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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Eipic32プライソン戦役終結~The Truth~

†††Sideはやて†††

プライソンの真の目的から、隕石落下、大気圏外からの兵器特攻など、最悪な状況展開からさらに下があったことに私は「なんでこんな・・・!」両手を握り拳にした。何が原因かは判らへんけど、各地との交信手段の妨害が解除されたことで、各地から続々と報告が入って来た。

「アルファ、ベータ、デルタ、イプシロンが殺害されて、ガンマが拉致、プライソンも原因不明の突然死・・・。事件を終わらせても被疑者を誰1人として逮捕できひんかったら、それは最早負けたと同義や」

すずかちゃんやシャルちゃんからはアルファ、ヴィータやアリサちゃんからはベータとデルタが謎の襲撃者によって殺害されたって報告が入った。そんで、ついさっきまで私やなのはちゃん達とで護ってたヘリの内部でイプシロンも何者かに殺害された。
ヘリに攻撃を加えようとしたアルファ殺害犯と思われる魔導師2人と、イプシロンを殺害した魔導師1人は、古き日本の男子学生みたく学ランに学生帽といった格好。それプラスで素顔や髪を隠す仮面と目出し帽やったって報告が入ってる。

(風と雷の魔導師は、SSランクの魔力と攻撃力を有してた。なのはちゃんとフェイトちゃんの挟撃を事も無げに回避しきった風を操る魔導師。私やトリシュ、それに他の武装隊員や騎士たちの攻撃を雷撃で塵にした雷を操る魔導師。あれほどの術者が無名のはずがない)

素顔を隠しても魔力パターンを解析すれば、犯罪歴のある違法魔導師に辿り着けるはずや。襲撃犯は最低でも6人。風の魔導師、雷の魔導師、アリシアちゃんとヴァイス君に銃を突き付けた魔導師、アンジェの首にナイフをあてがった女性魔導師、デルタを殺害した銃剣持ち、3人の誰かかもしくは別の転移スキル持ちが1人。転移スキル持ちがおそらくガンマを拉致した。

(すずかちゃん達からの報告で、プライソンに協力してたんは最高評議会連中だけやなくて、犯罪組織なんかも協力してて、管理外世界から死体を盗掘してたってことは判ってる)

“スキュラ”を殺害した目的は、推測やけど口封じやと思う。自分らとの繋がりをあの娘たちから漏れるのを心配した。そやから直接出向いて殺害するなんてリスクまで犯した。そこまでして管理局に知られたない立場の組織もある・・・のかもしれへんな。

(プライソンのアジトへの潜入作戦に参加したロッサからは、ガンマが殺害されたんやなくて拉致されたかもしれへんって報告が入った)

ロッサのスキル・無限の猟犬の性能はピカイチや。あのスキルを用いても後を追えへんってことは、転移スキルでの拉致って考えるのが妥当や。ガンマは他の“スキュラ“以上の高スペックやって話やし、殺害して口封じするんやんなくて利用することにしたとも考えられる。おそらく奪還可能や。

(そんでプライソンの原因不明の急死。不老不死から解放されたいがために、今回の事件を起こしたのに・・・。何が原因でプライソンは亡くなったんやろう・・・?)

ひょっとしたら私らの気付かん内にプライソンも暗殺されたかもしれへん。となると、本事件の被疑者が暗殺・拉致されたことになるわけで。これは管理局の超絶なヘマになる。私も機動六課の課長としての責任を問われると思う。

「こちらヴァスィリーサ。月の裏側よりミッドへと墜落中の衛星兵器・アグレアスを首都より肉眼で確認。現在、内部にて内務調査部のセインテスト調査官がアグレアスの管理権限を奪うため、管制機と交戦中。そのため私が現在展開している氷結結界の1枚を解除します。衛星軌道中にて隕石を破壊している艦隊各艦は、これまで以上の警戒をお願いします」

リアンシェルト総部長が全体通信を入れた。私は近くに居るから、直接その言葉を耳に入れる。ルシル君は今、“エグリゴリ”の1機であるレーゼフェアと交戦中のはずや。レーゼフェアが“アグレアス”の管制を担ってるってことで、ルシル君はアイリと一緒に突入したからな。

「ルシル君・・・」

総部長が結界を一部解除したのは、“アグレアス”をルシル君やアイリごと凍結させへんためや。正直、“エグリゴリ”はルシル君――正確にはセインテスト家の命を狙ってるから、“アグレアス”ごとルシル君を・・・ってちょっと思うた。

「零鏡ハガルイズ・・・!」

「っ・・・!?」

総部長の前方に出現したのは円い1つの装飾鏡。ソレから発せられてる魔力に総毛立った。この感じは間違いない、神器や。総部長は浮いてる鏡に右手を翳して、そのまま鏡ごと右腕を空へと掲げた。吹き荒れる魔力に「ひゃあ!」吹き飛ばされそうになるのを必死に耐える。魔力は鏡の前方に集束していって、30cmほどの魔力スフィアになった。恐ろしく圧縮された魔力や。

「何を・・・!?」

「万が一、彼がアグレアスの乗っ取りに失敗した場合、私がアグレアスを墜とします」

「ル、ルシル君は・・・!? あそこにはまだ、私の大切な家族が・・・っ!」

そうゆうことか。総部長の狙いはおそらくそれ。ルシル君もろとも“アグレアス”を破壊する大義名分が必要なんや。ミッドってゆう惑星1個に、そこに住む何十億人ってゆう人命か、ルシル君とアイリの2人の命。しかもルシル君は総部長の殺害目標や。その時が来れば容赦なくルシル君とアイリを殺す。

『はやて。クロノだ。ルシルはまだアグレアスから戻らないのか?』

元は“聖王のゆりかご”を破壊するために本局から寄越された艦隊の内の1隻、クラウディアの艦長を務めてるクロノ君から個別回線で通信が入った。

「うん。10分ほど前に連絡を入れた時、これからレーゼフェアとの交戦に入るって・・・」

『そうか。僕たち艦隊は順調に隕石を破壊し続けられている。まったく。どれだけ隕石を操っているのかは判らないが、途切れることを知らない』

「そうか。・・・クロノ君、とにかく私たちはルシル君の帰還を待つしかない」

『判った。ルシル達が帰還したら連絡をくれ』

クロノ君との通信を終えた後、「リアンシェルト総部長」に声を掛けると、視線は向けてはくれへんけど「何か?」と応えはしてくれた。

「ルシル君は今も頑張って世界を救おうと、あなたの仲間(レーゼフェア)を救おうとしてます。お願いします。ルシル君を信じて、限界まで攻撃を加えないでください」

「・・・あなたの個人的な願いの為に、ミッドを危険に晒せと?」

「私はルシル君を信じてます。彼は必ずアグレアスを止めます!」

そう断言する。おそらくこれは局員として間違ってると思う。私個人の想いによるお願いや。冷たくあしらわれるかって思うてたけど、「そうですね・・・」ってまさかの同意やった。ポカンとした私やったけど、すぐにあれ?って首を傾げる。今の返し方はおかしいって。それにツッコみを入れてええんやろか。下手に刺激するのも危ういし・・・。

「何か言いたいことでもありますか? 八神六課長」

「・・・おかしなことを仰るので。リアンシェルト総部長は、エグリゴリの仲間であるレーゼフェアが、ルシル君に負けると同義の言葉を発しました」

私の話に頷いたってことは、ルシル君がレーゼフェアに勝つって考えてるってことや。それは“エグリゴリ”の1機としてどうなんやろうって。ゆっくりと私の方へと横顔を見けた総部長が「なるほど。それは失言でした」そう言いながら、私を見てた横目を細めた。

「・・・たとえ仲間であり敵であっても、ルシリオンとレーゼフェアの戦力差くらいは認めています。シュヴァリエルを討った今のルシリオンを斃すことは、属性の相性や神秘の強弱においても、レーゼフェアは劣っています。どうやっても勝てないでしょう。・・・これは少々まずい展開ですか」

総部長が空を見上げた。私も釣られて空を見上げると、「アグレアス・・・!」が大気圏を突破して、その巨大な姿を見せつけてきた。モニターを展開して“アグレアス”の映像を表示。遠目やけど明らかにゆりかごと同サイズの全長。両サイドには十字の棒があって、ゆっくりと時計回りに回転してる。

『はやて! ルシルからの連絡はまだかなのか!』

「クロノ君! まだなんよ! ルシル君からの連絡も、何も・・・!」

『八神部隊長、シャーリーです! アグレアスの落下速度から考えて、破壊限界高度までご、6分!』

「ルシル君、アイリ・・・!」

早く戻って来て。そやないと「はあ。残念です」総部長がルシル君たちもろとも“アグレアス”を破壊してしまう。周囲が騒然となり始める。当然や。自分たちの命どころか住む世界が、残り数分で破壊されるとなるとな・・・。

『残り5分!』

『はやて、まだか!?』

『残り4分!』

時間は無情にも過ぎ去ってく。もう一度「ルシル君!」へ通信を繋げるけど、ノイズしか返って来ぉへん。もう私には祈ることしか出来ひん中で、「衝きて(ピュセーマ)・・・」総部長が術式名を唱え始めた。私は改めて「ルシル君! 応答して、ルシル君!」と通信を繋げるけど、でもノイズしかあらへん。

「もう!」

信じてる、ルシル君の事は。そやけど状況が私を焦らせて、苛立たせる。どんどん大きなってくる“アグレアス”に「間に合わへんのか・・・?」私の心も折れかける。でもそんな時、総部長が「やっとですか」フッと笑って、魔術を解除した。

――魔神の極拳(コード・シグフェズル)――

――宝竜の抱擁(コード・ファフニール)――

“アグレアス”の周囲に、直径100mはあろう巨大なサファイアブルーの円陣が16枚と展開されて、そこからいろんな属性の8頭の龍と8つの巨腕が出て来て、龍は“アグレアス”に絡みついて、巨腕はガシッと艦体を鷲掴んだ。そこからはあっという間やった。“アグレアス”はグシャグシャにへし折られて、ひん曲げられて、握り潰されて、最後には破片1つ残らんほどに燃やし尽くされた。

「こちらヴァスィリーサ。すでにモニターで観ておられるでしょうが、セインテスト調査官の魔法によってアグレアスが破壊されたのを確認。隕石による脅威も本局の艦隊によってじきに収まるでしょう。・・・ミッドは、ミッドチルダは護られました」

総部長が全体通信でそう報告すると、辺り一帯から「おおおおお!」大歓声が上がった。そやけど「ルシル君は!? ルシル君はどこ!?」私たちの前にルシル君が姿を見せへん。

「心配要らないですよ、八神六課長。彼はあそこに・・・」

そう言いながら総部長が指差す方向に目を向けると、「ルシル君!」が居った。12枚の剣翼アンピエルを背に、私に気付いて手を振ってくれた。私はもう待ち切れんくなって「おかえり!」ルシル君の元へと飛んで、そのまま抱き付いた。

「おっと。・・・ああ、ただいま、はやて」

「うん! アイリも、おかえりや!」

『ん~、ただいま~!』

ルシル君とユニゾンしてるアイリにも声を掛ける。アイリも無事そうで何よりや。ルシル君は「心配を掛けた。ごめんな?」って微笑みかけてくれて、私はようやく心の底から安堵してルシル君から離れた。

「ルシル君、左目・・・まさか・・・」

右目はしっかり私を見てるのに、光を映してない左目は若干ずれてる。そやから「ごめん! プライソンから左目の事、聞きだす前に・・・!」頭を下げて謝った。“スキュラ”達みんなも失って・・・。

「いや。すべてレーゼフェアの仕業だった。複製権限は取り戻させたが、左目はちょっと複雑な状況でさ」

言葉を濁したルシル君。何か言いづらい事があったみたいやけど。それはもっと落ち着いてから話しした方がええかも。ルシル君は「はやて。少し時間が欲しい」って、総部長へと振り向いた。

「え? ちょ、まさか2連戦とかする気か!? こんなところで、このタイミングで・・・!?」

「いいや。話をするだけだよ。構わないでしょう? リアンシェルト総部長」

ルシル君がちょう煽るような口調で誘うと、総部長が目を伏せた後に「ええ。構いませんよ。セインテスト調査官」応じた。そんで私たちは一旦地上に降りて、私は六課の部隊長として事後処理へ、ルシル君とアイリは総部長と一緒に人の居らんところへ歩いてった。

†††Sideはやて⇒ルシリオン†††

アイリを伴ってリアンシェルトと人目の無いところへ向かう。俺の前を歩く局の制服姿のリアンシェルトが、「あの路地裏を使わせてもらいましょう」と指差した。上部が倒壊している2棟のビルの間だ。側には局員も騎士も居ない。この区画の事後処理はまだ始まっていないようだ。

『アイリ』

『マイスターの思うがままに。マイスターとリアンシェルトは娘だし、それに以前・・・アイリもお世話になったし。口にキスくらいまでなら許してあげるね~♪ あ、その先は許さないけど』

アイリがそう言ってくれた。が、『あの子は娘だ。キスの先なんて有り得んわ』とツッコみを入れておく。あの子が路地裏に入ったところで俺は変身魔法を発動し、本来の身長181cm程へと変身する。

「それでは神器王。お話というのを聞かせて頂きま――っ!?」

俺に振り返ろうとしたあの子を背後からギュッと抱きしめた。息を飲むあの子は「きゅ、急に抱き付くとか何を考えてますか!?」すごい勢いで怒鳴ってきた。それでも構わずにあの子の腹のところで両手を組んで抱きしめる力を強めると、あの子は「ひゃう!?」と小さく悲鳴を上げた。

「は、はな、離しなさい! 今すぐ! そうでないと殺しますよ!? 殺しちゃいますから!」

俺の腕の中で身じろぎするあの子が喚き散らすが、どう見ても全力じゃない。この子が全力を出したら、軽い身じろぎだけで俺は何十mと吹っ飛ばされてしまう。でもそうならないのは、この子が本気で、全力で俺をどうにかしようと考えていないからだ。

「やってみるといい。さぁ。俺をあの時みたく凍結封印でも、ぶん殴ってでも、魔力放出でも、なんだっていい。俺のような格下ならどの手段でも殺せるぞ」

「っ! 調子に乗っていますね神器王・・・! 八神はやてが、私とあなたが2人きりで居ることは知っている。そして凍結封印でもしてあなたを砕いたら、私が疑われる。などと考えて、私が行動に移せないとでも思いますか?」

「・・・・」

「・・・何か言ってくれませんか? 本当にやりますよ? 嘘ではありません。やりますよ? いきますよ?」

「いいよ。やってくれ、リアンシェルト」

俺は俯いて右頬をあの子の左頬に擦り寄せると、「ひゃい!?」また可愛い悲鳴を上げてビクッと肩を跳ねさせた。さらに「さあ。早く。いつでもやってくれ」と急かしてみる。とここでようやくあの子は身じろぎをやめた。

「・・・いです・・・ずるいです・・・。こんなの卑怯で・・・。知ってしまったんですね。私たちが記憶を取り戻していることを・・・。レーゼフェアから聞いたのですか? お父様」

とうとう素直になってくれたあの子の問いに、「いや。プライソンからだ」と答えた。この子が隕石迎撃に参加したことがお気に召さなかったプライソンが、腹いせとばかりに喋ってくれた。

「あのクソガキ・・・!」

「次いでレーゼフェアを問い質したら教えてくれたよ」

「・・・そうですか。でしたら何も言わずともよろしいでしょ? 私たちとお父様の戦いは避けられないものなのです。だからお父様には、私たちを破壊する事に躊躇のないようにしてもらうために・・・」

「こうやって大物犯罪者の側に付いてきた、というわけだ」

そうすれば否応なく“堕天使エグリゴリ”と衝突することになる。プレシア、リンドヴルム、プライソン。連中はみんな世界1つを危機に陥れることの出来るレベルだった。

「はい。あ、ですが、この手で直接人を殺すような真似はしません。今回のように多くの人命、世界の存亡に重大な危機が陥った場合、私や他のエグリゴリが手を貸すように考えていました」

「その割には今回の事件、局員や騎士、民間人からも死傷者が3ケタ以上出ているぞ」

「それは私たちエグリゴリが関係なくても出た被害です。出す出さないはこの世界――現代を生きる人々の力次第・・・。ですが本当に無理であれば、スマウグ竜や今回の隕石の時みたく私やフィヨルツェンが動きます。先程までフィヨルツェンも隠密スキルを用いて、隕石の迎撃に参加していたのですよ」

「本当か? あの子は今どこに・・・? というか、どの犯罪者の下で活動している?」

フィヨルツェンが付いてる犯罪者の名前を聴こうとしたが、あの子は首を横に振った。

「リアンシェルト・・・!」

「お父様。私たちはこれまでもこれからも敵同士なのです。あなたの腕に抱かれ、この優しい温かさも永遠の中の一瞬。離れたらそこから元の関係に戻りましょう。あなたは神器王として、私はエグリゴリとして、あなたの手でこの身に死を齎されるその日まで」

俺の腕の中でくるっと回って顔を合わせたあの子はつま先立ちをして、「チュッ❤」口にキスをしてきた。そして俺の心臓付近に顔を寄せる。

「お父様の手で、罪深い私たちの旅路に終止符を打ってください。それがバンへルドも、グランフェリアも、シュヴァリエルも、レーゼフェアも、そして私も、フィヨルツェンも、ガーデンベルグも、皆が抱くたった1つの・・・一生のお願い、というやつです♪」

「俺は、私は・・・お前たちに謝りた――んむ」

そこまで言い掛けたらまたキスされて口を塞がれた。リアンシェルトってここまで大胆な子じゃなかったんだが。知らない間に大人の女性になっていたというわけか。

「・・・謝ることなど1つもありません。起こった事はもう覆らない。そう、原因はもう変えられない。ならば過程と結果をより良いものにするのが人というものでしょう?」

そう言って1歩2歩と下がるあの子につられて俺は両腕を離した。とても悲しそうな、辛そうな表情を浮かべるあの子に、俺は一体なんと言ってやればいい。この子たちの覚悟も決意も、俺の言葉じゃもう覆らない。

「もっと早く気付いていれば、こうやってバンへルド達とも話せたのかもしれないのにな・・・」

「それは・・・無理だったでしょう。お父様に気付かれないように、私たちは必死に――」

「いいや。俺はヒントを貰っていたんだ。お前たちの記憶が戻っている。そう聞かされてようやく・・・」

「ヒント・・・?」

「俺がガーデンベルグに敗れ、不死と不治の呪いを受け、フェンリルに封印されたあの日からベルカで再戦するまで、この世界の時間軸で言えば6千年強も経過している。呪いを受けた俺が、その時間を越えて生存していることに、お前たちエグリゴリは疑問を抱かなかった。解呪するにはガーデンベルグを倒さなければいけないのに、何故活動しているのか、と」

瀕死状態だった俺に呪いを解く神器を造る時間も無い。エイルでも解けない。複製された他の神器でも“呪神剣ユルソーン”の呪いは解けない。そもそも造っても解けない。そんな俺が活動しているとなれば・・・。

「それはつまり、俺が本物ではないと知っていたからだ。そしてお前たちの記憶が戻っているとなれば、その正体を確かめようとする。しかし俺の正体を知る者は、この世界において俺と、そして・・・――」

狙ったかのように先の次元世界で親しかった者たちや敵の側に現れる“エグリゴリ”。そして何より一番有り得ないアリシアの復活。そんな事が出来るのは・・・。

「マリア! お前なのだろう!」

「・・・お久しぶりです、ルシリオン様」

桃花色の肩紐ロングワンピースに白いストラップシューズという格好の、金のロングヘアにアメジスト色の瞳をした少女――5th・テスタメント・マリアが音も無く姿を見せた。

「ああ、久しぶりだな。こちらとしてもあまり時間が無い。隠し事なく、正直に答えてくれ。マリア。お前が裏で手を引いていたな・・・?」

「はい。彼女らエグリゴリと偶然出会ったのは事実です。ルシリオン様より伺っていた特徴と一致し、私からルシリオン様のお名前を出し、コミュニケーションをとりました。そこで彼女たちの記憶が戻り、ルシリオン様の行方を探していたことを知りました」

「そこで私たちは、マリア様よりお父様の事を全て聴きました。約2万年と続く生と死を、守護と破壊を、善と悪を命じられるままに・・・奴隷のように実行されてきたと」

「こことは別の、パラレル的な次元世界での話もその時に話しました。彼女たちの落ち込みようは酷いものでした。ですがそれと同時に、ルシリオン様と彼女たちを永遠の牢獄から解放する術も考えつくことが出来たのです」

マリアとリアンシェルトからの説明で、「それが今の状況か・・・」と理解した。俺と敵対して殺されることで贖罪と解放となり、俺もガーデンベルグを殺すことで“界律の守護神テスタメント”より解放される。どちらにも救いはあるが・・・。

「それではお前たちの心が傷ついたままだ・・・」

「はあ。お父様、それは私たちへの罰なのです。あなたが苦しむ必要はありません」

「そう言うが、お前たちは俺とシェフィの大切な愛おしい子供たちだ。そんなお前たちが抱く苦しみを無視しろと?」

「そうです」

感情に僅かな揺らぎも出ないように努めて即答したリアンシェルト。俺は溜息を吐いて「それでも――」と言い掛けたようとした瞬間、「っ!?」全身が動かなくなった。それと同時に魔術師として、魔導師としての能力の一切が封じられたのが判った。

「干渉能力・・・!? マリア・・・!?」

『マイスター! ユニゾンアウトも出来ないよ!』

当然だがアイリも完全に干渉能力に捕らわれた。目だけを動かしてマリアを睨みつけると、リアンシェルトは「マリア様は悪くありません、お父様」と咳払い。あぁ、どうせ「これもお前たちの計画・・・」なんだろうな。万が一に俺がこの秘密に感付いた場合、こうしてマリアが出て来て・・・。何をされるのか察することが出来た俺は血の気が引いた。

「待ってくれ、マリア! 頼む! この真実を俺から消さないでくれ!」

「・・・ルシリオン様・・・」

「お父様。この真実はいたずらにお父様を苦しめ、悲しませるもの。忘れた方がお父様の為なんです」

やはり記憶を消されてしまう。しかも不都合が出ないように記憶に修正も加えてくるだろう。そうなれば俺は僅かな記憶の異変から辿ることも出来なくなる。

「申し訳ありません、ルシリオン様」

「~~~っ! リアンシェルト! 私は、お前を娘として愛しているぞ! シェフィも母親として、ずっとお前たちを愛している! たとえこの記憶を失ってもこの想いだけは不変だ!」

記憶修正が避けられないならせめて、これだけは伝えておきたい。あの子やガーデンベルグ、フィヨルツェンが少しでも苦しまないように。

「はい・・・はい! 私も、私たちも、お父様とお母様を愛しています!」

リアンシェルトは子供のように涙をボロボロ流した。あぁ、出来ればもう一度だけお前を抱きしめてやりたかった。

†††Sideルシリオン⇒シャマル†††

ルシル君による“アグレアス”の破壊、艦隊によるゆりかごと隕石の破壊。それらが終わった時、プライソン戦役の終結が正式に発表された。その後は局と教会は本件における被害の確認、および要救助者の救出を行うことになった。局員や騎士たちが組織の垣根を越えて救助作業に勤しむのを、私とザフィーラも手伝う。

「シャマル医務官! 重傷者です、治療をお願いします!」

「はいっ!」

私は医務官として、現場を忙しなく回っていた。民間人はゆりかごなどの兵器起動を確認してから避難を行ったことで、直接的な被害は出てない。けれど巡航ミサイルや戦車・装甲車の砲撃で崩れた建物に巻き込まれたり、崩落して来た瓦礫に当たったりと、間接的な被害で多くの死傷者を出してしまった。

「気をしっかり持ってください!」

瓦礫に挟まれた男性を助け出し終えていた騎士の皆さんと場所を変わって、まずは応急処置となる治癒魔法を掛ける。出血が止まったところで、治療キットが収められた医務官バッグから治療道具を取り出して処置を施す。

「――あとは病院へ搬送をお願いします!」

「了解です!」

現場で出来るだけの事をやったら、本格的な治療を行える医療施設に搬送する。私は「ふう」と袖で額の汗を拭い去って、「よし、次!」の現場へ向かう。そこは倒壊したビルの瓦礫の山で、武装隊と騎士の皆さんが瓦礫を撤去しながら「もう少しです!」内に向かって必死に声を掛けてる。側には白衣姿の私の同僚の医務官たちが居る。

「シャマル先生!」

「ティファ先生!」

10年前からの付き合いであるティファレト・ヴァルトブルク医務官と合流。事情を伺えば、この瓦礫の山の下に、少なくとも8人の要救助者が居るとのこと。だけど瓦礫の撤去に手間取ってるとのこと。

「アルテルミナスやシスター・プラダマンテなど、スキル所有者をお呼びしたんだけど、お2人とも別の瓦礫撤去に従事しているようで・・・」

「そう。ザフィーラ、瓦礫の撤去の手伝いをお願い」

「ああ」

私の護衛に付いてくれてるザフィーラも瓦礫の撤去に参加。瓦礫が撤去されるのを待つ間、私たち医務官は打ち合わせ。そんな時に『こちらルシリオン。瓦礫撤去作業に移ります』そんな通信が入った。

「ルシルく~ん! こっち~!」

両腕を大きく振って、空からゆっくりと降下して来るルシル君を呼ぶ。ルシル君も私に気付いてくれたみたいで、私たちの側に降り立ってくれた。今のルシル君は変身魔法を使ってるみたいで、本来の身長以上に高くなってた。

「ルシル君。それにアイリも。お疲れのところ悪いけど・・・」

「問題ないよ。良い具合に体も温まっているし、魔力だって充足だ」

『楽勝だったね。レーゼフェアなんて、ルシルとアイリの敵じゃ無かったよ』

「ああ、そうだったな。・・・それじゃあ始めるよ。我が手に携えしは友が誇りし至高の幻想」

ルシル君の口から発せられた呪文。それでルシル君は複製権限を取り戻せたことを知った。ルシル君から漏れ出す魔力量に辺りがざわめく。

「これより瓦礫を浮かせます! 要救助者の回収をお願いします!」

ルシル君の言葉にみんなが「了解です!」と応じて、瓦礫の山から離れてく。瓦礫の山から全員が離れたのを確認したルシル君が地面に右手を付いた。

反重力(ニクス・フォース)

ギンッと鈍い音が聞こえたかと思えば、瓦礫が次々と浮き始めて「おお!」歓声が上がる。そして武装隊員たちが要救助者を保護して、騎士たちが浮いた瓦礫を撤去して、姿の見えた要救助者を他の武装隊員や騎士の皆さんが運び出して、安全な場所で私たち医務官が治療に当たる。それを繰り返して・・・

「――お疲れ様です! 全要救助者の救助を完了!」

「セインテスト調査官。引き続き瓦礫撤去作業にご協力願えますか?」

「もちろん」

次の現場の位置を確認し終えた「ルシル君、ちょっといい?」を呼び止めた。私に振り返った彼は「何かあったか?」って側に駆け寄ってくれた。

「後で知ることになると思うけど、ゼスト・グランガイツ一尉がレジアス・ゲイズ中将、オーリス・ゲイズ秘書官を逮捕したわ」

まずはそれから伝える。グランガイツ一尉は以前、ルシル君と一緒にプライソンのアジトへ潜入捜査した首都防衛隊の一部隊を預かる隊長。メガーヌ准尉やクイント准尉もその部隊の分隊長ね。

「そうか。目を覚ましてくれたんだな・・・。クイントさんとメガーヌさんも喜ぶだろう」

「ええ。あともう1つ。これはアイリちゃんに」

『ん?』

「アギトちゃんを無事に取り戻せたわ。ベルカで一緒に過ごした時間の記憶もばっちり戻ってるって」

シグナムからそう連絡を受けた。これでようやくオーディンさんファミリーが勢ぞろい・・・というわけでもないけど、それでも揃うことは出来た。出来ればアインスが生きてる間にアギトちゃんと合流したかったけれど・・・。

『ホント!? アギトお姉ちゃん、戻って来る!?』

「ええ。でも洗脳されていたとはいえ、犯してきた罪は消えないわ。数ヵ月、数年は拘置所か隔離施設に入れられると思う」

『・・・それでもいいよ。アギトお姉ちゃんが帰って来てくれるなら。ね? ルシル♪』

「ああ、だな。ありがとう、シャマル。それじゃ行くよ」

「気を付けて」

ルシル君と手を振り合って、私たちは一旦お別れ。私は私の仕事をきっちりやらないと。

・―・―・―・―・

ミッドチルダ極北部に広がるノーサンヴァラント海。ベルカ自治領の領海内に位置するオークニー諸島・ナウンティス島は、その一面が起伏の少ない森林地区だ。周囲は上陸困難な断崖絶壁で、島内に上陸するには空からの降下か、内面へ続く細い海路から進入するしかない。

「まったく。プライソンの奴め。よもやミッドチルダを道連れに自害するのが真の目的だったとは・・・」

外側は自然豊かだが、その内側はガッツリ機械に侵された鋼鉄の施設。その通路に今、1人の老人が歩いていた。顔はしわを刻んでいるが、しかし首から下は筋肉質で、身長は2m近くはあるだろう。髪型は毛が1本と残っていない禿頭。日焼けしているのか肌は全身褐色。プライソンが生前、依頼主、ハゲジジイ、と称していた人物だった。

『閣下。博士のおかげで、ガンマをネレイデスと接続できました』

老人の側面に展開されたモニターに映る白衣姿の女性がそう報告した。ガンマ。転移スキルを有する何者かに拉致された特別製サイボーグ・“スキュラ”の1体だ。

『元はゼータというスキュラが海洋艦隊の管制機として接続される予定でしたので、同じスキュラとはいえ接続できるか不安でしたが・・・』

女性の背後に在るポッド内には、機械のゴーグルを装着された素っ裸のガンマが水溶液の中に浮かんでいた。背中や首筋からはケーブルが伸び、兵器の管制機としての姿となっていた。

「そうか。では各艦の調整に移れ。プライソンの目的の事を考えれば、艦隊は未完成で在る可能性がある。建造・改修が必要であれば、彼女の手を借りるのだ」

『了解しました』

通信が切れると同時にモニターも消えたことで再び静まり返る通路。老人は再び歩き出し、そしてスライドドアの前に到着する。老人が近付くとドアは左右にスライドし、ドアの奥の部屋へと彼を招き入れた。

「では、ここから始めるとしよう。このグレゴール・ベッケンバウワーが、テウタ様の代わり――キュンナと共にベルカを、レーヴェンベルトを再誕させる」

老人――グレゴールは部屋の中央に設けられた玉座の前で片膝を付き、そう高らかに宣言した。
 
 

 
後書き
これにてプライソン編は完結です。長かった~、とばかり言ってしまう私。
そして次のエピソードの敵キャラのリーダー格も最後に出現。忘れていらっしゃる方も居るでしょうが、エピソード・ゼロの番外コーナーにて行方不明として紹介したイリュリア騎士団総長グレゴール爺さんです。キュンナを始めとした騎士たちが次のエピソードの敵組織になります。

ゼストとレジアスの描写ですが、書こうとは思っていたんですが思いの他、余裕が無くて断念。アニメの描写のままだと考えて頂ければいいかな~と。アニメではドゥーエに殺害されましたけど、本作ではあのままゼストに逮捕された・・・みたいな?
 
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