| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

サイドカーで

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第三章

「出来ればね」
「完走ですか」
「いや、楽しんでくれるかな」
 こう千里に言うのだった。
「レースをね」
「それじゃあ」
「うん、そうしてね」
「わかりました」 
 千里は体面上こう答えたが実はどうしても今回のレース果たして上手に運転出来るのか不安だった。だがその不安を隠してだ。
 レースに出た、姉達はその妹を見て話した。
「頑張って欲しいわね」
「折角出るんだしな」
「箸ってその後は」
「カレーがあるんだしね」
「あいつ食うけれどな」
 男子高校生並だ、祖父もこのことを知っている。
「けれどな」
「それでもよね」
「レースに出てもらったから」
 嫌なのにとはだ、姉達もいなかった。傍に本来出る筈だった今は怪我をしている人がいるからだ。
「だからね」
「カレー位はよね」
「ああ、何杯でも食わせてやるさ」
 そのカレーをというのだ。
「自由軒のカレーをな」
「じゃあ千里ちゃん応援しましょう」
「今から皆でね」
 姉達は千里を応援する為に旗を持って来ていた、見ればその旗は朝日の出を表す旭日旗であった。
 その旗に応援されて千里は走りはじめたが。
 やはり重い、横の車の分だけ。思ったよりスピードが出ないし小回りも利かない。
 このことに困ったがだ、不意にだ。
 その車の部分、今は空席のその場所を見ているとだ。
 不意にそこに誰かを乗せて走りたくもなった、しかし今はいない。
 そのことを思いつつ大阪市を走っていった、そして。
 無事にレースを終えた、幸い千里は怪我をすることもなく完走出来た。そしてゴールして祖父と姉達本来出る筈だった人に迎えられてだ。
 千里は祖父と共に自由軒のカレーを食べに行った、姉達も一緒だった。
 店の中で四人でカレーを食べつつだ、千里は祖父と姉達に言った。
「何かね」
「何か?」
「何かって?」
「サイドカーって確かに重くて小回りが利かないけれど」
 千里が苦手と思ったこのことを話した。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧