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【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。

作者:炎の剣製
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0299話『榛名の不安と祈り』

 
前書き
更新します。 

 





今日は私の不安もありまして提督の秘書官はこの榛名が務めさせてもらっています。
それは先日のことでした。
明石さんから工廠へと呼び出されましたので何事でしょうか……?と思いながらも向かうとそこには明石さん以外にもベッドに横になって眠っているのでしょうか?目を瞑っているいる提督の姿がありました。
その光景を見た途端に私はとてつもない悪寒に襲われました。
まるで提督がいなくなってしまうかもしれないという嫌な思いが生まれてしまいました。

『榛名さん。来ましたか……』
『明石さん。提督は、どうされたのですか……? どこか具合が悪いのでしょうか?』

私は明石さんに事情を聞こうとそう尋ねました。
ですが明石さんの表情も少しだけやつれているのを見てこれは本当にただ事ではないというのを察しました。

『あはは……。すみません。私が良かれと思った事が裏目に出てしまったみたいなんです』
『裏目に、ですか……? それはいったい……』

それから明石さんはポツリポツリと語りだしました。
要約すると明石さんが開発した分離薬で一応は成功したかのように見えたのですけど、分離してしまったために提督がこの世界に留まるためのエネルギーと言っていいのでしょうか?
私達で言う艤装が燃料不足で顕現できないまではいかないですけど自身の身体を維持するためのパワーが今の提督には足りていないという事でした。

『今眠っている提督をよく見ていてください』

そう明石さんに促されて提督を観察していると提督の身体が何度か透けたり戻ったりを繰り返しているではないですか。

『こ、これは……ッ!』
『はい。榛名さんだけならまだよかったんですけどシンちゃんという提督の一部分が抜け出てしまったために今提督はとても不安定な状態でいつ消えてもおかしくない状態なんです』
『そ、そんな! それじゃどうすれば!』

私は気が動転してしまい何も考えることが出来なくなっていますけど、明石さんが『ですが!』と大声を上げて、

『必ず私が提督のこの症状を回復させてみせます。そうでないと私は一生後悔にまみれてしまいますし皆さんに申し訳が立ちません。
恨まれるのは別に構いません。それが私の罪なんですから。
だけど、だからこそ私は必ず提督を直してみせます。信じてください!』
『…………』

その明石さんの告白に私も幾分ですけど落ち着くことが出来たのですけど、

『ですが、具体的に案はあるのでしょうか……? 今も提督はいつ消えてもおかしくない状態ですので猶予はありません……』
『はい。それは百も承知です。だから早く解決策を立てないといけません。ですけどこの話は決してみなさんには言わないでください』
『どうしてですか……?』
『考えてもみてください。もしこんな大事がみなさんの耳に行き渡ったらそれこそ鎮守府は揺れてしまいます。
おそらく士気低下で出撃もままならず、もし最悪の事態として提督が消えてしまったら後を追う子は多いでしょう。榛名さんももちろん後を追う覚悟ですよね?』

明石さんにそう言われて私は反論が出来なかった。
その通りです。
提督がいない世界なんている意味がありません。
そこまで私は提督の事を愛しているんですから。

『だから榛名さんは提督の事を見ていてください。多分ですけど……榛名さん、提督の手を握ってみてください』
『え? はい……』

それで少しだけ透けている提督の手を握ってみると途端に提督の透ける現象は収まりました。これは……?

『やっぱり……。提督と榛名さんはまだ完全に繋がりが絶たれたわけではないんですよ。直接触れることによって提督との絆の力と言えばいいのでしょうが、榛名さんの力が提督に流れていくと推測しています。ですのでできるだけ提督の事を離さないでいてください』
『……わかりました』









そんな話を明石さんとしたのでした。
それで私は執務室でいつもと変わらずに仕事をしている提督の手を止めるわけにはいきませんので嫌な予感がしたら肩もみなり手を触れるなりしてなんとか提督の身体が透けるのを阻止しています。

「榛名……? どうしたんだ?」
「え? なんの事でしょうか……?」
「いや、なんか今日はやけに榛名のスキンシップが多いなって思ってな」
「ダメ、ですか……?」
「いや、ダメなんてことは無いよ。むしろ私は嬉しいから」
「そうですか。よかったです」

すみません、提督。
提督にこの症状を自覚させてしまったら悪化するかもしれないという明石さんの助言で真実を話すことが出来ないんです。
現状、この事を知っているのは私に明石さん、それに妖精さん達だけです。
艦娘の皆さんに相談できないのが辛いところですけど頑張らないといけません。

「提督……」
「ん?」
「安心してください。榛名はいつも提督とともにありますから。必ず提督のお役に立ちます!」
「榛名……。ありがとう。でも、榛名も無茶だけはしないでくれ。榛名になにかあったら私はどうかしてしまうかもしれないから」
「はい、わかっています。榛名は大丈夫です!」

元気に振る舞うのですけどやはり辛い気持ちが溢れてきてしまいます。
神様でも誰でもいいです。
明石さんがもし間に合わなかった時は提督の事をお助けください……。
皆さんから、榛名から提督を奪わないでください!
私はそう祈りを捧げました。


 
 

 
後書き
少し重たい話が続いています。
終わりが近づいてきたって事で最後まで見届けてくださると嬉しいです。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 
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