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平成ライダーの世界

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第十六章

 自身を鍛えることによってなる鬼、つまり仮面ライダーであり日本各地に支部があり鬼達がいます。何故鬼のそうした組織ができたのかは映画版でわかります。
 非常に深く広い作品世界であり果たして一年で描ききれる世界なのか、と今更ながら資料を見て思ったことがあります。
 その広大かつ深遠な世界は日本の世界であり日本人ならば落ち着きを感じられますし日本文化を海外に伝えられる作品でもありました。しかし本当に問題となっている部分もまた多い作品でした。
 そもそも作品世界を一年で描ききれるのか、仮面ライダーは今は一年と決まっているのです。暗黙の了解というものですがそれは決まっていると言っていいものです。
 響鬼はどう見てもそれは無理です。作品世界が広過ぎるのです。そして仮面ライダーといいながらバイクには乗らないだけでなく実に異色であり過ぎました。斬新、革新的なものが常にいいかというと決してそうではありません。理想と現実をどう組み合わせていくのか、それが問題です。
 マリア=テレジアの次にオーストリア大公、神聖ローマ帝国皇帝となったヨーゼフ二世ですが確かに非常に優れた人物であり人格も立派でした。歴史には啓蒙専制君主とあります。当時啓蒙思想は善とされ時代を象徴しているとされていました。彼はそれに基づいて政治を行おうとしました。
 しかし現実はそうはいかず彼はその政治に多くの障害を持ってしまいます。母であるマリア=テレジアが現実も踏まえてバランスの取れた政治を行っていたのとは対象的でした。比較的若くしてこの世を去ってしまった人ですが優れた能力と立派な人格、そして時代を導く思想を理解していたというのに現実との組み合わせを図れずいささか残念な結果となってしまいました。
 作品としては非常に画期的な作品です。作品そのものが壮大な実験でありそれは確かに成功していました。しかし商業的に、そして時間的に成功しているかというと疑問符がついてしまいます。日本は資本主義国家でありそして響鬼はテレビ番組なのです。ですからどうしても商業的な問題や時間的な都合を考慮しなくてはなりません。社会主義国家ならわかりませんがそもそも社会主義国家においてこうした作品が作成されるかというと疑問ではありますが。高寺プロデューサーを止められる人がいれば展開は違ったと思います。
 響鬼はクウガ以上に高寺プロデューサーの個性が出ている作品です。プロデューサーですがこの人はあらゆることを考えて作品を作る人として知られています。脚本もほぼ自分で書いているのと同じ位だと言われています。そうした人だからこそ止められる人がいたならば違っていました。そう思わざるを得ない、まことに残念な作品でした。
 その壮大な作品の中で主人公はまず響鬼と考えるべきですが主人公は安達明日夢です。彼が主人公ということもこれまた異色の作品たる所以です。
 その明日夢ですがごく普通の中学生、そして進学して高校生になります。響鬼は前半ではとりわけ彼の学園生活がクローズアップされています。
 そして前半では響鬼は包容力のある大人として明日夢にいつも微笑みかけている存在となっています。
 まず強く格好いいです。そして熱いところもあり気さくでユーモアもあります。そのうえ包容力があり大人であります。完璧かというとそうではなく機械に弱かったり何処か抜けているところもあります。明日夢はその響鬼をひたすら憧れる少年として描かれています。 
 立派な大人に憧れ尊敬するということは誰にでもあります。明日夢にとって響鬼はまさにそうした憧れの存在であり彼はその背中をずっと微笑みながら見ています。そして響鬼もそんな明日夢を優しい微笑みで見ています。
 その二人の関係はあまり接近しません。確かに接近していますがそれでもその接近は師弟関係には至りません。あくまで理想の大人とその大人に対して憧れひたすら慕う子供という関係に留まっています。
 そのまま前半は進みます。二十九話まで観てもその関係は進展しません。普通の高校生である明日夢と鬼である響鬼ではどうしても接近できません。明日夢自身どうも鬼には向かない性格であることは劇中でもおおよそわかります。文科系の人でありますし魔化魅であろうとも積極的に戦う性格ではありません。むしろ最終回で彼が決めた進路である医者の様に戦士を後ろから支える立場の方が向いているのではないでしょうか。
 そして彼は主人公といよりはヒロインです。男の子でありますがその性格や行動はどう見てもヒロインのものです。少なくとも僕は明日夢はヒロインだと考えています。しかも平成ライダー、いえ昭和まで入れた仮面ライダーの中で最もヒロインらしいヒロインです。響鬼は他にも女性キャラ、しかも魅力的なキャラクターが多い世界なのですがそれでもです。明日夢の前には霞んでしまいかねない程彼はヒロインとして見事な存在でした。
 そのヒロイン明日夢は結果として戦士、即ち鬼にはなりませんでした。やはり彼は戦士を支えるべくしてそうなった人物です。そう考えますとあの最終回は非常にいいものでした。鬼でなくとも役に立てるとわかったのですから。
 明日夢と響鬼は人生においての師弟関係となりました。この作品は師弟関係もまたテーマですからそれでいいと思います。そしてもう一人の弟子であった桐矢京介についても延べさせて頂きたいと思います。
 響鬼は途中プロデューサー交代による大幅な路線変更がありました。それによりプロデューサーはアギト、龍騎、ファイズのプロデューサーだった白倉伸一郎氏になり脚本家は井上敏樹になりました。そしてストーリーを進める為に桐矢というキャラクターが出て来ました。
 彼は他人への配慮にかけ自意識過剰であり何かと嫌味な行動や発言が目立ちました。それによって前半ののどかな雰囲気を愛していたファン達から物凄いバッシングを受けたキャラでした。 
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