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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Eipic30プライソン・スカリエッティ~Infinite One~

 
前書き
なんかもう戦闘パートが続き過ぎて、頭の中がこう・・・おかしくなってきました。

VSプライソン戦イメージBGM
METAL GEAR RISING REVENGEANCE「It Has To Be This Way」
https://youtu.be/4UbxNJMOhjg
 

 
†††Sideルシリオン†††

宇宙に点在する隕石をミッドに降らせ、なおかつソレ自体がミッドを壊滅させる特攻兵器・“アグレアス”。その管制を担っている片割れが“堕天使エグリゴリ”の1機、レーゼフェアだという。ミッドを護るため、レーゼフェアを救うため、俺とアイリは転移魔法を使って宇宙に漂っている“アグレアス”に乗り込んだ。

「レーゼフェア! どこに居る! 姿を見せろ!」

『マイスター。アイリ達以外に生命反応が2つあるんだけど・・・。1つはレーゼフェアだとして、あと1つは・・・?』

仄暗い通路内を翔けているとアイリからそんな念話が。まさか、“スキュラ”とかいうサイボーグ姉妹がまだ居るのだろうか。だとすれば、レーゼフェアを救い、“アグレアス”の自壊を設定した後、その娘と一緒に脱出という予定だな。

「とにかく今はレーゼフェアとの接敵だ。・・・それにしても大きい兵器だな。ゆりかごと同程度の全長だぞ」

『距離400先、生命反応が1つ』

その報告通り、通路の先にあったのは左右に開くタイプのスライドドア。攻撃でぶち抜いてやりたい気分だが、奥に居るのがレーゼフェアではなかった場合を考えて、律義に開くのを待った。ドアはゆったりと開き、その奥にはゆりかごの玉座の間の3倍ほど広い空間がお目見え。

「よう。待っていたぞ、神器王ルシリオン」

広間に響く俺の正体。この声、この口調・・・。広間の奥に在る玉座に座しているのは「プライソン!?」だった。馬鹿な、奴は今、シスター・プラダマンテのスキルである空間干渉(ってことを聴いた時、目が飛び出そうになった)によるバインドを受けている。逃げられるわけがない。

「驚いているな。では答え合わせといこうか」

俺の面前に展開されたモニターに、はやて達に包囲され囚われたままの状態の「プライソン・・・!」が映しだされた。一瞬の混乱の果てに辿り着いたのが「どっちがクローンだ?」ということ。記憶転写型クローン技術・プロジェクトF.A.T.E.の生みの親だ。自分のクローンを造ることも造作もないだろうしな。

「はっはっはっは! すぐに辿り着いたな、正解へ。俺がオリジナルのプライソンだ。地上のはクローンに過ぎないが、俺の不老不死までしっかりと受け継いでいることで、どちらが真か嘘かなど最早関係なくなった。地上の奴は、俺がアグレアスの最終調整を終えるまでの影武者だ。知っての通り、その役目を存分に果たした」

「隕石とアグレアスによるミッド破壊。恐ろしいのは、それがお前が自殺するためのもだという」

『あり得なさ過ぎだよね!』

星1つを道連れにする自殺など、2万年近く存在してきた俺でさえもなかなか見られない茶番だ。奴は玉座より立ち上がり、「我が手に携えしは確かなる幻想」そう聞き捨てならない呪文を詠唱した。

「始まりと終わりは知らず。時の狭間に遊べ」

――ストップフロゥ――

「俺の・・・――」

『複製術式!?』

ゼフィ姉様の言っていた通り、奴は俺から奪った発動権限を利用し、“英知の書庫アルヴィト”から無断で拝借しているわけだ。しかも短いながらも時間を停止させる術式を発動しやがった。直後に「ぅぐっ!」強烈な頭痛と胸痛に襲われた。その直後には背後から「どうだ? さらに俺への怒りが湧いただろう?」奴の声がした。

『このぉぉーーーッ!』

――竜氷旋――

挑発に乗せられたアイリが独自に魔法を発動。竜がとぐろを巻くように俺の周囲を冷気が渦巻く。俺は空いている右手で胸を掴み、振り返りながら“エヴェストルム”を振るった。視界に奴が入る前に、“エヴェストルム”を握る左手から伝わる肉を断つ感触。視界の端が赤一色に染まる。

「くははははっ! 痛い、痛いなぁ、おい!」

全ての防御を放棄していたのか胸を横一線に斬り裂かれ、多量の血を吹き出させながらも笑い、そしてものすごい速度で傷を再生させた。

「さぁ、始めようか。ミッド終焉までのプレリュードを」

VS・―・―・―・―・―・―・―・―・―・
其は有限より追放された無限の者プライソン
・―・―・―・―・―・―・―・―・―・VS

――エッケザックス――

魔力が右拳に生まれ、奴が正拳突きを繰り出すと同時に砲撃が発射された。俺は横っ跳びすることで回避。死を望んでいるような奴を、望み通りに殺してやるものか。そう考えた俺は、奴を体内から凍結させて封印してやることにした。

「他人の物を勝手に使うな、コソ泥め。アイリ!」

『ヤー!』

――氷結圏――

アイリに氷結付加を発動させ、俺の氷雪系術式の効果を増大させる。

――舞い振るは(コード)汝の麗雪(シャルギエル)――

氷槍60本を展開して「ジャッジメント!」一斉射出すると、奴は「冷気攻めか! そいつは試していないな!」そう弾んだ声を出し、両腕を大きく広げて待ち構えた。そして氷槍の8本で全身を貫かれ、その個所より全身に凍結が広がっていく。

「さらに・・・」

『行くよ!』

――吹雪け(コード)汝の凍波(バルビエル)――

奴の周囲に宝石と見間違うほどの氷柱を7つと突き出させ、ソレらより強烈な冷気を放出。続けて「ジャッジメント!」と号令を下し、氷柱を破砕させて氷雪の竜巻を発生させる。そうして奴は完全に氷像と化した。管制だからと言って殺せばいいってものじゃないだろう。その機能を止めてやればいいはずだ。

『マイスター。トドメ刺した方が良いんじゃないのかな~』

「個人的な感情で言えば、さっさと殺してやりたいが。・・・残念だが今の俺は公務員だ。まずは俺の複製権限を取り返し、左目の視力についても問い質したいしな。今は生かしておく必要がある」

さらに言えば、今の俺には不死を殺しきるだけの術が無い。持ってはいるが、今は奴に奪われている状態だ。まぁ残念ながらあの術式は、いくら複製発動の権限を持っていようが俺にしか発動できない。アイツの最大のミスは、俺から権限を奪ったことだ。たとえ戻って来ても、望み通り殺してはやらないがな。

――赤化旋風――

「あそこまで凍結されてまだ動けるのか・・・!」

炎の竜巻が発生して勢いよく氷を溶かし始めた。凍結封印が出来ないとなると、さぁどうしようか。なんて考えている中・・・

「先ほどの話の続きだが何年か前にお前は、地上本部・首都防衛隊のゼスト隊と一緒に俺の研究所に潜入して、兵器群のデータを掻っ攫って行っただろうが。お前に俺を糾弾する視覚は無いだろう」

凍結から解放された奴がそう言って肩を竦めた後、「ともかく、俺は封印じゃなく死を望んでいるんだよ」ビシッと指を差してきた。

『上等だよ! マイスター、アイツ死にたがってるんだし。もう殺っちゃおうよ!』

フォルセティやヴィヴィオの事で相当恨み辛みが溜まっているようで、アイリがそう急かしてきたが俺は躊躇した。目の前に居るのがオリジナルで、地上に居るのがクローンのプライソンだ。相対した限り、どちらも全く同じ気配で見分けも付かない。どちらが死んでも問題ないだろうが・・・。

(オリジナルを殺したことを、クローンから局や教会に漏れてはまずい・・・)

「融合騎の言う通りだ。お前なら俺を殺せるのだろう? ならば何も迷うことはない。俺を殺したところでお前に罪は無い。クローンが黙るからだ。ついで言えば、クローンの方も後で殺してもらえると助かるんだがな・・・!」

――トーデスドルヒ――

奴の周囲に血色の短剣型魔力弾が30発近くが展開された。アレはルーテシアの魔法だな。高速で射出された魔力弾を空戦形態の機動力を以って回避し、奴自身の影を利用して作り出した影の手・「カムエル!」で奴の四肢を拘束する。

「いやだから~。こうじゃないと言っているだろう」

――メタルダイナスト――

奴の足元の床がうねり、鋭い刃へと形状変化。そして両肩と両太ももを切断した。四肢を欠損した奴は地面に落下したが、すぐさま新しい四肢を再生させて立ち上がった。

「それにお前は、暗殺部隊のエースだろう。さらに言えば、数千年前にあったという再誕戦争での英雄・神器王、人殺しの天才。犯罪者を殺すことに今さら何を躊躇う? それでも理由が足りないなら与えてやる。オリジナルである俺も殺さないとアグレアスは止まらない。俺とレーゼフェアが死んで初めてアグレアスが自爆モードに入るのだから。どうだ? 殺る気が出たろ?」

自分を殺すためだけに、よくもまぁここまで遠回りなことをするものだ。死にたいなら、俺が局員になった時に誘えば良かっただろうに。って、最高評議会への復讐も目的の1つだっただろうし、どの道こうなる事は決まっていたか・・・。

「ああもう、いい。判った。そこまでして自死への道行を整えたのなら、最早なにも言うまい。お前のような狂人の願いを聞き入れるなど反吐が出るが世界の為だ」

魔力炉(システム)の稼働率を上げて魔力に神秘を付加し、非殺傷の魔法から物理破壊上等の魔術へと昇華させた。“エヴェストルム”のカートリッジと魔石はレーゼフェア戦に残しておきたい。省エネで叩く。

「さぁ来い、早く、早く、早く!」

――戦滅神の破槍(コード・ヴィズル)――

雷撃系上級砲撃を発射すると奴は「どれどれ!」と、防御も回避もせずに直撃を受け入れ、起こった放電爆発に呑み込まれた。そして放電が治まり始めたところで奴の「あぁ・・・。この程度ではやはり死ねないのか・・・」嘆きの声が聞こえて来た。姿を現した奴の右肩から右腰までがごっそりと抉られているが、グチャグチャと不快な音を立てて臓器などの肉体組織が高速で再生して行っている。

『うっ、気持ち悪い・・・』

アイリが俺の中で吐き気を催して(頼むから吐かないでくれよ?)いる中、信じられないことに「レーゼフェアへの義理を果たすために、少し抵抗させてもらうぞ」などとメチャクチャなことを言い出し始めたため、俺とアイリは「『はあ!?』」素っ頓狂な声を上げてしまう。

『死にたいなら、大人しく殺されてよね! というか、まずはマイスターの複製権限を返せ!』

――零斬風――

全く以ってアイリと同意見だ。俺の左右に生み出された氷雪の渦より放たれる冷気の刃。奴はジグザグに駆けつつ回避して、「我が手に携えしは確かなる幻想!」と詠唱しつつ俺へと接近を試みた。

――ボーデンドンナー――

――女神の疾翔(コード・グナー)――

誰のものかは判らないが複製高速移動術式を発動して、真っ向から最接近して来た奴へのカウンターとして、俺は空戦形態時限定の突進術式グナーを発動。全身を魔力で覆って槍の如く突撃。速度にモノを言わせて奴の胸へドロップキックを食らわせる。

「うごぉ!」

そしてそのまま玉座へと突っ込む。石造りの玉座を粉砕し、さらに金属で出来ている広間の壁に背中から叩き付けてやった。骨や臓器を潰した感触がブーツの裏から伝わり、さらに奴も盛大に吐血したことで致命傷は与えたのは間違いないと判断する。

「ごふっ! はっはー! 痛いじゃないか!」

――禍神の隷氷(コード・ベルヴェルク)――

喋るたびに血を吐き出す奴が俺の両足首をガシッと掴んできたため、即座に装備術式を発動。限定的に両脚の脚甲だけを装備させ、「っ!?」奴の両腕や全身を再び完全凍結させた。無理やり奴から離れると、まず両腕がバキッと折れた。足首に奴の凍った腕を引っ付けたまま本体へと前蹴りを打ち込むと、ガシャァン!と派手な音を立てて砕け散った。

『ここまで砕け散ったらさすがにダメだよね・・・?』

「むぅ。とりあえず胴体だな」

氷装を解除し、周囲に散らばっている奴の体の破片の中から胴体部分を探す。推測だが複製権限はおそらく、奴のリンカーコアと同化しているはずだ。ならばリンカーコアもろとも奪い返してやる。

――インフェルノⅢ――

「む・・・!」『おわっ!?』

俺の周囲に噴き上がる複数の炎が、凍っていた奴の肉片を溶かし出した。粉々に砕いた程度では死なない、と。辺りを見回すと一際強い魔力を発する破片を見つけた。ちょうど胸の中央辺り――心臓部分だ。リンカーコアの輝きを確認できる。他の肉片を蹴散らしながら向かい、「返せ!」肉片へと手を伸ばすが・・・

――ファイアウォール――

「チッ・・・!」

寸でのところで炎の壁が発生し、奪い返すチャンスを逃すことに。壁の向こう側では、心臓とリンカーコアが収まった肉片を基点として奴の肉体が高速で再生されていくのを見た。壁が解除され、「笑えるだろう? あれだけ砕けてもまだ死ねないなんて」衣服も元通りに戻った奴が肩を竦めた。

『あぅ~。ごめんね、マイスター。アイリの氷結術式じゃ意味無いみたい・・・』

「いや、今の俺も大して変わらないから気にしないで良い。勝利条件はただ1つ。奴の身動きを止め、リンカーコアごと複製権限を取り返す!」

――浄化せよ(コード)汝の聖炎(メタトロン)――

俺を中心に床と四方の壁にいくつもの蒼炎の轍を蜘蛛の巣状に張り巡らせてから、「ジャッジメント!」問答無用で号令を下して炎の轍を一斉に爆破させる。すると奴は「火炙りは辛いんだがな~」と文句を漏らし、何もせずに爆炎に呑まれた。

「焼ける、焼けるぞぉぉぉーーー・・・――」

――炎熱吸収――

そう叫び声を上げる奴の両手に炎が集束して行き、骨とリンカーコアだけとなった姿を見せた。チャンスが再来したことで宙を蹴って突撃する。奴は肉を再生させながら骨だけの右腕を振りかぶった。

――巻き起こせ(コード)汝の旋風(アムブリエル)――

――第四波動――

風槍を8本と一斉射出したと同時、奴も右拳を突き出して火炎砲撃を発射。風槍は射線上には無いため、そのまま奴へと向かって行き、俺も宙を蹴って急上昇することで砲撃を回避。床に着弾した風槍が起こす爆風で奴の骨がバラバラに吹き飛び、リンカーコアだけが宙に浮いていた。また宙を蹴ってリンカーコアを目指す。

――シルバーカーテン――

リンカーコアを掴んだと思えば、そこには何も無かった。デジャブ。先の次元世界でのバール戦を思い出した。瞬時に幻覚を見せられていたのだと判り、発動し易いなのはの球状バリアである「オーバルプロテクション!」を発動。

――ヴァイオレントトレーナー――

直後、バリアに紫色の魔力ロープが縦横無尽に絡まり、ミシミシと締め付けてきた。そしてガシャァン!と砕き、「っ・・・!」俺を簀巻きにした。が、アイリが『竜氷旋!』を発動し、ロープを凍結してくれた。あとは俺の膂力で簡単に砕ける。床に降り立って、完全に肉体を再生させた奴と相対する。

「なかなかに楽しいじゃないか、決闘というのも。人生最後の時間としてはあまりに甘美。レーゼフェアには感謝しなければな。本当はお前に大人しく殺されようと考えていたが、どうせなら戦って死ぬば?という提案を受けてな。いや確かに、ここまで熱くなれるとは思いもしなかった」

『それに付き合わせられるアイリとマイスターの迷惑を考えてほしんだけどね・・・』

「まったくだ・・・! レーゼフェアの奴、余計なことばかり言って・・・!」

呆れ果てる俺たちに向かって床を蹴って突撃して来た奴は、両腕を胸の前でクロスさせて「それにしても俺とお前は本当に似ている。まるでコインの裏表のようだ」などと言いつつ、左右に両腕を振るった。対する俺たちも床を蹴って奴へと突撃。

『はあ!? 有り得ないんだけど! お前のような狂人とマイスターが似てる!? 寝言は起きて言うものじゃないよ!』

――サウザンドブレス――

――削り抉れ(コード)汝の裂風(ザキエル)――

放たれるのは強烈な爆風。目には目を、風には風を。ドリルのように螺旋状を描く暴風の砲撃を発射。貫通力のある俺の砲撃に暴風は容易く穿たれて、その勢いを無くし消失した。そしてお互いに殴り合える位置まで最接近したことで、俺はダンッと力強く床を踏みしめた。

――力神の化身(コード・マグニ)――

――鉄化鬼腕――

俺は上級の全強化術式を発動して左腕を振り被り、足元に黒いベルカ魔法陣を展開した奴は、赤錆色に変化させた右腕を振り被った。今の低身長な俺となら、そこそこなクロスカウンターになるわけだ。同時に拳を繰り出し、奴の拳は顔を逸らすことで掠りはしたが躱すことが出来た。そして俺の拳は「うごぉ!」奴の鼻っ面に直撃。

「おおおおらぁッ!」

「ぶふぅ・・・!」

拳を振り抜いて、折れた歯や鼻血や血反吐を撒き散らす奴を20m程まで殴り飛ばしてやった。床に落ちてからバウンドすること11回の果て、閉まっていた出入り口のスライドドアに激突。ドアすらも打ち破って通路の奥へと消えて行ったが・・・

――ボーデンドンナー――

追撃するより早く奴は高速移動で広間へと戻って来た。折った歯や鼻骨は元に戻り、その顔は喜色満面。

「いいや、似ているさ。不条理の被害者としてな!」

――ショックブレイカー――

広間の中央付近で奴が床を殴りつけた。床を伝わってくる衝撃波に気付き、即座に宙に飛び上がった。しかし行動に移るのが僅かに遅かった所為で「うおっ!」足元を通過した衝撃波に煽られて体勢を崩してしまった。

――ボーデンドンナー――

「生まれながらにして人生を定められ、その定めに従い戦いながらも得たモノを奪われる不条理!」

――メタルダイナスト――

足元の金属床が俺を挟み込むようにせり上がり、まるで蚊を叩くように俺に迫って来た。

――屈服させよ(コード)汝の恐怖(イロウエル)――

巨腕一対を発動し、叩き潰される前に床を鷲掴んで食い止めたところで、「マグネティックドミニオン!」トンッと胸に掌底を受けた。胸に当たる手の平から全身に駆け巡る衝撃に俺は「ごほっ!」吐血する。宙に居たことでその衝撃を逃す術も無く、俺は大きく吹き飛ばされた。

「しかも! それから逃れようにも死を与えられていない! 不死を――永遠を無理やり与えられ、失った悲しみを苦しみながら行き続けなければならない! お前も同じだろう!」

――マグネティックドミニオン――

宙で姿勢を整え、壁に両足を付いて着地したところで、「なに・・・!?」無理やり奴の元へと引っ張り込まれた。先程の掌底。マグネティックドミニオンとか言っていたな。あぁ、俺は今、磁力に支配されているのか。

――傷つきし者に(コード)汝の癒しを(ラファエル)――

治癒術式で受けたダメージを回復させつつ、「実弟のジェイルですら、俺と違って有限だった」そう嘆きを漏らす奴へと影槍の「サマエル!」を発動し、奴自身の影から生えた影槍で貫いてやる。それでも磁力で引っ張り込まれ続けるため、「おおおおおお!」全身を炎で覆う。

「ぐふっ・・・! はっはっ! 磁力は熱に弱いというのは既知というわけだ!」

「学校で習うからな」

磁力支配から解放された俺は、影槍に貫かれたままの奴へと向かい、シャマルの転移魔法・旅の鏡と同じ効果を持つ「メタスターゼン・トーア!」を発動し、奴の胸へと手を突っ込む。

「ん・・・?」

「残念、ハズレだ」

リンカーコアを抜いた手応えが無いと思えば、奴が俺の右腕を鷲掴んで来て「ランブルデトネイター!」を発動。完全な自爆技に、俺は「パンツァーガイスト!」を発動して全身を魔力で覆った直後、俺と奴の足元の床が爆発を起こした。

「くぅ・・・!」

『マイスター!』

『問題ない・・・!』

急速後退して爆炎の中から脱出した。対する奴は影槍が消えたことで自由になり、体を再生させながら黒煙の中からゆっくりと歩き出て来た。

「俺は不老不死として造られ、お前は人間からテスタメントとして昇華され、苦しい思いを続けている。正直、俺よりお前の方が悲惨だ。2万年? 気が狂いそうになるな、聞いただけで。だから理解してくれるだろう? 同じ自身の終焉を望む者として」

その言葉に思わず「そうだな・・・」と返してしまった。アイリは『マイスター?』と不安そうな声を出した。ハッとして口を噤むが、どうしたって奴の気持ちが理解できてしまう。

「ほら見ろ。馬鹿な奴は不老不死に憧れるが、こんなものは地獄でしかない。大切な物を手に入れても、時間の流れの差異で手の平から零れて行く」

違うと、そう否定できない俺が居る。俺も多くの手を振り解いてきた。好きだと言われた娘たちの想いを踏みにじり、仲間だと肩を組んだ友との絆を断ち切ってきた。そのたびに思っていたさ、どうして俺がこんな目に、と。それでもシェフィ達や“堕天使エグリゴリ”の魂を解放する、そう固く決意してこれまで存在してきた。

「だから予言しよう、神器王。将来、お前は必ず仲間を裏切り、そしてその仲間から裏切られると」

「なにを・・・?」

いきなり突拍子もないことを言い出す奴に「・・・ありえない」そう言い返すものの、現状が既に裏切っているようなものだ。強くは言い返せなかった。奴は「嘘が下手だな!」と笑い声を上げて、展開した魔法陣上で四股を踏んだ。

「もっと素直になれよ、神器王!」

――鉄化鬼体――

そして今度は全身が赤錆色となり、「ふんっ!」足元の床に右拳を打ち付けた。鋼鉄の床を貫通させた奴の魔力が「増大している・・・?」ことに気付いた。

――煌き示せ(コード)汝の閃輝(アダメル)――

とにかく、何をしているかなど後回しにして砲撃を放つ。すると奴は床から右腕を抜き、そのまま裏拳で砲撃を弾き逸らした。

『何かしらのドーピングの可能性あり、だね』

「ああ。奴の体、さらに赤みを帯びているし、僅かに電気を放っているようにも見える」

――舞い振るは(コード)汝の麗雪(シャルギエル)――

試しに凍らせてみようと氷槍を20本と撃ち込むが、そのどれもが着弾時に一瞬にして融解した。

「お前が自身の存在意義としている願望――全エグリゴリの救いは、万人にとってはなんてことはないが、お前と親しい者にとっては受け入れ難いものだからだ」

――舞い降るは(コード)汝の煌閃(マカティエル)――

いちいち胸に刺さるような事を言いながら、一足飛びで俺へと高速で突っ込んで来た奴へとダメージ優先の光槍40本を一斉射出すると、その全てが辺り一面に弾き飛んだ。これまで以上の魔力を込めたにも拘らず、1本足りとも通用しなかった。あの体の変化が原因だな。

――ボーデンドンナー&メタルダイナスト――

奴の姿が描き消え、狙い撃ちを避けるためにこの場から離れようとした時、俺の周囲の床が壁の如くせり上がった。

「何せ、願望の果てにお前が死ぬというのであれば、親しい者たちは止めるだろう。失いたくない。だから止めたい、と」

気付けば奴はすぐ目の前に居た。繰り出される右拳を、体勢を横向きに変えつつ胸を逸らすことでギリギリ回避。

「解った風なことを・・・!」

魔力を右膝に込め、奴の腹に膝蹴りを打ち込んだ。奴は「ぐっ!」呻き声を漏らして体をくの字に折った。膝を降ろして、即座に組んだ両手を奴の後頭部へと振り下ろす。床に顔面から叩き付けられた奴の背中を踏みつけ・・・

「ははは・・・、解るさ。言っただろう。俺とお前は同じなんだよ。まるで鏡合わせのようだ」

――力神の化身(コード・マグニ)&知らしめよ(コード)汝の忠誠(アブディエル)――

強化術式で威力を高めた魔力剣を「違う。俺は、お前とは違う・・・!」奴の後頭部に突き刺し、脳を貫いた。そして改めて転移魔法を発動し、奴の心臓付近へと右手を突っ込む。しかし「また・・・?」ハズレのようで、リンカーコアを掴むことが出来なかった。

「いいや、同じ。お前の願望が叶えられるチャンスはわずか1回きり。それを逃せば大変なことになるのだろう?」

『コイツ、まだ喋るの・・・!? もううるっさい! 黙ってよね!』

脳を貫かれながらも両手を床に付いて上半身を起そうとしたため、影の触手である「カムエル」を発動して、奴の体を拘束して床に伏せさせる。

「ならば、願望が叶うかどうか怪しい瀬戸際に陥った時、いずれお前は手段を選ばなくなる。必要なら悪にも染まるだろう。これまで何千と悪事を働いたお前だ。罪悪感など、これっぽちも湧かないだろう?」

右手を奴の体に抜き差ししながらリンカーコアを探す。不快な言葉が耳に届くが、聞こえないフリをし続ける。

「そうなった時、親しい者たちの存在が邪魔で邪魔で仕方なくなる。何せお前の今の仲間は正義を振りかざす局員と騎士だからだ。だから裏切る」

「黙れ・・・黙れ・・・もう黙れ!」

『っ!? マイス――』

新たに展開した魔力刃で奴の首を刎ね飛ばす。奴の首は床をゴロっと転がり、光を失った双眸を俺に向けて来た。静かになったところでリンカーコア探しを続行しようとした時、奴の新しい頭部が再生し始めた。

『うげぇ! 気持ち悪い!』

すぐに氷雪系魔力を左手に宿し、再生途中の首に当てて凍結させてやると、頭部の再生が中断された。改めて、というところで・・・

――赤化旋風――

「っく・・・!」

首の無い体から発生する強烈な火炎竜巻に俺は吹き飛ばされてしまった。宙で態勢を立て直した時には奴は完全に復活を果たしていた。

「親しい者たちはお前に死なれたくないと思い、そして正義感からして悪事を働いてまで願望を果たそうとするお前の前に立ちはだかり、邪魔をするだろう。つまりお前の存在意義を無視する裏切りだ」

――フォーゲルケーフィヒ――

魔力スフィア10基によるリングが4つと奴の周囲に展開された。

――アドラーフリーゲン――

スフィア1基より10発という魔力弾が発射され始めた。俺は広間内を翔け回りながら「貴様に何が・・・!」反論しつつ、多属性魔力槍群であるカマエル100本を奴へと射出する。奴もまた床を駆け回って槍群の回避を行い・・・

――ハーツイーズバレット――

スフィアリングより魔力弾を何10発と連射して来る。俺と奴の間で魔力槍と魔力弾が交差して激突を繰り返し、魔力爆発を起こし続ける。

「俺だから解るんだ、神器王。俺も裏切り、裏切られた男だからな。俺も目的のために作品たちに偽りの目的を伝え騙した。すると真実を知った作品どもは俺の目的を妨げようと裏切った。ほら見ろ。いずれお前が辿る路を先駆しているだろう、俺は」

「~~~~っ!」

俺とはやて達が衝突する画が容易に想像できたため、それ以上の反論が出来なかった。だが「この先、俺たちの関係がどうなろうと、俺は逃げずに受け入れるだけだ!」そう開き直り・・・

『アイリ、もうこれ以上は構っていられない。一気に決めるぞ!』

『・・・ヤー!』

アイリと作戦会議。奴はリンカーコアを体内で移動させることが出来るようだから、まずはこれまで通り外に出させるしかない。

――氷結圏――

――力神の化身(コード・マグニ)&大地よ凍て付け(コンジェウンド)――

アイリと俺で術式強化、続けて俺が下級氷雪系術式を発動して、右足で床を強く踏みしめた。右足を起点に床が勢いよく凍り付き始めるが、やはり下級術式。奴は「先ほどの氷の槍が通用しないと解らないのか?」凍ることなく、呆れ声を漏らして肩を竦めた。

「お前を攻略する術がコレなんだ、許せ」

「ほう。ではお手並み拝見だ。今度はしくじるなよ?」

「覚悟しておけ。『アイリ!』」

『ヤー!』

――舞い振るは(コード)汝の麗雪(シャルギエル)――

俺とアイリで氷槍を10本ずつの計20本を宙に展開、そして奴やその周辺の凍っている床へ向けて射出すると、各氷槍が一斉に大小様々な六角柱へと変化して強烈な冷気を放ち出す。

「『エーヴィヒ・ベザッツングス・アルメー!』」

「っ! おお! 今の俺をも凍らせるレベルか・・・!」

余裕ぶっていた奴も凍り付き始め、とうとう全身が氷に覆われた。そして俺は左拳に魔力を込め、アイリとの協力術式の締めとして床の氷を殴った。衝撃が床全体に広がって行き、氷の床や柱、そして奴もろとも派手に砕け散った。視界が真っ白に染まる中、俺とアイリは「ユニゾンアウト・・・!」して、二手に分かれる。そして俺は白煙の中を突っ込み、白煙の中でうっすらと輝く奴のリンカーコアを目指す。

――ファイアウォール――

リンカーコアを視認したところで、俺の目の前に炎の壁が立ち上った。両手に炎熱系魔力を纏わせ、「どっせい!」炎の壁に十指を突っ込んで、壁を左右にこじ開けに入る。広間の至るところに火柱が立ち、凍っている奴の肉片を溶かしていく。

「何が攻略する術だ。何も変わら――っ!?」

壁の向こうから聞こえていた声が急に途切れた。そして俺がこじ開けた壁の隙間を縫って、その小さな体でリンカーコアを抱えたアイリが「ゲッチュー!」飛び出してきた。

「いつの間にユニゾンを解除して・・・!?」

「おわっ!?」

どこからともなく聞こえた奴の驚愕の声。アイリの持つリンカーコアが強烈な光を発し、ものすごい勢いで血管やら神経が構築され始めた。だからアイリも「キモっ!」そう言ってリンカーコアを放り捨てた。弧を描きながら宙を舞うリンカーコアの周囲に骨格が形成され始める。

「お前の負けだよ、プライソン」

――メタスターゼン・トーア――

転移魔法を発動した俺は右腕を伸ばし、筋肉に覆われ始める前にリンカーコアを掴み取った。俺の右腕に貫かれたまま奴の体は再生を果たし、「あぁ、楽しかった・・・」満足そうに眼を閉じた。

「ふんっ!」

そして俺は奴のリンカーコアを引き抜き、俺の胸から浮き出て来た魔力炉(システム)と同化させると、「やっと帰ってきたな」喪失感が埋まったような感じがした。

「さぁ、これで幕だ、神器王」

「ああ。アイリ、ユニゾンだ」

「ヤー!」

――第二級粛清執行権限――

アイリと再びユニゾンを果たした俺はリミッターを解除し、「我が手に携えしは友が誇りし至高の幻想!」久々に詠唱をした。いくらか記憶を失うだろうが、今は奴を否定――殺すことだけを考える。

(レン。お前のスキル、使わせてもらうぞ)

――真技・穢れし魂に厳粛なる浄化を(アム・リベラシオン)――

「ぅぐぅぅ・・・!」

『マイスター!?』

強烈な頭痛と胸痛に耐え、左手に巨大な霊体の腕を纏わせて奴に突っ込む。すれ違い様に奴の肉体から人型の魂だけを抜き取り、グッと鷲掴みながら抱え上げる。

『素晴らしい! なるほど、不死の殺し方は魂の消滅か!』

魂だけとなった奴が歓喜の声を上げた。

「少し違うが、まぁそんなところだ。命ある生物である以上、不死など存在しない。魂をどうにかすれば、不死の体とて無事では済まない」

『あぁ、俺にとっては永遠の器だった肉体から解放されたこの瞬間――死に際というのが、これほどまでに心地いいとは。・・・最高の気分で逝きたいものだ』

奴がそう言うとこの場面でモニターを展開した。一体何をするのかと思えば、モニターに映る映像に奴だけでなく俺やアイリも「っ!」絶句した。未だに艦隊が到着しないのか隕石はミッドの大気圏内にいくつも突入してしまっている。

「リアンシェルトだと・・・!?」

リアンシェルトがミッド全体を覆うように展開した12枚のニヴルヘイム魔法陣。ソレを通過した大型の隕石は容易く凍って砕かれ、小さくなった隕石の破片をはやて達が砲撃で対処していると言った感じだった。それを見た奴は『ここに来てこの裏切り・・・!』そう言って歯ぎしりした。

『まぁいいさ。俺の死は確定した。ミッドがどうなろうがもう知った事じゃない。が、少しはやり返さないとな。神器王、俺を殺してくれる礼に良いことを教えてやる。リアンシェルトは、お前の記憶を取り戻している』

「は?」

奴の言葉に思考が追いつかなかった。リアンシェルトが記憶を取り戻しているだと。ありえない、そんなこと。俺は「あってたまるか!」と否定する。記憶が戻っているなら、どうして敵対する。俺の下に戻ってきてくれば良いじゃないか。自惚れもあるが、リアンシェルトは俺を父親として愛してくれていた。そんな彼女が自分を偽って敵対するなんて考えられない。

『信じる信じないはお前の自由だ。地上に降りたら確かめてみると良い。記憶を取り戻しているのか?とな』

「~~~っ! くそぉぉぉーーーーーッ!」

『あぁ、俺を迎えに来てくれたのか・・・アガーテ・・・』

そして俺は霊体の左手を握り締め、不老不死だったプライソンの魂を強制的に昇天させた。背後でドサッとヤツの空っぽにの体が倒れ、砂状に崩れ去っていった。
 
 

 
後書き
さようなら、プライソン。
不死身として生み出された加害者にして被害者のプライソン、これにて退場です。本当はもっとルシルの複製術式などを使いまくって、ルシルの記憶をこれでもかってレベルで消失される予定でしたが、それだとリアンシェルトの思惑から離れてしまうので即座に断念。
彼の実力はさほど高くなく、今話の全力全開モードであっても六課陣営と戦えば負けるレベルです。所詮、不死身とはそんなものです。死なないから負けない、と。 
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