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【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。

作者:炎の剣製
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0168話『イムヤと一航戦』

 
前書き
更新します。 

 



今日は赤城と加賀さんの二人が執務室で一緒に仕事をしてくれていた。
赤城はコツコツと、加賀さんに関してはほぼ無表情でやっている為にはたから見たらギスギスしているようにも取られていてもおかしくはない。
実際、今日の報告をしに来た瑞鶴が執務室に入った瞬間に、その光景を見たのが少しゲッソリとした表情をしていたのが印象的だった。
それで加賀さんに、『なに、五航戦? 私達がここにいて不思議かしら……?』とわざわざ煽りも入れている辺り相当だろう。
それで加賀さんと瑞鶴は何口か口喧嘩をしていたけどしばらくして瑞鶴が負けて『うにゅいぃぃぃ!!』という奇声を上げながら泣きを見ながら出ていったのはどうしたものかと考えていた。

「ふふ。加賀さんも瑞鶴さんも面白いですね」
「あのやり取りを見て普通に流せる赤城が羨ましいよ……」
「そうですか?」

どうやらあれが空母寮でのいつもの風景らしい。
赤城は私にそう言われても不思議に思っていないらしいからあれが日常風景の一部なんだと納得しておく。
それからしばらくして、また誰かが執務室の扉を叩いてきた。

「誰だい?」
『イムヤよ。入っていいかしら?』
「いいよ」

それでイムヤを中に招く。
入ってきたイムヤは赤城と加賀を目に入れると少し笑みを浮かべて、

「ああ、赤城に加賀。あなた達が今日の手伝いだったのね」
「ええ。そういうイムヤは今日の南西諸島の任務はどうしたのですか?」

イムヤの言葉に加賀さんが普通に返答している。
その光景を見て加賀さんはイムヤに関しては普通に話すんだよなと前から思っていた。

「今日も大体終了したわ。各潜水艦のみんなは順次入渠しているわ」
「そう……。あなたはもう大丈夫なの?」
「私はさー……ほら、他のみんなと比べて入渠時間が短いからね。だから後回しなんだよね」

そう話すイムヤ。
気づけばイムヤの腕にはまだ入渠が終わっていないためにいくつか擦り傷が見えた。

「イムヤ……。順番待ちでもいいけど包帯くらいは巻いておけよ?」
「司令官、ありがとね。大丈夫よ。これでも潜水艦だからって頑丈なんだから!」
「それならいいんだけど……」

私が少し心配しているところで加賀さんが席から立ってイムヤに近寄っていく。
何をするのだろうと思ったけど至極単純な事でハンカチを出してイムヤの顔を拭いてあげていた。

「うぷ……いきなりなに、加賀?」
「我慢なさい。すぐに入渠で落とせるとはいえ顔が少し汚れていますよ。だからおとなしく拭かれなさい」
「はーい……」

それで素直に顔を拭かれるイムヤの姿を見て、

「赤城、加賀さんってイムヤには面倒見がいいんだな?」
「そうですね。まぁ過去の事も関係している事なのですけど、あのミッドウェー海戦で沈んだ私達の仇を取ってくれたことも関係しているんだと思いますよ」
「あー……」

それで思い出す。
なにもイムヤは伊達や酔狂で『海のスナイパー』とは自称してはいない。
ミッドウェーで飛龍の攻撃で大破していたヨークタウンを追撃して、数時間に及ぶ追跡でついには護衛の駆逐艦とともにヨークタウンを撃沈したのだ。
そしてなんとか追撃から命からがら逃れて帰還したという過去を持つ。
そんな関係だからこそ、加賀とイムヤは仲がいい方なのだろう。
それを言ってしまえばイムヤは一航戦、二航戦とも仲はいい方だと思うんだよな。
たまによく話している光景を見るし。
そんな事を思っていると加賀さんがイムヤの顔を拭き終わったのか、次には私の方を見てきて、

「……提督。なんですか? 私を見て少しにやけていて……」
「いや、微笑ましい光景だなと思ってな」
「別に、当然の事ですよ」

加賀さんはそれで終わらそうとしているんだけど代わりにイムヤが加賀に抱きついて、

「そうだよ。私と加賀は仲が良いんだから! ふっふーん!」
「こら、やめなさい……」
「本気で振り払うならやめるけど……?」
「……仕方がない子ね」

加賀さんもそんなイムヤを振り払おうとはせずにされるがままでいた。
なんとも珍しい光景だなとまたしても私は少し笑みを浮かべる。

《提督、楽しんでいませんか……?》
「わかるか、榛名。うん、今日は加賀さんの意外な光景を見れて少し楽しいと思う」
「加賀さんは懐いてくれる子には優しいですからね。瑞鶴さんにも同じ態度を取っていればもっといいと思うんですよ?」
「赤城さん、それはダメよ。あの子は厳しくしないとすぐに調子づいてしまうんだから……厳しくしないといけないわ」
「と、加賀さんは瑞鶴さんには素直になれないんですよ」
「なるほど……赤城、解説ありがとう」
「いえいえ」

どこか楽しそうな赤城。
普段あまり人をからかう事はしない赤城だけど加賀に関しては別物らしい。

「加賀。目が吊り上がってるよ? もしかして怒った……?」
「そんな事はないわよイムヤ。ただ、赤城さんの茶目っ気に少し呆れているだけです」
「うふふ。ごめんなさい加賀さん」

手を合わせて謝りながらもどこかやはり楽しそうな赤城はいい性格をしている。
そんなこんなでイムヤはそれ以降も執務室に居座っていてそのまま時間は昼過ぎになっていて、

「それじゃ切りよく終わらせてお昼でも食べに行こうか」
「わかりました」
「はい。イムヤも行きましょう?」
「わかったわ」

それで四人で食堂へと行く途中でイムヤが「そういえば……」と言葉を発して、

「司令官。潜水部隊の第二隊(ゴーヤ、イムヤ、はっちゃん、イクの四人)がつい最近練度がカンストしていたけど、指輪は渡さないの……?」
「その件か。まぁ私の方針でもあるんだけど、二人目はなるべく渡さないようにしているんだ」
「そっかー。それじゃ私だけが特別なイムヤって事ね」
「まぁ、誤解を生みそうだけど大体は合っているから何とも言えないな」
「そっかぁ……ふふ、それなら少し嬉しいかも」

それで笑顔を浮かべるイムヤ。
うん、良い表情だな。

「提督? どこかイムヤを見る目が可愛い孫娘を見るようなものを含んでいるようですけど……?」
「それはそうだろう。私はみんなの育ての親だからな」
「それでしたら私と加賀さんも孫娘のように扱ってくれるんですか?」
「うーん……それはどうだろう? 赤城と加賀さんは同年代な感じだからどうしても異性として見てしまうし……」
「むっ、司令官は今は女の子でしょう……?」

異性として見られていないような発言にムッとしたのかどこか膨れっ面のイムヤにそう返されてしまった。

「ごめんごめん。大丈夫だよ、イムヤもちゃんと素敵な女の子として見ているから」
「そ、そう……まぁそれならいいん、だけど……」

それでイムヤは気を紛らわすために赤くなっている顔を逸らしてスマホを弄りだしていた。

「提督もなかなか隅に置けませんね」
「まったくです。純粋に言っているのが余計性質が悪いです」

ありゃ。今度は赤城と加賀さんに呆れられてしまった。
うーん……どうしたものか?

《提督は皆さんの事が好きなんですよね》
「まぁそうだな」

榛名が場の空気を呼んでそう言ってくれたんだけど、それでイムヤが反応して、

「でも、司令官が一番好きなのは榛名だってのは知っているんだからね?」
《あう……》
「ははは。うまく返されてしまったな」
「まったく、急に惚気話を聞かされる私達の身にもなってください」
「そうですね、加賀さん」

それでからかわれるんだけど三人とも嫌味では言っていなかったのでありがたかった。


 
 

 
後書き
第168話でイムヤの出番でした。
いや、しっかりとイムヤを出せてよかった。



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