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DQ5~友と絆と男と女  (リュカ伝その1)

作者:あちゃ
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42.未来を担うのは若人の努め。老人の出番は無い。

<グランバニア城-中庭>
ドリスSIDE

私は中庭の木につるしたサンドバックに蹴りを打ち込む。
「あー動きにくいなぁードレスって!」
私はヒラヒラなドレスを着たまま、サンドバックを蹴り続ける。
さっき親父に『今日は、大切なお客様に会うのだから、ちゃんとした格好をしておきなさい!』と言われたので、ちゃんとしたドレスを身に纏っている。
でも、ちゃんとした態度でいろとは言われなかったので、サンドバックを蹴り続ける。

「お!可愛いパンツだね!」
急に後ろから声をかけられ、スカートを押さえ振り返る。
「な、何見てんのよ!スケベ!」
だからスカートはキライだ。
「スケベと言うのは否定出来ないが…見てはいないよ。見えたんだ」
透き通る様なキレイな瞳に、透き通る様な爽やかな声…私は意識を持って行かれる様な感覚を覚えた。
「へ、屁理屈じゃない!っていうか、あんた誰よ!」
「あはは…ごめんごめん!僕はリュカ。君の従兄弟だ」
そう言うと、私に近づき片膝を付いて目線を合わせる。

近くで見るとよく分かる。
この人凄く強い。
今、この国で一番強いのは兵士長のパピンだ。
そのパピンでさえ、これ程の体付きはしていない。
「で、その従兄弟が私に何の用?」
「用…か……………うん!城下へ買い出しに行こうと思うんだけど一緒にどう?何だったら、可愛いパンツでも買ってあげるよ」
「何でパンツ限定なのよ!」
「いや、だって…スカートで蹴りを出し続けるのなら、可愛いパンツが沢山必要でしょ?」
「きょ、今日が偶々スカートだっただけよ!何時もスカートでこんな事している訳じゃ無いんだから!」
「まぁ、どっちでもいいよ。さ、行こ!」
そう言って私の手を引き、城下へ下りていった。

ドリスSIDE END



<グランバニア城-城下町>
ピピンSIDE

僕は裏庭の木に、長さ10センチくらいの木材をロープで数本垂らし、剣術の練習に勤しんでいた。
吊された木材を木刀で打ち弾き、反動で戻ってくる木材を躱し打ち返す……………というのが理想で、現実とはかけ離れている。
幾つかの木材が頭に当たり、かすり傷だが血を流す。

「いててて…」
「クスクス…面白い事しているなぁ…」
ビックリして後ろを振り向くと、この町では見た事がない紫のターバンを巻いた旅人風の男性が笑いながら近づいてくる。
「ホイミ」
暖かい光が傷を癒してくれた。
「あ、ありがとう。でも、笑う事無いでしょ!剣術の練習をしてたのだから!」
「剣の練習…か…。魔法の勉強はしないの?」
「魔法は…難しすぎて…でも、魔法が使えなくたって父さんみたいな立派な兵士になるんです!」
「お父さんみたいな…か…」
「そうです!父さんはこの国の兵士長をしているんです!」
「へぇー、凄いんだね!」
何だか、この人とは初めて会ったのに話しやすい。

「でも、魔法は便利だよ」
「ちょっとリュカ!こんな所で何してんのよ!」
すると表通りの方から、綺麗に着飾った女の子が大きな声で話しかけてきた。
この人リュカって言うのか。
「じゃぁ…便利な所を見せてあげよう」
そう言って、こちらに近づいてくる女の子へ向かって魔法を唱える。
「バギ」
バギの魔法と言えば、風を操り真空の刃を巻き起こし敵を切り裂く魔法だ。
「な!!」
僕が驚いて女の子を見ると、女の子には傷一つ…いや、服にも切り裂かれた様子はなく、ただ風を舞い起こしている。
そして女の子のスカートが舞い上がり、白と青のシマシマが目に映った。

次の瞬間、リュカさんの左頬に女の子の跳び蹴りが炸裂する。
僕は2度目のシマシマを体験する。
「いきなり何すんのよ!」
「いや、この子が見たいって言うから…」
「え!?言ってませんよ!」
かなり強烈な蹴りを喰らったのに、まったく動じてない…
「あれ?そうだっけ?まぁ、いいじゃん。いい物見れたし」
「バカ!スケベ!!最低!!!」
そう叫び女の子は走り去ってしまった。
「う~ん…一個も否定出来ない…」
「大丈夫ですか?」
「うん。慣れてるから。君こそ、ムリはしちゃダメだよ。兵士になる前に怪我で入院になっちゃうよ」
そう言い残し、リュカさんは僕の前から去っていった。
何だったんだろう…?

ピピンSIDE END



<グランバニア城>
ドリスSIDE

最近私はリュカと一緒にいる事が多い。
リュカの仲間モンスター達が言っていたが「リュカは馬鹿でスケベでお調子者だ!でも、一緒にいると楽しい気持ちになる。」と…
凄くよく分かる。
でも、近々一人で洞窟探索をしなければならないらしく、その準備等で忙しそうだ。

だから私も我が儘は言わない様にしているが、時間がありそうな時に声をかけると「あ!ごめん。これからビアンカの所にいかなきゃ…」って、断られる時がある。
ビアンカって奥さんの事でしょ!
何時でも逢えるんだから私の相手をしてもいいじゃない!
頭くるわ!
そう、ピエールに愚痴を言ったら「じゃ、ビアンカ殿に会いに行ってごらん」って言われた。
正直会いたくない!
リュカを束縛し独り占めしている様なヤな女には会いたくなかった。
でもピエールが私の手を引いて、無理矢理会いに連れて行った。


(コンコン)
「ビアンカ殿。入ります」
私は室内に入っても俯いたまま顔を合わせない様にしていた。
「リュカから聞いているわ。貴女がドリスちゃんね」
そのクリスタルの食器を響き渡らせた様な美しい声に、思わず顔を上げてしまった私は、その美しさに見とれてしまった。
私はすぐにビアンカさんと打ち解ける事が出来た。
一緒にいると凄く幸せな気分になれる女性…
もっと早く会いたかった…

女三人で会話を弾ませていると、ケーキ片手にリュカが現れた。
「手土産持参したから僕も仲間に入れてよ」
「ちょっと!何でもっと早くにビアンカさんと会わせてくれなかったの!?」
「え!?だって、紹介するって言った時に『会いたくない』って帰っちゃったじゃないか…」
「それでも強引に連れて行くべきでしょ!」
「勝手だなぁ~」
この後、美味しくケーキを食べつつリュカは女三人に責められ続けた。
私はこの日を境に、ほぼ毎日ビアンカさんの所へ通い続ける様になる。

ドリスSIDE END



 
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