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名探偵と料理人

作者:げんじー
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第二十一話 -初恋の人想い出事件-

 
前書き
このお話は 原作第18巻 が元となっています。 

 
「まったくもうー。せっかくの夏休みだっていうのに、なんでこの園子様が新一君家の掃除を手伝わなきゃいけないのよ。放っときゃいいのに龍斗君と紅葉ちゃんまで駆り出してさー」
「ゴメンねー。ずいぶんと埃が溜まってそうだったし私1人じゃ大変そうだったから。龍斗君と紅葉ちゃんもありがとうね」
「ええよー。どうせ今日はヒマやったし」
「最近は掃除の手伝いをしてなかったし全然気にしなくていいよー。終わったらなにか涼しいスイーツでも作るからがんばろ?園子ちゃん」
「え、ホント!?……ハッハッハ、ならこの園子様に任せなさい!!ささのさー!」
「わー!じゃあ頑張んなきゃね……あ、園子床の前に本棚の埃をはたいて!」
「え?」
「ほら、掃除は上からって言うでしょ?それと床を掃くときは目に沿ってね」
「ババくさいよー蘭……はあーっ…今どきの女子どもは足出して胸出して男を釣って純愛だの初恋だのにうつつを抜かしているって言うのに。龍斗君のスイーツのご褒美ができたとはいえ、あの推理オタクのために埃まみれになっているとは……あたしゃー、情けなくて涙が出るよ」
(すまないねー、みんな)

とある夏休みの1日、蘭ちゃん発案で工藤邸の大掃除を行うことになった。運よくみんながみんな用事がなく全員参加でお掃除となった。

「初恋って言えばさぁ。新一の初恋の人ってどんな人なのかなあ」
「え?」(んな?)
「してるよね?新一だって恋の一つや二つ……」
「そ、そらあどないやろなあ?なあ龍斗?」
「んー、どうなんだろうねえ。サッカーに推理小説に探偵業とそればっかりだったような気もするけどねえ。中学からはずっといたわけじゃないからそこら辺はわからないかな」

ちょっと意味深なことを言ったせいか、新ちゃんに睨まれてしまった。すまんすまん。

「どうだか……あの男、その方面は超ニブでタンパクだったからねー。まあ、せいぜいあの美人の母上か、それつながりのどこぞの女優か。もしくは……」

そう言って、園子ちゃんは蘭ちゃんの方へずいっと身を寄せた。

「そういえば、あやつって子供のころから蘭とずっと一緒にいたよね?」
「う、うん。まあ龍斗君も一緒にいたけど」
「彼はいいの!どっちかって言うと保護者みたいなもんでしょ!!と・も・か・く!ずっと近くにいて、気は優しく料理は師匠が世界一なだけあってそこらの店の物より美味しい。おまけに力持ち……ずばり、新一君の初恋の相手は蘭とみた!」
(おいおいおい!)
「まっさかー。新一とは幼馴染で一緒に遊んでいただけよ。それに幼馴染みって言ったら園子も同じじゃない!」
「ああ?それもそうか。私は新一君も龍斗君も男としては興味ないからなあ。でも……蘭の例もあるしねえ」
「「え?」」
「蘭の初恋の人って新一君でしょ?」
「な!?」(な!?)
「あー…」「あら?」
「ちょっと、勝手に決めつけないでよ!」
「おんやぁ、その照れようは図星ですな怪人二十面相君?」
「その照れ方は怪しいなあ」
「もう、園子紅葉ちゃん!!」
「そうらしいよ、新ちゃん?」
「ま、マジかよ……」

そんな風に男性陣と女性陣で分かれて和気あいあいとしていると
――ピンポーン

「あれ、誰だろ?」
「バカねー。愛しの新一君に決まっているでしょ?」

突然、インターホンの音が鳴った。

「せやけど、自分の家に入るのに呼び鈴なんて鳴らすやろか?」
(そうそう。)
「きっと、博士か伊織さんに今日の事聞いて私たちをびっくりさせようとしているのよ!」
(ちがうって)
「それなら突然の登場の方がインパクトありそうなものだけど。とりあえず玄関に行ってみようか?」
「それもそうね。でも新一帰ってくるなんて言ってなかったのに」
(だから違うって)
「ほら、出迎えに行くわと、初恋の王子様を!!」
「だーかーらー!」

そう言いながら、玄関に移動し先に玄関に到着した蘭ちゃんがそのまま扉へと向かった。

――かちゃ、キィ―…

「「「え?」」」「あれ?」(ん?)
「あら、工藤君のお友達?」
「あ、はい」
(あれ、この人どっかで……)

そこにいたのは勿論新ちゃんなのではなく。年のころは20前後の女性だった。顔立ちは整っていて意志の強そうな眼をしていた。

「あ、あのもしかして麻美さんじゃありませんか!?」
「ええ、そうだけど……」

流石に、女子テニス部に所属していただけあって彼女の正体に園子ちゃんは真っ先に気付いたようだ。俺も園子ちゃんに続けて、

「お久しぶりです、麻美先輩。俺の事覚えていらっしゃいますか?」
「え、……ええー?!まさか緋勇君!?勿論覚えているわよ!でもなんでここに?」

そりゃあ、新ちゃんを訪ねてみたら家から出てきたのは料理部所属で少しお世話になった後輩なんだからびっくりするよね。

「龍斗君も園子もこの人知っているの?」
「何言ってるのよ、蘭。この人は私たちが中一の時に生徒会長だった内田麻美先輩よ!」

俺達は、麻美先輩を招き入れて書斎に移動をした。

「それにしても麻美先輩、本当に久しぶりですね。先輩が中学を卒業してからなので大体4年ぶりですか」
「もうそんなに経つのね。あのころは本当にお世話になったわね。もう、本当に懐かしい……」
「それで、麻美先輩はどうして新ちゃんの家に?」
「ああ、それはね。私が所属している東都大学の推理研究会の仲間がね、今度私の誕生日を祝ってくれるのよ。週末に別荘を借りて。それで後輩で高校生探偵の彼をゲストとして招きたかったんだけどずーっと留守電だったから知り合いに住所を聞いて直接会いにきたってわけ。まさか事件を追ってずっと家を空けているとは思わなかったわ……」
「そういうことだったんですね…あ、ごめんなさい。掃除の手伝いなんてさせちゃって」
「いーのいーの。どうせヒマだったし。それにしてもすごい蔵書量。これだけあるなら研究会の活動場所に借りちゃおうかしら…なんてね。ねえ、私電話だけじゃなくて手紙も出したんだけど家を空ける間に彼、何か言ってなかった?」
「え、いえ私は何も聞いていないですけど。みんなは?」

その言葉に帝丹高校組は全員首を横に振った。

「そっか、彼なら来てくれると思ったんだけど。忘れちゃったのかな、あの告白……」
「こ、告白?」
「まあ、忘れちゃうのも無理ないか……初恋なんていつか色褪せてしまう物だから…」
「「「初恋!?」」」(ゲッ…)
(こ、この人が新一の初恋の人……)

麻美先輩、その言い方だと新ちゃん「が」麻美先輩に告白したように聞こえますよ?現に女性陣は完全にそっちだと思っているみたいだし。

「……なるほど、読めたわ完全に…」
「え?」
「中一の頃うわさになっていたのよ。一年ボウズが麻美先輩に言い寄ったって」
「あったねえ。その頃は麻美先輩が良く家庭科室に来てて。俺は「料理」のアドバイスしてたらその光景を見た外野が俺が先輩に言い寄っているって言われて。すっごい迷惑かけられたなあ。園子ちゃんにも攻められたよね?」
「あ、あの時はごめんね。ともあれ、その身の程知らずが工藤新一だったと言うわけですね!」
「私も、あの時はごめんね緋勇君。でも言い寄ったなんて嘘よ。あれはちゃんとした告白……それにあれは「あ、あ、あのさぁ!」」

おや。麻美先輩が事の真相を話そうとしたら新ちゃんがインターセプトをかけた。

「新一兄ちゃんが来れないなら誰か他の人を呼んだら?」
「え、ええ……」
「なら、私たちなんてどうです?これでも私たち実際に起きた殺人事件を推理で解決したことあるんですよ!」
「ちょ、ちょっと園子!」

「なあ、龍斗。ウチみたいに殺人事件に遭遇したことがないことがフツーやんな?」
「まあ、傷害事件には巻き込まれたことあったり未遂事件にはあったことはあるけどソレが普通だ」

紅葉が「私たちが殺人事件を解決した」の部分に引っかかったのか小声で聞いてきた。「普通」の女子高生は頻繁に事件に巻き込まれたりはしませんぞ?

「いいじゃない、生きの良い東都ボーイをゲットできるチャンスかもしれないわよ!」
(ゲットしてーのはオメーだけだよ)
「そうねえ、女子高生が来れば男友達が喜ぶと思うけど。あ、緋勇君が来れば女友達が喜ぶかな?」
「あはは、光栄です……紅葉?別に鼻の下とか伸ばしてないから。むくれないで?」
「むくれてなんかあらへんですー」
「ほっぺが膨らんでるぞー。ほらむにぃーって」
「やめぇーや、龍斗のアホ!」
「……ねえ、あの二人って」
「見て分かる通り、お付き合いしてますよ。たまにこっちが恥ずかしくなるくらいいちゃいちゃし始めるのであれはもうほっといていいです」
「そ、そっかー。なら紅葉ちゃん、だっけ?あの娘は彼氏同伴ってしっかり伝えとくわ。緋勇君を怒らせたくないしね」
「そうですね、お願いします。あ、そうそうそれに私たちを呼べばもれなくあの人もついてきますよ!」
「ちょっと、あの人って」
「そう、言わずと知れた名探偵……」





「ナァーハッハッハァーー!いや、光栄ですな、東都の若き頭脳と一緒に酒の席につけるなんて。それに皆さん、秀才にして美男美女揃いと来たもんだ!」

週末、俺達は麻美先輩の誘い通り、東都大学の推理研究会が借りた別荘に来ていた。小五郎さんも一緒に来たがすでに出来上がり上機嫌だ。
推研のメンバーは全員が文学部で四年の沢井学部長、早坂智子副部長、三年の森本喜宣さん、二年の野口茂久さん、宮崎千夏さん、そして麻美先輩の六人のようだ。
先輩は今は台所でレモンパイを作っている。蘭ちゃんや園子ちゃん、紅葉はその手伝いで席を立っていた。こっちは先輩の武勇伝(?)で盛り上がっている。ふむふむ?小説が新人賞をとり、文学部の混合ダブルスで優勝、それにミス東都。えらぶったところもなく料理の腕はピカイチと。こうして並べて聞くとどこの完璧超人だって感じだな。

「そういえば、料理といえば麻美の後輩にまさかあの緋勇龍斗君がいるとは思わなかったよ。麻美が中三のときに中一の後輩か。確かその頃に世界一になったんだよな?」
「そうそう、史上最年少の世界一パティシエ!麻美に今日君がくるって聞いて私すっごく楽しみにしてたのよ」

沢井さんと早坂さんに立て続けにそういわれた。

「ありがとうございます。先輩と仲良くなったのはその料理がきっかけで。料理のコツとかレシピとかは伝授しましたよ。ただ、彼女の得意料理のレモンパイだけは俺はノータッチでしたけどね」
「そういわれれば、彼女のレモンパイ今日はないな」
「今、蘭と一緒に作っているみたいですよ?」
「ウチらは先に出来た料理を持っていくように言われたんで持ってきました、どうぞ」
「あれ、麻美君作ってくるって言ってたけどなあ」

キッチンから園子ちゃんと紅葉だけが先に戻ってきてそう教えてくれた。森本さんによると作ってくるはずだったらしい。

「よいしょっと……どうしたん、龍斗?ちょっと顔をしかめてるけど」
「ああ、隣の小五郎さんや沢井さんの酒とタバコのにおいがね。前のカラオケのときは酒だけだったから良かったんだけどタバコがちょっと鼻に……ね」
「ああ、そういう。ウチが隣かわろか?」
「いや、感度を落としたから大丈夫」

そう言っていると、麻美先輩と蘭ちゃんが戻って来てレモンパイを振舞ってくれた。どうやら蘭ちゃんが初めて作ったものらしい。形は崩れていたが味はみんなに好評だった。
その後は、小五郎さんの事件の話で男性人は盛り上がり、女性陣は女子トークで盛り上がっていた。俺は適当なタイミングで酒の肴やスイーツを提供させてもらった。

「ああ、まさかこんなところで世界一のスイーツを味わえるなんて夢見たい!麻美、良くぞ連れてきてくれました!」

宮崎さんが満面の笑みを浮かべながら麻美先輩をほめた。

「まあ、彼を誘えたのは偶然なんですけどね……うん、四年前も美味しかったけど今日のはそれ以上ね。緋勇君知ってる?君が入部してから料理部の子達体重が5kg以上増えたって」
「え?あ、そ、そうだったんですか!?」
「ええ、いっつも笑顔でいろんな料理を出してきて、キラキラした顔で食べるところをみてくるから断れないし、断るには惜しすぎる味だからって。君が世界一になってからはもう開き直ってたみたいだけどね」
「確かにソレも分かるわ。さっき男連中に出された肴をつまませてもらったけどびっくりしたもの。紅葉ちゃん、あなたいつも彼の料理を食べさせてもらっているのでしょう?大丈夫なの?」
「龍斗がウチのこと考えてくれてますからそこらへんは心配してませんよ。むしろその……最近は余計なところのお肉が消えて胸が……」
(((いや、今でも相当なのに!?……)))

紅葉のその言葉を受け、女性陣+新ちゃんは一斉に目線を送った。

「……新ちゃんってむっつりだよねー」
「バッ、んなんじゃねーよ!」

女性陣は紅葉をいじることにしたらしくはぶられた俺は新ちゃんにそういった。

「それにしても新ちゃん、あの頃は結局聞かずじまいだったけど先輩のレモンパイは最終的にどうだったの?」
「……ああ、オメーは事の顛末は知ってるんだったな」
「まあある程度は」
「最後のレモンパイは……うまかったよ」
「そっか……」

これ以上は喋りたそうになかったので俺はそれ以上追及せず話の輪に戻っていった。


日が変わる頃、文学部の教授からFAXでのお祝いのメッセージが届いた。当初の予定通りカラオケに繰り出そうとしたところ、主役の麻美先輩が寝てしまったので彼女は寝かしたままカラオケに出発した。カラオケ店に到着し、皆がカラオケで盛り上がっている中、蘭ちゃんは浮かない顔をしていた。多分麻美先輩から色々聞いたりして考えることもあったのだろう。園子ちゃんもソレに気づいたらしく励まし(?)の言葉をかけていた。
時間が三時を回り、そろそろ別荘に帰ろうとなったとき沢井さんが声を上げた。

「お、おい。あれ火事じゃないか?」

その火事はさっきまで俺たちがいた貸し別荘のあたりから起きているようだった。車で向かおうとしたが鍵を持っている野口さんがおらず、みんなでカラオケ店内を探したがおらず結局いたのは隣のコンビニの前で、ゲーゲー吐いていた。……酒と肴を一番飲み食いしてたもんなあ。鍵を受け取り、車を走らせ別荘に到着したときには火が別荘全体を回りいつ崩れてもおかしくない状態だった。

「ちょっと、避難した様子はないわよ!?」
「まさか、まだ中で寝てるんじゃ!?」
「で、電話してみます?リビングで寝てるはずだから!」
「無理だ、もう燃えてしまっているよ…」
「くっそ、こうなれば…」
「お、おい」
「うわっ!」

森本さんが別荘の扉を開けると中から火炎が飛び出してきた。廊下の床にも火が移りまさに火の海の様相を呈していた。……心音はまだ聞こえる、ならいくしかない!

「蘭ちゃん、コナン君。俺は独りで行く。これは蘭ちゃんじゃ無理だ。外で水をかける用意をしてて!誰も後を続かないようにね!!」
「で、でも!」
「いいから、そのヘルメット貰うよ!」
「お、おい!」

俺は返答を聞かずヘルメットを奪い別荘の中に入った。廊下の床は火の海だったが壁は比較的まだ燃え移っていなかったのでそこを走り目的の部屋の扉に向かいとび蹴りをかました。中はひどいものだったが先輩は奇跡的に火が回っていない床に寝ていた。俺は先輩にヘルメットをかぶせ……さあて、どうしましょうかね。窓側は火の海、リビングの壁と…廊下ももうだめか。俺はともかく麻美先輩もいるから火の中を突っ走るという無茶も出来ない……となれば。











(おいおい、確かにオメーじゃなきゃ入ることすら間々ならない状況だけどよ。これ以上は流石にやベーんじゃねーか!?)

龍斗が中に突入した後、蘭や沢井さんが後に続こうとしたが龍斗が床ではなく壁を走っていたのを見てあきらめていた。リビングの扉をとび蹴りの要領でぶち破ったのまでは見届けられたが火の勢いが増し、廊下は壁すらも火の海に飲まれてしまった。

「おいおい。龍斗君はどうやって脱出するつもりなんだ!?」
「り、リビングには窓があるからそこから脱出できるかも!」
「いや、この火だ。窓側も廊下と同様火の海だろう。しかし彼は麻美が生きているか、もっと言えば中にいるかも分からないのによく火の中に突っ込んだもんだ」
「沢井君、言いすぎですよ!」

沢井さんの不謹慎な言葉を早坂さんが叱責した。いや、龍斗が突入したんだ。麻美先輩は生きてまだ中にいるはずだ。……窓側が火の海?なぜだ?あの窓は結構大きくて燃えるものも壁よりははるかに少ないはずだ。なのになぜ?
いや、今は龍斗のことだ。どうやって出てくるつもりだ!龍斗!?…あれ?

「紅葉さん、心配していないの?」
「んー、ウチは龍斗が寿命以外で死ぬなんて想像できへんからなあ。怪我とか火傷とかの心配はしとるよ?でも龍斗なら麻美さんを無事に救出して出てくるって信じとりますから。……ただ、派手に出てこーへんかなって心配もしとるかな?」

……はあ、すごいなこの二人。こんな事態なのに思わず感心してしまった。
――ドン!ドンッ!!

「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」
「何だ、今の音は!?」
「爆発音!?でも火の勢いは変わらないわよ!?」
「ほら、出てきた。新一君も聞こえるやろ?かわらを踏む音が……やっぱりとんでもないとこから出よったなあ」

その言葉に耳を澄ませると確かに微かに瓦を踏みしめるような音が聞こえた。でも本当にわずかで火事の諸々の音にかき消されて気のせいではないかと思えるくらい小さな音だぞ!?龍斗もそうだが紅葉さんの耳も相当鋭いな!?

「小五郎のおじさん、上だ!!」
「上ぇ!?なんのこと……!!」
「な、なんだ!?」「え!?」

オレがそういったと同時、二階建ての別荘の屋根から麻美先輩を抱えた龍斗が飛び降りて、皆の前に重力を感じさせない着地を披露した。

「ただいま戻りました」










「天井をぶち抜いて、屋根に出た!?」
「いやあ、麻美先輩を確保したまでは良かったんだけどさ。四方を火に囲まれちゃって。強引に突破しようと思えばできたんだけど先輩が大火傷しちゃうしどうかと思ってね。奇跡的に火傷とか負ってなかった状態だったし。なので、火の回りがまだ少なかった天井のある箇所をぶち抜きて二階から出ようとしたら火の海だったんでもう一回ぶち抜いて屋根からぽーんっと」
「いや、三階相当から飛び降りて無傷ってのも……ああ、龍斗君、普段まともだから忘れてたけどたまにとんでもないことやらかすんだった」
「あはは、そういえば。新一や私がいっつも子供レベルでバカなことしてたけど龍斗君がするのはスケールが違っていたわね……」
「龍斗、今日は仕方ないけど自重せなアカンよ?」
「……はい。あ、でも蘭ちゃんが特攻しようとしたのは忘れてないからね。もう少し火が弱かったらイケたかもだけどあんま無茶しちゃだめだよ?」

俺は今麻美先輩が搬送された病院にいた。先輩の付添と流石に無傷とは言えず俺は火傷を負ったため治療を受けるためだ。そして、治療を終え、先輩の病室に来たというわけだ。現場を離れる前にここにいない小五郎さんと新ちゃんには俺がしたことを伝えて、現場検証の時に警察の人が天井にあいた穴について困惑しないように説明を頼んだ。……説明、できるんだろうか?

「でも、よかったわよ。麻美先輩は軽い一酸化炭素中毒で命に別状はなくて。それにしてもさっき麻美先輩が言っていた「ごめん、ごめんね工藤君」ってどういう意味だろうね、蘭?」
「うん……」

まあ想像はつくけどね。

「……ねえ、なんか喉乾かない?下の自販で何か買ってこようか?」
「あ、私も行くよ。龍斗君、紅葉ちゃんは先輩の事お願いね」

そういうと、蘭ちゃんと園子ちゃんは病室を出て行った。

「……先輩、目が覚めてますよね?」
「え?」
「……あら、気づいていたの?」
「ええ、俺が病室に来たときにはもう起きていたでしょう?先輩、自分の身に何が起きたかわかりますか?」
「目が覚めてから大体の経緯は聞こえていたから大体の事は分かるわ。何かとんでもない助け方をされたみたいね、ありがとう緋勇君」
「いえいえ。一応聞きますけど。自殺、しようとしたわけではないですよね?」
「もちろんよ」
「そうですか。それが聞けて良かったです。……寝たふりしてたってことは先輩、何か行動を起こすつもりですね?」
「緋勇君鋭すぎ。まあね。私を床に寝かせた人が誰なのか、うっすらだけど覚えているわ。多分その人が火を……だから今から抜け出して一言言ってやろうかなって」
「そうですか……じゃあ俺もご一緒します。こんな時間の一人歩きを見逃すわけにはいきませんので。紅葉、悪いけど……」
「ウチはここに残って「麻美さんがちょっと目を離したすきに抜け出した。龍斗は探しに行った」っていえばええんやね。犯人に変な動きをさせへんために」
「ありがとう、じゃあ先輩。行きましょうか」
「緋勇君、紅葉ちゃんありがとう」


「先輩、それで抜け出してまで言いたいことって聞いても大丈夫ですか?」
「うん、私を床に寝かして部屋を最後に出ていいった人物……沢井部長が「これで彼女も……」って呟いたのが聞こえたのよ。それで火事が起きたでしょう?これって形は違うけれど中三の時に私が工藤君にしたことと同じだってすぐに気づいたわ」

どうやら、犯人?は沢井さんでこんなことをした理由は振られた麻美先輩を振り向かせるためにピンチを演出→華麗に救出を企てたのではないかと言う事だった。…えー。

「沢井さんって本当はすごいバカなんじゃないですか?」
「バカって……なんでも思い通りになった人なんでしょう。だから挫折というか壁にぶつかったら普通は考えられないことをしてしまったんじゃないかな?」
「いや、だからって。あの時俺がいなかったら麻美先輩は死んでいましたよ?火の回りが異常に速くて、俺以外の人がリビングに行こうとしたら例え水を被っていても先輩の所にたどり着く前に力尽きてました」
「……」
「まあ、本当に沢井さんが火をつけたなら多分、着くころには事件は解決してますよ。なんたって、名探偵がいるんですから」




「ばっかやろう!ボヤ程度で済ますつもりだった?火の回りが予想以上に早かった?そんなものが言い訳になるか!ふざけるな!!!」

別荘に着いたとき、どうやら新ちゃんが沢井さんを犯人と推理し事件を解決していたようだった。小五郎さんの声でそんな怒声が聞こえてきた。犯行の動機は麻美先輩が言っていた通り振り向いてほしかったから。今まで振られたことがなかったから悔しくて…か。

「なぜ、麻美さんが焼け死ぬ可能性を考えなかったんだ!車にトラブルが起きるかもしれない、道が渋滞するかも、現に車のキーを持っている野口君は火事が発覚したときその場にいなかった!!龍斗君がいなければ誰もあの火の海は突破することができなかった!!そうだろう!お前は突入することを諦めたんだからな!そんな時、麻美さんの命は亡くなっていたんだぞ」

その言葉に、飄々としていた沢井さんはやっと事の重大さを認識したのか神妙な顔になった。

「振られてしまったのならなぜ、振り向いてもらえる人間になろうとしなかった。自分を高めることで振り向かせてやろうと思わないんだ!!」

その言葉を聞き、麻美先輩は隠れていた廊下から中に入った。

「ホント、バカですよ部長。私なんかのために……」
「麻美、本当に悪いことをした……」
「それじゃあ、とにかく話は警察に行ってから」
「はい」

消防員の人にそう言われ、部屋から連れて行かれる沢井さん。麻美先輩は沢井さんがすれ違った時にこういった。

「部長、人の心を無理やりこじ開けようとしても、開いてはくれませんよ?」
「…そうかな?君なら世界中のどんな男でも一つ息を吹きかけるだけで魅了してしまいそうなものだが」

「そんなことないですよ、部長は私を知らないだけです。私だって昔、昔……」





事件が解決し、別荘から全員が帰る時麻美先輩はみんなに事の真相を話した。自分の方が新ちゃんに告白したこと。一年ボウズにコナかけられている噂は自分が流したこと。レモンパイに纏わる云々など。
結局、麻美先輩がばらした新ちゃんが気になっている奴は蘭ちゃんの天然ボケでうやむやになってしまったけど。

蘭ちゃんも大概、にぶチンさんだよね?似た者夫婦だなこりゃ。 
 

 
後書き
今回は原作+アニメのセリフ(最後の小五郎のセリフ)となっています。
振り向いてもらえる~の言葉は幼少期に聞いて、未だに覚えている言葉ですね。まずは自分を磨く。全てはそこからという今聞いてもいいセリフです。
今回は龍斗がいたことでピンチになってしまいました。原作だと野口さんはカラオケの部屋に戻ってくるのですが龍斗の料理のお蔭で酒が進んでしまい、グロッキーのまま見つかるまで時間が掛り、誰も突入できないまでにひがまわってしまったという。
そして犯人について全く触れなかったのでどうやって火をつけたかは原作の方を皆さんの目でお確かめ下さい(宣伝) 
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