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とある3年4組の卑怯者

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34 来客(ながさわきょうだい)

 
前書き
登場人物の台詞の特徴 その2
花輪クン:「君」が片仮名に、英語の部分や外来語をローマ字で表記
みぎわさん:花輪クンへの嫉妬の際、鼻息を示す「フンッ!」が入る
丸尾君:「ズバリ~でしょう」が口癖。また、常に敬語
 

 
「ママ、城ヶ崎さんの家へ遊びに行ってくるわね」
「わかったわ。遅くならないでね」
 リリィは城ヶ崎の家に向かおうとしていた。彼女のピアノ伴奏を聴くためだった。城ヶ崎は最近新しい曲を修得したという事で、自分やまる子、たまえらを誘ったのだった。途中でまる子と遭遇した。
「あ、まる子さん」
「お、リリィ。こんなとこで会うとはねえ。一緒に行こうか」
「そうね」
 こうしてリリィはまる子と同行した。そして城ヶ崎家に到着し、居間に通された。そして少ししてたまえやとし子も入ってきた。
「それじゃあ、最近覚えた曲を弾かせてもらうわね」
 城ヶ崎はそう言って皆にピアノの椅子に座り、弾き始めた。

 城ヶ崎のピアノの伴奏に皆は思わず拍手をせずにはいられなかった。
「やっぱり城ヶ崎さんのピアノは素敵よね!」
 リリィは思わず感激していた。
「ありがとう。なら今度のピアノのコンクールにも招待するわっ!」
「いいの?」
「ええ、もちろんっ!みんなにも聴いてもらいたいし」
 その時、まる子がリリィに言う。
「リリィ、よかったねえ。城ヶ崎さんのピアノの腕は超すごいんだよ!もう女王っと言ったくらいだからね!」
「やだ、さくらさんったら・・・」
 城ヶ崎はまる子の大袈裟な賞賛に恥ずかしくなった。そして皆で「ハハハ!」と笑う。その時、城ヶ崎の母が入ってきた。
「姫子、永沢君が来たわよ」
「はあっ!永沢っ!?なんであいつが・・・」
「弟の太郎君のために来たんですって」
 そう言われて城ヶ崎は玄関へと向かう。リリィ達はまたなにか揉め事を起こすのではないかと心配した。
 
 永沢は弟の太郎をベビーカーに乗せて玄関の前にいた。
「何よ、永沢」
 城ヶ崎が現れた。
「べ、別に君に会いたいから来たんじゃないさ・・・。ただ、太郎が泣き止まないから母さんに君のピアノを聴かせてやれと言われたから来たのさ・・・」
「あ、あー、あー」
 太郎が城ヶ崎を見て笑顔になった。
「太郎君、こんにちは。わかったわ、永沢、入りなさいよ」
 城ヶ崎は太郎には好意的に接したものの素っ気なく永沢を入れた。

 リリィが戻ってきた城ヶ崎を見て心配そうになった。
「城ヶ崎さん、また何か嫌な事されたの?」
「いや、違うわよ。太郎君が私のピアノを聴きたがっていたのよ」
「へ~太郎君、城ヶ崎さんが好きなんだね~」
 まる子が言った。
「じょ、冗談じゃない!変な事言うのはよしてくれ!」
 永沢が顔を赤くして怒った。兄とは対照的に弟の方は城ヶ崎に甘えている様子だった。
「それじゃあ、太郎君にも私の新曲聴かせてあげるわね」
 そう言って城ヶ崎は太郎を膝に乗せ先ほどリリィ達に聴かせた曲を再び弾き始めた。太郎はさらに笑顔を見せた。
「太郎君は城ヶ崎さんと仲がいいのね。なのにどうしてお兄さんの方は中が悪いのかしら?」
 リリィは気になった。
「ふん、リリィはわかっていないな・・・。あいつは生意気なんだよ」
 永沢はそっぽを向いて言った。
「リリィ、永沢のことはほっといていいよ」
 とし子が心配そうに言った。
「え、うん、そうね・・・」
 曲を弾き終えると、城ヶ崎は今度は太郎を鍵盤に触らせた。
「太郎君、上手くなったわね」
「あー、あー」
 城ヶ崎は以前、太郎におもちゃのピアノをあげた事があった。そのため、太郎がそのピアノを使ってくれていることが分かった。
 その時、永沢が立ち上がった。
「城ヶ崎、もういいだろ。太郎に聴かせてやったならそれでいいだろ。ほら、返せよ」
 永沢は乱暴に城ヶ崎から太郎をひったくって帰ろうとした。ところが・・・。
「うわ、うわーん!!」
 太郎が泣いてしまった。
「太郎、泣くなよ!」
「アンタが乱暴につかんだのが悪いんでしょっ!」
「うるさい!太郎は僕の弟だぞ!君に文句言われる筋合いはないね!」
「あ、あー!」
 太郎は泣きながら城ヶ崎の方に手を出す。
(せっかく城ヶ崎さんの家に遊びに来たのに、こんな厄介ごとになって・・・。それに太郎君も可愛そうだし・・・)
 リリィはそれを見て何かを考えた。
「そうだ、あの・・・」
 リリィが口を開いた。城ヶ崎と永沢がリリィの方へ顔を向けた。
「リリィさん、どうしたの?」
「何だよ?」
「あの、折角だから永沢君も一緒に遊んで行ってもいいんじゃないかな?太郎君ももっと城ケ崎さんと遊びたがってるようだし・・・」
 リリィは却下される覚悟で提案した。
「ふん、余計なお世話だね!」
 永沢はきっぱり断った。
「太郎を君たちのおもちゃにされてたまるか!それじゃあ、僕はこれで失礼・・・」
「うわーん、うわーん、うわーん!!」
 太郎が大声で泣いた。
「やっぱり太郎君ももっとみんなと遊びたいのよ!」
 リリィが永沢に説得するように言う。
「う、うるさいな!」
「永沢、アンタ一々文句言うんじゃないよ!アンタそれでも太郎君のお兄ちゃんなの!?」
 まる子も怒る。
「う・・・、それは・・・」
「なら、太郎君にもう少し遊ばせてあげなよ!」
 まる子の加勢でリリィは救われたような気分になった。
「わかったよ・・・」
 永沢が根負けした。こうして永沢兄弟も遊ぶことになった。
 
 城ヶ崎は再び太郎とピアノで遊んでいた。だが、太郎も飽きてしまい、他の事がしたくなったようだった。
「せっかくだから、太郎君も入れて遊びたいわね」
 城ヶ崎が言った。
「永沢、何かないの?」
 まる子が永沢に聞く。
「そうだな・・・。散歩してやった方がいいかな・・・」
「じゃあ、皆で外に行こうか。何か面白いこともあるかもしれないし。ね、太郎君?」
 まる子が太郎に聞く。
「あー、あー!」
 太郎は喜んでいた。どうやら賛成のようだった。こうして一同は散歩する事となった。 
 

 
後書き
次回:「散歩」
 太郎と遊ぶためにも外で散歩することになったリリィ達。そんな散歩を楽しむ彼女たちの前に、ある人物と遭遇する・・・。

 一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!! 
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