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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第四章 RE:BIRTH
  砲撃戦艦



「再び十時の方向から来ます!!」

「かなり揺れるぞ!!こらえてくれ!!」



瞬風管制室では、さらなる砲撃をすでに捉えていた。
さっきまでは急な攻撃に何もできなかったが、来るとわかれば対処もできる。



「回避だ!!操縦はお前に任せる!!」

「わかりました!!行きますよ!!!」


操縦桿を握ったのは、剣のサーヴァント・セイバー
彼女の騎乗スキルはB
伝説級の物でなけでば、彼女は何でも乗りこなせる。

それは、戦艦ですら例外ではない。







ゴォオオオオッッッ!!!


瞬風の後方にあるブースターが炎を吹き上げ、さっきまでの砲撃の高さから少し下方に下がり、そこから一気に前へと前進していく。

そのあまりの勢いに艦内には物凄いGがかかったが、いまさらそれを気にする者はいない。




はるか遠方の砲撃戦艦が、その動きを察知して見た目ではわからないほどに小さく揺れ、その方向を修正していた。
そして、その砲台すべてから一斉にエネルギーや砲弾が飛び出していき、彼方の標的へと伸びて行く。



「狙われています!!少し荒くいきますよ!!」

グぅおオオオオオオ!!!



瞬風が下方から一気に上昇し、左右に揺れながら砲撃の嵐を回避して爆進していった。

だが砲撃の隙間と言っても、それは絶対に瞬風よりも大きいものではない。
必ず当たる攻撃はある。

当たっても大丈夫な攻撃。絶対に回避しなければならない砲撃。


その判断を、セイバーは百戦錬磨の経験値で判断していく。





「目的地はどっちですか!!」

「右に三十度ずれてる!!砲台は直線上にはない!!敢えてずらしておかれてるぞ!!」

「面倒なッ!!!」


瞬風が後方のみではなく、全方向に取り付けられた緊急用のブースター(衝突や墜落の危険があるときに使用するストッパー目的のモノ)までフルに使用して、上下左右に動き回ることで追撃を避け続ける。

その動きはすでに戦闘機の物と言ってもいいくらいだ。
正直、セイバーでなければ戦艦がこんな動きをすることは出来ない。



だがここで外壁に無理がたたってきた。

この無茶な機動の上に、避けきれない小さな(とはいってもAA級はある)砲撃も当たっているのだ。
命中とまでは言えないそれだが、確実にダメージはある。

艦内からでも、鉄の軋む嫌な音が、耳にまとわりつき始めた。



「シュン!!このままではこの船がもちません!!」

「もつように回避は!?」

「できません!!」

「じゃあウチが空間魔法で固定したる!!」


これ以上は船が持たない。
それを聞き、はやてが杖と夜天の書を持ち立ち上がった。
リィンフォースとユニゾンし、すでに甲冑や髪の色は変わっている。


直後、瞬風の表面をはやての魔力が包み込み、その外壁の状態を固定した。



「これは・・・・!!」

「こ、これならまだ動けるはずやで!!」

「感謝します、騎士はやて!!」

ゴォウ!!!



その対応にセイバーが感謝しながら、思いっ切り操縦桿を引き上げ、左に振った。

そうすることで砲撃の本流から逃れ、方向を改めて目的地に進む。



「砲撃の方向は!?」

「依然十時の方向から!!変わってない!!」

「これだけ動いてまだ変わらないのかよ!?」



あれだけの動きをして、さらに先に進んでいるというのに相手からの砲撃の方向が変わらない。

それはつまり、相手との距離を如実に物語っていた。



「目的地の確認を!!」

「右にずれてる!!砲撃の反対側だ!!」

「勘弁願いますよまったく!!」


ぐるぐると回転しながら、砲撃の周囲を回って反対側に向かう瞬風。
うまく回避し、先に進む――――が


「ジュウジに来ます!!!」

「十時?今はそっちからじゃ・・・」

「違います!!十字です!!!」

「そっち!?」



蒔風が前方だけでなく、左右後方のモニターも展開させ、それを確認した。
砲撃がまさに上から見て十字、左右前後四方向から一斉に迫り、艦体を貫こうと襲い掛かってきている。


「左右、砲撃発射!!セイバー、沈みこめ!!」

「了解!!」

ドドドドドドンッッ!!!



蒔風の号令と共に瞬風の左右の壁に装備された砲撃が放たれ、まず左右の砲撃を撃退した。
その砲撃と共に瞬風は沈み込み、ちょうど真上から爆発の余波がビリビリと機体を叩く。


「進め進め!!まだ来る!!」

「ォおオオオオオオ!!!!」


そしてその爆炎の中から、前後方から来ていた砲撃が飛び出して来、さらに瞬風を追い回してきた。

セイバーが沈んでいく瞬風の操縦桿を半ば無理やり引き上げて行き、艦首を上げて全力前進する。


「ミサイル発射!!」

ボボボボボボンッッ!!



そして瞬風の背中から真上に向かって数十発のミサイルが飛び出していき、それが蛇のように軌道を変えて、砲撃に向かって突っ込んでいった。

着弾し、凄まじい爆発の衝撃が瞬風を叩き、前進する機体を押し込んでいく。



「よし、加速だ!!!」

「動力最大出力!!」


カチカチと手元や頭上のボタンを操作し、その域を一気に抜け出す瞬風。


しかし、だからと言って砲撃の嵐から逃れきれるものではない。



「右エンジン被弾!!予備に切り替えます!!」

「あかん・・・ウチももうやばいかも・・・・」

「くっそ!!」

「どこに行く気だ!?」



いずれくる限界。
それはもう目の前だ。

蒔風が部屋から飛びだろうとするのを、クラウドが叫び止める。



「お前まさか外に出てあれを凌ぐつもりじゃないだろうな!?」

「それしかないならやるだけだ!!」

「いくらおまえでもこの船を守ることは無理だ!!」

『俺が行く』



叫びあう二人だが、そこに冷静な声が割って入った。



『俺が、この船を護る』

「一刀!?」



モニターに映ったのは、先ほどのカブトと同じように艦首に立つ一刀だった。
セイバーが操縦桿を握った今では、一刀一人しかそこにいない。


そもそも、かかるGからしてあそこに立てる人間はいまい。
それを一刀は様々な力を使ってそこに立っていた。


「セイバー、真っすぐに進んでくれ!!俺がこじ開ける!!」

『しかし!!』

「ここから先に進まなきゃ戦う前に撃沈だ!!!俺を信じろ!!突っ込めセイバー!!」

『クッ・・・任せますよッ!!!』


グ、ォオッッ!!!



一刀の言葉にセイバーが了承し、防御も回避も何もなく、目的地に向かって操縦桿を押し込んでいく。







数万キロ先ではそれを察知し、砲撃艦が移動していた。
ゆっくりゆっくりだが、回転しながら確かに動いていた。


それは徐々に目的地と瞬風の直線状へと向かってスライドしていき、そしてやがてライン上に乗った。










その五分後


『っこの!!・・・・一刀!!砲台が俺たちの目の前に来やがったみたいだぞ!!』

「距離はどれくらいだ!?」

『正確な距離はわかりません!!ですが、目的地までの途中にあるかと!!』

「じゃあ進めば見つかるな!!」


確かにそうだ。
邪魔をするなら、途中に設置した方がいい。


しかし、それは距離があると妨害しきれないからであり、これにそんな理論は通じない。




砲撃艦は直線状に乗って、さらに後退していっていた。
それは目的地を越えて、さらに後方へと。


たとえ目的地に彼らが着こうとも、砲撃は止まない。





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「む・・・暴走体が移動してますね。そろそろ来るでしょうか?」



そのころ、遥か上空を奔っていく砲撃の光を見上げたレジェスがそんなことを言っていた。
周囲には機関の人間が多くいて、彼らの意識は完全に一点に向いていた。


岩山



とはいっても、実際には「山」と呼べるほどの大きさではない。
地面から生えたような岩、高さは八メートルくらいか。


そしてそこに、封印された最悪の翼人がいる。



「設置完了」

「では爆破」

カチッ



ドンッッ!!!




岩山が吹き飛ばされる。
そこに大きな穴が開き、機材で瓦礫がどかされていく。


「なるほど、予想通りですね」


そしてそこに、時空の歪みがあった。


「翼人すら封じ込めるほど強烈な時空の歪み。なるほど、有効な手ですね」


そう言いながらも、また別の機材を用意させてそれをこじ開けようとする。
その別の機材にはフラスコのようなガラスのケースがあり、そこに銀白のエネルギーがたっぷりと詰まっていた。


「このエネルギーならば相当歪みを正せるでしょう。そこに翼刀の一撃を入れれば、確実にゲートは開きます・・・・さあ、大願成就の時は近いですよ」




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砲撃艦
ウェポンメモリ暴走体


今までの実験体となっていた渡航者二十人の身体を使ったものだ。
渡航者の能力は死体に残らない。

しかし、それでも体質というものがあるのだろう。
彼らは世界に干渉しやすい身体なのだ。

そして、彼らは死にながらもその体を利用されていた。



その暴走体のコアとも呼べる場所
艦体のど真ん中だ。



そこに、二十人の「死体」があり





ザっ





一人の男が、侵入してきた。


「何やってんだあのヘタレは」





そして






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エネルギーを照射し始めた機材を眺めるレジェス。
しかしふと何かが気になり、上空を見る。



(なんでしょう・・・・これは・・・・おや?)



上空の砲撃を眺めるレジェス
その光景から、一本の砲撃が消えた。

それは小さな光線ともいうものだったが、確かに消えた。


そしてそれはそれだけに止まらず、一本、二本と次々に消えていく。



「なにが・・・・・!?」



そして、自分たちよりも先に進んでいた砲撃艦を見、驚愕する。



艦体が、崩れて行っている。
まるで結合が解けてしまったかのように、ガラガラと、ザラザラと、その砲台の塊が崩壊していっていた。



「な、なにが?・・・・・」

再び同じ言葉を発するレジェス。
しかし次の瞬間、ハッと思い出したかのように反対側を見上げ、警戒するように目を細めた。


「まずいですかね・・・・」




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「ォオオオオオオオオオおお!!剣尖壁(けんせんへき)!!!」



瞬風の艦首で、一刀が剣を無数に出現させてその砲撃に耐え忍んでいた。
先端をそろえて剣を出し、嘴のようにしてその砲撃を真っ向から切り開いて進ませていた。


砕けた剣は、即座にまた召喚して埋める。


だがいくらなんでも限界である。
翼人と言えど、ただ砲撃を受け続けて大丈夫ということはない。


連続して、休むことなく武器を生成し続ける。
それは彼の体力を異常なほど削り取り、滝のような汗を流させていた。

通常ならばその汗ですでに視界はにじんで見えないだろうが、暴風がそれを取り払っていく。



「ゼェッ、ゼェッ、ゼェッ・・・・・ア?」




しかし、そこで剣に襲い掛かっていた重圧が消える。
周囲が一気に静かになる。


「な、なにが・・・」

『カズト!!砲撃が止みました!!』

「え?」



セイバーからの言葉に、唖然として剣をどかす一刀。
そこにはすでに、一本の光線、レーザーもありはしなかった。



「何がどうなって・・・・」

『とにかく好機だ!!今の内に先に進もう!!!行くぞ!!』




疑問の消えない一同だが、今は悩んでいてもしょうがない。

とりあえず相手の攻撃がやんだ。
罠とも思えなくはないが、行かねばならないことにかわりはない。



「中に入ってくれ、一刀」

『あ、ああ・・・』

「ですが、艦体ももう限界です」

「動力炉の出力ももう40%まで落ちたか・・・・どうする?はやて」


「うーん・・・いっそのこと派手に墜落させたろかな?」

「え?」




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「まずいですね・・・「EARTH」が来ます!!対応の準備をして・・・・」

「レジェス!!真後ろからでっかいのが突っ込んでくるぞ!!」

「!!」



一方封印地。

そこでレジェスが来るであろう「EARTH」への迎撃体勢を促していた。


準備はあるが、あの砲撃艦をクリアするのがここまで速いとは思わなかったのだ。
しかもこのままだと、相手には脱落者がいないという可能性もある。


計算では数人が艦体に向かい、戦力を半減させるはずだったのだが。



「速度は!?」

「速度だ?・・・・・おいおいウソだろ・・・こいつぁ!!!」



・・・・ゴオォ・・・・




と、そこに重々しい起動音が聞こえてきた。
すでに肉眼で見える距離。と言ってもまだ点ではあるが、その点は目に見えて大きくなっていっている。


「あの速度は・・・!!!」






再び驚愕するレジェス。



そこからは見えないが、その艦首にはクラウド・ストライフが立っていた。


「方向はそのままだ」

『了解。では固定して脱出します』


バンッッ!!



クラウドの少し右側が跳ね上がり、そこからセイバーが飛び出して、それをなのはがキャッチして離脱する。


その各所から煙を噴き上げていく瞬風。
その艦首に立つクラウドが全員の脱出を確認し、タンッ、と軽くジャンプした。

すると当然クラウドは置いてけぼりにされ、瞬風が前に向かって流れていく。


そして、その最後尾に差し掛かる直前に



「行くぞ川神、綺堂!!!」

「ああ!!」「任せて!!!」



大剣を大きく振り上げて、二人に声をかけるクラウド。
目の前にその二人が落ちてきて、それに向かって大剣の面を振り下ろす。


そこに足を当て、唯子と百代が飛び出していき反転、ライダーキックよろしく、船の後ろを蹴り飛ばした。


「「ウォリャァあああああ!!!!」」

ドッゴッッォオウ!!!



衝撃が船全体に伝わって行き、あまりの威力にその表面が波打っていく。
そして外壁を弾き飛ばしながら、瞬風が機関の船に向かって突っ込んでいき命中、木端微塵に大破させた。




ゴォオオオ・・・・と爆発と炎上音を響かせる二機の戦艦。
それを眺めるレジェス。

戦艦大破の衝撃で、銀白のエネルギーを入れた容器が砕けて、その光が流れて行っていた。


そして、その流れていく方向には




「よぉ」





燃え盛る残骸の山の上に、禍々しき天剣を持つ男が立つ。

その男を、初めて感情をこめてレジェスが睨みつけた。



「あなた・・・・」

「待たせたな。招待状はないが、来ても構わないだろ?」




ダンッッ!!





その山から、蒔風が飛び出していく。



その目の前に、鉄翼刀が立ちふさがった。







to be continued
 
 

 
後書き

さて、脱落者は出ませんでしたね!!
でも表記してないだけで、戦えないという意味では数人が出てこれません。


回避時、瞬風は戦闘機並みの動きをしていました。
それだけの動きをすれば当然ボロボロになるわけです。


その砲撃艦は完全に破壊されましたね。


原因はちょいと不明です


さて、再び立ちふさがる翼刀。
一体彼はどういう状況なのか!!!



次回、VS機関

ではまた次回


 
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