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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Eipic14公開意見陳述会へ向けて~Scout~

 
前書き
今年最後の投稿になります。思えば激動の1年でしたね~。引退期限が決まったり、肺炎で死にかけたり、もういろいろ。残り4年と半年ちょい。体に気を付けて、これからも頑張って行きたいと思います!
それでは、皆さま良いお年を! 

 
†††Sideはやて†††

私は今、機動六課の後見人の1人であるクロノ君、そんで親友のすずかちゃんにも逢うために本局へとやって来てる。まずは時刻指定を受けてるクロノ君からや。

「本局って、初めて来ました・・・」

同行させたティアナがキョロキョロと周囲を見回した。管理局員って言うても所属する部署によっては本局に来ることなんてホンマにあらへんからな~。

「ティアナも執務官になったら本局での勤務になるからな。クロノ提督やすずかちゃ――月村技術官との面談の後に執務部に行ってみよか」

「是非お願いします!」

目をキラキラさせるティアナ。うん、素直でよろしい。ティアナを今回の面談に同行させた理由は、ティアナの将来の志望職務である執務官に関係してる。執務官になると、次元航行部の艦船の艦長や提督といったお偉いさんと顔を合わせる機会がどうしても多なる。そやから今の内から慣れさせとこかな~、って。

「ん。じゃあまずは艦船ドックやな」

「はい!」

クロノ君が艦長を務めてる新造艦、XV級クラウディアが停泊してる艦船ドックへ向かう。そんでドックに着いて、管理局が保有する艦が並んでる光景を窓から見たティアナが「すごい・・・」感嘆の声を漏らした。その並んでる艦船の中に懐かしきアースラの艦影もある。

「八神はやて二等陸佐です。クロノ・ハラオウン提督にお取り次ぎ頂けますか」

各艦船へと転送移動するためのトランスポーターに着いて、クラウディアのブリッジに通信を入れる。すると展開されたモニターにオペレーターの女性が映って、『お待ちしておりました。転送いたしますので、その場でお待ちください』すぐにクラウディアへと転送してくれた。

「おお。さすがに新造艦。綺麗やし広いな~」

「あたしもいつかこういう艦に乗って、次元世界の海を渡りたいです」

トランスポーター室から出たところで、「ようこそ、クラウディアへ」クロノ君に出迎えてもらえた。クロノ君の視線がティアナに向いたことで、「紹介するな。うちのフォワードリーダー、執務官志望の・・・」そう前置き。

「ティ、ティアナ・ランスター二等陸士であります!」

「ああ。僕はクロノ・ハラオウン。すでに聴いているだろうが、フェイトとアリシアの兄だ」

ガッチガチに緊張してるティアナは敬礼しながら自己紹介。そんで応接室へ向かい始めた中、「はやて。この後の予定は?」クロノ君がそう訊いてきた。

「ん? 第四技術部に、すずかちゃんに逢いに行こうって思うてる」

すずかちゃんにあるお願いをしに行くつもりや。部隊運営に不正があらへんかを監察するルシル君の確認もちゃんと取ったし、すずかちゃんと第四技術部主任のマリーさんがOKしてくれたら・・・嬉しいなぁ~。

「んで、その後は執務部のオフィスを見学やね。ティアナは必ず執務官になるし、その前にちょろっとな」

「ほう。彼女が執務官になると確信しているのか」

「私ら隊長陣やルシル君も認めてる逸材やし、何よりガッツがある。な、ティアナ?」

士官学校や空隊試験を落ちようともめげることなく、一心に執務官を目指すその心意気は本物や。ティアナは「恐縮ですぅ」キリッとした表情を続けたいようやけど、残念ながら結構ほころんでる。

「そうか、彼女たちからも認められているのならさぞ優秀なのだろうな。執務官は狭き門だということもあって人手不足でもある。優秀な人材は大歓迎だよ。・・・さて、到着だ。どうぞ」

「お邪魔しま~す♪」

「し、失礼いたします!」

到着した応接室に入る。脚の短い楕円形のテーブルを挟むように置かれたソファ2脚に、私とクロノ君は座る。

「失礼いたします」

1人の女性スタッフさんがワゴンを押して、お茶セット一式とホールケーキを持って来てくれた。私とクロノ君の前にカットされたショートケーキ、良い香りをさせてる紅茶の注がれたティーカップを置いてくれたから「ありがとうございます」お礼を言う。私の座るソファの側に控えるティアナの分もテーブルに置いてくれたから、「ティアナも座ろか」私の隣をポンポン叩く。

「あ、はい、では失礼いたします! あ、ありがとうございます、いただきます!」

「うふふ。はい、どうぞ♪ では艦長、私はこれで失礼します」

「ああ、ありがとう」

女性スタッフさんは一礼して応接室を後にした。それを見送った後、「にしても珍しいな。クロノ君、甘いもんとか苦手やのに」私はソーサーに置かれたティーカップを手に取って一口。

「苦手なのは変わらないよ。ただ、ロッサが作って来てくれた物だからな。無碍には出来ないし、僕でも食べられるように甘さ控えめにしてくれたようだし、食べないわけにはいかないだろ」

そう言うてクロノ君はフォークを手にケーキを一口。私も一口いただく。うん、美味しいわぁ。甘さ控えめって話やけど、それでも十分過ぎるほどに美味しい。ティアナも「わ、美味しい・・・!」頬を綻ばせて、パクパク食べてく。

「ところでランスター二士」

「っ!? ぶはっ・・・! げほっ、ごほっ!」

いきなりクロノ君に話を振られた所為かティアナが盛大に咽た。私は「大丈夫か!?」ティアナの背中を叩いて、ティアナはティーカップを手に取って一気に呷る。それで詰まった物が無くなってくれたんか、「あ、危なかった・・・」そう言うて大きく深呼吸した。

「クロノ君。もうちょい話しかけるタイミングを計るべきやない?」

「す、すまない、ランスター二士」

「あ、いえ! ハラオウン提督は何も悪くありませんので! お気になさらないでください!」

クロノ君からの謝罪にかえって焦るティアナが可哀想になってきたから、「そんでクロノ君。ティアナに何を訊こうとしてたん?」話を戻す。

「いや。さっきの話の続きだが、執務官にはどうして?」

「あ、はい。元々は亡くなった兄の夢だったんです、執務官は・・・」

「兄・・・、ランスター・・・。そうか、ティーダ・ランスター一尉の妹さんか」

クロノ君の口からティアナのお兄さんの名前が出たから、「ご存知なのですか!?」ティアナが驚いた。

「ミッド地上本部の動向には、本局も常に気に掛けているからね。あの問題発言が飛び出した会見もリアルタイムで観ていた」

クロノ君はそう答えた。ミッドの地上本部と本局はホンマに仲が悪い。地上本部の防衛長官レジアス・ゲイズ中将は確かに優秀で実力もあって、人を惹きつける牽引力もあり、剛腕な政略家でもある。そやけど、ちょう行き過ぎてる感もあるんよね。本部長にしたってゲイズ中将の後輩やから、その思想に染まってしもうてるし。

「それに、だ。ティーダ・ランスター一尉の殉職について問題発言をしたエンツォ・マクドゥガル防衛次官。彼を辞職に追い込んだのはルシルだ」

「「え・・・?」」

クロノ君の発言に私とティアナは耳を疑った。私は「それホンマなん?」って訊いてみると、クロノ君は当時の事を話してくれた。本局のレストラン街でルシル君、クロノ君、ユーノ君の3人で昼食を摂ってた際に、件の問題発言をしたマクドゥガル次官の会見を観たらしい。

「その時のルシルの怒りっぷりは、いま思い返すだけでも恐ろしいよ。あの問題発言を聴いた直後からステガノグラフィアを使って、マクドゥガル次官の身辺を探り始めたからな。後日、マクドゥガル次官のスキャンダルが各局で報道された瞬間、ルシルがやったなとすぐに判ったよ」

「あー、ステガノグラフィアかぁ。なるほどな~」

「あの、ステガノグラフィアとは一体・・・?」

「ルシル君の持つ電子戦魔法のことや。ネットワーク上ならありとあらゆるセキュリティをパスして、欲しいデータだけを奪取できるんよ。ルシル君がその気になれば、管理世界に住む人たち全てのプライバシーを丸裸に出来る」

ティアナに質問にそう答えると、「うわぁ・・・」ちょう顔を青くした。まぁ当然の反応やな。どんなセキュリティを用意してても、ステガノグラフィアの突破力には無意味やもん。本局のデータベースにすら、本局に気付かれることもなく侵入できるってゆうチートっぷり。ターゲットにされたら問答無用の降伏しかあらへん。

「あの、兄とルシルさんとの間で何かあったのでしょうか。ルシルさん、兄の魔法を使っていたんです。それに、次官を徹底的に追い詰めたのも、兄に対して何か思うところがあったのでは?と思えるんです」

そう訊かれた私とクロノ君は顔を見合わせて、小さく首を横に振る。

「すまないが、ルシルとティーダ一尉の関係については判らないな。単純にマクドゥガル次官の発言が度が過ぎていた、というのが一番考えられる。正直、僕もマクドゥガル次官の発言には吐き気を催したくらいだ」

「辛辣やなぁ。まぁ私も同じやけど。・・・それと私も、ルシル君とティーダ一尉の関係は知らへんなぁ。ごめんな」

「あ、いえ、お気になさらず・・・!」

そうは言うけど、やっぱり気になってるようでソワソワしてるから「どうしても気になるなら、ルシル本人に直接訊いてみるといい」クロノ君はストレートな解決法を提示した。確かにそれは一番やろうし、「そうしてみます」ティアナも受け入れた。

「話は変わるが、フォワードは今回の事件の全容について、どの辺りまで聞いているんだい?」

それってフォワードの訊くことやろか。普通は私に訊くべきやと思うんやけど。ティアナがチラッとあたしを見たから、「こうゆうのも大事やよ」頷いて見せた。とりあえずティアナのお偉方と顔合わせと会話に慣れるってゆう経験値を上げるために、クロノ君に任せることにした。

「はい。プライソン一派が地上本部へ襲撃を仕掛けるかもしれない、という段階までは教えてもらっています」

「そうか。なるほど・・・『さすがに騎士カリムの預言は伝えていないようだな』」

『カリムのスキルは機密事項やからね、ある程度はボカさへんとな』

フォワードには預言の話は伝えてない。機密事項ってこともあるけど、ミッド滅亡の阻止が目的、なんてことを先に知らせて変に気張らせんためでもある。頑張り過ぎて空回り、そんで最悪なケース、みたいな事件はティアナの件だけで十分や。

「はやて。襲撃の件を伝えたのはいつだ」

「かれこれ4週間くらいやろか」

フォルセティとヴィヴィオが六課にやって来てすぐに伝えたからな。クロノ君は「ふむ」って軽く頷いて、もう一度ティアナの方へと視線を向けた。

「ではランスター二士。プライソン一派が地上本部へと襲撃したその際、特に気を付けなければならないことは何だと思う」

クロノ君がそう訊ねると、ティアナは何かを察したように真剣な面持ちになって「私見になりますが・・・」そう前置き。

「ガジェットドローンを最も警戒しなければならないかと考えています」

ティアナの答えに、「ほう」クロノ君がそう漏らした。そんで「その心は」ティアナの答えについての詳細を訊ねた。

「地上本部が襲撃されるかもしれないという話を聴き、現在判明しているプライソンの兵器と地上本部の防衛力を調べてみました。地上本部はテロなどの襲撃に対して元より強大な防衛力を備えています。魔法と物理の障壁が1枚ずつ。正しく鉄壁と言っても過言ではない出力ですが、共に魔力を使って展開する物なのでAMFには弱いかと・・・」

ティアナの見解は正解や。地上本部を護る障壁は魔力頼り。列車砲や戦闘機の物理攻撃を永遠とは言わずともある程度は耐えてくれるやろう。その間に地上部隊や航空部隊で兵器を破壊して回る。聖王教会の騎士団も協力してくれるし、そう難しないはずや。そやけど何百機ってガジェットが障壁に取り付いてAMFを全開発動すると、防御力は落ちるやろう。そこに物理破壊攻撃を食らえば・・・。

「なるほど。洞察力も優れているんだな。素晴らしい人材じゃないか、はやて」

「やろ♪」

「恐縮です!」

クロノ君にも褒めてもらえたティアナはホンマに嬉しそうや。クロノ君は少しばかり俯き加減になって「・・・正直、ルシルの戦力を当てに出来ないと知った時、かなり不安だった」って漏らした。

「彼の広域攻撃と防御は、次元世界屈指のレベルだ。対兵器戦では活躍してくれただろう」

クロノ君はそう言うけど、私としてはルシル君が側に居って見守ってくれるってゆうだけで、すんごい支えになってくれるんやけど。でもルシル君の戦力が重要やってことも理解してる。

「そやけど、それ以上にルシル君はすごい仕事を成してくれたよ」

戦力以上の偉業をルシル君はしてくれた。クロノ君も俯かせてた顔を上げて、「地上本部に協力申請受諾を出させた、だな」そう言うた。元は地上本部からの無理やりな査察を阻止しに行ったんやけど、どうしてそうなったんかゲイズ中将と協力体制を結んでくるなんて特大なオマケも持って帰ってきた。

「ゲイズ中将は企業や政界からの支援もあるし、管理局最高評議会にも一目置かれてる。そんで本局や海が大嫌い。そやから本局から地上本部が狙われるかもしれへんって注意を呼び掛けても、地上の防衛力は鉄壁や~言うて特別な対策は執らへんかった」

地上本部の武力や発言力はホンマに高うなってて、本局でも危険視されてる。そやから下手に本局が口出しすると、内政干渉や強制介入なんて捉えてさらに諍いが起きる可能性がある。そやから何か大きな問題が起きても即座に本局からの主力投入は表だって出来ひん。

(その問題をどうにかするために、グレーゾーン気味の裏技を使うてまで私らは機動六課を作った)

それもこれも本局預かりでありながら地上で自由に動くため。そんで地上本部が本腰を入れるか、本局と教会の主力投入までの間、前線で問題と戦うための戦力。それが私ら六課の意義。やったんやけど・・・。

「そんなところにゲイズ中将からの、本局からの協力を受け入れる、という話だ。公開意見陳述会の終わりまで、という期間限定だとしても通常じゃ考えられない事態だ。当然、本局は度肝を抜かれたよ。僕と母さんはエイプリルフールかと疑ったくらいだ」

クロノ君の珍しい冗談に「エイプリルフール・・・?」ティアナが小首を傾げた。次元世界にはそんな習慣は無いから当たり前か。

「私やなのはちゃんの出身世界にあるイベントの1つでな。4月1日の午前中にだけ、嘘を吐いてもええんよ」

「へぇ~。変わった風習があるんですね」

「で、だ。時期的に見て十中八九、ルシルが何かしらの手段を使ってゲイズ中将を説得したと考えるのが妥当だな。ゲイズ中将は地上の正義の守護者と謳われているが、黒い噂は絶えない。おそらくはそこを突いたんだろう」

プライバシーを丸裸に出来るルシル君なら、ゲイズ中将の裏まで簡単に探れるやろうし。ルシル君だけは絶対に敵に回したないわ。少しばかりの沈黙の後、「ランスター二士」クロノ君がティアナに声を掛けた。

「あ、はい!」

「今回の事件、おそらく大変な任務になるだろう。だが、はやて達を信じ、共に支え合い、そしてこの任務を完遂して欲しい」

「っ! はいっ、もちろんです!」

ティアナは立ち上がって敬礼した。それからケーキと紅茶に舌鼓を打って、ふと「そう言えばアースラ、改修中なんか?」クラウディアの隣に停泊してたアースラの話題を振る。クロノ君がクラウディアに移ってからアースラは稼働してへんかったしな。

「いいや。経年劣化により、もう長期任務に耐えられない程に痛んでいるとのことで、来月の末に廃艦処分されることが決まったよ」

「そ・・・か・・・。なんや寂しいな、やっぱり。アースラは私らチーム海鳴の旗艦みたいな、思い出深い艦やったからなぁ」

「まぁ、あの艦もこれまで頑張ってくれて来たんだ。そろそろ休ませてあげよう」

「そうやね・・・。っと、ごちそうさまでした♪」

ケーキを食べ終えて、「そんじゃティアナ。そろそろお暇しよか」先にケーキを食べ終えて、紅茶をほんのりと頂いてたティアナに声を掛ける。

「あ、はい。ごちそうさまでした」

「ああ。っと、そうだ。はやて。ロッサからの預かり物だ」

そう言うてクロノ君が私に差し出したんは1枚のデータカードやった。私はそれを受け取りながら「ロッサがここへ来てたんはコレが理由か?」って訊ねる。すると「ゲイズ中将周りのデータが収められている」って答えてくれた。

「今後の捜査に役立ててくれ、だそうだ」

「おおきにな。あとでロッサにもお礼を言わなな♪」

「ああ、そうしてやってくれ」

「ん。じゃあクロノ君。またな」

「失礼いたします、ハラオウン提督」

そうしてクロノ君に見送られながら私とティアナはクラウディアを後にして、そのままの技術部区画へと向かう。時刻を確認して、「まだお昼休みやないし、オフィスに居ってくれるかな~」すずかちゃんへと通信を繋げてみる。すると間を置かずに『はいは~い』モニターに、青い制服と白衣を着たすずかちゃんが映った。

「久しぶり、すずかちゃん」

『はやてちゃん! 久しぶり~♪』

六課設立前に逢ってからは今日まで全然逢ってないし通信もしてへんかったからなぁ、久しぶりなんよね。

「すずかちゃん、今から第四技術部のオフィスに行くんやけど・・・時間ええやろか」

『うん、もちろんだよ♪ 確か今日だったもんね、予定日。スケジュールはしっかり守るから、今日は1日オフィスに居るよ』

「了解や。いま向かってるから、ちょう待っててな~♪」

『は~い♪』

通信を切ってそのまま歩みを進める中、「そう言えばティアナはすずかちゃん、月村技術官とは初めてやんね?」一歩斜め後ろを歩くティアナに訊いてみる。スバルはすずかちゃんとはずっと前からの友人やったしな。

「あ、はい。月村技術官ってどういう方なんです?」

「ん~・・・可愛い子かなぁ。あと身体能力がめっちゃ高くて、たぶん今でもなのはちゃんやフェイトちゃんより上かもしれへん。ルシル君とはどっこいどっこいかな~。当然わたしなんか足元にも及ばへんわ~」

「ええ!? さっきお顔を後ろから拝見しましたけど、その・・・おっとりした方で・・・。強くはなさそうと言うか何と言うか・・・」

「やろ? 初見はやっぱりそうゆう見方なんよ」

チーム海鳴ん中で一番ギャップがあるのはすずかちゃんやしな。あんなおっとりした顔してても肉弾戦に強いんやし。技術官になってから腕は落ちたって言うてたけど、模擬戦した時は冗談やなくて強かったわ。すずかちゃんとの思い出を振り返りながら、ようやく辿り着いた第四技術部のオフィスへと入る。第零技術部――スカラボとは違くて開発室はまた別のところに設けられてるから、そこには六課のようなオフィスが広がってる。

「失礼します~」

「失礼いたします!」

オフィス内には数人の技術官が居って、私の姿に「すずちゃ~ん。お客さんだよ~!」オフィスの奥にある扉に向かって声を掛けた。すると「は~い!」すずかちゃんが扉を開けて出て来た。

「いらっしゃい、はやてちゃん! 応接室はこっちだから来て~!」

すずかちゃんに手招きされたことで「ティアナ」を伴って、出来るだけ作業中のモニターを見ずにオフィスの奥へと進む。そんですずかちゃんの居る部屋――応接室に入る。

「ゴメンね、ちょっと狭くて。あんまり応接室なんて使わないから」

9畳ほどの部屋に脚の長い長テーブル1脚とパイプ椅子が両側に3脚ずつの計6脚。すずかちゃんは抱えてたダンボールを応接室の片隅にドスンと降ろして、「あとは、お茶と茶菓子っと」応接室の出口に向かおうとした。

「あ、お構いなく。さっき、クロノ君のとこでケーキと紅茶を頂いたんよ」

「そうなんだ。あなたもかな?」

すずかちゃんにそう訊かれたティアナも「は、はい。頂きました」って答える。そんで「ん。じゃあ、早速お話を聴こうかな。どうぞ」すずかちゃんに椅子に座るように促されたから、私とティアナはパイプ椅子を引いて座る。

「あ、まずは、自己紹介からかな。はじめまして。月村すずか、といいます。はやてちゃんやなのはちゃんと同じ世界出身で9歳からの幼馴染で、チーム海鳴ではフルバックでした。ここ第四技術部で技術官をしてます」

「はじめまして! ティアナ・ランスター二等陸士です! 機動六課、フォワードのリーダーを務めてます!」

「うん。よろしくね~♪」

すずかちゃんとティアナの自己紹介も終わって、「さて。私に何かお話があるんだよね」すずかちゃんが本題を促してくれた。

「うん。あんまし長居するのも迷惑やろうから単刀直入にお願いするな。すずかちゃん。六課に出向してくれへんやろか」

すずかちゃんへのお願いゆうのが、すずかちゃんの六課への出向願い。すずかちゃんが「シャーリーじゃダメだった?」小首を傾げると、ティアナも「シャーリーさん?」の名前がいきなり出て来たことで小首を傾げた。

「すずかちゃんはな、デバイスマイスターとしてのシャーリーの師匠なんよ」

「そうだったんですね」

「さらにさらに、次元世界屈指の天才科学者、第零技術部の部長ジェイル・スカリエッティの弟子でもあるんよ」

「スカリエッティ少将のことですね。プライソンとして誤認逮捕されてしまったという・・・」

ティアナがそう言うと、「うん」すずかちゃんが悲しそうに俯いて、悔しそうにテーブルの上に置かれた両拳をギュッと握りしめた。そんなすずかちゃんに「ドクターとシスターズは今・・・?」そう訊ねてみた。

「あ、うん。今もなお拘留中だよ。スカラボも閉鎖中で立ち入り禁止。本当に悔しいよ。ドクター達スカリエッティ家は何も悪くないのに」

「・・・そんでな、すずかちゃん。もう知ってるやろうけど私ら六課はプライソン一派を追ってる。その協力をしてほしいんよ。技術官として、そんで戦力として・・・」

プライソンが動きを見せると推測してる公開意見陳述会。その日、私ら六課も地上本部の警備をする予定になってる。その間、六課の戦力はシャマルとザフィーラとアイリだけになってまう。ルシル君は調査官やから戦力としては数えられへん。そこを狙われたら、いくらシャマル達でも敵の戦力によっては墜とされてしまうかもしれへん。

「(プライソンがフォルセティとヴィヴィオを取り戻そうとしてる可能性がある以上、六課の防衛力も高めとく必要性がある。そのために私は、六課に出向してくれるさらなる仲間候補に声を掛けてる。すずかちゃんはその3人目や)・・・これ、六課に関するデータが入ってる。このデータを見てからで答えを――」

すずかちゃんに六課設立の真の目的などを記したデータを送ろうとしたら・・・

「必要ないよ、こんなの。はやてちゃんから、大切なお友達からの応援要請を断るわけないよ」

すずかちゃんは首を横に振って、「私でよければ是非協力させて♪」満面の笑顔を浮かべて私のお願いを受け入れてくれた。すずかちゃんのその笑顔に、私はどれだけ救われてきたか。

「うんっ。よろしく頼むわ、すずかちゃん♪」

「こちらこそ♪ 六課に直接出向けば、なのはちゃん達のデバイスの最終調整も簡単に出来るだろうし。私としてのメリットも十分あるから」

「あ、でもマリエルさんの許可は・・・?」

「もし六課から応援要請が来たら応えてあげて、って言われてるから大丈夫だよ」

なのはちゃん達のデバイスの管理は今やマリエルさんからすずかちゃんに移ってるからな。マリエルさんもそれを酌んで許可を出してくれたかもしれへんな。すずかちゃんは「これからよろしくね♪」ティアナにも微笑みを向けたんやけど、ティアナが反応せえへんかったから、チラッと隣に座るティアナを見る。

「・・・」

ティアナはほーっと呆けてた。その目はすずかちゃんに釘づけやったから、「ティアナ?」すずかちゃんが顔を近づけながら呼んだ。そんでようやく「ハッ! はい!」再起動。

「す、すいません! あの、なんでしたでしょうか!」

「あ、うん。これから私も六課でお世話になるからよろしくね、って」

「よろしくお願いします!」

恥ずかしさで顔を真っ赤にしてるティアナが敬礼して応じた。私は「何か考え事か?」って訊いてみた。するとティアナが「・・・れてました・・・」ボソボソと何か呟いた。

「「ん?」」

「つ、月村技術官の笑顔に見惚れてました!」

ティアナが呆けてた理由がそれやった。すずかちゃんも頬を少し赤くして「ありがとう♪」さらに追撃の笑顔を私らに向けた。すずかちゃんの笑顔ってすんごい可愛いんよ、うん。久々のとびっきりの笑顔に「おうふ」私もくらっときたわ。ティアナなんてもう「なんか幸せです」ちょう危険領域に踏み込んでる。

「あ、私のことは名前で良いよ。すずかさん、で♪」

「すずかさん・・・はいっ。よろしくお願いします、すずかさん!」

すずかちゃんの母性溢れる笑顔のファンがまた1人増えた今日。私の用事も終わったことで、「そろそろお昼ご飯だね。魚が美味しいお店が出来たんだ。一緒しよう♪」すずかちゃんがお昼に誘ってくれた。

「そうやね。うん、ご一緒させてもらおか」

「はいっ!」

とゆうわけで、私らは新しく出来たってゆうレストランへと向かう。その途中、「そう言えば応援って私だけなの?」すずかちゃんに訊かれた。ティアナ含めてのフォワードにサプライズってことで、ちょう黙ってた感もあったんやけど・・・。

「うん。すずかちゃんで3人目やよ。1人目はアリサちゃん、2人目はギンガや」

「っ! ギンガさんも六課に出向してくれるんですか・・・!」

「そうやよ。クイント准陸尉の件もあるしな。やっぱり最前線を担う六課に居った方が、ギンガもモヤモヤせんでええやろ。あ、これスバル達には秘密やよ?」

「あ、はい!」

ギンガの六課出向の話は、元はナカジマ三佐からの提案やった。

――たとえ洗脳されていたとしても、クイントが生きてくれてたのは嬉しかったよ。しかし、拉致された時とまんま変わらないってわけじゃねぇだろう。両腕があったし、改造手術を受けてるだろうな――

首都防衛隊のゼスト隊が全滅したあの事件。プライソンの研究所にはクイントさんは両腕だけが残されてた。そんで地下水路でのクイントさんの両腕はしっかりと存在してた。おそらくサイボーグ化されてると見てもええやろうな。

――八神よ。うちのギンガ、六課に迎え入れてやってくれねぇか。クイントと戦ってからというもの、どこか上の空でよ。仕事のミスは一切ねぇんだが、それでもな・・・――

――判りました。ギンガをお預かりさせて頂きます。あと出来れば、アリサちゃんも一緒に出向させてもらいたいんですけど・・・――

――俺からは問題ねぇよ。アリサに確認してくれや――

そうゆうわけで、私はアリサちゃんとギンガを六課へ出向させることが出来た。こうなったらすずかちゃんも呼ぼうと考えて、こうして無事に呼ぶことが出来たわけや。

「でも、そうですね。やっぱりスバルと一緒に、クイントさんを助けてあげてほしいです」

「本当に驚いたよ。クイントさんが生きていたって話をギンガから聞いて。でもすごく嬉しかった。だからクイントさんを助けてあげたいって思ったし、はやてちゃんたち六課のお手伝いをしたいって、設立の頃からずっと思ってたから。だから今日のお願い、本当に待ち望んでたんだよ」

「おおきにな、すずかちゃん。でもな、これにはちょう問題があってな~」

腕を組んでそう唸ると、「問題?」すずかちゃんとティアナが小首を傾げた。私は「あと1人、誘いたいんやけど誘えへんのよ」ガックリ肩を落とす。

「・・・っ、あー、なるほど。これは怒っちゃいそうだね」

すずかちゃんも察したようで苦笑した。ティアナが「どういうことでしょうか?」って訊いてきたから、「今、六課にチーム海鳴のメンバーの大半が揃ってるんやけどな。でもあと1人残ってるんよ」そう答える。

「第97管理外世界で結成された少数精鋭チーム、チーム海鳴・・・。えっとぉ~、八神部隊長、リイン曹長、なのはさん、フェイトさん、アリシアさん、ヴィータ副隊長、シグナム副隊長、シャマル先生、アイリさん、ザフィーラ、ルシルさん、すずかさん、アリサさん。・・・あ! シャルさん!」

「そう。もう1人、現在は聖王教会騎士団の1個部隊を預かる隊長、シャルちゃんが居るんやけど・・・」

「シャルちゃんは今、聖王教会幹部としての修行中の身だから、局員としては休職中・・・」

私かてシャルちゃんを六課に誘いたい。そやけどシャルちゃんの立場がそれを許さへん。残念やけど、シャルちゃんの修行が終わるまでは局員として同じ空は飛べへんね~。

「シャルちゃん、のけ者にされた~って怒るだろうね~」

「光景が目に浮かぶな~」

そんな起こるかもしれへん未来に、私とすずかちゃんは苦笑するしかなかった。

 
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