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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第四章 RE:BIRTH
  赤銅の力



「おぉ・・・・おおお!!!」


上空に浮かぶ、赤銅の翼をもつ一人の人間。
その「彼女」の姿を見て、レジェスは歓喜していた。


「あれが赤銅の翼人・・・なんと美しく、そして素晴らしいのだろう・・・・!!!」




一方として、蒔風たちは

「あれが・・・赤銅?・・・・」

「女性・・・だったとはな」

「目覚めてしもうたか!!」

「卑弥呼!?」


倒れた蒔風をランサーが肩を貸し立ち上がっていると、卑弥呼が全身から汗を迸らせて寄って来た。
恐らくは復活の際に物凄い衝撃があったのだろう。

見た目以上に、精神面へのダメージが大きいようだ。



「話しには聞いていたが・・・女性とは思わなかったぞ・・・・」

「あの外見に騙されるでない。あれは周囲を破壊することしかできない存在ぞ」

「どうしても?」

「どうしても、だ。もはやあれは人の形をした「なにか」だ。肉体構成こそ血肉だが、我々を超えて人ではない」



いつもならおちゃらけた卑弥呼が険しい表情をしているだけでなく、全身の筋肉が隆起していた。
つまり、それだけ臨戦態勢。

冷や汗が垂れる。



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「はははははは!!では、デモンストレーションです!!!」

タンッ!!

レジェスが、腕のコンソールを叩く。

直後、カブトやシグナムの周囲にあるクリスタルの残骸が再び結合し、二十、三十の模造戦士になって立ち上がってきた。



「こいつら・・・・まだ!?」

「いや待て。様子がおかしい」


立ち上がってきたそいつらに武器を構えるシグナムだが、カブトがそれを制する。
模造戦士はそのすべてが上空の赤銅の翼人を見上げており、一体たりともカブト達の方を見ていない。


ダウッッ!!

「うお!?」

「な・・・・」



そして、それらが一斉に飛び上がり、赤銅の翼に向かって武器を向けて行った。


とんでもない軍勢だ。
物量だけでも相当なもの。


だが、それに対して赤銅は手を下に向けて「パン」と静かに叩いた。


直後


ヴァオ゛ォウ!!!



そこから衝撃波が一気に噴き出して、模造戦士を一つ残らず粉砕し、存在そのものを掻き消した。




「なに!?」

「ばかな・・・・」

驚愕する「EARTH」



「おぉおお!!さすがにこれは簡単でしたかね!!では此乃道、行きなさい!!」

歓喜し、自分の成果を試すレジェス



「あーいよっ!!」

それに従う、此乃道




此乃道が飛び出していき、念動力をマックスにした拳を突き出して突進していった。

何をされても、拳の力場にゆがめられて本人には当たらないという突貫技だ。
いままでこの攻撃を初見で躱したものはいない。あの翼刀を含めてだ。

恰好の的だと、皆が攻撃して逸らされ、直撃を食らう。




しかし、その猛進が止まった。



「グ・・・ぎ・・・!?」


赤銅まであと一メートル。
もうほとんど同じ場所に立っていると言ってもいい位置で、此乃道の体がそのまま止まっていた。

「こ、この僕が・・・・サイコキネシスで・・・負け・・・・!?うブッ!?」


赤銅はただ見ているだけだ。
だが、彼女から発せられる力場に、此乃道の体は完全に停止していた。


「か・・・は・・・・・・ゥ」


そして、そのまま此乃道は死んだ。
目も閉じることなく、歯も食いしばることなく、拳を突き出して突進したその体勢のまま、心臓を停止させられて死んだ。


その死体はメキメキとボールにされ、ピンポン玉にまで圧縮されて地面に落ちた。
思ったほど、音はしなかった。




「おいおいマジかよ。あっさり過ぎるだろ!!」

それを離れて見ていた司令塔の男。
あまりにも簡単にやられた此乃道に、驚愕しかない。

しかし、次の驚愕に彼の思考は止まる。



「え?」


赤銅が、こちらを見ている。
手を向け、デコピンの形にしている。

いくら上空からだと言っても、この位置はわからないはずだ。
そもそも、いきなり見て此乃道に司令塔がいるとわかるわけが・・・・!!!


ピン


そして、指が弾かれる。

その指先から一閃の光が伸び、司令塔の男の腹部を貫通した。
更にその部分から全身が炭化していって、塵芥となって消滅する。



「ウソだろ・・・・」

その光景に一刀が驚愕と焦燥の色を表し、何とかして立ち上がる。
クラウドを抱えあげるが、とてもじゃないが戦える状態ではない。

「だが・・・だからと行かなくてどうする・・・・!!!」






「ははははははは!!!やはりあの程度の念動力ではだめか!!やはり本命は」


バウッ!!

「翼刀ォ!!!」



蒔風達の目の前から、鉄翼刀が飛び出していった。
いくつもの刃を振り飛ばしながら、赤銅に向かうその姿はやはり兵器と呼べるものか。



赤銅に襲い掛かる刃のすべてが半径二メートル以内に入った瞬間、バラバラと崩れて消滅していく。
そして、強力な力場が翼刀に向かっていき、赤い一閃光が三つ翼刀に伸びた。


その力場をヴァルクヴェインに絡めて叩き落とし、翼刀が先行を回避していく。



そして、接触。



ガァン!!という金属の派手にぶつかる音がして、ヴァルクヴェインと衝突したのは世界四剣が一つ、開剣・キーブレード。
しかも、ただのではなく、その始祖たる一本「Χブレード」だ。


赤銅はそれを持つことなく、力場で浮かせて使用する。
赤銅の眉が少し上がり、翼刀と数回打ち合ってから離れる。


「主が、吾が舞い手ぞ?」

「舞えるかはわからないが、お前の相手となる人間だ」

「左様か」

ギャ、バッ、ギィッッ!!




そして両者がその場から移動していく。

剣技を、拳技を
己の肉体と己の刃を衝突させて、流れるように交錯していく。



「はははははは!!やはり、やはり!!単純に力で対抗させるよりも、特性を伸ばした方がよかったようで!!」

「やめ・・・させろ・・・!!!」



興奮して上空の戦いを眺めるレジェス。
その背後に蒔風がよろけながら現れ、「火」の切っ先を向けている。

だがその剣はカタカタと震えており、全身から力が抜けているのが、見て容易にわかった。



「止める・・・?なぜですか。彼らは今、自らの存在意義を世界に刻んでいるのですよ?」

「それで迷惑をこうむるものがあるだろうが・・・・!!」

「目的は達成されましたから、問題はありません」

「このやろう・・・・お前だって死にたいわけじゃないだろう!!お前の最終目的は」



「これが最終目的ですよ。これ以上なんてありません」



「・・・・・・な・・・・・・に?」

「最終兵器の対となる兵器の開発。それが目的です。こうして達成した今、これい以上望むものはありません!!」

「こいつは・・・・・・」




レジェスは笑う。
これ以上ない喜びに、顔を歪ませて。

彼は、否、彼らは
遥か先祖からの遺志を継いで生きてきた。

ある代からは、記憶の継承も(人格を破壊しない程度に)行われた。

ゆえに、この男にはこれしかないのだ。


開発した
その先には何もない。ここが、彼の終着点。





「舜君!!ここは危ないよ!!」

「なのは!?」


赤銅と、翼刀の戦いで周囲が戦渦に巻き込まれていく。
その中で、なのはが蒔風を連れ戻そうとするが蒔風はレジェスを引っ張り出そうと前に進もうとする。



「おいこの野郎!!このままだと死ぬぞ!!」

「舜君だってこのままじゃ死んじゃうって!!」

「おいてめぇ!!このまま死ぬなんてゆるさねぇぞ!!!」


蒔風が抵抗するが、いまの状態では力が出ない。
なのはに引きずられるようにして蒔風がその場を離れていくと、そこら一体も爆発に巻き込まれていく。



「はははははははは!!!アァァアあああアアハハハははははははハハハハハッはっはァぁァッッ!!!」



レジェスが、炎に飲みこまれていく。
その人生の幕を、笑顔で閉じた彼は――――――――――




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爆音

ただそれだけに尽きる。


いまこの封印地の情景は、それのみであった。



世界を破壊する翼人と、それに対応すべくして存在する対翼人兵器。

この程度で済んでいるのは、翼刀が抑え込んでの戦闘をしているからか。




「なんで・・・・あいつはまだ戦ってるんだ・・・・?」


レジェスは死んだ。
機関は壊滅。

ならばなぜ、鉄翼刀は戦うのか。



「楽だからだ。何も考えず、ただ戦えばいいのは」


それに、蒔風が応える。
クラウドが大剣に寄りかかって空を見上げ、一刀が座り込みながら肩を抱え、下を見る。


確かに
何も考えることなく戦い、身体を動かすことは何より楽だろう。

走ってる時にごちゃごちゃ考える陸上選手はいない。
全力で拳を交える時、頼るのは主に直感だ。

死闘を演じているときに、余計なことを考えれば自分が死ぬ。



だから、人は戦う前に覚悟を決める。
ゆえに、人は戦う前に信念を固める。
なので、人は戦う前に誇りを抱く。


その戦いののちに、未練を、後悔を遺さないために。
その三本で、心を支えるのだ。


穢れぬために、誇りを持ち
止まらぬために、信念を貫き
恐怖に負けぬよう、覚悟を決める




だから、この戦いで


「鉄翼刀は・・・・この戦いで終わりにする気だろう・・・」

「そんな!!」



綺堂唯子が、悲痛な声を出す。
しかし、身体は動かない。

無理もない。翼人ですらこの体たらくなのだから。


しかし、その希望を受けて、一人の男が立ち上がる。




「連れ戻すことは出来なくても・・・・・・」


勝ち目がなくても、立たなければならないという


「戦いを、止めにでも行こうか・・・・・」



翼が開く。
希望を乗せて。

銀白の輝きを、放っていく。





しかし







希望は、打ち砕かれる。









「ガァうッ!?」


蒔風が、胸を押さえて倒れる。
上空の煙が晴れ、その中の赤銅が蒔風にΧブレードを向けていた。



「其の方は何ぞ也?」

「う・・・が・・・・」

「不可思議為る心境の」

「開け・・・るな・・・・!!!」

「其の方は一体何ぞ?」

「それを・・・・開けるなぁぁぁアアアアアアアああああああ!!!」



パァン


蒔風が咆哮し、それと同時に何かが開く音がした。




to be continued
 
 

 
後書き

はーい!!
実は女性だった赤銅の翼人!!
そしてレジェスの死、機関の壊滅でした!!



では、語られることのなかった裏設定をば


レジェス
本名:リョウマ・J・スカリエッティ
あのジェイル・スカリエッティ(オリジナル)の子孫
ただし、この研究はその代からの物ではない。
人体改造技術を「古臭い」と言ったのはそのため。

現代でその名前がテロリストとして知られ、本名を語るのを嫌がっている。
だからイニシャルで「R・J・S」で、「レジェス」
あくまでも自分はただの科学者である、という考えらしい。

どうであれ、人生の目標を達成できた彼の人生は、最期には幸せなものだった。




赤銅の翼人
本名と言われるような呼び名はない
性別は女性

卑弥呼曰く「破壊そのもの」であり、救うことは不可能らしい。
かつて彼女を救おうとして奔走した観測者もいたが、最終的に彼女を救うことが出来なかった。

それはその人物の力不足ではなく、作戦が成功したにもかかわらず、彼女は救えなかった。
そんな彼女の救いは、もはや消滅にしかない。

翼色は赤銅(黒みがかった赤)
司る感情は「怒り」

使用する剣は世界四剣「Χブレード」
見た目はキングダムハーツの物と同じ。
取っ手だけは赤い。

司る感情、世界四剣
そのどちらも、特性は「解き放つ」こと





一体、蒔風はどうなるのか。
ここから先が、RE:BIRTH!!

次回は短くなるかもです


次回、蒔風・回帰
ではまた次回
 
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