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サイドカーで

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第二章

「横に車があって」
「だからサイドカーなんだよ」
「その分重くてしかもバイク独特のバランスのとり方じゃなくて」
「サイドカーにはサイドカーのそれがあるんだ」
「それがどうもね」
「駄目か」
「えらく運転しにくいと思ったわ」
 千里としてはというのだ。
「本当にね」
「だから嫌か」
「ちょっとね、ただね」
「ただ?」
「お祖父ちゃんの頼みだったら」
 自分にバイクを教えてくれた彼のそれだというのだ。
「あたしもね」
「レース出てくれるか」
「正直そんなレースあるなんて思わなかったわ」
「かなりマニアックなレースだ」
 実際にとだ、祖父は孫娘に答えた。
「参加者もあまりいないしな」
「サイドカーに乗ってる人って少ないし」
「まあそんなレースだ、けれどな」
「お祖父ちゃんの頼みならね」
「悪いな」
「レースの後でカレーよ」
 それを食べさせろというのだ、千里の大好物である。
「自由軒のカレー好きなだけね」
「いいさ、レースが終わったらな」
「自由軒ね」
「それなら好きなだけ食わせてやる」 
 祖父は笑って孫娘に答えた。
「カレーを何時でも好きなだけ食える」
「そうした生活が出来たらね」
「人間最高に幸せだからな」
 祖父の独特の考えだがカレーが好きな千里もこう考えている、そしてそのサイドカーのレースにだ。
 千里は出ることになった、ライダースーツを均整の取れた身体の上に着てヘルメットを持っている彼女に応援に来た祖父と姉達と共に本来出る筈だった男が松葉杖をついて言ってきた。
「悪いね」
「いいですよ、後でお祖父ちゃんにカレー食べさせてもらうんで」
「カレーかい」
「はい、自由軒のカレーを」
 大阪名物のそのカレーをというのだ。
「それこそ何杯でも」
「だからだね」
「はい、いいです」
 千里としてはというのだ。
「今から走ってきますね」
「サイドカーはね」
「独特のバランスのとり方が必要ですよね」
「そう、けれどね」
「それでもですね」
「やっぱりバイクだから」
 それでというのだ。
「このことを考えてね」
「運転すればいいですね」
「そうさ、優勝とかは考えなくていいから」
 それは特にというのだ。 
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