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ポケットモンスター『強さを求める者』

作者:赤々
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『自己満足の為に旅立つわけじゃない』

 
前書き
さあ、ここから本編が始まりますよー 

 
ポケモンへの理解が足りなかった理由として、俺が、俺達が周りと違ったという点がある。

それは俺のポケモンが『獣人種』だということ。

そこは理解できた、いや、今まで逃げてきたことに、やっと向き合おうと思えた。
そもそも『獣人種』という存在は、先にも言ったようにその全てが6Vであり『鬼才』と呼ばれている。
だからこそ、スクール内で唯一『獣人種』持ちの俺は、何度も負けておきながら、それが自分のせいだとも思わずに自分を過大評価しすぎていたのだ。
1V、2Vは『落ちこぼれ』
3Vは『平凡』
4Vは『秀才』
5Vは『天才』
6Vでやっと『鬼才』。
それぞれ呼び名がある中、獣人種は全て『鬼才』である。
そして俺はその事に慢心していた。
言い訳にしか聞こえないけれども、事実、サーシャやシフォンが勝てそうになった場面はかなりの数ある。
それでも負けてきたのはやはり、俺のトレーナーとしての未熟さ、というかエゴなのだろう。
勝てそうだからと、手を抜いていたのかもしれない。

だから。

今度は間違えない。
そうするにあたって、最初に俺が始めたのはスクールで習った事の復習だった。
ポケモンのタイプの種類と相性、特性や天候が及ぼすバトルの影響、アイテムの効果や使用するタイミング、状態異常。
そんな初歩的なことから育成に関することまで全て調べ、勉強しなおした。
ある時は教科書を全て読み返し、ある時はトレーナー達のバトルを見て、ある時はサーシャ達と技の実験をしながら。
そんな過程で、一つ、学校では習わなかった情報を手に入れた。
手に入れたというより、目の当たりにした。
勉強を始めて1ヵ月程経ったある日のこと、俺はシフォンと一緒にトキワデパートの屋上で行われている小さな大会の観戦に行った。

「タテトプス!『砂塵防御』」

あるトレーナーが使っていた砂嵐の環境下での技だ。
しかし、俺はそんな技を寡聞にして聞いたことがなかった。
新しい情報に興味が湧いた俺は、そのトレーナーから話を聞いた。

「ああ、あれ?あれはね『トレーナーズスキル』って言うのよ」

ポケモンバトルには指示が勝敗に関わることが多い。
そのトレーナー曰く、ポケモンの世界には『トレーナーズスキル』と言うものが存在するらしい。
もう一つ、『裏特性』といったものもあるそうな。
『トレーナーズスキル』は簡単に言えば技と技の組み合わせらしい。
昔、あるトレーナーがこの技とこの技を同時に使えたら強いんじゃね?といったノリでやってみたら実際に出来てしまった偶然の産物だそうだ。
ちなみに、先のタテトプスを引き合いに出すと『砂嵐』+『固くなる』らしい。効果としては特性の『砂隠れ』のようなもの、但し、技が当たらなくなるのではなく、砂嵐中は防御力が、二段階上がるというものらしい。
『裏特性』は技と特性の組み合わせらしい。
もっと言えば、己の特性に合った技を何度も何度も繰り返し使用することでトレーナーが型を見出し、仕上げていき完成するもの。つまり特性+技+技の熟練度といったところか。
例えば、例えばである。
どちらかを使用するのであれば、簡単なのは『裏特性』だろう。
『トレーナーズスキル』が技と技を器用に組み合わせるということはそれだけトレーナーとしての才能、カリスマ性、指示力が必要になってくる。
対して『裏特性』は、一定の条件下で自動発動する特性に技を組み込むのである。何度も練習すればどんなトレーナーでも使えるらしい。
カントーチャンピオン、四天王、ジムリーダーは全員が全員『裏特性』と『トレーナーズスキル』を使えるらしい。
それらの事も踏まえ、俺はまず『裏特性』の習得に取り掛かる。
「うーん、シフォンの特性が『威嚇』でサーシャが『トレース』か…」
特性が『威嚇』だと限定されているシフォンはある程度の道は見えてきたけれど、厄介なのは『トレース』の方だった。
『威嚇』は戦闘に出た際に相手の攻撃力を一段階下げるといったもの、それに関して、シフォンに指示したのは『鉄壁』の反復練習だ。
結果は順調、シフォンもある程度手応えを感じているみたいだ。
そして問題の『トレース』。
「どうしようか、トレースだと戦う相手によってサーシャの特性が変わっちゃうからなぁ…」
「そう、ですね、マスター、習得に時間をかけるのもアレですし、私の『裏特性』は旅をしながら考えませんか?」
サーシャの申し出を承諾した俺はとにかくシフォンの裏特性の習得に専念した。


それから更に二ヶ月、シフォンの裏特性『守備形態』が完成した。
「さてと、みんな準備はいいか?」
「私はいつでも大丈夫ですよ」
「ワシも問題はない」
そして今日、俺達はマサラタウンを旅立った。
まず最初に目指したのはニビシティだ。
別にトキワジムでもいいのだが、あそこは何故かジムリーダーが不在なことが多く、街の住人ですらジムリーダーの姿を見た事あるという人が少ない。
情報がほとんどないこの状況下で下手にジムリーダーと相対すれば惨敗するのは目に見えているため、情報収集や修行も兼ねて、少し距離のあるニビシティを選んだ。
マサラタウンからニビシティまでは歩いて約3日、但し、途中のトキワの森で迷わなければ、である。
今日はトキワの森前のポケモンセンターまで行って、地図と野営用の食料を調達、そして宿泊し、翌日早朝にはトキワの森に入れるようにしたいところだ。
そもそもカントー地方というのは他の地方に比べ強いトレーナーが多いと聞く。
『トキワの森』、『お月見山』、『岩山トンネル』、『双子島』、『チャンピオンロード』この5つの場所は一級危険指定区域に設定されており、人間による舗装がほとんどされていない。
その理由は各場所に存在する『ヌシ』ポケモンの存在である。
凶暴で人間すら食らうヌシの存在は色々なトレーナーに被害を与えていた。
その為、ポケモントレーナー以外が指定区域に入ることは厳禁とされている。
特に『双子島』のヌシは伝説のポケモンとの噂もあり、入口には必ずポケモンリーグの人間がいる。
少なくともジムバッジを7つ以上持っており、かつそのリーグの見張りを倒した場合のみに限り双子島への侵入が許される。

話が逸れたが、危険指定区域の中でもトレーナーパスさえあれば入れるトキワの森、凶暴なヌシはなかなか姿を見せないとの事だが如何せん樹海のような場所だ、地図とコンパスは必要になる。
その為長く見積もっても2日で森から出れるようにはしたいところだ。
だからこそ、準備は怠らないようにしないとな。

「なんだ…この状況…」
1日かけてたどり着いたトキワの森入り口にあるポケモンセンター。
その館内は正に地獄絵図となっていた。
「頼む!オイラのコラッタを助けてくれ」「おい!包帯たりねえぞ!」「馬鹿!先にコイツを手当しろ!重症だ!」「血がぁ、血がとまらねぇよぉ!」。
センター内にはポケモン、人間に関わらず夥しい数の怪我人がいた。
「あの、何かあったんですか?」
俺は近くにいた頭に包帯を巻き、左足をギプスで固定していたトレーナーに話しかけた。
「…トキワの森のポケモン達が…襲い掛かって来たんだ」
本来マサラタウンからニビシティにかけて生息しているポケモン達はヌシポケモンを除いて比較的温厚であり、エサを求めてイタズラすることはあるものの、トレーナーに危害を加えるポケモンはいない。
そのトレーナーが言うには、トキワの森で出会ったポケモン達が全て襲い掛かってきたらしい。
それもこの辺りでは有り得ない程の強さで。
「特にアイツだ、トキワの森に入るなら『スピアー』に気を付けろ」
「スピアーだって!?」
トキワの森には様々な虫ポケモンが存在するが、そこに永住しているのはキャタピーやビードルといった進化をしていないポケモン達のはずだった。
そんな場所にスピアーがいるとなれば駆け出しトレーナーには一溜りもない。
だが、腑に落ちない点もある。
「…いくらスピアーにやられたと言えど、怪我人が多すぎるのう」
そう、多すぎるのだ、怪我人が。
習性上、群れで行動するスピアーのナワバリに人が入り、襲われた、これは理解できる。
だが全員が全員とは考えにくい。
トキワは天然の迷路だ。
地図があるとはいえ、安全区域、危険地帯を含めて入口から出口まで枝分かれしており、道中いくつかの道が合流する地点はあっても全ての道が合流する点はないのだ。
なのにここにいる全員が襲われている。
「トキワの森で何が起きてるのか…調べる必要があるね」
「マスター、お言葉ですが、私達にそんな時間は…」
「分かってる、けど、放っておけば被害者は増える一方だし、俺達も襲われる可能性が高い、だったら襲われる前に事を解決しよう」
もし、今の状態で襲われれば受ける被害は尋常ではない。
となれば、今ここにいる俺を含めた動けるトレーナー達で解決するしかないのだ。
恐らくリーグに救援要請を出してはいるのだろうが待ってる時間はない。
「女医さん、トキワの森の地図をください、それと今ここにいるトレーナーで腕に自信がある人達を集めてください、原因究明に向かいます」
「は、はい!」
女医さんが駆け足で地図を取りに行くのを見送り、俺は一つ溜息をついた。
どうする?
考えろ、この自体はなぜ起きた?
更にヌシポケモンは何をしている?
いくら凶暴性があるとはいえ、あくまでも森のヌシだ、秩序が乱れているなら正す筈。
「…可能性は3つあるわ」
「っ!?」
ふと聞こえた聞き覚えのある声に、俺は戦慄した。
「一つ、そのスピアーの群れにヌシが敗北し、その時点でスピアーのリーダーがヌシになった」
何故、ここなにいる?
「二つ、トレーナーに捨てられたスピアーが人間を憎み復讐しようとしている」
忘れようとしていたトラウマが蘇る。
「三つ、誰かが人為的にスピアーの群れを放ち、トレーナーを襲わせている、それよりも…」
スクール時代最強だった少女。
「まだトレーナー諦めてなかったのね、『落ちこぼれ』君?」
鳥ポケモンの使い手にしてエリートトレーナーの卵、『ルナ』がそこにいた? 
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