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サイドカーで

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第一章

           サイドカーで
 東三国千里はバイクが好きでよく乗っている、通っている高校の校則でバイク通学が出来ないのは残念に思っているがそれでも毎日の様に乗っている。
 その千里にだ、家で姉達が言ってきた。
「ねえ、あんたいつもバイクに乗ってるけど」
「ナナハンにね」
「サイドカーも乗ったことあるわよね」
「そうよね」
「サイドカーね」
 姉達に言われてだ、千里は困った顔になって返した。
「あたしあれはね」
「嫌?」
「嫌いなの?」
「あれ恰好いいけれど」
 それでもとだ、千里は姉達に答えた。その困った顔で。
「運転しにくいのよ」
「やっぱり横に車あるから」
「その分なの?」
「そうなのよ」
 こう話すのだった。
「だからあたしあれに乗るのは」
「嫌なの」
「そうだっていうのね」
「やっぱり乗るなら普通のバイクでね」 
 いつも乗っているそれでというのだ。
「ナナハンよ」
「いつも乗ってるね」
「あれね」
「そう、あれが一番いいわ」
 千里としてはというのだ。
「本当にね」
「運転のしやすさも大事ってことね」
「要するに」
「そう、もう一度乗ってみるかって聞かれたら」
 そのサイドカーにだ。
「多分だけれど」
「断るのね」
「そうするのね」
「そうすると思うわ」
 こう姉達に答えた、だがその千里にだ。
 彼女にバイクを教えた祖父がだ、こんなことを言ってきた。
「今度サイドカーのレースがあるんだが」
「えっ、そんなのあるの」
「ああ、大阪の全部の区を回ったな」
「そうしたレースがあって」
「実は知り合いが出る予定だったんだがな」
 祖父は末の孫に困った顔で話した。
「こけて足を骨折してな」
「それであたしがっていうの」
「駄目か?」
 千里の目を見て問うた。
「それは」
「正直」
 嫌そうな顔になってだ、千里は答えたのだった。
「あたしはね」
「そうだな、サイドカーはな」
「前に一回乗ったけれど」
「苦手だったな」
「普通のバイクと違うじゃない」
 それでというのだ。 
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