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突き指

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第二章

「だからね」
「それでなの」
「そうしてなの」
「突き指もして」
「それでなのね」
「そう、だからね」
 それでというのだ。
「今辛いわ」
「中指一本でもね」
「生活に色々支障出るわよね」
「食べるにも書くにも」
「右手の制限が凄くて」
「お風呂入る時も」
 その時もというのだ。
「中指が痛いから」
「身体を洗うのもね」
「やっぱり辛いわよね」
「中指を動かせられないから」
「それで」
「そう、早く痛みが引いて欲しいわ」
 心から言う敦子だった。
「今必死に湿布薬とかも塗ってるけれど」
「治るまではね」
「お箸も持てないし」
「お風呂入るのも苦労して」
「部活だって」
「そう、走ることとかは出来ても」
 それでもというのだ。
「ボール持てないし手を使う練習自体が」
「出来なくて」
「色々制限受けてるのよね」
「これが」
「そうなの、折角レギュラーなのに」
 そしてそのレギュラーの座を守りたいがだ。
「暫くはそうした練習が出来ないから」
「そのことも我慢ね」
「我慢することばかりね」
「暫くの間は」
「そうなってるわね」
「ええ、困ってるわ」
 現在進行形でとだ、こう話してだった。
 敦子は自分の右手の中指を見た、その突き指をして今は伸ばした形で固定している指を。そうしていれば痛くはないが動かすとやはり痛い。
 その指が早く治って欲しいと思いつつ生活に苦しさを感じていた、そうしつつ生活を送っているとだった。
 一日一日が過ぎていってだ、遂にだった。
 テーピングが取れてだ、医者に言われた。
「もうお箸も持てるからね」
「ペンもですね」
「そう、普通に持てるよ」
 そのどちらもというのだ。
「本当にね、あと部活はね」
「そちらは」
「あと数日はね」
 その間はというのだ。
「我慢してくれるかな」
「そうですか」
「手を使うのはね」
「投げられたボールを受けることも」
「バスケ部だったよね」
「はい、そうです」
「あのボールは大きくて硬いから」 
 だからという返事だった。
「もう少しはね」
「そうですか」
「そう、待っていてね」
「わかりました」
 こう答えた敦子だった、言葉は素直だったが。表情は苦いもので医師も話した。 
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