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とある3年4組の卑怯者

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24 営火(キャンプファイヤー)

 
前書き
 花輪家の別荘の管理をするメアリーの孫・エミリーと出会った藤木とリリィ。花輪と仲良くするエミリーが気に入らずに激昂したみぎわを止めようと、リリィが、藤木が、そして皆が動いた! 

 
 エミリーが英語でリリィに聞く。
「リリィ、あの人はなんで怒ってるの?」
「それはあの人は花輪クンが好きなの。あなたが仲良く話をしているのが嫌だったのよ」
「そうなんだ・・・」
「でもあなたが悪いんじゃないわ。だから気にすることないわよ」
「ありがとう・・・」
 
 みぎわが部屋から出て行った為に、一応のところ騒ぎは収まった。
「エミリー、すまなかったね」
 花輪が英語でエミリーに謝った。
「大丈夫よ、カズヒコ」

 そしてエミリーは片言な日本語で自分を守ってくれた皆に礼を言った。
「ミナサン、アリガトウ」
 メアリーもみぎわに責められた孫が心配でならなかった。
「メアリー、すまない、僕があんな嫉妬深い子を誘ったのが悪いんだ」
「イエイエ、そんなことはありません。皆さん、元気を出して孫と遊んでください!」
 こうして皆はトランプで遊ぶことにした。丸尾が好きな神経衰弱をやり、次はババ抜き、そして7並べをやった。エミリーは言葉が通じにくかったものの、ゲームを通して皆と仲良くなる事ができた。
「藤木君、パパとママが心配しているだろうから私たちはそろそろ戻らなきゃ」
「うん、そうだね」
 二人は帰ろうとした。その時、花輪が止めた。
「あ、君たち。もしよかったら僕達はcampfireをやるつもりだからまた夜に来てくれたまえ」
「ありがとう、花輪クン!」
「うん・・・」
 こうして藤木とリリィはリリィの別荘へ戻ることになった。

 戻る途中、リリィが藤木に声をかける。
「藤木君、さっきはありがとう」
「え、何がだい?」
「私がエミリーを守ろうとしてた時、藤木君も協力してくれたじゃない。私一人じゃみぎわさんを止められないと思って心細かったの」
「うん、でも僕は君がエミリーを守ろうとしているのを見て自分が守ろうとしないなんて卑怯だと思ったんだ。だから僕もみぎわを止めようとしたんだ」
「そうなんだ。でも藤木君は前にも私をみぎわさんから守ったり、学級文庫に置くための本を一緒に探してくれたり、笹山さんを心配したりと優しいわよ。卑怯には見えないわ」
「あ、ありがとう、リリィ・・・」
 藤木はリリィが「卑怯には見えない」と言ってくれたことが嬉しかった。確かに自分は気が弱いが、客観的に見て優しい所があるかもしれない。リリィの歓迎会を行った時、嫉妬溢れるみぎわを止めようとした。まる子やみどりと共にデパートへ行った時、みどりをいじめる男子を成敗させた。授業妨害で迷惑をかける堀内から嫌がらせを受けた笹山を心配し、堀内に制裁を与えた。スケートが得意な事以外の自分のよさとは優しさなのかもしれない。藤木は改めてそう感じていた。

 そのころみぎわはベッドで泣いていた。
(私の花輪クン・・・)
 まる子とたまえが現れた。
「みぎわさん・・・」
「さくらさんに穂波さん・・・」
「エミリーは花輪クンにお礼を言っているだけだから大丈夫だよ」
 まる子が心配そうに言った。
「そうだよ、花輪クンもみぎわさんにやさしくしてくれることあるよ」
 たまえも心配して言う。
「う・・・、でも花輪クンは・・・」
 その時、花輪が入ってきた。
「Hey、Ladyたち、お邪魔して済まない。みぎわクン、そんな悲しまないでくれたまえ。僕はエミリーもみぎわクンもどんな女性も受け入れるから安心したまえ」
 みぎわは花輪に励まされたのが嬉しかったのか、笑顔に変わった。
「ありがとう、花輪くう~ん。んもう~、愛しているわあ~」
 みぎわは急に甘えるような態度で花輪に抱き着こうとした。
「は、離れてくれ、baby・・・!!」
 花輪はみぎわを振りほどこうとする。慰めに行くんじゃなかったと後悔した。
「みぎわさん、花輪クンがいると、すぐ元気になるねえ・・・」
「よほど花輪クンが好きなんだね・・・」
 まる子とたまえはみぎわの花輪への異常な態度に少し引いた。
 
 藤木とリリィはリリィの両親と共に夕食の準備をしていた。ベランダでバーベキューをする予定だった。
(リリィと一緒にバーベキューなんて、こんないいことあるなんて・・・)
 藤木は心の中で喜んでいた。肉、野菜が焼けていく。
「藤木君、遠慮しないでどんどん食べていいのよ」
 リリィの母が藤木に声をかけた。藤木はリリィと食事できることでうかれていたのだ。藤木はリリィの家族と共にバーベキューを満喫した。藤木は満腹というくらい食べて、飲んだ。

 そして、藤木とリリィはキャンプファイヤーに行くために花輪家へ再び赴いた。花輪家の浜辺ではすでに炎が上がっていた。花輪たちもその場に集まっていた。なお、永沢は炎から背けていた。火事を思い出してしまっているらしい。
 もちろん、エミリーもいた。彼女の両親もいる。まる子と気が合っているようだった。
「まる子さん、エミリーとすごく仲がいいわね」
 リリィがまる子とエミリーが仲良さげにしているのを見て話しかけた。
「いやあ、あたしエミリーって同じおかっぱだし、夏休みの始まりにここに来た時もメアリーがアタシ見るためにエミリーのこと思い出すって言ってたしね・・・、ね、メアリー?」
「エエ、孫とまる子さんの髪型が似ていたもんですから・・・」
「言われてみる確かに似ているわね・・・」
「いやあ、エミリーの方がずっと可愛いよ・・・」
 エミリーがリリィにまる子の言葉の通訳を求めた。以下は英語での会話である。

「リリィ、まる子は何て言ってるの?」
「『自分よりあなたの方が可愛い』って」

 エミリーは照れた。そしてまる子に言った。
「But,You’re cute too,Maruko」
「リリィ、何て言ってたの?」
「『まる子も可愛い』って言っているわ」
「あ、ありがとう・・・」
 まる子もまた照れた。

 その時、その場にいなかったみぎわが現れた。
「み、みぎわさん!?」
 みぎわは沈んだ表情をしていた。そしてエミリーの元へ歩み寄った。
「エミリーさん、さっきはごめんなさい、あなたに怒って」
 みぎわはエミリーに謝罪した。リリィが英語で通訳する。
「Don’t worry.I’m okay」
「え・・・?」
「『大丈夫よ。気にしないで』って言っているわ」
「あ、ありがとう。でも花輪クンは絶対渡さないわよ。それだけは覚えてなさい」
 皆みぎわの嫉妬深さに呆れた。

 そして、花輪がギターを持ってやってきた。
「それじゃあ、一曲弾こうじゃないか、everybody」
 花輪が一曲ギターを弾きながら鼻歌を歌った。皆が陶然としていた。そして、それに便乗してはまじが面白い芸を行って皆を笑わせた。
(よおし、浜崎君もやったなら、僕も何かやろう!)
 藤木は何か出し物をしようと決心した。
「それじゃ、次は僕がやるよ!」
 皆が藤木の積極的な行動に驚いた。
「それでは、僕の唯一の取り柄はスケートです。なのでスケートをするマネをするよ!」
 藤木はスケートのジャンプやスピン、スパイラルの真似をした。
(どうだ、これならいつも卑怯と呼ばれる俺にもさすがに皆一目置くだろう!)
 藤木はそう確信していた。しかし、あくまでも単なる真似であるため、本物のスケートリンクで滑るようなリアルなジャンプやスピンなどは再現しきれず、受けは今一つだった。
「こんなとこでスケートの真似しても伝わんないよね~」
「そうだね、ちょっと場所が悪いよね・・・」
 まる子とたまえはそんな会話をしていた。藤木は皆の前で恥をかいてしまった、と感じた。
(う・・・、そんな、やらなきゃよかった・・・)
 藤木は落ち込んで座った。
「藤木君、花輪クンや浜崎君に無理に便乗して、無駄にカッコつけるなんて本当に何考えているんだい?」
 永沢が嫌味を言った。
「うん、僕はホントバカだよ」
 藤木は自分を責めた。しかし、リリィが藤木がスケートが得意と知り、興味を持った。
「藤木君って氷滑り(スケート)得意なの?」
「え、う、うん。それしか特技はないんだけどね・・・」
「へえ、是非見てみたいわ」
「うん、スケートの時期になったら一緒にスケートしに行こうよ!」
 藤木はリリィに興味を持たれて嬉しかった。 
 

 
後書き
次回:「文通」
 エミリーと仲良くなったリリィは彼女に手紙を出そうとして花輪とメアリーを頼りにする。そして、彼女から返事は来るのか・・・。

 一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!! 
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