舞った人たちの反応を見るに新ちゃんの情報が外に漏れる事はないとは思う。ある意味、これは俺の挑戦ともいえるな。人に(事件の話を)話したい功名心VS俺の料理、のね。…今更ながら学園祭での事件、原作にあったような。確か新ちゃんが初めて解毒剤で元の体に戻るだっけ。なーんで教えてくれなかったのかな…
俺は手伝ってくれた幼馴染みたちにちょいと多めのお土産を渡して紅葉を家に送って工藤邸にやってきて呼び鈴を押した。

「いらっしゃーい、龍斗君」
「こんばんは、有希子さん。新ちゃんは起きてます?」
「ええもちろん。…それで、その手に持っているのは?」
「え?ああ、お土産です。夕ご飯…もしくは朝にどうぞ」
「あっら、そんな気を遣わなくてもいいのに~それじゃあお夕飯に頂こうかしら」
「あ、それなら俺も便乗してもいいですか?実はまだ食べてなくて。量は四人分ありますし」
「ええ、いいわよー…新ちゃーん、お台所にきなさーい!」

そう言って、有希子さんは俺を伴い工藤邸の食卓のある部屋へと進んだ。
呼ばれてきた新ちゃんが席につき、持ってきたシチュー、パン、サラダを三人で食べた。有希子さんに「龍斗君のお料理を食べられることを喜んでたけど、こんな時間にこんなにお腹いっぱいに食べたら太っちゃう…」と言われた以外は大絶賛だった。…そう言えば有希子さんもうちの母さんと同じでもうアラフォーか…
夕ご飯を食べた後、有希子さんはお風呂に行ってしまった。さて。

「それで。新ちゃん。いつの間に元の高校生に戻ったの?」
「えーっと、だな…」
「まあ、戻ったのならいいよ?でも、なんであーんな派手に登場するかな?自分が身を隠すことになった理由は新ちゃんが一番わかってるでしょう?」
「い、いやあ真実が分かったらいてもたってもいられなくてな…」
「その目立ちたがりな所、コナンになる前ならともかく。あんな組織に関わった今だと命取りになるよ?新ちゃん、自分の命だって自分で守れないでしょう?」
「なっ!?龍斗、それは言いすぎじゃねーか?」

「自分で自分を守れない」という言葉にどうやらカチンときた様子でふてくされたような態度をとる新ちゃん…はあ。なんで毒薬を飲まされるような事態になったのに分かってないのか。

「新ちゃん…」
「なんだよ、たつ…と!?」

―新ちゃんの首を落とす―そんなイメージを新ちゃんに飛ばした。『アルティメット・ルーティン』。強く思い込むことでイメージを現実にする技術。勿論実際に実現するほどのイメージは送らなかったが新ちゃん本人には充分伝わっただろう。死、について。

「はぁはぁはぁ…!なんだよ、今の!?」
「今のが「死」ってやつだよ」
「死、死だと!?」
「新ちゃん、殺人事件に関わってる癖に、毒薬を飲まされた癖に「死ぬ」ってことを軽く考えていない?探偵なんて他の職業より人から恨まれる、命の危険性があるのに自己防衛の手段はおろか自ら危険に突っ込んでいってる。今回のことだってそう。外に漏れれば組織の人間が新ちゃんを殺しにくるよ?それもどうしようもないわけではなく新ちゃんの我慢の足らなさで。いくら周りが手助けしてくれようとも、本人がそれを無にする行動を迂闊にするならすぐに死ぬよ?自覚してる?」
「……それは。それでもオレは…」

二の次を告げられない新ちゃん。どうやら思った以上に死ぬ事に衝撃を受けているようだ。…はあ。

「別に、探偵をやめろとは言わないよ」
「…へ?」

ああ、やっぱり勘違いしてたか。

「今は組織からの手が直接命の危険になるから自重しろって言ってるんだよ。今回のことだって平ちゃんもいたし、顔見知りの目暮警部だっていた。新ちゃんが推理を披露しなくてもいい状況だった。いつも言ってるじゃないか。―真実はいつもひとつ―って。だったら真実を語る人物は新ちゃんじゃなくても良かったんじゃない?探偵のあり方って推理をドヤ顔で披露する事なの?」
「オレは…」

…ま、これを機にしっかりと考えるといいよ。…大丈夫、新ちゃんならちゃんと見つけられるよ。月影島の事件を経験した後の新ちゃんは前と変われてた。だから俺の言ったことも自分なりに解釈して成長できるってね。

「俺が今日のことで言いたいことはこれくら…じゃねえ。すっかり忘れてた。どうして高校生の姿に?」
「え?ああ、それはだな…」

そこから新ちゃんはどうして元に戻れたのかを語ってくれた。平ちゃんが見舞いに来たその夜。哀ちゃんが病室に来て蘭ちゃんに正体がばれかけている彼に解毒薬の被験を提示したそうだ。まあその薬が無事効いて、哀ちゃんは有希子さんのメイクでコナンに変装して蘭ちゃんの疑いの目を晴らすことになったという。俺に言わなかったのは…

「え?」
「だからな…」


――三日前――


「じゃあ解毒薬を飲む、でいいのね?」
「ああ。せっかく元の体に戻れるかもしれねーんだ。試さない訳にはいかねえだろ?」
「そう。でも飲むのは学園祭の二日目、あなたの退院の日よ。そこまでは大人しく入院していなさい」
「ああ、分かった。さーて、元に戻れるってんなら家にいる母さんや龍斗に連絡入れなきゃな。博士は灰原が薬作ってる事知ってるだろうし」
「…あなたのお母さんに伝えるのはいいけど彼はダメよ」
「彼って龍斗か?なんでだよ」
「あなた、私の姉の事彼に話した?」
「え?宮野明美さんの事か?…組織の、ジンにオレに毒薬を飲ませた奴に殺されたオメーの姉だってことくらいは伝えたぞ」
「そう…だったの。(じゃあ私の考えすぎ?でも…)その時、どこを撃たれたとかは?」
「いや、そんな細かいところは話してねえ。ただ銃で撃たれたって」
「…彼ね、貴方が病院に担ぎ込まれた時に動揺したのかぶつぶつ言ってたのよ。その時にお姉ちゃんが撃たれた部位の事を言ってたから。彼に伝えていないことを何故彼が知ってるのかしら?」
「それは…もしかしたらオレが伝えたことを忘れてるかもしれねえし」
「彼、信用できるのかしら…もしかしたら組織の人間ってことは無い?私たちの監視ってことは…」
「!!んなわけえねえだろ!オレはアイツがガキの時からの付き合いだぞ。それにあいつに人殺しができるわけがねえじゃねえか!アイツいつも言ってるんだぜ?『命を奪うのはその身を喰らうとき、食べ物を奪い合うときだ』って。極端な考え方だとは思うがアイツが無意味に命を奪うことはねえってオレは信じてる!」
「で、でも誰かが変装して入れ替わってるってことは…」
「それこそありえねえだろ。誰があの料理の腕を模倣できるってんだ。怪盗キッドだって無理な芸当だぜ」
「…それはそうね。私の考えすぎなのかしら」
「ま、今回の事はアイツに黙ってるってのは賛成だ。危ねえってことが分かったらアイツぜってえ止めるしな」
「ええ…」


――


「…てなやり取りがあったんだよ」
「……」

やっちまったーーー!?なんだよ、ぶつぶつって全然記憶にないぞ。他に何か言ってないよな?しかしそんな癖が自分にあったなんて知らなかった…

「なあ、おい龍斗?」
「え?ああ、そういうことがあったのか。…てか死ぬ危険性があったって?」
「…まあな。だから言わなかったんだよ。でも結局オメーに迷惑かけちまってるし、反省してる」
「はー…分かったよ。新ちゃんがそう決めたのなら俺も口出しするのは最小限にするさ。それと…」
「それと?」
「宮野明美さんの事は…あれだ。俺も自分で調べたんだよ」
「龍斗が?」
「ああ。これでも伝手は沢山あるしね。その過程で…ね。新ちゃんも俺に話してないことあったりするでしょう?俺もそうなんだよ」
「そっか…」
「っと。話してならこんな時間になっちゃったね。そろそろお暇するよ」
「え?マジだ、もうこんな時間なのか」
「じゃあ、また明日学校でね」
「ああ、おやすみ」
「お休み、新ちゃん」

別れのあいさつを済ませ、俺は自宅へと戻り明日の準備をしてからそのまま就寝した。 
 

 
後書き
原作との相違点
・有希子が学園祭にいる。撃たれたことを龍斗が伝えたことにより帰国。そして学園祭での成長記録ビデオを撮るために劇を鑑賞していた。優作は先にアメリカへ。

・SNSへの投稿の功名心を「変な噂」程度で抑えられるかな?と思いオリジナル展開。今なら平気で学校の名前に傷がつこうが投稿しそう。(偏見)これまで積み重ねていたもの、そして学校の行事で食べる事が出来なかった龍斗の料理を食べられることなら抑止力になるかなと。この後、この事件に関してSNS等での暴露はありません。

・灰原に変装を施したのは有希子。青山先生はハーフと純日本人は目の書き方が違うのでそこを誤魔化すために有希子が手助けをしました。コナン→灰原の時は(42巻)有希子の手を借りていたのに逆(灰原→コナン)のこの時にはいないのに違和感があったので。
この違和感解消のため有希子を出すのに35話で電話して伝えたという裏事情があったり…

できるだけ違和感のないようにしていきたいのですが何か違和感があればいつでもおっしゃって下さい。

 
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