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『零と先輩』

作者:零那
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『電話』



遂に重大なルール違反を犯した。
先輩に電話をかけた。
職場体験実習中、結婚式場の厨房から。

オバチャン達と仲良くなり、施設の事など話してくうちに先輩の話になり『電話くらいしたらいいよ!』という流れで。

オバチャン達は他にも色々してくれた。
一般の人にとっては何でもない些細なこと。
お昼ご飯を外に連れて行ってもらったり、アイス作る機械が有るからと、アイス一緒に作ったり。
施設出たら連絡しておいでって携帯番号貰ったり。

そんな些細な事だけど施設にバレると国立に強制連行されそうだと思った。

オバチャン達は優しかった。
此の会社は課長さんも社長さんも社員さん達も皆が優しかった。
施設から来てるからという理由では無い。
哀れみから来る優しさかそうじゃ無いか、それくらいは解る。
だから少し甘えてしまった。
悪い癖だ...。

先輩に電話した時も、頑張ってた筈の零は、相変わらず優しい先輩の声を聞いて甘えてしまった。
頑張ってると伝えたかったのに、逃げるような事を言ってしまった。

先輩に対しても、頑張ってきた自分に対しても、失礼なことを言ってしまった。
先輩を困らせてしまった。
勢いは怖い。
伝えたかった言葉じゃない事が口をつく。

たとえ其れが本心であっても、状況的に言っては成らない言葉だったと、後々すごく後悔することになった。

自己嫌悪というか何というか...これ以上おんぶにだっこは重荷過ぎる。
零自身が、零自身を重荷だと感じてるくらいなのだから。
他人からしたら重荷どころじゃない。
関わりたくない存在だろう。

それなのに先輩は助けてくれた。
ずっと支えてくれた。
寄りかかり過ぎた。
重荷になりたくないと思いながらも、甘えてしまってた。


 
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