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【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。

作者:炎の剣製
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0089話『初期艦の七夕の願い』

 
前書き
更新します。 

 




この世界に来て初めて感じた事がありました。
それは……とても悲しい事でした。
司令官さんがいなくなってしまった……。
その事実だけが私の心を打ちのめしました。
司令官さんが艦隊これくしょんを始めて最初に私を迷うことなく選んでくれたことがとても嬉しかったのです。
司令官さんは最初、着任してから私達艦娘を艦種ごとにどういった運用をしていいのか分からないのか最初はまったく知識がなかったために右往左往していました。
当たり前なのです。
司令官さんは軍艦のゲームなんて今まで一度もやった事がないらしかったからどの艦娘が有名なのかも分からなかったのですから。
しいて言うなら大和さんとか有名な名前くらいなら知っていたらしいですけど、結局はその程度の知識しかなくもちろん私達の名前なんて知らなかったのは当たり前でした。
それでも司令官さんは最初の頃は私を旗艦にして使い続けてくれました。
そして仲間が増えていく内に私は後続の人達にどんどんと練度を追い抜かれていきましたけど、だけど司令官さんはそんな私をそれでも見放さなかったのです。
辛い事もあった。
司令官さんがミスをしてしまい大破進軍をして木曾さんやまるゆさんを轟沈させてしまったり、時には最初のイベントでは練度も艦隊の密度も足りずに泣く泣く途中であきらめるしかなかったり、思い出して来れば色々と思い出せます。
だけどそれでも司令官さんはゲームを止めることもせずに続けてくれました。
司令官さんには艦隊これくしょんはもう生活の一部になっていたのか暇さえあれば私達に会いに来てくれました。
会うたびに思いました。
この人はいい人なんだと……。
それは何度か轟沈させてしまったりしましたけど、それでも今度は二度と轟沈させないと息巻いているのを画面の外で言っていたのを覚えています。
その甲斐あってか司令官さんは何度もイベントを経験していく内に強くなっていきました。
もちろん司令官さんは戦えませんから実際には私達が強くなったと言ってしまえばそれまでですけど、そこまで育ててくれた司令官さんには感謝しかないのです。
でもそんなある日に、私達は謎の閃光とともに異世界と呼べばいいのでしょうか……?
そんな世界に私達は実体を持って具現化しました。
それはどんな事より嬉しかった。
これで司令官さんとも自由にお話ができると。
だけどのちに曙さんに教えてもらった事ですが司令官さんが榛名さんとともに私達と同様に謎の閃光で一緒になって消えてしまったという報告を聞いて私は目の前が真っ暗になりました。

『もう、司令官さんに……会えないのですか……?』

私はそれで一時部屋に閉じこもって塞ぎ込んでしまいました。
だけど時間は進んでいき知らない人たちが何人も侵入してきそうな事態になって私達は応戦するしかなかったのです。
このままじゃいけないと思いつつもこれ以外に自衛の方法を知らなかった……。
そんなギスギスした空気の中司令官さんは榛名さんに宿って再び私達の前に現れてくれました。
最初に私達に言葉を発した瞬間にあの人は榛名さんじゃないと直感で思いました。
同時に最初からの付き合いの私にはあの人は司令官さんだとすぐに気づきました。
でも周りの皆さんはそれでも疑心暗鬼が抜け切れずに司令官さんの言葉を聞きませんでした。
そしてとうとう司令官さんは土下座までする騒ぎになってそれでようやく皆さんもその人が司令官さんだと気づいたのだと思います。
それからはうまくとんとん拍子に司令官さんは私達の場所へと帰ってきてくれました。
そしてそれから今日という日まで色々な事を体験しました。

この世界の軍の人との話し合い、交渉……。
この世界に慣れるために試行錯誤し始めた皆さんにそして私。
この世界に来て初めての大規模作戦。
そこから見え隠れしてくるこの世界が抱えている闇の一端。
熊野さん達が言い出したもし助けのコールがあったら助けようという話し合い。

たくさん、たくさん経験しました……。
それでもどの事でも必ず中心にいたのは司令官さんでした。
司令官さんが動けば私達は信頼をもって従っていきます。
それはこの世界に来る前から変わらない不変の気持ち。
司令官さんはひどい命令はしない事は初期から知っている私は知っています。
轟沈した時に何度も涙を流したのを知っています。
そんな心優しい司令官さんだから……。
だから、いつでも頼ってくださいなのです。
私は目の前で七夕の準備をしている司令官さんを見ながらそう思っていました。

「電、そっちのひもを取ってくれ」
「はいなのです」

司令官さんに呼ばれるたびに嬉しい気持ちが溢れてきます。
……ああ、司令官さんは私を必要としてくれているんだなと心が歓喜します。
その気持ちは今は出さないでいるけどいつか素直に伝えたいのです。
そして司令官さんがいくつもの笹の葉の準備が終わったのか、

「さて……それじゃみんな! 短冊の準備はもう済ませてあるか!?」

司令官さんがそう叫びました。
今の司令官さんの声は榛名さんの声でもあるので少し男ぶっている女性のような感じですけど中身は司令官さんは男性なのですから当たり前の事なのです。
そしてその司令官さんの言葉に皆さんは「「「はーい」」」と返事を返していました。

「電、あなたはなにを願うの……?」

暁お姉ちゃんにそう聞かれたので私は笑みを浮かべながら「内緒なのです」と言った。

「えー? 教えてくれてもいいじゃない!」
「暁ー? 無理に聞き出すのはダメよ?」
「そうだよ暁」

そこで雷ちゃんと響ちゃんが同調してくれました。
嬉しいのです。
そこで私はとある人を探しました。
その探している人物は背が高いのですぐに見つかりました。

「大和さん! 少しいいですか!」
「あら……? 電さん、どうしました?」
「はい。ちょっと肩車をしてほしいのです」
「ふふ。いいですよ。短冊の内容を見られたくないんですか?」
「それもあるのですが願掛けも込めたいので一番高い場所に飾りたいのです」
「わかりました」

それで大和さんは笑顔で承諾してくれたので私は肩車をしてもらい一番高い場所へと短冊を飾りました。
そこに書かれている内容は……。

『いつまでも司令官さん達と一緒にいたいのです』

そう、私は書きました。
この願いがいつまでも続きますように……。
その時でした。
空に一条の星が流れたのは。

「綺麗なのです……」

それで私は手を合わせて心の中で再度お祈りをしました。
でも星はもう消えちゃったけど願掛けにはちょうどよかったのです。

「大和さん、ありがとうなのです」
「いえ、このくらいならお安い御用ですよ」

大和さんにお礼を言った後に司令官さんのもとへと向かっていって後ろから腰に抱きつきました。

「おっと……どうした、電?」
「司令官さん、これからもよろしくお願いしますなのです」
「ああ。来年もきっとみんなで色々な行事をしていこうな」
「楽しみなのです」

私の願い事は常に叶い続けているのです。
この尊い日常を壊さないためにも頑張るのです!


 
 

 
後書き
初期艦の電回でした。
初期からずっと私のいいところもダメなところもきっと見てくれているという願望も含ませてみました。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 
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