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SAO~円卓の騎士達~

作者:エニグマ
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第四十六話 ALO最強プレイヤー

~キリト side~

空気の塊を切り裂き飛翔しながら、俺が呟いた。

キリト「サラマンダーの大部隊より先行しているか微妙だな。」

俺に続いてアリスが呟いた。

アリス「警告が間に合えばいいんですが。」
リーファ「警告が間に合っても全員でケットシー領に逃げ込めるか、もしくは揃って討ち死にか、どっちかだと思うよ。 最悪、領主だけ逃がせればいいんだけど。」

リーファの言葉に、俺が思案顔で顎を撫でていたら、サクマが口を開いた。

サクマ「戦う前から最悪のシナリオを考えてたら世話無いな。 悪いことじゃ無いけど、それに基づいて行動してたら結果は悪くなるぞ。 行動するときだけは考えられるなかで最も良いシナリオを思い浮かべないとな。」
リーファ「へー、覚えとこ。」

俺たち会話をしていた、その時。

ユイ「あ、プレイヤー反応です!」

不意にユイが叫んだ。

ユイ「前方に大集団、六十八人、これがおそらくサラマンダーの強襲部隊です。 さらにその向こう側に十四人、シルフ及びケットシーの会議出席者と予想します。 双方が接触するまであと五十秒です。」

その言葉が終わると同時に、視界を遮っていた雲の塊が切れた。
限界高度を取って飛んでいた俺たちの眼下に、緑の高原が広がる。
その一角に飛んでいる無数の黒い影。
多分、この集団がサラマンダーの強襲部隊だろう。
視界の向こうには、白く横たわる長テーブル、あの場所が即席の会談場と言った所だろう。
椅子に座る領主たちは、会談に夢中になっていて、サラマンダーの強襲部隊に気付いていない。

リーファ「間に合わなかったね。」

リーファが俺たちに向かって呟いた。

確かに、今からサラマンダーの強襲部隊を追い越し、領主を逃がす事は不可能だ。

キリト「さてと、行くか。」
シンタロー「OK。 いっちょ暴れるか。」

俺達は翅を思い切り震わせ、猛烈な加速を開始し、急角度のダイブに入っていた。

リーファ「ちょ、ちょっとぉ!! なによそれ!!」

リーファも慌ててダイブに入った。

次の瞬間、大きな爆発音が鳴り響いた。
俺達が速度を緩めず着陸したからだ。
その場に居る全ての者が、凍り付いたように動きを止めていた。
俺は大きく息を吸いこんで、

キリト「双方、剣を引け!!」

俺の声は、空気をビリビリ震えさせた。
サラマンダーの強襲部隊は動揺して僅かに後退る。

サクマ「うるせぇな、そんな大声じゃなくても良かったろ。」

味方からのクレームが一件。

~side out~

~リーファ side~

私は会談場所に着陸し、旧友の居る場所まで移動し、話し掛けた。 シルフ族の領主サクヤだ。

リーファ「サクヤ、無事?」

声を掛けると、呆然とした表情で振り向き、私を見て眼を丸くする。

サクヤ「リーファ!? どうして此処に!? い、いや、そもそもこれは一体!?」
リーファ「うーん、簡単には説明出来ないのよ。 ひとつ言えるのは、私達の運命はあの人達次第、ってことだわ」
サクヤ「何が何やら。」

サクヤは再び、こちらに背を向けて屹立し、騒ぎの中心の人達を見る。
私はその心中を思いやりながら、改めて会談場を見やった。
此処にはシルフ、ケットシーが七名ずつ。
その内のシルフ、ケットシーの六人は護衛だろうか?
武装して領主を守るように立っている。
シルフの領主サクヤは、髪は黒色に近いダークグリーンの艶やかな直毛を背に長く垂らし、整った顔立ちをしている、何より特徴的なのは緑色の和服の長衣だ。

サクヤの隣に視線を向けると、小柄な女性プレイヤーが眼に入った。
身に纏うのはワンピースの水着に似た戦闘服に、とうもろこし色に輝くウェーブヘア、両脇から突き出た大きな耳、お尻からは長い尻尾が伸びている、ケットシーの証だ。
彼女がケットシー領主、アリシャ・ルーだ。

私は二人の領主を確認すると、皆に眼を向けた。
そして再び、キリト君が口を開いた。

~side out~

~キリト side~

キリト「指揮官に話がある。」

俺の、余りにふてぶてしい声と態度に圧倒されたように、サラマンダーのランス隊の輪が割れ、一人の大柄な男が進み出て来た。
この男が指揮官だな。
俺達は、並んで翅を羽ばたかせている。
俺の前に立った大男が口を開き、よく通る太い声が流れた。

「全種族混合パーティーか。 貴様らが何を企んでいるか知らんが、その度胸に免じて話だけは聞いてやろう。」

俺は臆することなく、大声で答えた。

キリト「俺の名はキリト。 スプリガン=ウンディーネ同盟の大使だ。 この場を襲うからには、我々四種族との全面戦争を望むと解釈していいんだな?」

サラマンダーの指揮官は、絶句した。

「スプリガンとウンディーネが同盟だと。 なら、其処に居る全種族はなんだ」
キリト「リアルでの友人で今回、護衛を頼んだんだ。 此処には貿易交渉に来ただけだからな。 だが会談が襲われたとなれば、四種族で同盟を結んでサラマンダーに対抗することになるだろう。」

暫しの沈黙が流れた。――やがて、

「たった二十数人、たいした装備も持たない貴様らの言葉を、そう簡単に信じる訳にはいかないな。」

サラマンダーの大男は突然背に手を回すと、巨大な両刃直剣を音高く抜き放った。

「俺の攻撃と俺が選んだメンバーの攻撃を、三十秒耐え切ったら、貴様らを大使と、その護衛だと信じてやろう。 そっちも二人選べ、アレク! レン!」

すると、隊の輪を中から、二人の男がこちらにやって来た。
男性プレイヤーだ。

アレク「お初にお目にかかります。 私の名はアレキサンダー、字(あざな)は省略してアレク、以後お見知り置きを。」
レン「俺はレンだ。」

アレクは丁寧に頭を下げ、背中に装備していた両手槍を手に取る。
レンは両手斧だ。

キリト「へー、三十秒か。 ずいぶん気前がいいな。 こっちは、」
サクラ「私がやるわ。」
シンタロー「んじゃ俺も。」

俺とサクラ、シンタローも武器を抜剣した。

~side out~

~リーファ side~

緊迫した空気の中、私の隣に立つサクヤが低く囁いた。

サクヤ「まずいな。」
リーファ「え?」
サクヤ「あの大男が装備している両手剣、あれは《魔剣グラム》だ。 大男の方は《ユージーン将軍》だろう。 あと二人はサラマンダーの地上部隊の隊長《レン》と空中部隊の隊長《アレキサンダー》、 知っているか?」
リーファ「な、名前くらいは、」
サクヤ「サラマンダーの領主《モーティマー》の弟、リアルでも兄弟らしいがな。 知の兄に対して武の弟、純粋に戦闘力ではユージーン将軍の方が上だと言われている。 それに、あの二人はサラマンダーではユージーンの次に強いと言われてる、詳しい戦闘力は解らないが、相当なものだろうな。」
リーファ「じゃあ、全プレイヤー最強と、二番目が出て来たって言うことなの? 」
サクヤ「ってことになるな。 モーティマーもとんでもない奴を送り込んでくれたものだ。」

私は両手を胸の前でぎゅっと握りしめた。

~side out~

~キリト side~

サクラはレンと地上で、シンタローはアレクと空中で戦うことになった。
俺とユージーンは空中だ。

空中で対峙する俺とユージーンは、実力を計るように長い間相手を見ていた。
最初に動いたのは、ユージーン将軍だった。
予備動作なく、超高速で突進を掛ける。
大きく振りかぶった大剣が俺に襲い掛る。
だが、俺も《あの世界》で培った反応速度を以て迎撃態勢に入った。
無駄のない動作で頭上に巨剣を掲げ、剣を受け流し、カウンターの一撃を撃ち込む為に。
その直後、

キリト「!?」

ユージーンが振り下ろした大剣が、俺が携えてる巨剣と衝突するその瞬間、刀身が透過し、再び実体化。
俺は胸の中央に炸裂した斬撃で地面に叩き落された。
轟音が響き、次いで土煙。

~side out~

~リーファ side~

リーファ「な、いまのは!?」

絶句する私の問いに応えたのはケットシー領主、アリシャ・ルーだった。

アリシャ「魔剣グラムには、《エセリアルシフト》っていう、剣や盾で受けようとしても非実体化してすり抜けてくるエクストラ効果があるんだヨ。」
リーファ「そんな無茶苦茶な。」

~side out~

~シンタロー side~

響いた轟音に反応し、地面を見ると、キリトが倒れてた、が、すぐに起き上がる。
ダメージはそう多くなさそうだ。

アレク「良いんですか? よそ見をしてて。」
シンタロー「ん? あぁ、悪いな。 じゃ、こっちも始めるか。」

矢を手に持ち、構える。
まずは第一射、避けられる。
続いて矢を放つ。
全て避けられる。

シンタロー(こいつ、俺が矢を放ってから避けてる。 大した反応速度だな。 弓矢じゃ不利か。)

そう考え、背中の片手剣に手をのばす。
と、その瞬間アレクが突っ込んできた。

~side out~

~サクラ side~

大きな音に驚いて音のした方を見るとキリト君が倒れてた。
と、その時、地面に私以外の影が見えたので見ると、レンがそこまで迫っていた。

サクラ(早い!)

そう思いつつ攻撃を回避する。
ドオォォォォン!!
見ると斧の当たった地面が割れている。
物凄い威力だ。
もしあのまま受けてたら即死には届かないだろうけど、確実にイエローまでは削れていただろう。
けど、それはあの世界では良く有ることだった。
特に、ボス戦とギルドメンバーとの戦闘なんかでは、一撃で半分も削れることなんて日常茶飯事。
それに比べてこのゲームでは負けても死なない。
死のプレッシャーが無い分、臆することもない。
私の最愛の人を思い浮かべながら呟く。

サクラ「こんなところで躓いてる暇は無いの。」

そして、意識をただ、相手を倒すことのみに集中させる。
久し振りの本気、見せてあげる。

~side out~

~キリト side~

俺はホバリングするユージーン目掛けて一直線に突進していく。

ユージーン「ほう、よく生きていたな!」
キリト「まぁな。 それよりもなんだよ、さっきの攻撃は!」

そう言ってから、お返しとばかりに片手剣を叩きつける。
翅を強く鳴らし超加速移動を繰り返しながら、斬撃の応酬が続いた。
俺の連続攻撃をユージーンが両手剣で弾き返していく。
この斬撃の応酬は、他のプレイヤーの眼から見たら、霞んで見えるはずだ。
ユージーンは僅かな隙を見つけて、魔剣グラムのエクストラ効果を使用し、攻撃をヒットさせてくる。

キリト「効くなぁ。 おい、もう三十秒経ってんじゃないかよ!」
ユージーン「悪いな、やっぱり斬りたくなった。 首を取るまでに変更だ。」
キリト「この野郎、絶対泣かす。」

俺とユージーンが一定の距離を取る。
その時、俺の背中にシンタローが背中を合わせてきた。

シンタロー「悪い、一瞬だけ隙作れないか?」
キリト「出来るけど、どうした?」
シンタロー「弓矢しまって、糸出したいんだ。」
キリト「分かった。 俺も出したいものがあるしな。」
ユージーン「何をこそこそ、喋っている!!」
アレク「お仲間とお喋りとは、随分と余裕なようですね!」

アレクとユージーンが突っ込んできた。
俺は右手を突き出した。
その手が黒く輝き、ボン、ボボボボボ!と周囲の視界を真っ黒に染め上げた。
眼くらましの魔法だ。
俺はすでに詠唱を終えていたのだ。

キリト「これでいいか?」
シンタロー「あぁ。 サンキュー。」

俺はメニューを操作して、二本目の剣、ダークリパルサーを装備する。
そのまま太陽に向かって急速に高度を上げる。

ユージーン「時間稼ぎのつもりかぁ!!」

ユージーンの叫び声が響き渡ると、赤い光の帯が迸り、黒煙を切り裂いた。
しかし、二人の姿は、何処にも見当たらなかった。
空をホバリングするのは、ユージーン将軍と、アレクだけだ。

アレク「将軍、彼等は逃げてはいません、何処からか現れるはずです。」

そう言って、ユージーンとアレクは武器を構え直した。
俺達は太陽を背にして、真上からユージーンとアレクに向かっていく。

ユージーン「ちっ。」
アレク「行きますよ。」

ユージーンとアレクがそう言ってから、急上昇を始めた。
ユージーンとアレクは急上昇をしながら、迎撃の態勢に入っていた。
流石と言うべきか、普通なら此処で太陽光線を避けるため水平移動しようとし、そこを上から叩き落されていたはずだ。
ユージーンは俺に、アレクはシンタローにユージーンに少し遅れる形を取っている。
ユージーンの必殺の一撃は、これまで常に両手で握られていた黒い巨剣に、そして魔剣グラムのエクストラ効果で透過させたが、“左手”に握られていた長剣によって阻まれていた。
《二刀流》、あの城で二人の勇者の内の一人が取得したスキル。
驚愕の気配を洩らすユージーンに向けて、俺は雷鳴のような雄叫びを放った。

キリト「お、おおおおああああーーー!!」

直後、両手の剣を、霞む程の速度で次々に打ち出した。
俺はこの剣技を模倣した。
《二刀流》上位剣技、《スターバースト・ストリーム》十六連撃。
ユージーンも対抗するが、二段構えのパリィに次々に弾き返される。

ユージーン「ぬ、おおおおーーー!!」

地上に向けてどんどん押し込まれるユージーンが野太い咆哮を放った。
彼が身に着けている防具の効果なのか、薄い炎の壁が半球状に放射され、僅かに俺の体を押し戻した。

ユージーン「落ちろおおぉぉおお!!」

ユージーンは、魔剣を小細工抜きの大上段に構え、大音響と共に、真正面から撃ち込んだ。
だが俺は臆することなく突進で距離を詰め、エセリアルシフトが発動するより速く攻撃を叩き込む。

キリト「ら、ああぁぁぁぁ!!」

最後の突き攻撃が、真っ直ぐに突き込まれた。
それから素早く剣を引き戻し、右肩から斜めに体を切り裂いた。
凄まじい爆発音と共に、ユージーンはエンドフレイムを巻き上げながら、燃え尽きた。

~side out~

~シンタロー side~

アレクがこちらに突っ込んでくるのを見つつ、手に持つ剣を投げる。
アレクは一瞬、驚いた顔をしたが、すぐに剣を避け、またこちらに向かってくる。

アレク「血迷いましたか!? 剣を投げるとは!」
シンタロー「バーカ、作戦の内だ。」

そのとき、投げた剣がアレクを背後から襲う。

アレク「なっ!? バカな!」

そう、俺はキリトの作ったブレイクタイムで糸をストレージから出し、剣に結びつけたのだ。
これはSAOの時には完成してたのだが、どうしてもデカイ戦いの時は大人数になるので、この技は使えなかった。
糸が他のプレイヤーに絡まると危険だからな。
だが、一対一の今ならこの技を使える。

シンタロー「行くぜ。」

俺は糸を引っ張り、剣を動かす。
一見、不規則に見える動きだが、全てアレクの死角に動かしている。
それ故にアレクは反応が遅れてパリィがあまり出来ないでいる。

アレク「くっ、」

それでも流石と言うべきか、段々とパリィ出来るようになっていく。
だが、アレクは剣しか見てない。
その隙に俺自身がアレクの死角に移る。

そして、タイミングを見計らって剣を手元に戻す。
アレクは剣を見失い、さらに俺がさっきまでの位置に居ないことに気付いて、慌てている。

シンタロー「ハアアァァァァ!!」

俺は片手剣ソードスキル、《ヴォーパル・ストライク》を模倣し、アレクに攻撃する。

アレク「くっ、アアアァァァァ!!」

アレクが俺の事に気付き、攻撃を受けようとする。
ガキイィィィィン!!
見事に俺の攻撃を受け止めた。
SAOだったらここで俺に硬直が入り、俺は負けていただろう。
だが、ここはALO。
技後硬直は存在しない。

シンタロー「オオオォォォォ!!」

俺はそのまま片手剣上位ソードスキル《ファントム・レイブ》六連撃を放つ。

最初の一撃で体勢を崩し、次で槍を破壊、残りの四連撃を叩き込む。

そして最後の一撃でアレクのHPを削りきり、戦いに勝った。

~side out~

~サクラ side~

シンタロー君とキリト君の二人が戦いに勝った事を横目で一瞬、確認してから目の前の敵に向かい直る。

レン「バカな、あの二人が負けただと、」
サクラ「よそ見してて良いのかしら?」

僅かに出来た隙を付き、突撃する。
他の人から見たら私が消えて一瞬でレンの背後に現れたように見えただろう。
そしてコンマ数秒遅れてレンの体に斬撃が入る。
片手剣最上位ソードスキル《ノヴァ・アセンション》十連撃を私が限界まで加速させたのだ。

サクラ「次にやるときは他に気を取られないように気を付けてね。」

~side out~ 
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