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Society Unusual talent

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5 殺意

 
前書き
お久しぶりです、更新ペースが安定しません。
あとタイトルは別に間違えてないです。

今回は言うなら外伝、かもしれません。
異能警察との戦闘を終えたあとの須佐之男と櫛名のサブストーリーと言うべきか、
もしくはほかの誰かのストーリーなのかも知れません。 

 
異能警察との戦いを終え、須佐之男は迎えに来た櫛名と共に路地を歩く。
「ふむ…異能警察、なかなかの手練だったな」

「須佐之男様…お怪我の程は…?」
男の肌を撫でながら、和服の女性は目配せをする。

「問題ない、貴様の心配症(それ)は直した方がいい。あまりのものだぞ、櫛名」
須佐之男は櫛名に視線を送らずに前だけを向いて歩き続ける。

「あらあら」
袖の合っていない服を揺らし、届いていない袖口を口に当てて笑みを見せる。
「たたたっ」と須佐之男の歩幅を合わせて足早に歩きを続ける。

「くくくっ、しかしおもしろい男だった。引き際を弁えていたな」
「スタミナ切れなどと抜かしていたが、底を見せ切らずに我と渡り合っていたとはな」
須佐之男は傷口を見ながら不敵に笑う

「あらあら、それは須佐之男様も同じではないですか、よかったですよ、もし全力を使っていたら街は壊滅、計画は失敗です」

「クハハ、我も馬鹿ではない。操血鬼の実力を視野に入れても我の異能全開までは足らんだろう。奴らは『予備』だ、殺すわけにはならん」
「…だが、熱くなるのは我の悪い癖だ。感謝するぞ」
須佐之男は立ち止まって櫛名の頭にポンと手を置く

「あらあら」
櫛名は再び袖口を口に当てて笑みを見せる。
彼は櫛名に釣られて高笑いをあげて、制圧者達は再び上機嫌に歩みを始める。

彼らは街を蹂躙する。
無能者は異常になり街を放浪する。
異能者は一つ、服従し連れてかれて。一つ、傷を負い街に転がり。一つ、逆らい殺される。

彼らは喜々と会話をして、この『人』をいなくした廃墟を闊歩する。
異常な殺人者達は人という人が消えた廃墟を歩み続ける。

ーー殺人者達は。



「…なんだ?」
須佐之男が笑みを消して目を細める。
いつの間にか視界には白く『もや』がかかっている。

道を進む度にそれは深くなっていき、
立ち止まった時には前も後ろも白く塗りつぶされてしまっていた。

「櫛名。…櫛名?」
彼女の名を呼んでも返事はない、それどころか
自分の声すら返ってこない。
意識が落ちていく感覚に駆られ、自身が分からなくなる。
自分は本当に自分なのか、他の『誰か』なのではないか。


雨が降る。
滴る水に自身の輪郭を思い出すと、前方の霧が薄く開いていることに気づく。

バシャッといつの間にか出来ていた足元の水溜りを踏むと、水は波紋と共に中心から紅く赤く朱く染まっていく。
須佐之男はおもわず冷や汗を垂らし、前方へ向き変えると


映るは右手にバタフライナイフを持った少女とバラバラに解体された黒い女の死体。
四肢をバラバラに切断され、目を見開いた首がこちらを向いて落ちている。

彼女の後ろの壁には所々鮮やかに、所々掠れた字で『save me please』と朱い血液で書かれている。
これは女のダイイングメッセージなどではない、少女の左手が手首まで血で染まっている。
解体した女の傷口に幾度か手を突っ込み、壁に綴ったのだろう。

ドクン、と心臓が掴まれる様な感覚を感じた、初めてかもしれない。
彼、須佐之男は喧嘩に、試合に、戦争に、死合に、あらゆる戦闘に明け暮れた日々を過ごした。
ゼロに忠誠を誓った理由ですら、ただ闘いたかったからだ。
強敵と戦う際、いつも感情が精神が心臓が昂っていた。
だが、今回だけは何かが違う、直感全てが語りかけているのだ、
危険であると。

少女は立ったまま下を向いて動こうとしない、カーディガンには血が染み付き、片目は髪で隠れ、見えるもう片方の目は虚ろ。
バタフライナイフからピチョン、ピチョンと血が一滴、また一滴と地面に落ちていく。
異能者となった無能者などではない、奴らは近づいたものを機械的に攻撃しか出来ないからだ。

「…おい、貴様」
「…」
「ここは何処だ」
「…」
「その女は、なんだ」
「…」

少女の目は変わらない、深黒の眼のまま、虚空を向く。
須佐之男は解体された女の首を一瞥した後、腰の刀に手をかける。

「不快だ、去ね」

横薙ぎ一閃。
一筋の斬撃が雨と共に少女の首を無残にも切り落とす筈だったろう。
一閃ともに少女の身体は霧散し、前方の『霧』が消える。
そこには少女もバラバラの死体もない。

だが未だ、櫛名の姿はどこにもない。
須佐之男は刀を鞘に戻しつつも刀の持ち手に手を添えて警戒を怠わない。

構えを取り、ありとあらゆる方向からの攻撃を想定する。

(幻覚の異能者か…だが)
彼は霊遥葵雄大や速水風間、それ以外にも手練のものと闘い有ったかなりの戦闘経験者である。

目を閉じて五感。いや、六感全てを極度集中させる。

空気をピリピリと肌で感じている。
雨は相変わらずポツポツと降り注ぐ。
水たまりの波紋は一つ、また一つと量を増していき、彼は水の音を聞き、数字を唱え始める。

「弌。」

「弐」

持ち手にかけた手に水滴が落ちる。
「斬…」

空気が動く。
カッと目を開き、刀を握る手を強める。

黒い影が視野に入ると共に渾身の抜刀を発破する。

「死ッ!」
再度一閃。
現れた少女はその刀を後ろに二歩、紙一重で避けると水溜りを踏み込んでナイフを逆手に走り出す。

須佐之男がニィと笑って拳を握りしめると少女が踏んだ水溜りの波紋から幾数もの手が現れ、少女の身体を拘束した。

須佐之男は少女の首へと刀を向けて首に触れたところで刀を止める。
しかし少女は表情を一切として変えず暗い目で刀をただ見つめる。
「ではさらばだ」
刀が肉に喰い込んでいき首筋から一筋の血が流れる。
少女が下を向いたと思うとゆっくりと須佐之男の方へと向き返る。

須佐之男は少女を見て、再び心臓が掴まれる感触に駆られた。

笑っていたのだ。
凶悪な笑みだからではない、むしろ真逆で。
可憐な花が咲いたような笑み。

須佐之男は震える手で再度刀に力を入れて横に断ち切るが。
少女は一種緩まった拘束を破り、しゃがんで刀の閃撃を回避する。

少女が立ち上がると、須佐之男は刀を仕舞わずに三歩と後退する。
視界が歪む、少女の顔がまるで分からなくない。

生まれて初めての恐怖、それも少女に恐怖を見せている。
闘士も牙も磨きあげられた獅子が、気圧されている。

須佐之男は恐怖に身を駆られながらも、その躰は経験、慣れから少女の挙動を見逃さない。

今、頭が廻らなくとも幾度と無い戦闘で必ず相手が放つ殺意の牙。
戦闘の果てに殺意を感知できるようになっていた、そう。


殺意を感知できるからこそ少女には勝てなかった。


構えをとった自動操縦(オートモード)狂戦士(バーサーカー)の身体に鋭い痛みが流れる。

あまりの痛みで思考回路が正常化し、ようやく自身で少女の姿を認識した。
ゆっくりと歩き、正確に腹部を、肝臓を一突。
その攻撃に、挙動に、全く殺意は篭っていなかった。

まるで少女は殺すことをどうとも思っていない。
一流の殺し屋でさえ、大量殺人鬼でさえ、慣れだろうと、何も考えずに殺すことは不可能だ。
恨みも怨みも無いとしても、殺すと言う事は『殺す気を持って殺す』ということだ。

殺意のない殺人というのは二種類しか存在せず、『意識がない間接犯罪』と
『殺すという意味』を、『死ぬという意味』を知らないと言うことだ。

しかし、何故だと須佐之男は膝をついて想う。
『殺す』を知らないものが、何故。

人体の急所を正確に突いているのか、と。
こんな無垢な少女が、殺意のないはずの少女が…知り尽くしているのか?

多量の出血に目が眩む、折角戻った頭が朦朧として考えることがままならない。

「ハ、ハハ、クハ、ハ」
だが須佐之男は笑みを零す。
自分でも何故だか分からない。
空を見ていた少女がこちらを向く、ようやく見えたその表情は最初通り、真っ黒だ。

「…死、か。なる…ほど。ク、ククク…ハハハ、ハ。」
「今日、死ぬ日が来る。とは、」
少女は須佐之男の前でしゃがみこむ。
攻撃のチャンスだろうか、だが無理だ。

須佐之男の視界が白く淀んでいく。


父を殺し、母に追放され。
見知らぬ彼女を救い。
救った彼女から愛を受け、救った彼女だけを愛した。

「いい末路だ」と声が出ずともそう言って笑う。
思い残すことは勿論ある、だが。
彼女にも言ったのだ。
「俺はいつか死ぬ、殺される」と。
殺しを犯したからには当然だ、と想う。
さて、彼女はあの時。
なんと言ったか。


少女は衰弱していく須佐之男の首筋に左手のナイフを向けるが、何故かそのまま硬直する。

まるで蛇に睨まれたように。

須佐之男の視界の白い淀みが立ち去っていく、
視界の中の薄くなったもやから紅い瞳がこちらを睨んでいた。
「…クハハ。そう、だった。な、」


「許しませんよ」
声のする方へと顔を向ける。

「私を残して死ぬことは許しません」
恐ろしいものだ。
黒髪の彼女が、霧を破って追ってきた。

何故?、と。
彼女に道理など関係ない、こう言うだろう。『愛の力です』と。

「死ぬなら私も共に死にましょう、ええ、ええ、例え冥府の果てまでお供します」

少女は彼女を見て一瞬呆気に取られる。
「死なぬなら毒蛾を払いましょう」
彼女は着物から出した短刀で膝元まで届く長い後ろ髪を切り落とす。

すると髪の毛は大蛇へ成り、大きな眼で少女を捉え、舌を揺らす。

「私のですよ、私の者です。血液も全て返しなさいな」

少女は立ち上がり蛇を、彼女を、櫛名贄姫を見て。
再び笑みを浮かべた。 
 

 
後書き
須佐之男(スサノオ)

性別:男
年齢:22
髪:蒼
目の色:金
身長192cm
カヴァー:地下格闘家
ワークス:ナンバーズ2(元ナンバーズ3)
『建速須佐之男』
ランク:A
半径30m圏内までの水を操る異能
人の体内の水は操れず、また水がないところでは異能の行使は不可能。
作中で話した彼の全力というのは所謂津波。

ナンバーズでの総合戦闘力1位。
素手での闘いだと日本武尊に遅れをとるが、刀を持たせたら右に出るものは無し。
地下格闘技に属しており、異能無しで最強の座と呼び声高い。

ゼロと世界を放浪していた際、戦争に顔を出して銃撃戦の中刀で突き進み、
誰が敵で誰が味方かも無しのたった1人で全兵士を無力化した記録がある。 
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