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【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。

作者:炎の剣製
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0082話『記念の準備と榛名との関係』

 
前書き
更新します。 

 



……―――私はとある理由でもう今日の工廠の任務は一通り終わっているのだけど工廠へと訪れていた。
工廠の扉を開けて中を確認する。
今は稼動していないのかどこか静かなままだ。

「明石ー? いるかー?」

それで私は明石がいるかを大声を上げて確認をとる。
するとしばらくして工廠の奥の方から「はいはーい! いますよー!」という声が響いてきた。
よかった。明石はいたか……。
まぁ、大体明石が工廠にいるのは当たり前なんだけどな。
酒保にいくとアイテム屋で店番をしていることもあるから瞬間移動をしているのでは……?と少し勘ぐってしまうからな、たまに。
そして明石が作業服のまま顔を出してきた。

「待たせましたか? 提督」
「いや、大丈夫だ」
「そうですか。それで用件はなんでしょうか? 装備の改修ならすぐに取りかかれますよ?」
「あ、いや……今日はちょっと違う用事だ」
「なんでしょうか……?」

それで明石は興味を持ったのかずいっと顔を近づけてきた。
や、その無自覚の無邪気な行為は私の精神を削るから控えてほしいな……。
それで少し工廠の匂いと一緒に漂ってくる明石の特有のいい匂いを我慢しながらもとあることを相談する。

「ちょっとした相談なんだけど、いいかな……?」
「内容によりますね。どんなことか言ってみてください」
「それは―――……」

それでしばらく明石と話し合いをしていてああでもないこうでもないと話は二転三転しながらもようやく落ち着きを見せたのか、

「ふぅ……わかりました。ですが、そうですか。もうすぐあれの日なんですね」
「ああ。だから少し手の凝った事をしたいと思ってな」
「わかりました。あの子の事ですからきっと喜びますよ……?」
「そうか? そうならいいんだけどな……」

それで私はとある子の喜ぶ顔を想像して、そしてすぐに計画を実行するために準備に取り掛かろうと思う。

「それじゃ明石。そちらの準備はお願いな」
「はい。お任せください」

それで私は工廠を後にして執務室に戻ろうと考えていた。
そこに榛名が表に出てくる。

《きっとあの子も喜ぶと思いますよ提督》
「そうだな。そうだといいんだけど……だけどまだ明石以外にはその日の事は誰にも教えていないからなぁ……それにいざやるとして私もやりたいって子が出てこなくもないし……」
《ふふっ。そこは提督の腕の見せ所ですよ。榛名も……やりたいですから》
「榛名……」

それで榛名との記念の日の事を想う。
きっと、榛名も我慢している事があるだろう。
それが特にあるのはやはり触れ合いが出来ない事だ。
榛名にだってしたいことはあるだろう。
だけどそれを押し殺して私に体を譲ってくれている。
だからだろうか。
私は榛名にはひた隠しにしているけどいつも榛名の身体を使ってしまっていて罪悪感を感じている。
いつか、榛名にこの体を返す時が来るのだろうか……?
でもそうなると私はどうなってしまうのか……。
そしてもしそんな事が起きて私という自我が消失してしまったら残された艦娘達はどうなってしまうのか……?
いつもそんな事を暇があったら考えている。
その時だった。
実際に触れられるわけではないんだけど榛名は私の額に指を置いて、

《提督……? 今何か暗い事を考えていましたよね?》
「………」
《だんまりは肯定と判断しますよ》
「すまない……」
《謝る事はありません。おそらく提督は私の今の現状を変えられない事に対して苦しんでいたんですよね》
「ああ……。私は、できるなら榛名にこの体を返したいと何度も思っている。だけど……同時に怖いんだ」
《怖い、ですか……?》
「ああ。もし榛名にこの体を返す事が出来たとしてそうしたら私の意識はどこにいくのだろうな……と。
そんな誰にも理解してもらえない悩みがあるんだ」

私は隠していることを一つ榛名に開示した。
これで榛名との関係は壊れるとは思っていないけど、だけど榛名の心に闇を抱えさせてしまうかもしれない。
もしそうなったら私は申し訳が立たない。
そんな時に榛名は安心するような笑みを浮かべて、

《大丈夫ですよ……提督は消えません。私も、今のままでもいいと思っているんです。
だって、提督の事をいつでも感じることが出来るんですから……慕っている金剛お姉さま達には悪いですけどこれだけは榛名の独り占めの特権なんです》

そう言って榛名は意地悪い笑みを浮かべながら舌を出して場を濁していた。
榛名はそれでいいかもしれないけど……。
だけど私は……ッ!
でもそんな私の葛藤も分かっているようで、

《知っています……。提督が前からその件に関して苦しんでいた事は。だけどいいんです。
さっきも言いましたけど私は提督の為ならこの体は素直に差し出します。
もし私の身体から提督がいなくなってしまって消えてしまったら私はきっと自身を許せなくなりますから》

そして今度はすまなそうな表情を浮かべる榛名。
その表情だけでもう私は押し黙る他なかった。
悩みは尽きないけど、榛名も承知しているなら私だけがうじうじしていたらダメだよな。

「すまない、榛名。いらん心配をさせたな」
《いえ、榛名は大丈夫です》
「だけど約束させてくれ。いつか榛名を自由にさせてやりたいという思いは私の本心だ。だからそのためならどんな苦労も厭わない。だって、私は榛名の事がす、好きだから……」
《て、提督……榛名、嬉しいです》

思わず告白してしまったけどそれで榛名は嬉しいのか涙を零していながらも笑顔を浮かべていた。

「だから何度も言ったと思うけど榛名がやりたいことはなんでも言ってくれ。できるだけ叶えたいと思っているんだから」
《はい……。榛名、提督のそのお気持ちだけでも嬉しいです。いつか、そういつか私の我儘に付き合ってくださいね……?》
「任せろ。榛名は一回溜まっている物を吐き出した方がいいんだ。いつも私のせいで我慢させてしまっているんだから」
《はい!》

それで榛名は笑顔を浮かべながらも私に抱きついてきた。
榛名は透明な姿だけど私限定では触れられるというけど、だけど私からはその抱きつきの感触は感じられないけど、気のせいかな? 榛名の温もりを感じられたような気がした……。


 
 

 
後書き
前半の内容は数日後に話に書きます。
そして後半は榛名との素直なやり取りを書いていました。
この関係はとある日に一気に激変するかと思いますけどまだその時じゃないんですよねぇ。
来月の終わり頃まで引っ張るつもりです。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 
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