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名探偵と料理人

作者:げんじー
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第八話 -修学旅行、他色々-

 
前書き
このお話は原作50巻FILE9~11
     原作51巻FILE1
     OVAコナンとキッドとクリスタル・マザー
     OVA工藤新一 謎の壁と黒ラブ事件
     が元になっています。 

 
世界一になった後、学校ではそれはもう大混乱が起きた。学校側も寝耳に水な話でマスコミの取材の依頼がひっきり無しにかかってきたそうだ。そりゃそうか、飛び入り参加で実績も表立って特に積み重ねて来なかった俺が、あんなデカイ大会に出て優勝したんだからなあ。休むことを松本先生に伝えた時もまさか優勝してこんな騒ぎになるとは夢にも思ってなかっただろうし。学校前に連日出待ちのマスコミがいて一般生徒にも迷惑をかけてしまった。

「あっりゃあ、しばらく消えそうにねえな」
「だよね。せっかくの龍斗君の優勝お祭りムードをぶち壊しにしてくれちゃって迷惑なやつらよね!」
「でも、ほんとに何とかならないのかしら。つい昨日も一年生ってことで違うクラスの女子がマスコミに付きまとわれたって言ってたし」
「え?それマジ?」
「まあそんだけどえれえことをしたってこったな。結構な人からお祝いの言葉をもらったんだろ?」
「まあね。父さん母さんに引っ付いて参加したパーティで顔見知りになった人とか」

そうそう、そういえば何の琴線に触れたのかシャロンさんとの邂逅以降、彼女から色々な贈り物を頂くようになった。今年も卒業祝いと入学祝いで高級な調理器具や食材を贈って貰った。俺も彼女の誕生日や記念日には手作りのお菓子を贈ったりとなぜか交流が続いている。…いやほんとなんでだ。入っている手紙はホントに優しい親戚のおばさん化してるし。
世界一になったときは誰よりも早く食器をいただいた。…ウン百万するものを。そのことをはなすと。

「シャロン・ヴィンヤード!?アメリカの大女優じゃない。龍斗君そんな人と仲がいいの!?」
「ウチのパーティでも中々会えないわよそんな大物……」
「オレの幼馴染の交遊関係が混沌としてきてんな……」
「シャロンさんは有希子さん経由だけどね。新ちゃんが逃げたパーティで出会ってそこからかれこれ六年くらいの付き合いかなー。結局会ったのはその一回だけで後は手紙のやり取りだけだけどね」

それはそうと、まずは学校の問題のほうか。

「話を戻すけど学校回りの人間について。学校側もいっぱいいっぱいみたいだしね。ねえ、園子ちゃん」
「??」

あまり、使いたくはない手段だが早期解決のためにはこれくらいしか思いつかないしな。せっかく手に入れた称号だ。有効に使わせてもらおう。

「鈴木財閥の系列で警備会社はない?もしくは信頼できる警備会社。できれば屈強で有名なところがいいかな。そこに警備を一ヶ月ほど依頼したいんだけど。園子ちゃんにはその渡りをつけてほしい。もちろん依頼料は払うよ」
「え?ええ。そりゃあうちも警備会社持ってるし渡りをつけるのは全然いいけど。幼馴染みの頼みだし、龍斗君が悪いわけでもないんだから依頼料なんていらないわよ?パパもママもこのことを言ったらそういうと思うし」
「いや、それはダメだよ。園子ちゃん。こういうことはきっちりしておくのが友達関係をずっと続ける秘訣だよ……金銭じゃ気が引けるかもしれないから俺が、俺だけが出せる依頼料になるけど」
「それってどういうこと?」
「警備会社への依頼料は俺が鈴木財閥主催のパーティで依頼があれば三回、無料で料理を作ること。よっぽどがなければ最優先で受けるよ。んで、園子ちゃんには俺がこれから一ヶ月弁当を作る、オジサン達にはお菓子のお土産を週二回渡す。ってのはどう?」
「お弁当一ヶ月!!!??しかもお菓子までもらえるの!?それにパーティで料理をただで三回も作ってくれるってしかも優先的に!!?貰いすぎよ!」
「そう?三回って少ないと思うけど。鈴木財閥系列なら質も高いだろうし」
「だって、パパもママも次郎吉伯父様も龍斗君のファン歴10年よ!二つ返事でソッコーで手配してくれるわ!!ちょっと電話してくる!」

そういうと、携帯片手に教室を飛び出していった。

「おーおー、すげえスピードで出て行ったな」
「でも、これで解決しそうね。こういうのは学校側でしてほしいと思うけどね」
「いくら帝丹中学が帝丹大学の系列私立と言っても、学校の処理能力を超える事態だったってことだろ?しっかし龍斗も思い切りのいいことをするな。確かにオメーが原因だが身を切ってまで対処しなくても良かったんじゃねーか?」
「そう?身を切るなんて思ってないけどね。園子ちゃんのご両親は小さい時から知ってるしあそこのパーティでならこっちから料理作らせてほしいってお願いしたいくらいだしね。パーティ用で作る料理も普段とは趣や順序、構成それに量も違うから作り甲斐があるしね」
「もー、新一は推理オタクだけど龍斗君も筋金入りの料理バカよね」
「バカとはなんだ、バカとは」

そんな話をしていると、満面の笑みを浮かべた園子ちゃんが帰ってきてその日の放課後にはマスコミたちの姿は消えることとなった。……マジでソッコーで解決したな。
警備員の雇用期間中に文化祭が開催されその時も警備員さんにお世話になった……列整備とかできるんすね。鈴木財閥の社員能力たけえ。




そんなこんながありつつ、俺達は無事中学二年生に進学した。幼馴染みは一緒、クラス担任も同じともはやなにか呪いなんじゃないと思った。10年間以上一緒って。

二年が始まって二週間が経ち月曜の朝にちょっとした事件?があった。いやあれは事件じゃなくて……

「あれ?今日は龍斗君一人で来たの?あとの二人は?」
「ああ、あとで来ると思うよ」
「あれ?一緒に来てはいたのね。なにかあったの?」
「ああ、実はね……」

俺は園子ちゃんに朝登校中にあったことを話した。



「だからオレ、二時間目ふけっから」

新ちゃんが、昨日の日曜に遭遇した事件について話してそう言った。どうやら先週の木曜日の午前中に強盗殺人事件があり、その重要参考人である秋本さんという方のアリバイを証明してくれる人を探すと言うのだ。その証言を集められそうなのが事件当時秋本さんがいた時と同じ午前中の
公園であるとのことで授業をさぼるらしい……?なにやってんだ二人とも?

「だから、その秋本さんには透視能力があるって言ってるの!それで壁を透視して壁の裏にいるロビンちゃんを見たのよ!!」
「だーかーらー、この世に超能力なんてないって言ってるだろ!秋本さんが見たのは秋本さんが寝てた位置を考えれば壁の表側!!どうせそのおばさんがロビン君の散歩コースをたまたま変えただけだって!!」
「新一は知らないだろうけど、この世には超能力だって幽霊だってぜーったいいるんだよ!龍斗君だってニンジャだって騒がれてたじゃない!分身の術が使えるって!!ねえ、龍斗君!!?」

げ。こちらに矛先が。

「龍斗のあれはすっげえ身体能力のおかげなだけだろ!もしも、超能力や予知能力があるなら事件なんて未然に防がれておきねえ平和な世の中になってるっつーっの!」
「なによー!あるったらあるの!!」

あ、こっちには流れ矢は飛んでこなかったか。それにしてもミュージカルばりによく動くなあ二人とも。まあただの痴話喧嘩か。ほっとこほっとこ。

「じゃあ、俺先に行っとくからお二人はご存分に続けてくださいな」



「……ってことがあったんだよ」
「はあ、相変わらず仲のいいことで。しかし蘭も新一君も相変わらずねえ」
「まあね。オカルト系は絶対ないっていう新ちゃんに絶対あるっていう蘭ちゃん。どっちも意地っ張りだからねえ。平行線だわな」

すまん、新ちゃん。俺はオカルトではないけどかなり非常識な存在なんだよね。

新ちゃんは宣言通り、今日の二時間目の数学の時間にこっそり抜け出していった。その日だけでは調査は完了しなかったらしく火曜日は理科の実験で煙が出るように化学反応を起こして(あんなもんどっから調達したんだ……阿笠博士だな絶対)混乱に乗じて、水曜日は校外ランニングのどさくさに紛れて、木曜日は音楽の時間にこっそりと抜け出していった。流石に音痴が抜ければ松元先生は気付き、お昼にこっぴどく叱られていたが。

「それで、成果はどうなんだ?」
「それがぜーんぜん。黒い犬を飼ってる家を回って聞いてみたけど収穫なし」
「はあ、早く解決してくれよ?登校中にぎすぎすした二人の間を取り持つ俺の身にもなってくれ」
「わりーわりー」

そう、あの二人。喧嘩してる最中だってのに登下校は一緒なんだよな。これで、付き合ってないんだから何だって話だわ。

「……もしくは見方を変えてみるとかな」
「?どーいうこった」
「酔っ払いの感覚なんて新ちゃんが思っている以上に信用ならんもんだよ。特に視覚は」
「んんーー、そういうものなのか?」

そう言ってまたうんうん言いながら悩みだした。早く答えを見つけてもらいたいもんだ。

次の日、新ちゃんは学校を休んで調査に出かけた。土日を合わせてこの三日で勝負を掛けるつもりかな?

次の週の月曜日、今日は新ちゃんの家に行ったがすでに出ていたらしく蘭ちゃんと二人で登校した。こうしてる分にはいつも通りなんだけどねえ。
新ちゃんは朝の始業ぎりぎりに教室に入ってきた。明らかに晴れやかな顔をしているのでアリバイは無事証明できたらしい。お、笑顔で蘭ちゃんに手を振って…そっぽを向かれた。

「新ちゃん、俺今日は料理部に顔を出すから一緒に帰れないわ。だから二人で帰ってくれ」
「お、おお。分かった。オメーも二年で部長だって大変だろうけど頑張れよな!」
「そっちも、しっかり仲直りしろよ?」
「善処するよ……」
三年生が抜け、料理部は俺一人になってしまったが今年入った一年生で俺の事を知っている人が大量に入ってくれたので部の廃部の危機は免れていた。まあ、まだ四月だしここから何人か抜けていくだろうとは思うけどね。しっかり料理の楽しさを伝えていきたいと思う。



次の日、そこにはいつもの様子に戻った二人がいた。なんでも河川敷を歩いているととても綺麗な歌声のアメージンググレイスが聞こえてきて、喧嘩している気にならなくなったそうだ。



しばらくして、俺は父さんに呼び出されてイングラム公国にいた。イングラム国王の誕生日を祝う晩餐会の料理を作る手伝いのためだ。流石に国王のパーティなだけあって他国の王子、王女に高級官僚ばかりだった。スイーツだけでなく料理の腕も父さんの計らいで披露することができ、いくつかの国の官僚からスイーツではなく料理を作ってほしいとオファーが来た。
イングラム国王の息子のフィリップ王子には「お菓子のお兄ちゃん」と呼ばれて、懐かれてしまった。俺の仕事は終わっていたのでセリザベス王妃に許可をもらってパーティが晩餐会が終わるまで一緒に遊んであげた。



更に月日が経ち俺達帝丹中学二年は中学校生活最大のイベント、修学旅行で東北に来ていた。そこで、スキー教室を体験していた。俺達四人組は割と運動神経がいい方なので早々に講習を終え(自主脱出)、上級コースに滑り出していた。
俺は、上級の一つ上に「鬼畜!地獄めぐりコース!!」というのがあったので三人を誘ったのだが、流石に斜度50°、全長1500mを滑るのはアホだと言われて断られてしまった。何々、滑る前に名前と連絡先をこの無線で連絡してください?下に監視員が到着し監視の準備が出来たら赤いランプが点灯します。ふむふむ。後は怪我、最悪死亡しても了承する事のサインを下の紙にしてくれ?サインには外国人も結構いるな。んで現在まで、完走者0、怪我人多数、麻痺などの障害3、死亡者0と。ほっほう、面白い。
ということで、俺は一人そのコースに挑戦してした。ジェットコースターなんかと比べ物にならない爽快感だった。下にいた監視員はその一部始終を見ていて呆然としていて、俺が中二であることを聞いて倒れてしまった。思った以上に楽しかったので、監視員を近くの休憩所に連れて行き、何度も滑っているうちに昼食の時間を過ぎてしまっていた。三回目くらいからギャラリーと動画撮影が入ってしまったが。どうやら、PRにつかうらしく許可を求められたので了承した。ついでにカメラを回してない方の監視員さんに携帯を渡して撮ってもらうことにした。
そんなこんなで二時過ぎに戻った時に新ちゃんたちからそのコースを滑っていることを聞いていた松本先生に、大変心配をかけていたことを知って平謝りした。その後特別に俺だけならということで昼食を取らせてもらった。どうやら別の中学とブッキングしているらしく、時間をずらしての昼食時間とのことだった。

「人間がやったから犯罪っちゅうんじゃ!それに不可能なモンがあるかちゅうねん!!ボケェ!!!」

……この声に関西弁にこの言葉。どーっかできいたことありますねえ。

声のした方を向いてみると案の定、俺のもう一人の幼馴染みがいた。別の中学って平ちゃんのとこだったのか。なんつう偶然。後ろからカメラ回してるのは静華さんか?有希子さんもさっきみたし探偵ボーイズのお母様はどこも一緒だねえ。
周りの同級生にたしなめられて、平ちゃんは席に戻りカレーを食べ始めた。ずいぶんとまあ不機嫌な顔で。隣には和葉ちゃんがいた。……よし

「ずいぶんとキレッキレの啖呵を切ってるね、平ちゃん」
「なんやなんy……龍斗ぉ!!??なんでお前がこないなとこにおんねん!?」
「龍斗君?!?」

うむ、こっちが清々しくなるほどの驚きのリアクションだ。流石関西人。

「『地獄めぐりコース』を何回も滑ってたら昼食を食べそこねちゃってね。だから今から遅めの昼食だからこの食堂に来たんだ。久しぶり、和葉ちゃん」
「そうやなー、腹減ったら食堂に来るの当たり前…やない!なんや、『地獄めぐりコース』を何回もって!ふざけんなや!!ありゃ世界のプロスキーヤーでも完走できてへんコースやで!!それも何回もやと!!ガキんときは気にしとらんかったがよくよく考えたらお前のそのアホみたいな体の動きはなんなんやねん!そしてそもそも、オレが聞きたかったのはなんでこのスキー場におるんかっちゅうこっちゃ!分かっていうとるやろ!」
「そやそや。久しぶりー龍斗君…って!もう!!」

息をゼーゼー切らしながら一気にまくしたてた平ちゃん。いやあ、すごいね。噛まずにあんなセリフ早口で言えるって。

「はっはっはー、ああ打てば響くこのリアクション。やっぱり楽しいねえ。単純に俺が修学旅行で泊まっているホテルがココだってだけの話だよ」
「じゃあ、もう一つの学校って龍斗君の学校やったんやね!すっごい偶然や」
「ホンマにな。けどオレはその身体能力について納得はしてへんで?」
「な、なあ服部?なんやねん、このイケメンさんは?」
「かーずーはー?服部いうイケてる幼馴染みに飽き足らずこんなイケメンと知り合いなんてどういうことやねん!!?」

何やら、見知らぬ俺に興味をひかれたのか平ちゃんたちの同級生が詰め寄ってきた。気のせいか、女子たちの圧がすごい。それに気圧されたのかさっきの疑問の追及をやめ、

「ああ?コイツはオレのもう一人の幼馴染みや!普段は東京に住んどって、長い休みの時しか会えへんけどさっき見たように結構ノリのいい気のいい親友や!」
「平次も言ってるけど私のもう一人の幼馴染みやねん。私たちも今日来てるのはしらんかったんよ?」

そう紹介され、平ちゃんの知り合いであることと関西人特有のノリのおかげかすぐに仲良くなり楽しく昼食を取ることができた。

「じゃあ、オレは事件の調査にいくさかい、またな龍斗!」
「まってーな、へいじー!またね、龍斗君!」

どうやら、このホテルのスキー場で不可解な殺人事件があったらしく平ちゃんはその調査に向かうようだ。あ、しまった和葉ちゃんの足治療してあげようと思ってたのに言う間もなく行ってしまった。……次会ったらやってあげよう。しかし不可解な殺人事件ねえ。もう一人の探偵志望の幼馴染みもこの話は当然耳に入ってるだろうし、蘭ちゃん。頑張ってね。新ちゃんの手綱は任せたよ。





「で、どう思いますその殺人事件について。お久しぶりです、優作さん。二人してロスから帰ってきてたんですね」
「唐突に後ろから現れて驚かすのはやめてくれないかね、龍斗君。君はホントに気配を消すのが上手いから心臓に悪い。それによくこの視界の悪い状況で私を見つけてここまで近づけたね、シュプール音も聞こえなかったが」

有希子さんがいるってことで優作さんもいるんじゃないかと探してみると山の中腹あたりにいたので後ろから声をかけてみた。今年からあの豪邸を新一に任せロスに拠点を移したはずだけど、わざわざ息子の修学旅行に合わせて帰国するんだから、愛されてるねえ新ちゃんは。

「そりゃあ、下から見つけて走って……っ!!」
「……いや、もうなにもいうまいて。しかし上が騒がしくなってきたな」
「蘭ちゃんが死体を見て悲鳴を上げたみたいです。ほら今リフトが止まったでしょ?それは新ちゃんが指示したことみたいですね」
「……なんだって?この吹雪の中あんな上の方で何が起こったのか聞こえたのかい!?悲鳴ならともかく、指示した内容なんて聞こえるはずが」
「ええ。でも優作さんってもう気づいてるでしょう?俺が人外の力を持っていることを。優作さんになら信用できるし晒してもいいかなって常々思っていたので。両親は知っていることですし」
「私が気づいていたのは嗅覚についてだけなんだがね、耳もそこまでいいとは。因みにどこまで範囲が及ぶか聞いても?」
「……半径100kmです。音を拾っても情報の処理が追いつかないのでこれが限界です。ある特定の音若しくは発生源を追跡する場合は300km」
「東京をすっぽりカバーできるじゃないか……」

流石に常識的にありえないことだが、俺がうそを言っていないことを分かったんだろう。真剣な顔をして

「ありがとう、龍斗君。私の事をそこまで信頼してくれていて。君は頭の良い子だ。自分の秘密を話す事がどんなリスクがあるかを十分に承知の上だったんだろう?」
「ええ。でも。信頼…してますから」
「……ああ、しかし事実は小説より奇なりと言うが、こんなことが現実にあるんだね」
「世の中にはファンタジーなことなんてザラにありますよ。ただ、ファンタジーはファンタジーで解決されているから表に出ないだけですよ」
「そういう、ものなのかね。それでは先ほどの事件も?」
「ええ、硝煙のにおいがする人が一人。優作さんも事件が起こる前からわかってるでしょ?」
「まさか同じ事件を起こすとは思っていなかったがね。しかし、まったく嗅覚もファンタジーだね」

苦笑いしながら、俺に話しかける優作さん。ごめんなさい、一応の確認で体臭、電磁波、心音で確認させてもらってました。びっくりはしているけど嫌悪感なく受け入れてくれて。ありがとうございます。

「あら、龍斗君。どうしたのちょっと泣いてる?」
「え?あ、ああ雪が目に入ったんですよ。それでどうでしたか?成長記録は撮れましたか?」
「ええ、ばっちり!でも殺人事件が起きちゃって。ちょっと新ちゃんの様子を見てみるかな」

そういうと、有希子さんは双眼鏡を取出し下にいる新ちゃんを観察し始めた……優作さんも。いや、普通スキーに双眼鏡は持ってこないよね?

「あら、美人マダムと談笑中。全く誰に似たんだか」
「いや、あれは探偵の顔だよ」
「ふーん。で、あなたはこの事件は解けたのかしら?自称世界屈指の推理小説家さん?」
「それは愚問だよ。だが、しばらくは様子を見てみよう。若い奴らに任せてね」
「えー!?」
「龍斗君もそれでいいかい?」
「ええ。因みにあの美人マダムは俺の関西の方にいる幼馴染みのお母さんですよ。どうやら、その幼馴染みが自分と同じ探偵を志しているのを聞いてやる気を出したみたいですね」
「すっごーい、龍斗君!よく見えるね。こんな距離あるのに!それになんで言っていることがわかるの!!?」
「え、あ、いや……」
「彼はすごい視力の持ち主で、私が教えた読唇術で新一との会話を読み取ったのだろう」
「へえ、いつの間に」

優作さんの方を見るとお茶目にウィンクを返された。ちょっと気が抜けてたみたいだな。

「それじゃあ、俺はホテルの方に戻りますね。流石に集合がかけられると思いますので」
「ええ、じゃあまたいつか会いましょうね」
「はい」

そう言って、俺は二人と別れホテルへと戻った。案の定、新ちゃんは抜け出し蘭ちゃんはそれについて行ったらしい。
数時間後、無事事件は解決したらしい。解決したらしいのだが……

「なんでそんなムスッとしてるよーな、うれしそーな、微妙な表情してんの?」
「そりゃ、オメー事件の謎を解明できたのはオレ一人の力じゃねーし、一人で解いた中学生の探偵がいて、オレは負けたんだ。そりゃあこんな顔にもなるさ!」
「なるほどねえ、負けたのは悔しいが同じ年のライバルがいて嬉しいってことね」
「バーロ、そんなんじゃねえよ。龍斗も妙に嬉しそーじゃねえか。何かあったか?」
「いや?まあ秘密の共有できる人がいたことが嬉しかっただけさ」
「??」

俺にとって大きな変化があった修学旅行の夜はそうして更けていった。 
 

 
後書き
唐突な力についての告白。正直自分もどうしてこうなった状態です。

まあ原作前に家族以外に知っている人がいてもいいかなと思ってこの人に明かすことにしました。
両親はすでに承知済みです。その時の話をいつか時間があれば番外編で書く……かもしれません。 
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