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DQ5~友と絆と男と女  (リュカ伝その1)

作者:あちゃ
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40.因果と言う言葉がある。ヤればデきる。因果である。

<チゾットの山道>

俺達はチゾットの山道と言う洞窟内を彷徨う。
高地にある為空気も薄く、陰鬱な雰囲気を漂わせる洞窟だ。
俺はそんな雰囲気を払拭させる為『手のひらを太陽に』を熱唱する。
歌詞の内容が気に入らないのか、アンデット系のモンスターが襲ってくる。
アンデット系が嫌いな俺は、戦闘はせずにただ歌う。
大声で歌う!
腕を振って歌う!!
同じ歌をリピートして歌っていた為、皆歌詞を覚えた様でピエール達までもが歌う!
そして戦う。(俺以外)
みんな俺色に染まってきた様だ…

しかし…ビアンカだけ気分が悪そうに俯いている…
最も、ゾンビが吹き飛ぶのを見て、気分爽快になる奴の方がおかしい。
とは言え心配だし、ビアンカには何時も笑顔で居てほしい!
「ビアンカ…気分悪いのなら馬車で休んで良いよ。ムリは良くないから」
「ううん…大丈夫よ…アンデット系には私のメラが必要でしょ。だから…」
相変わらず真面目というか、責任感が強い…
姉さん女房の所為か、俺に甘えるという事が少ない!
遠慮せず甘えてほしいのにぃ…
「大丈夫だよ、ビアンカ。マーリンもメラは唱えられるし、ピエールは強いから」
「ありがとう。でも大丈夫。もう少しで外へ出れそうだし…外の空気を吸えば治るから…」
そう言うと歩き出すビアンカが、心配で堪らない。



<チゾット>
ビアンカSIDE

気が付くと、リュカが寝ている私を覗き込んでいた。
今にも泣きそうな表情で…
ヤダ…なんて顔してんの…この子…
「ビアンカ…大丈夫?」
思い出した…私、村に着いてすぐ倒れたんだ…
私のせいでリュカは泣きそうな顔してる。

「ごめんね、リュカ。私はもう大丈夫だから…」
「ビアンカ…一度お義父さんの所に戻ろう」
「な、何言ってんの!もう少しでグランバニアなのよ!アナタの生まれた国なのよ!」
「そんな確証ないよ」
アイシス様を信用してないわねぇ…
「それにビアンカ…妊娠してる」
「……………え!?」
「ビアンカを抱き抱えた時に感じたんだ。ビアンカの中に命の暖かみがある事に」
何で本人が自覚してない事が分かるのよ…でも…リュカの事だから、本当なんだろうなぁ…
「だったら尚更行かないと。私はグランバニアで出産したいの!」
「え!で、でも…」
「これ以上遅れると、私は更に足手まといになる!リュカと一緒にグランバニアへ行きたいの…せめて…そこまでは…」
私は泣いていた…我が儘を言った上、泣いてリュカを困らせている。
リュカが私の涙をハンカチで拭ってくれる。
見るとリュカの目からも涙が一筋…
リュカの涙を私が拭う…
そう言えばレヌール城でも、こんな場面あったわね…
「分かったよビアンカ…でも、無理はしちゃ絶対ダメ!基本、馬車の中で待機」
「えー…私がいないとリュカ…パトリシアとイチャイチャするからヤダ!」
「ちょ…馬にヤキモチ焼かないでよ…」

ビアンカSIDE END



<チゾット>

チゾットに架けられた大橋を渡ると、眼下に巨大な城が現れた。
「あ、あれがグランバニア城………」
でかい!
すごくでかい!
東京○ーム20個分!
そんな無意味な例えが頭に浮かぶくらいでかい。

そして何より頑丈そうだ!
まるで要塞の様に…あの城なら、そうは簡単に陥落出来ないだろう。
「あそこがリュカの生まれ故郷ね」
どうしてビアンカは、あの女の言った事を鵜呑みに出来るのか?
「どうだろうね?あの女の言った事だから…」
「でもパパスお義父さんが、本当に王様ならリュカは王子様じゃない。私、玉の輿に乗っちゃた?」
オ・ウ・ヂ・サ・マ・?………!!!
セレブ!!
俺、セレブ!!
ハラショー!ハラショーですよ、お父さん!!
よーし!頑張っちゃお、俺頑張っちゃお!



<グランバニア山の洞窟>
ピエールSIDE

久しぶりにリュカがやる気を出している。
ビアンカ殿を戦闘に巻き込まないよう、自らを最前列に布陣し洞窟を進んで行く。
やはり父親になる男というのは、頼もしくなるものなのかもしれない。

洞窟を少し進むと、正面に屈強なる魔界のモンスター『メッサーラ』がこちらを睨んで立っている。
くっ!
かなりの強敵だ!
私達が身構えると、リュカが一歩踏みだしメッサーラに向けて右手を翳す。
「悪いけど、こっちには身重の妻が乗っているんだ!どいてくれないか」
リュカの言葉を聞き終わると、メッサーラは身体を左に少し傾けて馬車の中を覗く。
そしてリュカに向き直り、左手の親指を立てて肩越しに洞窟の奥を指さすと、静かに奥へ移動する。
「抜け道があるから来いってさ」
リュカには奴の言葉(喋ってたの!?アレ?)が分かるらしく、警戒もせずに奥へ進む。
私達は警戒しつつリュカに続く。

少し行くと行き止まりになっており、壁際でメッサーラが待っていた。
「行き止まりではないか!」
だ、騙された!?

「隠し通路だってさ」
何時喋ったのか全然分からんが、リュカが親切 (?)に通訳をしてくれる。
岩壁に偽装されたスイッチをメッサーラが押すと、行き止まりだと思っていた壁が開き、奥には下りの螺旋スロープが続いていた。

メッサーラに促されるまま、私達はスロープを下りて行く…
そして私達は戦闘をすることなく山を下る事が出来た。
外へ出ると、メッサーラが馬車の中を覗き込み頷く。
「元気な赤ちゃんを産めってさ。ビアンカ」
何時喋ったんだよ!
「あ、ありがとう…リュカ、彼の名前は?」
メッサーラはリュカと顔を合わせる。
「彼はサーラって言うんだって」
「ありがとうサーラ。何かお礼をしたいから一緒に行きませんか?」
さすが夫婦だ。
思考が似ている。



 
 

 
後書き
言うまでもない事ですが、原作のダンジョンには抜け道などございません。 
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