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とある3年4組の卑怯者

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35 散歩

 
前書き
 城ヶ崎家に遊びに言ったリリィ、まる子、たまえ、そしてとし子。そんな中、永沢兄弟も交えて遊ぶことになった・・・!! 

 
 一同は城ヶ崎を出て散歩しに行った。その時、城ヶ崎は飼い犬を連れた。
「ワン、ワン、ワン!!」
 城ヶ崎の犬が永沢に向かって吠えた。
「ひい~。そんな犬連れてくんなよ!」
 永沢は太郎を乗せたベビーカーを犬から離していった。
「べス、だめよ!やめなさい!」
 べスという名の犬は城ヶ崎の命令を聞き、おとなしくなった。
「へえ、べスっていうのね」
 リリィが興味深々にいった。
「ええ、散歩するなら一緒にどうかなと思って」
「いいわね、楽しそう」
 こうして一行は出発した。そして歩きながら談笑する。
「そういえば、城ヶ崎さんもリリィも髪を縦に巻いてるよね。セットも大変だよね」
 たまえが言った。
「そうね、時間かかるわね。そのほうが可愛く見えるから」
 城ヶ崎が答えた。
「私も時間かかるけど、元から巻き毛(カール)だからね、この髪型にすると可愛く見えて気に入っているの」
 リリィが話した。
「へえ、イギリスの人って巻き毛が多いの?」
 まる子が驚いて聞いた。
真っ直ぐ(ストレート)の人もいるけど、そうね、日本人よりは多いかな」
「へえ、髪型でおしゃれなんて羨ましいねえ」
「でもまる子さんのおかっぱ(ボブカット)も可愛く見えるわ」
「ええ!?いやあ・・・」
 リリィに褒められてまる子は照れた。
 
 一行は街を歩いていると、街路樹の世話をしている人に会った。
「あ、佐々木のじいさん、こんにちは!」
 まる子が声をかけるとともに、皆も一斉に挨拶した。
「おや、こんにちは」
 佐々木のじいさんと呼ばれた人は優しく挨拶を返した。
「今日も木は元気そうだね」
「ええ、今年の夏は台風もありましたが、それでも元気に耐えてくれて嬉しいですね」
 佐々木は気を見て嬉しそうに言った。
「ここの街路樹皆世話をしているんですか?」
 リリィが聞いた。
「ええ、そうですよ。この木々たちが無くなってしまってはこの路が寂しくなってしまいますからね、いつでも世話をしているのですよ」
「すばらしい仕事ですね!」
 リリィが感心した。
「リリィ、佐々木のじいさんの木の世話は好きなことで、本当は呉服屋さんなんだよ」
 たまえが冷静にツッコミを入れた。リリィが慌てて謝罪する。
「え・・・?ご、ごめんなさい。勘違いしちゃって・・・」
「いえいえ、いいんですよ。もう店の経営は息子夫婦に任せている状態ですからね。間違われてもおかしくありません。ははははは・・・」
 佐々木は気にもしていなかった。
「は、ところでゴフクってなんですか?」
 リリィが聞いた。皆はリリィが呉服という意味を知らないことに驚いた。しかし、それでも佐々木は寛容に答える。
「ははは、いい質問ですね。呉服とはすなわち和服です」
「和服ですか、綺麗ですよね」
「ええ、あなたは外国からおいでで?」
 佐々木はリリィの顔を見て聞いた。
「はい、私のお父さんがイギリス人で今年から日本に来ました」
「そうですか。なら今度あなたのために和服を一着差し上ましょうか」
「え?嬉しいですけど、着物って結構高いんですよね?」
「いえいえ、あなたはまるちゃんのお友達のようですし、サービスとしてお安くして差し上げますよ」
「あ、ありがとうございます!」
 こうして一行は佐々木と別れを告げた。

 一歩きして一行は公園に着いた。永沢が太郎をベビーカーから降ろす。
「よし、太郎。歩く練習をしようか」
「あー、あー!」
 太郎は永沢に手を掴まれながらほんの2、3歩だが歩いた。
「太郎君歩けるのね」
 城ヶ崎が感心をする。
「ああ、毎日練習してるんだ」
「あんたこう見えても弟思いなのね」 
「『こう見えても』とは何だ!僕にとってはいつもの事だぞ!」
「そうなの。あんた嫌味ばかり言うから太郎君にまで嫌な思いさせているんじゃないかとおもって心配になったのよ」
「何だと!?僕にだって優しさはあるさ!」
「じゃあ、嫌な事を言わなきゃいいじゃないっ!藤木を卑怯呼ばわりしたりとかっ、さくらさん達にケチをつけたりとかっ!」
「う、うるさい!でも本当の事じゃないか!」
 その時永沢が城ヶ崎との口喧嘩で気を取られて、太郎から手を放してしまい、太郎が転倒した。
「うわーん、うわーん!!」
「あ、太郎君が!」
 リリィが哀れに思って言った。その時、城ヶ崎の犬のべスが太郎の元へ寄る。べスが尻尾を振って太郎に舌を出して笑っているような表情を見せた。太郎が泣き止んた。
「あ、べス・・・」
「どうやら太郎君が可哀想だったんだね」
 まる子がべスの行動に感心した。
「ええ、本当。べスは永沢には吠えるのに、太郎君には優しいのね」
 永沢が太郎を抱き上げながら反論する。
「え!?君の犬が僕に対して吠えたてるのがわかってたのか!前はすぐ僕がちょっかいをだしたとか言い掛かりをした癖に!!」
「あ、あの時はただそう思っただけよっ!!」
「嘘だね!僕のせいにして、だから君は生意気なんだ!!」
「何よっ!!」
「もう、二人とも喧嘩やめなよ・・・みっともないよ」
 まる子が止めようとした。
「そうよ、せっかく太郎君のために散歩しているのに、太郎君もそんな姿見たくないはずよ!」
 リリィも止めようと叫ぶ。その時、後ろから男子の声がした。
「やれやれ、永沢君も城ヶ崎さんも相変わらず喧嘩ばかりだな」
 リリィ達が後ろを振り向いた。爽やかそうな男子が立っていた。
「あら、あんたは鹿沼君っ?」
「え、誰?」
 リリィが聞いた。
「3組の鹿沼正倫(かぬままさみち)よ。私2年生の時一緒のクラスだったの」
 城ヶ崎が答える。
「へえ、花輪クンみたいに何か爽やかね」
 リリィが鹿沼という男子に見惚れていた。
「君は確か4組のハーフの人だったね」
「ええ、リリィ・莉恵子・ミルウッドよ」
「君も綺麗だね」
「ありがとう」
 リリィは鹿沼に照れた。
「ホント鹿沼君ったら誰かさんとは違って嫌なとこないんだから・・・」
 城ヶ崎の言葉に永沢が頭に来た。
「何だって!?」
「別に誰とは言ってないじゃないっ!」
「もう君たちはどうしてすぐ喧嘩するんだい?2年の時も君たちの喧嘩止めるのに苦労したもんだよ」
 鹿沼はそう言って溜め息をついた。
「う・・・、そうだったわね。そういえばアンタはあの頃もよく喧嘩を止めようとしてたわよね」
「うん、僕は喧嘩を見るのはあまり好きじゃないからね」
「まあ、君はその優しさで学級委員になったからね」
 永沢が言った。
「うん、今年も学級委員をやっているんだ」
「うわあ、いい人だねえ。私も鹿沼君と一緒のクラスになりたいよ~。ウチの丸尾君より頼りになりそう!」
 まる子が感心した。
「あは、そうかな・・・」
 鹿沼は少し照れた。そして永沢の弟を見た。
「その赤ちゃんは確か永沢君の・・・」
「ああ、弟の太郎さ」
 永沢が答えた。
「へえ、ちょっと遊んでもいいかい?」
「え?別にいいけど、変なことするなよ」
 永沢が不安そうに言った。
「大丈夫だよ。僕も赤ちゃんの妹がいるからね。どう扱うかはわかっているよ」
 鹿沼は太郎を抱いて高い高いをした。そしてゆりかごごっこなどをした。太郎は鹿沼に一切の拒否反応をせず、むしろ喜んでいた。こうして鹿沼は太郎を永沢に返す。
「ありがとう、永沢君。それじゃあ、僕は母さんのお使いがあるんでこれで失礼するよ。それから二人とも喧嘩は程々にね」
 鹿沼はそう言って去った。
「鹿沼君も遊んでくれたから、太郎君のために遊ぼうよ」
 リリィは城ヶ崎と永沢に喧嘩をしないように懇願した。
「分かったよ・・・」
「そうね、太郎君、ごめんね」
 城ヶ崎は太郎に謝った。皆で太郎を公園の滑り台で遊ばせだり、その後公園を出て駄菓子屋で一休みしたり(太郎は永沢からミルクを貰って飲んでいた)、して楽しく過ごした。
 
 こうして日が西に傾いた。
「それじゃあ、太郎も遊んで疲れて寝たし、僕はこれで失礼するよ」
 永沢はそう言って帰ろうとした。
「さようなら!」
 リリィは永沢と太郎に挨拶をした。
「太郎君、また遊びに来てね」
 城ヶ崎は太郎にのみ挨拶をした。永沢は自分は無視されたことにややイラついた。
(太郎に挨拶して、僕は無視か・・・。なんて憎らしい女だ・・・)
 こうして皆も帰ることになった。
「皆ごめんね、せっかく遊びに来てもらったのに外に出ることになって・・・」
 城ヶ崎が謝った。
「ううん、そんなことないよ。十分楽しめたよ。城ヶ崎さん、太郎君と仲良くしてたし」
「土橋さん、ありがとう・・・」
 城ヶ崎はとし子に言われて少し嬉しくなった。こうして皆はそれぞれの家に帰ることになった。リリィはまる子と帰り道を共にしていた。
「リリィは今日いろいろやってたね」
「え、そうかな?」
「だって城ヶ崎さんと永沢の喧嘩を止めようとしたり、太郎君と一緒に遊ぶことを考えたりと活躍してたよ!」
「あ、ありがとう、まる子さん・・・」
 リリィはやや照れた。
「んでさあ、花輪クンとか、今日の鹿沼君とか、爽やかな男子が好きみたいだけど、藤木のことはどうするの?」
「え!?う、う~ん、藤木君もいいところあるけど・・・。花輪クンも鹿沼君もいいわね・・・」
「藤木はああ見えてデリケートだからアイツにも優しくしてやんなよ・・・。藤木はアンタのこと好きなんだから・・・」
 そしてまる子とは道が分かれた。
(藤木君・・・ね) 
 

 
後書き
次回:「拒絶」
 みどりは堀をまる子や藤木に紹介したいとまる子に電話する。だがそれを知った藤木はみどりとの対面を躊躇ってしまい・・・。

 一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!! 
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