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DQ5~友と絆と男と女  (リュカ伝その1)

作者:あちゃ
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41.やりたくも無い事を押しつけられるのは腹が立つ。

<グランバニア城-城下町>
サンチョSIDE

「いいですか、まずはご自身のお身体の事を考えて下さい。まだ病から回復して無いのですから…」
半年前、病を患いパパス様と坊ちゃんを捜す旅より帰還して以来、毎日我が身を案じ足を運んでくれるシスター・レミ。
「はい…私もこれ以上は無理をしませんのでご心配なく…」
自信の不甲斐なさからシスター・レミに対して、邪険な態度で接してしまう心の狭い私を、パパス様や坊ちゃんが見たらお叱りするだろうか…
私はシスター・レミを追い返し自己嫌悪に陥っていた。

(コンコン)
今日のシスター・レミは随分としつこいですね。
「どうぞ…開いておりますよ…」
「失礼します…」
てっきりシスター・レミが戻ってきたのだと思っていたのだが、私の予想は裏切られる…
澄んだ心地よい響きの声に心奪われ、客人に視線を向ける。
入ってきたのはシスター・レミではない。
背の高い旅人風の男。
紫のターバンを巻き、鍛え上げられた肉体はその男の強さを物語っている。
日に焼けた肌は健康的で、そして…その瞳を私は知っている!

「あれ?サンチョ…痩せた?」
私の事を知っているその青年は、明るく軽い口調で話しかけてきた。
「ま…まさか…ぼ、坊ちゃん!リュカ坊ちゃんですか!?」
「ごめんね。長い間…」
こんな…こんなに嬉しい日は初めてだ!
坊ちゃんが生きていた!そしてグランバニアに帰ってきてくれた!

しかしパパス様の姿が無い…
「坊ちゃん…パパス様は…」
坊ちゃんの瞳に悲しい色に染まる。
やはり…
私が沈痛な面持ちで俯くと、お連れの女性が爽やかに話しかけてきた。
「お久しぶりです。サンチョさん」
随分と美人な方を連れてらっしゃる。
マーサ様以上の美人は存在しないと思っておりましたが…

「サンチョ…紹介するね。僕の妻のビアンカだ」
妻…?
ビアンカ…?
「ま…まさか、あのビアンカちゃん!?アルカパの!?ご結婚された!?」
吉報の乱れ打ちでパニック状態の私に、更なる追い打ちが…
坊ちゃんがビアンカちゃんのお腹をさすり
「どうやら…居る!」
もう、私はどうしていいのか分からずに、ただ…ただ、泣いてしまった。
目が覚めたら全て夢だったら…ショックで死んでしまうかもしれない…

サンチョSIDE END



<グランバニア城-城下町>

半狂乱のサンチョが落ち着くには、しばらくの時間が必要だった。
落ち着いたサンチョが父さんの事を語り出してくれた。
やはり父さんはグランバニアの王様らしい。
そして攫われた母マーサを捜し出す為、身分を隠し世界を旅していたという。
「も~う…僕の事は城に残してくれれば良かったのにぃ!」
「そうね…そうしたら私達は出会わなかったわね!残念ねぇ~」
「トレビアン!父さん、トレビアン!親子は離れ離れになっちゃダメだよね!」
俺の反応にビアンカは笑顔で喜ぶ。
思わず押し倒しそうになっちゃた。

「現在は、パパス様の弟君のオジロン様が代理で国王を務めております」
そう言うと俺達を謁見の間へ導いた。
ちなみに、他の仲間達は城下町でくつろいでいる。
この国には他にもモンスターが普通に歩いていたりしている。
なんでも、母さんが改心させたモンスター達らしい。
プックルやサーラを見ても誰も驚かない事に驚いた。
何か俺、この国好き。



<グランバニア城>

この国の構造は面白い。
城の1階部分と地下が城下町になっており、一般の人達が自由に往来している。
2階部分は上級兵士や国家の高官達の住まいになっており、3階以上が一般的な『城』であり、王族の居住空間になっている。

そして、その3階の謁見の間に俺達は通された。
目の前の玉座に座っているのが叔父に当たる、現国王代理らしいのだが…すげー貧相だなぁ~。
まだデールの方が王様らしい…いや、最近のデールは国王の風格を要しており、生意気…ゲフンゲフン!……えっと…頼りになりそうだ。
「サンチョ!?珍しいな。お前が慌てて…どうしたのだ?」
「は!オジロン陛下。実は…」
サンチョはオジロンに近づき耳打ちしている。
「!!なんと!!兄上の…パパスの子リュカが戻ったとな!!」
オジロンのムダにでけー声が謁見の間に響く。
謁見の間にいた兵士や高官達が一斉に俺を注目し出す。
あまり良い気分では無いな。

「どれ、リュカよ。顔を見せてくれ。近くへ来てくれ」
気色悪いからベタベタ触るのは止めてもらいたいのだが…
「うむ…確かに義姉上、マーサ殿に生き写しのその瞳…間違いなくパパスの子リュカ本人である」
え、何!?
疑ってたの!?
ムカつくぅ!
「して、そちらの女性は?」
直立不動で待っていたビアンカに、急に声がかかる。
「あ!わ、私はリュカの妻。び、ビアン…カ…で…」
(バタ!)
俺の視界でビアンカが倒れた!

慌てて抱き抱え、叫び出す俺!
「ベットは!?ベットは何処だ!」
「こ、この上に…4階に王族の寝室が…」
俺は最後まで聞かず、走り出す!
「お前ら待たせすぎなんだよ!空気読めバカ!」
口に出したつもりはなかったのだが、どうやら叫んでいたらしい。
一般人だったら打ち首ですね。


ビアンカは疲れと緊張から倒れたらしく、ひとまずは大したことはないらしい。
あ~よかった!
先程失礼な事を叫んだ様な気がするので、取り敢えず謝りに行こう。
「あの~…先程は失礼致しました…咄嗟だったもので…」
「いや、気にしてはおらんよ!身重とは知らなかったのでな」
よかった~。
一応王家の血筋を引いていて…ビバ血統!
「リュカよ。お主が帰還した事で私は考えたのだが…」
知ったのさっきだから、あんま考えてねぇーな!
「お主に王位を譲ろうと思う」
…………………………………………………………は!?

「あの、どう「何をおっしゃいます!私に相談もなく!」
誰、こいつ?
「大臣よ…そう騒ぐな。パパスの子が戻ったのだ。順当であろう」
「し、しかし…」
「それに私は人が良いと言うだけで王になったのだ…器では無いのだよ」
何だ…自覚してたのか…
「そこまでおっしゃるのなら、王家の試練を受けて頂きます」
え~また試練~危険なのかなぁ~?
「お、おい大臣。今や王家の洞窟にはモンスターも蔓延り、危険な状態だ。何もその様な時代錯誤な「しきたりです!!」
やっぱ危険なのぉ~…ヤダなぁ~…
「と、言う訳で…ここより東にある王家の洞窟へ一人で赴き、『王家の証』を持ち帰ってきて下さい」
何で世の中そんなに危険思考なんだ?

「あの、別に王様になれな「リュカよ!頼む!危険は重々承知だが、グランバニアの民の為、そなたの父パパスの為に、試練を成功させてくれ!」
父さんの名前を出すなよぉ~…断れなくなる…
「わ、分かりました…じゃぁ、ビアンカの出産に関して協力をお願いしてもいいですか?」
こっちは新婚で、尚かつ妻が身重なんだからな!
「無論だ!今使っている部屋を使うがよい!そなたの仲間モンスターの部屋も用意しよう」
取り敢えず準備だけは入念にして出立しよう。
すぐに行けって訳じゃないみたいだしね。
時間を稼げば『やっぱ王位譲りたくなくなったから、試練を受けなくても良いよ』とか言ってくれそうだし…



 
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