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名探偵と料理人

作者:げんじー
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第七話 -世界大会、他色々-

 
前書き
このお話は原作8巻のFILE8、
     原作18巻のFILE3~5(回想)
     原作29巻のFILE9,10
     劇場版 世紀末の魔術師
     が元になっています。 

 
中学生になったことで俺の両親は今まで以上に家をあける方針にした。入学式前に話し合って、今までは週末には帰ってきていたのをこれからは場合によっては一月ずっとあけたりするようになるということだ。
家族の時間が少なくなることは寂しいがこれまで以上に料理を世界中で振る舞ってほしいという俺の願いを両親が受け止めてくれた結果だ。ただ、一つ条件を提示された。それは両親がどうしてもというときは、テストなどがない限り学校を休んででも来てほしいという事だった。それが海外でも。
別に学校を休むことに抵抗がなかったので俺はそれを承諾し、俺の両親はまた海外に旅立っていった。仲良く手をつないで国際線のゲートに消えて行った二人を見送り、俺は自宅のある米花町に戻ることにした。

中学に進学した俺達幼馴染み四人は、これまた同じクラスになった。担任は音楽担当の松本小百合先生だ。
俺達はそれぞれやりたい部活に入った。新ちゃんはサッカー部、蘭ちゃんは空手部、園子ちゃんはテニス部。そして俺は勿論料理部だ。料理部は俺以外は女子の三年の先輩が四人しか所属していなかった。
部として新入生を最低一人でも確保しなければ廃部になっていたらしい。
先輩たちは流石に料理部に所属しているだけあって俺の両親の事を知っていた。それどころか、俺の事も知っていて俺が入部すると挨拶に行ったらどこぞのアイドルを見たような反応をされた。そのまま部室に案内されると両親が活躍したことを掲載した記事をスクラップしたファイルがあったり、母さんの出したレシピ本がずらりと本棚に並んでいてびっくりした。ちなみに俺もジュニアの大会などに出ていたのでその大会の記事もスクラップしてあって少し恥ずかしい思いをした。

「それで緋勇君。私が料理部部長の三年の外村美香よ。あなたの入部を私達料理部は歓迎します!」
「よろしくお願いします、外村部長」
「それで、なんだけどね……」
「はい?」
「これから歓迎も兼ねてお料理作ろうと思うんだけど緋勇君、これから時間ある?」
「ええ。大丈夫ですよ」
「そう!よかった!!正直に言うと私たちが緋勇君のお料理を食べてみたいだけなんだけどね」
「いえ、光栄です。それじゃあ腕を振るっちゃいますよ」

中一になって暫く経った。みんな中学校にあがって浮ついた雰囲気があったクラスも落ち着いていきみな部活に勉強にと青春を謳歌し始めていた。結局、料理部に入ったのは俺だけで二年が0人の現状、先輩たちが卒業したら俺一人になってしまう問題ができたけどね。

「どう、新ちゃん?帝丹中学のサッカー部は」
「ああ、強豪校だけあって練習も厳しいしやりがいがあるぜ」
「そんな中、MFで一年生レギュラーなんだろ?おめでとう」
「サンキューな。でも試合までにもっと上手くなんねーと。流石に数か月前まで小学生だったオレと中学三年の先輩じゃフィジカルも体力も段違いだからな。技術じゃ負ける気はねーから、もっともっと磨いてやるぜ」
「すごい意気込みだね。それじゃあしばらくは練習漬けかな?」
「ああ。だからしばらくは一緒につるめそうにねーな。わりいな、龍斗」
「いや、好きなことをすればいいさ。俺も料理部の活動が楽しいしな」
「料理部かぁ。オメーも夢に向かって頑張ってるんだな。って今でもすでに結構いいセンいってんじゃねーのか?オメーの料理一番食ってるのオレ達だからよく知ってるけど父さん達とどんな美味いって評判の店に行っても最後に出てくる共通の感想が「でも、緋勇一家のには敵わない」だぜ?」
「それは嬉しいことを言ってくれるねえ!俺の事はお世辞だとしても父さんと母さんの料理は偽りなく世界一だからな!」
「別にオメーのこともお世辞じゃねーよ。なあ園子?」

昼休みに中学生生活に話の花を咲かせていた俺と新ちゃんだったが、新ちゃんがそう言って近くの席で友達と話していた園子ちゃんにそう話を振った。

「え?なに?」
「だから、龍斗のとこの家族の作る料理は冗談抜きで世界に誇れる味だってことだよ」
「そうね。私もパパとかに連れられて世界中のパーティや三ツ星シェフの高級レストランとか行ってるけどやっぱり緋勇の小父様や小母様が作るものに匹敵するものに巡り合ったことはないわね。パ-ティでこれは!って思ったときは全部緋勇夫婦が担当してたし。ああ、匹敵って言うなら龍斗君の料理位かしらね」
「ええ?緋勇君の料理ってそんなに美味しいの?」

園子ちゃんと話していた、帝丹小学校とは別の小学校から進学してきた女の子がそう言ってきた。

「そうよ!今はまだ世間的には知られて無いかも知れないけど龍斗君もご両親の才能を受け継いでるすっごい料理人なのよ!」
「へえ!というか、緋勇君って珍しい名字だとは思ってたけどあの『料理の神夫婦』の子供だったのね!!」
「そーなのよ!それでね、小父様は実際に会ってみるとすっごくイケメンで、小母様は若々しくてホント女神みたいな人で…」、

うちの両親の話に花を咲かせ始めたので俺は新ちゃんに向きなおした。
「な?……っぷ。顔あけえぞ?」
「……こっぱずかしいわ。幼馴染みのお前らに褒められるのは」

にやにやした顔をしてこっちを見ているに新ちゃんにそう言い、それを誤魔化すために俺は昼休み明けの授業の準備に取り掛かった。

「照れんな照れんな。そーいや次の授業ってなんだっけ?」
「音楽だよ、音楽。我らが担任である松本先生の」
「っげ。オレ、あの先生苦手なんだよなー。入学してからずーっと目を付けられてる気がするし。なーんも問題起こしてねーよな?」
「んー、たまにため口になってるくらいかね?でもすぐ訂正してるし目くじらを立てる程じゃないか。あれじゃないか、音楽の授業で披露した新ちゃんの歌。ひどい音痴なのを知られて音楽の先生だから目を付けられたんでしょ」
「たく、勘弁してくれよなー。いいじゃねーか別に音痴なのくらい」
「楽器は上手なのにね。バイオリンを趣味で弾ける中一なんてそうそういないよ?ま、頑張りたまえ。俺にはいい先生だよ気さくだし」
「ちぇー。はいはい分かりました。オレを犠牲にして龍斗君は楽にしてってくださいー」

そんなくだらない話をしていると昼休みが終わり授業の時間になった。


それからまたしばらく時が経ち、七月になった。学校に行き、勉強し、バカ話をし、部活に精を出す。そんな日常に一つ変化があった。

「今日も作りに来たんですね、麻美先輩。もう毎日、三か月。先輩も頑固ですね」
「あら、こんにちは緋勇君。だって悔しいじゃない。絶対美味しいと言わせるって決めたんですもの」
「新ちゃん、そういう取り繕わない性格は絶対災難の元だよ……」
「あら、取り繕わないってことはホントに彼の口に合ってないってことよね」
「あ、はははは……」

そう、料理部の活動場所である家庭科室に元テニス部所属、帝丹中学生徒会長である内田麻美先輩がレモンパイを作りに出入りするようになったのだ……誰かさんのせいで。
事の始まりは五月の半ば過ぎ、新ちゃんが異例のスピードで一年生レギュラーを獲得してからそこまで時間は経っていないころだ。彼女がレモンパイの差し入れをサッカー部に持って行ったらしく、それを食べた新ちゃんが「不味い」と評価したらしいのだ。それにプライドを刺激されたのか毎日作って持っていくようになったのだ。そして学校で作る場所と言えばこの家庭科室しかなく。部活動でここにいた俺ともそれなりに仲良くなったというわけだ。初めて来たときに部長から俺にアドバイスを聞いたらどうかと言われていたが、自分で美味しいの言葉を言わせてやる!とのことで口出しは無用とのことだった。
そんなこんなで夏休みを挟んで計三か月。俺が新ちゃんの幼馴染であることをどこかで聞いたのか。どんな味の嗜好をしているのかなどを聞かれたりしたので話しているうちに仲良くなり内田先輩から麻美先輩呼びになったりある程度仲良くなった。

「それじゃあ、今日も作るかな。龍斗君は今日はどうするの?」
「今日は新しいレシピでも考えようかと」
「あら、じゃあ私は邪魔しないように端っこ方を借りるわね」

そう言って、麻美先輩は端っこの方に行きレモンパイを作り始めた。いや別に邪魔にはならないんだが。しかしほんとによく続くなあ。夏休みには、二年連続全国制覇を期待されていたテニス部をやめてサッカー部のマネージャーになるくらいだもんな……なんてね、流石にそのころから話す内容が新ちゃんの子供の頃の話だったり趣味だったりに変わって、今のレモンパイを作ってる顔を見れば意固地になってるんじゃないってことくらい分かる。まあ野暮だなこれは。……受験大丈夫なんかね?

「先輩、頑張って下さいね……」

けど最近の一年坊主が先輩にちょっかい欠けてるって噂、何とかしてくださいな。料理部で一緒にいる俺じゃないかって園子ちゃんに言われるし他の男子生徒にやっかみ言われるし。騒がしい中学生活なんて勘弁してください。





「パティシエ世界一を決める大会?」
「ええ。お母さんが17歳の時に優勝して龍麻と出会った記念すべき大会よ」
「それで、その大会がなんだって?確か、四年ごとの開催だから……ああ、今年開催されるのね」
「実は、もう一度私にシークレットメンバーとして出てほしいってオファーが来てね。別に私が出ても良かったんだけど聞いてみたら私の推薦ならその人でもいいって言ってたのよ。ほら、春先に約束したじゃない?どうしてもってなら学校を休んでも来るって」
「うん、まあ今回が初めてだけどね。特に学校の重要行事もないし行けるけど。それで俺に出てみろって?」
「世界一の料理人になるんでしょう?まずは世界一のパティシエになりなさい……それに愛する息子に史上最年少記録を塗り替えられて、しかも称号もお揃いっていい響きじゃない♪」
「わかった、わかったから。落ち着いて母さん!!」

しっかし、本人じゃなくて推薦でもいいって…いや、推薦した相手が無様をさらしたら推薦した方の評判も落ちる。それを見越しての推薦ありなのか……母さん。

「……わかったよ、母さん。俺、世界一の称号とってくる!」
「あらあら、気が早いわね。でも、そんなに気を張らなくていいのよ?」
「いいや、やるよ。俺は母さんの子供だから。それで?大会っていつあるの?」
「3日後よ」
「3日後!!??」

それが、今朝あった出来事だ。今日の学校が終わったら直ぐに空港に向かい大会の舞台であるフランスに飛ぶ予定だ。

「はあ!?『ヨーロッパの鉄の砦、その礎はヘロインによるものか!?』だと。レイが麻薬、んなわけねえだろ!」

ん?なんか新ちゃんが騒いでるな。

「どーした、どーした新ちゃんよ。朝っぱらから大声出して」
「大声も出したくなるぜ!レイのスーパープレイは麻薬という魔法の薬のおかげだって言われちまってるんだからな!!」

話を要約すると、新ちゃんが大ファンのサッカー選手「レイ・カーティス」に麻薬使用の疑惑が出たそうだ。しかも書いた記者が胡散臭い記事を書くことで有名なエド・マッケイだということが更にヒートアップしている原因らしい。

「っくっそう。こんな記事に負けるんじゃねえぜ、レイ!!オレはずっと応援してっからな!!」
「はいはい、落ち着け落ち着け。もうこの話題は置いとこう。でっち上げなら裁判でも起こせばすぐに潔白を証明できるさ」
「あったりまえだ!」
「はあ。……あ、そうだ。全く脈絡もなく話変わるけど俺今日学校終わったら一週間位休むから」
「……は!?一週間?まさか、海外にいるオジサン達に何かあったのか!?」
「ええ!?そうなの龍斗君!?」
「オジ様達大丈夫なの?!」

どうやら、俺と新ちゃんの会話が聞こえていたらしく蘭ちゃんと園子ちゃんが大声を上げて聞いてきた。

「いや、いや。うちの両親はいたって健康だよ。ただ、ちょっとフランスの方にね」
「おいおい、心配させるんじゃねえよ。しかし学校休んで一週間もフランス旅行とは優雅だなあ、おい」
「まあ、ちょっと挑戦しにね」
「挑戦?」

蘭ちゃんにそう聞かれたので、今日の朝に来た母さんの電話の内容について話した。

「マジかよ!?世界一を決める大会?!」
「すっごーい、龍斗君!!龍斗君なら絶対世界一になれるよ、ねえ蘭?」
「そうよそうよ!私、龍斗君が優勝したら世界一の料理人の一番弟子だって自慢しちゃうんだから!」
「バーロー、世界はひれーんだぞ?龍斗よりうめえお菓子を作る人がいる……いや、龍斗のお母さんくらいか?一番最近食べたときは龍斗のも同じくらいうまかったし。んで、その大会には出ないってことだから……ひょっとしたらマジでいけるんじゃねえか?」

幼馴染み四人で盛り上がっているといつの間にやら始業の時間になっており松本先生が教室に入ってきて注意された。勿論、やり玉に挙がったのは新ちゃんでぶーぶー言っていた。
放課後いつの間にやらクラス全員に情報がいきわたっており、先生も含めたみんなから熱い激励をもらい俺はフランスへと旅立った。





三日後、俺は大会の会場にいた。流石に世界一を決める大会だ。パティシエのオリンピックと言い換えてもいい。すごい数の報道陣に参加者だ……っと!

「すみません、大丈夫ですか?」
「あ、ありがとう。ごめんなさい。周りに圧倒されてて、よそ見してて……」

どうやら、周りに気が行き過ぎていて俺に気付かなかったようだ。ぶつかってきた女性が倒れないように支えていた手を放して……ん?日本語?

「あれ?日本人の方ですか?」
「え、ええ。あなたも日本人?それにしても君、中学生くらいよね?ここは大会の関係者専用ゾーンで一般観戦者は立ち入り禁止よ?大会の見学なら向こうのエリアにいかないと」
「えっと、ありがとうございます。でもまあ、一応関係者なんで」
「あら、そうなの?」
「それより、お姉さんもこの大会に参加するんですか?」
「ええ。と言っても、出るのは私が勤めているお店のチーフで私はサポートとして参加するだけだけどね。審査員100人もいるから一人で作るのは大変で、一人の選手に10人までのサポートメンバーがつけられるのは知っているでしょ?でも、いつかは私も選手として参加したいわ。それにしてもずいぶん若く見えるけどいくつ?童顔なだけなのかしら?」
「え、あー13歳です。中学一年」
「あら、正真正銘若いのね!!じゃあ応援なのかしらね?」
「はははは……」
「それじゃあ、私は準備があるからこの辺で。さようなら、かっこいい少年君」

そういうと灰色の目をした綺麗な女性は去って行った……100人?サポートメンバー?母さん、かんっぜんに言い忘れてたな。いや、もしくは母さんの参加した16年前とルールが変わったのか?
まあいい、それならそれでやってやる!!


『お待たせしました!それでは、伝統ある四年に一度のパティシエ達の聖戦を開始したいと思います!』

盛大な開会式が行われ、大会が始まった。参加者は俺を含めた64人。16人ずつに分かれて一人が勝ち抜き、残った四人でトーナメントを行い優勝を決めるというものだ。調理器具は持ち込みで…母さんがそれは済ましておいてくれたので助かった…お題はランダムで、材料は大会が用意したものを中央から選び自分のエリアに持っていき作るというものだ。審査員はあの女性が言っていたように100人。大会委員長が2票であとは1票ずつの101票を投じ、多かった方の勝ちというシンプルなものだ。

開会式で俺がシークレットゲストの母さんの推薦で登場したときは会場がどよめいた。まあそれもすぐに失笑に変わったが。そりゃあそうだ、何せ他の人たちはサポートメンバーを後ろに従えての登場だったのに俺は一人だったわけだしな。他の63人はフルで、しかも不測の事態に備えて補欠の人すら連れてきている中俺一人だったからまあわからんでもない……が、俺の耳がこんな言葉を拾ってしまった―『アオイ・ヒユウはこの大会にあんな子供を一人で出すとは…世界一も何かの間違いだったようですね。あの優勝は躰で票を勝ち取ったのかな?私も味わってみたかったものだな、あの甘そうな体を!』―ほう?俺の事を侮るのはいい。いいが。言うに事欠いて母さんを侮辱したな。それにゲスな感情を向けやがったな!!!

大会の一回戦が始まった。準備された食材から、最高の状態のものを選び自分のキッチンに戻りふと相手の方を見た。食材を取るのも一人でやったため、相手はすでに作り始めていた。俺の相手は一回戦の相手が俺であることを知って、サポートメンバーも含めてお気楽モードだった。普通に考えて、彼らの態度は間違ってはいない。そう、相手が俺でなければ。ただ勝つだけじゃだめだ。だから…生まれて初めてのリミッター全開放で。全力で行くぞ!!!!


俺が力のすべてを出して臨むと決め開放した瞬間、静寂が訪れた。騒ぎ立てていた司会も、観客席にいた応援団も、スイーツを作るべく指示を出していた参加者も。鳥肌が立ち、寒気が止まらくなっていた。その中でかちゃかちゃと作業音が響く。
そこに誰ともなく目を向けると信じられない光景が広がっていた。あの、たった一人で参加していた少年だ。確かに一人だった、はずだ。だが会場にいた全員が目にしたのは数十人に分身した彼の姿だった。おそらくは非常高速で動き回っているためにそう見えるだけなのだろう。だがその信じられない姿を見て、そして着実に出来上がっていくスイーツを見て全員がこう思った。

―とんでもないことが起きる―





「おめでとうございます!緋勇君!!お母さんの最年少記録を抜いての優勝。感想はどうですか?」

俺は今、各国のメディアに囲まれていた。完全に切れて自重を捨てた俺は現在戻っている力を全開放して、前世で培った技術も惜しみなく使い大会を勝ち進み優勝した。ただ、

「緋勇君は、100人のスイーツを作るのに分身していたようですが忍者なんですか?!」

そう、本気で動きすぎて一般人には分身に見えたらしく。三回勝ち上がったあたりから「ジャパニーズニンジャ!!」と言われてしまった。海外であんな動きすればそういわれても仕方ないか。

「それにしても、すべての試合で相手の票を一桁に抑えるなど圧倒的でしたね!」

これもまた、自重を捨てた結果だ。流石にあのグルメ時代を生きた俺の料理人としての技術と経験を惜しみなく使ったのだから。まあやりすぎた感は否めないが。
勿論八百長だ、なんだという輩がいた。俺の得意技は「平凡なものを技術で至高の味にする」ことだ。だから一見普通に見えるスイーツなのにこんな大差がつくのはおかしいと。対戦相手は皆、言葉にする/しないの違いはあれど、不満はあったようだ。なので余分に作っておいた同じお菓子を相手側全員に食べてもらった。それ以降は、何も言わなかった。その一桁の票もよく聞いてみると、意地でも俺に入れたくない人が入れていたようだし。

決勝の相手だけは俺から言うまでもなく食べさせてくれと言ってきて、純粋にほめてくれた。その人は夏美さん(あの女性だ)の上司の人で、夏美さんも俺が参加者であることを黙っていたことにちょっと怒っていたが笑顔で祝福してくれた。

『しかし、いくらなんでもあの票はおかしくありませんかねえ』

んあ?なんか失礼なことを言われたぞ。一応、お祝いの雰囲気の会見だったから英語で投げかけられたその言葉は不思議とよく通った。

『すべての試合で、相手が一桁?君は「あの」緋勇夫婦のお子さんなんだって?』
『……あなたは?』
『おっと、失礼。私はエド・マッケイというしがない記者ですよ』
『ほう、エド・マッケイさん。確かスポーツ専門の記者の方では?拠点は確かアメリカの』
『おや、私の事をご存じで。いえいえ、実はヨーロッパで特ダネの記事をつい先日上げたばかりでね。何か他にないかとこちらにいたら畑違いですが面白そうなネタがあったのでね。それでどうなんです?あの票に納得いっていますか?』
『……エドさんはおr…私の試合を見ましたか?』
『いいえ、決勝で審査員が食べている姿と結果、それと各試合の票数の結果だけをね。何分フランス外にいたものでさっきこの大会の会場に着いたばかりなんですよ。それで君は本当に実力で勝ったのかね?私にはそうだとはとてもとても……』

他の記者も言わなくても同じ疑問があったのか俺とエドのやり取りを固唾を飲んで見守っていた。……カメラだけでなくテレビカメラも結構な数来ているな。フランス、イギリス、スペイン、ドイツ、アメリカそれに日本もあるか……よし。

『エドさんは良くも調べもせずに記事を書かれるようですね。サッカーの試合でも結果はスコアレスドローの物でも試合内容は面白いものが沢山ある。なのにあなたは最終結果だけを見て書こうとしている』
『なにをいきなり?』
『これをどうぞ。最後に作ったスイーツを構成した一つのワッフルの切れ端です。世界一のパティシエのお菓子、食べてみたいと思いませんか?他のメディアの方もどうぞ』

そういって、俺は一口にも満たないワッフルのかけらを入れたバスケットを差し出した。あとでおやつとして食べようと思って持っていたのだ。

『ふん、こんな欠片で何を……!!!』

文句を言っていたエドが食べた瞬間に黙ったのを見て他のメディアの人も興味を示し次々と口に運び同じように黙ってしまった。中には泣いている人もいる。その様子がテレビカメラで撮られている。

『どうですか?あなたは私の記事を人が興味が持つように面白おかしいものにしようとしていたんでしょうが』
『……そんなことは』
『この会見は最初からテレビで撮られていて各国で放送されていますよ?言葉が詰まった時点でそれはもう自白しているようなものです。それではよく思い出してもう一度言ってください。私は実力で勝っていない?』
『……失礼する!!』
『…エドさんに、記事に書かれた方。彼の記事なんてあんなものですよ。事実なんて二の次で人が興味を持つようにでっちあげる、ただのいやしい三文記者だ。同じ土俵に立ってしまえばご覧のとおり無様をさらします!!堂々と、胸を張って闘ってください!』
『え、えっと。これ、君の優勝会見なんだけど……』

何か変な雰囲気になってしまったが実食して実力を実感できたのかその後は最初の頃とは違い本当に祝福ムードで会見は進んだ。母さん、俺勝ったよ!


後日、俺は帰国した。時差のせいか早朝の到着だったにもかかわらず、どこから嗅ぎ付けたのか空港ではメディアに囲まれて大変だった。日本国内だけではなく海外からも来ていて騒ぎになっていた。ある程度インタビューを受けたが、驚いたのは日売テレビのインタビュアーが水無怜奈だったことだ。もうこの時期からアナウンサーやってたのか。すこしぎこちなくなってしまったが無難にやり過ごし帰路についた。ホイホイお菓子を上げてしまって、それがスタジオで大絶賛されてしまうという後日談があるが、まあそれほど問題はない…はず?


「龍斗、おめでとう!本当にやりやがって!!」
「龍斗君、おめでとう!いやー、幼馴染として鼻が高い!!」
「お疲れ様、そしておめでとう!龍斗君」

帰国した日は休日だったのでゆっくりできるかなと思っていたら家に幼馴染み三人組が来た。

「なあなあ、聞いてくれよ龍斗。レイがな。あのエドって記者を本格的に訴えることにしたってよ!しかも自分で記者会見を開いて、『あの幼いジャパニーズボーイが奮い立たせてくれた!自分と、そして周りを嘘の言葉で傷つけたあの悪魔と断固として戦い、潔白を示す!』って。奥さんと一緒に出てたんだ!あの疑惑が出てから憔悴していたレイがあんな堂々としてたのは龍斗の言葉が届いてたからだぜ!ありがとうな!!龍斗!」
「流石に、つい最近に親友があんなに怒っていた相手が目の前に出てきたんだ。まだ子供だから感情的に相手を攻めてしまうのも仕方ないだろ?」
「子供って……他にも一斉にあいつに記事を書かれて不遇な目にあったスポーツ選手が裁判を起こしているそうだぜ。近々被害者の会が結成されるって噂だ」
「なんか、大ごとになっちゃったな」
「当然の報いだぜ!因果応報ってやつだな!!」
「よし、じゃあこの世界一のパティシエが美味しい美味しいスイーツを幼馴染みの君たちに振る舞ってあげよう!」

そういって、楽しそうにしている三人の声を背に俺はキッチンへと向かっていった。








「ホンマに世界一になったんやな……ウチもがんばらな。おめでとう、龍斗クン」 
 

 
後書き
はい、なんかやりすぎた感がありますが主人公は世界一の称号を得ました。唐突な大会参加ですが、この設定を入れたのは原作開始時にパーティで料理の依頼があり作っている→コナンたちが偶然来る→事件遭遇、なんて形で介入しやすいからです。あと、あの子も。
エドさんへの喧嘩の売り方はもっとやりようがあったと思います。ので、思いついたらこっそり修正するかもしれません。あ、これのせいで3K事件は起きません。奥さん自殺しないので。
水無怜奈は4年前は朝生7の火木土が担当だったはずなのでちょろっと出しました。


赤井さんと宮野明美って○○○なんですね。この小説書くためにいろいろ調べていたら出てきてビックリしました。 
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