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レーヴァティン

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第一話 夢幻の世界へその九

「それが人間ってやつだ」
「格好悪い真似はしないさ」
 久志はこうも言った。
「そんな勝負でださいことこの上ない」
「そうだよな」
「スポーツなり武道でな」
「戦争ならかかっているものが違う」
 英雄は戦争の話もした。
「戦場にいる多くの人間の命、国家の命運がだ」
「だからかい」
「戦争は何をしてもだ」
 それこそ手段を選ばずにだ。
「勝つしかない」
「シビアなことを言うね」
「実際にそうだと思うが」
「ヒトラーやスターリンみたいにかい」
「俺はあの二人は嫌いだ」 
 英雄はこのことは断りを入れた、世紀の独裁者にして虐殺者である彼等はというのだ。
「あまりにも汚い」
「けれどっていうんだな」
「あの様にしてでもだ」
「勝たないといけないっていうんだね」
「戦争はな、しかしだ」
 勝負、それはというと。
「負ければ俺の誇りが傷付くが」
「あんたのことだけだからかい」
「いい」
 それならばというのだ。
「俺だけの恥だ」
「だからかい」
「その恥は注ぐ。しかしだ」
「戦争はかい」
「そうはいかない」
「勝たないとかい」
「その国と国民が苦しむ」 
 それが故にというのだ。
「だから勝たないとならない」
「それはそうだな」
 久志もこう言った、戦争については。
「戦争は勝たないと意味がないな」
「手段なぞ選んでいられるか」
 英雄はこうも言った。
「勝てばいい」
「ナチスやソ連みたいにか」
「あそこまで卑劣にするには難しいがな」
「口ではそう言ってもか」
「あれは極めている」 
 その卑劣さはというのだ。
「何かとな」
「ヒトラーやスターリンはか」
「平気で嘘を言った」
 まさに二人共だ、ヒトラーはチェコ併合の際イギリスもフランスも散々騙しそうして最後はチェコを恫喝して併合を実現した。そのペテンの手口は歴史に残っている。
「俺はあそこまでは出来ない」
「むしろ出来たら怖いな」
「そこまでの悪党にはな」
「なれないな、やっぱり」
「そうはな、しかしだ」
「戦争に手段は選ばないか」
「勝てばいい」
 またこう言ったのだった。
「謀略でも何でもな」
「戦争はか」
「そうして勝てばいい、謀略を使えばこちらの犠牲も減る」
「自分の軍隊もか」
「だから使えばいい」
 それもふんだんにという口調での言葉だった。
「そして勝つだけだ」
「まあ正論だな」
「そうだな、しかし勝負はか」
「別だ、一対一のそれはな」
 またこちらの話をするのだった。 
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