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兄妹の巨人への思い

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第二章

「いや、自分でもね」
「腹が立って仕方なくて」
「後で呆れる位怒るわ」
「その時は?」
「もう怒りで我を忘れて」
 そうなってというのだ。
「それどころじゃないわ」
「そうよね」
「巨人が優勝したら」
 もっと言えば広島から獲った選手が活躍してだ。
「もうね」
「御前その時怒り過ぎだろ」
「三日間ずっと不機嫌でな」
「話し掛けても何っ!?だしな」
 凄まじく不機嫌で普段は親切な千佳もその時はまさに動物園に入れられたばかりのオランウータンになっているのだ。
「ものを貸してくれるけれどな」
「そこは普段通りにな」
「すげえ剣幕であんた巨人ファンじゃないわよね、だしな」
「何処まで巨人嫌いなんだよ」
「嫌い過ぎでしょ」
「だって巨人嫌いだから」
 そうなる理由は千佳自身が答えた。
「もうね」
「多分だけれど」
 先程とは別の女の子が千佳に聞いた。
「お兄さんも巨人嫌いよね」
「わかるでしょ」
「ああ、やっぱり」
「だって自分には阪神液が流れてるって言ってるのよ」
「阪神液?」
「血とは別に流れてるそうなのよ」
 寿が言うにはだ。
「身体の中にね」
「そうなの」
「黒黄色の縦縞のね」
「それ本当の話?」
「そうじゃないの?お兄ちゃんの頭の中阪神ばっかりだから」
 この言葉に周りの誰もがじゃああんたは?と思ったが千佳本人には今はあえて言うことはしなかった。
「ひょっとしたらね」
「その液が流れてるの」
「そこまで阪神が好きならね」
「巨人は」
「大嫌いよ、若し阪神が巨人に負けたら」
 その時はというと。
「大荒れだから」
「御前と一緒だな」
 男子のクラスメイトの一人が即座に突っ込みを入れた。
「それだと」
「私と?」
「御前もカープ巨人に負けたら荒れるしな」
「だって腹立つから」 
 否定せず居直りで返す千佳だった。
「それはね」
「荒れるのは当然か?」
「巨人に負けることは」
 それはというのだ。
「考えるだけで頭にくるわ」
「お兄さんと一緒だな」
「あそこまでじゃないわよ」
 自分ではこう思っているのだ。
「お兄ちゃん阪神が巨人に負けたら甲子園で観てもお家でテレビで観てもね」
「怒るんだよな」
「それで大荒れになる」
「千佳ちゃんと一緒ね」
「本当に兄妹ね」
「だから私はあそこまでじゃないから」
 やはり自分ではこう思っているのだ。
「お兄ちゃんは勝利祈願であちこちの神社やお寺でお願いして家でも真言とか何か唱えて十字架にお祈りして神様にお願いしてだから」
「宗教滅茶苦茶だな」
「そうよね」
「私そこまでしないから」
 やはり自己認識は変わらない。 
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