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とある3年4組の卑怯者

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23 暴走

 
前書き
 メアリーの孫、エミリーについてはアニメ「ちびまる子ちゃん」には直接の登場はありませんが、2期30話で存在が語られています。 

 
 藤木はエミリーと英語で会話できるリリィが羨ましかった。
「藤木君、君もしかしてリリィが羨ましいんじゃないのかい?」
 永沢が藤木の心の中を見抜いた。
「あ、いや、そんなことないさ!」
 藤木は慌ててごまかした。エミリーとリリィは英語でこのような会話をしていた。

「私はリリィ、よろしくね!」
「あ、あなた、英語話せるのね?」
「ええ、私のお父さん、イギリス人で、以前はイギリスに住んでいたの」
「へえ、私は日本語は挨拶くらいしか言えないわ。おばあちゃんやカズヒコから挨拶くらいは教わったけどね」
「そうなんだ。私や花輪クンが通訳するから安心して!」
「ありがとう」
 
 そのとき、花輪が話に入ってきた。
「リリィクン、君も早速仲良くなっているね、baby。エミリーも英語が話せる相手がいて良かったみたいだね」
「ええ、いい友達になれそうだわ」
 リリィが嬉しそうに言った。

 同じ時、その様子をみぎわが嫉妬深く睨みつけていた。
(くう~、あの子だけじゃなくてリリィさんまで現れて・・・!フンッ!)
 みぎわはエミリーとリリィが花輪と仲良くなっているのがどうしても気に食わなかった。

 昨日、みぎわは花輪家の別荘に行くという話を聞いてなぜか自分だけは誘われないのか、花輪に猛進して近寄った。甘ったるい声で花輪に近寄った。
「花輪くう~ん、あの別荘に行くんですってえ~?私も行ってもいいでしょぉ~?もちろんいいわよねえ~」
「あ、ああ、いいともさ・・・。ただし、出発は明日の9時だから遅れないように僕の家へ集合したまえ、baby・・・」
「あら~ん、ありがとお~う」
 こうしてみぎわは花輪と共にする休日を楽しみにした。しかし、その次の日、今朝に当たるのだが、みぎわが花輪家に着いたら藤木を除く夏休みの始まりのキャンプファイアーの時の面子の他、見知らぬ外国人少女とその両親がその場にいた。その少女は別荘の管理をするメアリーの孫、エミリーだということを知った。しかもその少女は昨日に来日して、花輪家に滞在していたという。
(花輪クンの家で止まるなんて、なんて図々しい子なの?)
 花輪から紹介されたエミリーはみぎわに片言の日本語の挨拶をする。
「コンニチハ、えみりーデス」
 エミリーが握手のために手を差し出す。しかし、みぎわは応じず、黙々とマイクロバスに乗った。
 エミリーは英語で花輪に聞いた。
「カズヒコ、あの人どうしたの?」
「まあ、僕にもわからないなあ」
 花輪は適当に誤魔化した。
 
 エミリーの嫉妬だけならともかく、リリィまで花輪の前に現れることで、花輪が二人と仲良くすることがどうしてもみぎわには気に食わなかった。自分の花輪を奪い取るなんて汚い女だとばかりみぎわは思っていた。

 藤木がイライラしてソファーに座っているみぎわを見て気になった。
「さくら、なんでみぎわはあんなに怒っているんだい?」
「またヤキモチでしょ?」
 まる子が答える。そして永沢が嫌味を込めて言う。
「花輪クンがエミリーと仲良くしているからってくだらないヤキモチ焼きすぎるんだよ。ホント好きだらけで呆れるよ」
 みぎわが怒鳴った。
「うるさいわね!!!」
 一同はビクッとした。
 
 エミリーは花輪に自分の祖母と会うために来日させてくれたことを感謝していた。
 以下は英語での会話となる。

「カズヒコ、日本ってホント素晴らしいわね、来てよかったわ!」
「ああ、アメリカからみるとちっぽけな国だけど、いいところは沢山あるからね」
「それにアナタはハンサムで素敵!」
 エミリーは花輪と両手を繋いだ。花輪は笑顔で反応した。

 エミリーと花輪のやりとりを見て藤木はリリィに話しかけた。
「リリィ、エミリーは花輪クンに何ていっているんだい?」
「そうね、花輪クンはかっこいいって言っているわね」
 リリィは通訳した。が、それもみぎわが聞いており、またエミリーが花輪と手をつないでいるところも見てしまっていた。みぎわはついにこれまで抑えていた怒りの爆弾をとうとう爆発させるに至った。
「ちょっと!!あんた、私の花輪クンに馴れ馴れしく触らないでよ!!」
「み、みぎわクン・・・」
「W・・・What?」
 花輪も、エミリーも、その場にいる全員が驚いた。
(しまった・・・。こんなところで怒ってエミリーに危害を加えたらとんでもないことになるぞ!)
 藤木は慌てていた。
(そういえば、みぎわさんって花輪クンのことが好きだったんだっけ?私の歓迎会(ウェルカムパーティ)やったときも私が花輪クンと仲良くしているのを見て怒っていた・・・)
 リリィはみぎわがなぜこんなに怒るのかを察した。
(やばい、みぎわがキレちまった・・・。どーすりゃいーんだ?)
 はまじも慌てる。
(リリィの歓迎パーティーの時は藤木が怒って止めたけど、今回は誰が止めるんだブー?)
 ブー太郎は誰がみぎわの怒りを鎮められるか悩んだ。
(ああ、もう誰も止められないよ、この嫉妬に溢れるみぎわさんは・・・)
 まる子は誰も止められないだろうと思った。
(でも止めないとエミリーが可哀想・・・)
 たまえはエミリーをみぎわから守らなければ彼女がどんな目に合わされるかわからないと危惧した。
(もっと暴れたらやだな・・・)
 永沢は嫌な予感しかしなかった。
 皆がどうすべきか頭の中で右往左往する中、山田が笑いながら喋り出した。
「アハハハ、エミリーは花輪クンと本当になかよしだねえ。みぎわはきっと花輪クンにきらわれているんだじょ~」
 全員がその場で石のように動けなくなった。そして(ああああ!!)と心の中で叫んだ。
(山田君!余計な事言うなよ!)
 藤木は心の中で思った。
(もっと怒るわ!どうすればいいの?)
 リリィは慌てるしかなかった。
(山田のバカ!なんでそんなこと言うのさ!)
 まる子は心の中で山田に怒った。
(お前、空気読めよ!)
 はまじも心の中で山田を軽蔑する。
 当然、山田の空気を読まない発言は火に油を注ぐ事になった。
「な・・・、なんですってええええええええ!!??もう許さないわよおおおおおお!!!」
「み、みぎわさん、ズバリ、落ち着くといいでしょう!」
 丸尾が止めようとする。
「うるさいわね!貴方は引っ込んで頂戴!!」
 丸尾の制止空しくみぎわは怒鳴った。
「や、山田!お前が余計なこと言うのが悪いんだぞ!今すぐ謝っとけ!」
 はまじが慌てて山田に催促する。
「え~、でも花輪クンはみぎわを気味悪く思っているじゃないか~」
「何ですってえええええええええええ!?」
 みぎわはさらに昂ぶる。山田は流石にみぎわのものすごい鬼の形相で笑えなくなり、恐怖を感じた。
「ご、ごめんよお~」
「謝ったってもう許さないわよ!」
 そしてみぎわは怒りの矛先をエミリーに向ける。
「フンッ!!アンタ、花輪クンは私のものよ!!そんな馴れ馴れしく触らないで頂戴!!フンッ!!」
 しかし、エミリーはみぎわの言っていることが通じない。花輪に通訳を求める。
「カ、カズヒコ、何て言ってるの?」
「え、えーと、それは・・・」
 花輪もみぎわの言葉を通訳する気にはなれなかった。理由はみぎわと将来結婚すると思われてしまうからである。花輪にはは猛烈にアタックしてくるみぎわは苦手なタイプであるため、そんな女性と結婚など考えたくもない。みぎわが婚約者(フィアンセ)なんて誤解をエミリーにされたくなかった。
「花輪クンから離れてって言ってんの!」
 みぎわはエミリーに詰め寄る。エミリーは慌ててみぎわから離れた。そして・・・。
「みぎわさん、やめて!」
 リリィが止めようとして、みぎわの前に立ちふさがった。
「何よ!邪魔しないでよ!」
「エミリーが怖がっているじゃない!可哀想よ!」
「うるさいわよ!」
 そんな時、リリィが必死でエミリーを守っていることに藤木はあることを感じた。
(リリィはエミリーを守ろうとしている・・・。そうか、友達になったからなんだ。だから自分から必死で守ろうとしてる・・・。なのに、僕は誰かが止めてくれればいいのにと人任せだ・・・。誰かが動かないとこの場を収めることはできないんだ・・・!)
 藤木は母親から言われたことを思い出した。
《卑怯と言われるようなことをするんじゃないよ》
(母さんからそう言われたのに僕は早速卑怯なことをしようとしてる・・・。母さんとの約束を守るためにも僕もみぎわを止めないと・・・!)
 藤木もみぎわに歩み寄る。
「みぎわさん、すぐ怒るのは良くないよ。エミリーと仲良くしようよ。せっかく日本に来てくれたんだから・・・」
 ややビクビクしながらも藤木はみぎわを止めようとした。
「藤木君・・・」
 リリィが藤木を見た。
「そ、そうだよ、争い事はやめたまえ、baby」
 花輪も続いた。
「そうだよ、エミリーに嫌な思いさせちゃ可哀想だよ!」
 まる子も続いて言う。
「誰だって花輪クンに憧れる人いるよ!」
 たまえも言う。
「そうだブー!花輪クンはみぎわだけのものなんて間違ってるブー!」
 ブー太郎も言った。
「そーだ、折角のキャンプを台無しにするなよな!」
 はまじも続けて言う。
「みぎわさん、貴方はズバリ、落ち着くと言いでしょう!」
 丸尾もみぎわに注意した。
(みんな・・・)
 藤木は自分とリリィに加勢してくれる皆に感動した。以前リリィの歓迎会でみぎわを止めようとしたときは、自分も我を失って激昂してしまい、皆から注意されたが、今回は落ち着いて諭すように言ったため、自分に賛同してくれているようでホッとした。
「みぎわ、ごめんよ、オイラがへんなこと言って、きずつけてホントにゴメンよ~!!」
 山田も泣きながら謝った。みぎわは皆から批判を受けて自分が恥ずかしくなった。
「わ、分かったわよ!フンッ!!」
 みぎわは鼻息を荒くしてその部屋を出て行った。
「み、みぎわさん、どこ行くの?」
 まる子が聞いたがみぎわは無視した。
「ふん、ほっとくがいいさ・・・」
 永沢が言った。 
 

 
後書き
次回:「営火(キャンプファイヤー)
 エミリーと仲良くなった藤木とリリィはゲームして楽しく過ごす。そして夕食後の花輪家のキャンプファイヤーにも参加する・・・。
 
 一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!! 
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