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レーヴァティン

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第一話 夢幻の世界へその八

「貴様も大概だな」
「というかあんた何者だ」
「この大学の一回生だが」
「何だ、じゃあ一緒か」
「貴様も一回生か」
「高等部からストレートで入ったな」
「俺は他の高校から来たがストレートだ」
 浪人せずに入ったというのだ、英雄にしても。
「そこも同じだな」
「そうだな」
「しかし貴様の剣術はだ」
「フェシングだぜ」
「サーベルか」
「ああ、わかるか」
「それもかなり独特のな」
 久志の剣術についてだ、英雄は言った。
「そうだな」
「癖が強いってよく言われるぜ」
「それも当然だ。そして俺はだ」
「あんた、日本の剣術それも」
 コーヒーの味を楽しみつつだ、久志は英雄を横目で見た。そうしつつ彼に言った。
「昔の剣術か」
「柳生新陰流だ」
「へえ、あの流派か」
「有名だな」
「柳生っていえばな」
「それでわかるな」
「幕府のお家芸だったな」
 このことで有名な流派だ、柳生一族は代々幕府の武芸指南役でありその家柄はかなり高いものであった。
「俺でも知ってるさ」
「むしろ剣を持っていて知らない奴の方がおかしい」
「そうした感じだな」
「俺の剣術はそちらだ」
「そうだな」
「その柳生の剣術をだ」
 まさにそれをというのだ。
「見せてやる」
「そして見せたうえでか」
「貴様を倒す」
「じゃあ俺もだ」
 先程以上に鋭い目になってだ、久志は英雄に言った。
「俺の剣術を見せてやるな」
「そうしてだな」
「あんたに勝ってやるさ」
「望むところだ」
「何だ、他流試合か」
 マスターは二人の話をここまで聞いて述べた。
「しかもフェシングと剣道でか」
「全然違うよな」
「それで試合になるのかい?」
 マスターは二人にこう問うた。
「それぞれの服装と刀で」
「それがなるんだよ」
「実際にそうしていた」
 久志も英雄もマスターに話した。
「これがな」
「実にな」
「本当かね。しかしフェアにやるんならな」
 この前提のうえでだとだ、マスターは二人にこうも言った。
「いいか」
「ああ、俺も卑怯な真似はしないさ」
「論外だ」
 二人共それぞれ言った、久志は明るく英雄はクールに。
「勝負でそうして勝ってもだ」
「意味がないからな」
「戦争ならともかくだ」
「こうした勝負は違う」
「そうだよ、こうしたことは正々堂々としないとな」
 マスターは二人の言葉を受けて笑って返した。 
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