| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

『零と先輩』

作者:零那
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

『1年8ヶ月』



いろんな事があったけど、何とか学業も仕事も順調。
最後に行った職場体験実習の会社で、出所に向けての資金を稼ぐ為、契約社員になった。
職員と会社の偉い人だけでの話し合いで決まった。

今迄の体験実習で、一応仕事の流れも掴んでたし、出来ることも増えてきたとこだった。
入ってすぐ給料貰うのは気が引けるけど、今なら給料に見合うだけの仕事が出来る自信があった。

契約社員になって給料が発生して3ヶ月くらいだったかな。
職員が前の施設から通帳を引き継いでたらしく、給料も管理していたらしい。
家を探しに行くと言われ、不動産屋に行くことになった。
自立に向けていよいよ本格的に動き出したって実感がした。

季節は秋。
もうすぐ零の18歳の誕生日。
零の処遇は心配事が多かったらしい。
寮長さんが零を引き取ると言って園長に拒否されたとか。
どれだけ心配されてるんだろうか。
そんなに不安にさしてたのだろうか。
一体何がそんなに不安だったのだろう...。

大体の子が実家に帰る。
だからだろうか。
県外から来た零を、知らない土地に出すことが不安だったのだろうか。
もしそうなら、親心みたいなものが零に対して少しでも在ったのだろうか。

だったら、なんかちょっと嬉しいと想った。

シッカリしなければ。
心配してくれている職員を裏切りたくない。
気持ちばかりが焦る。
実際は不安で怖がりな零...。
無駄に気が強くて強情なだけで、案外脆い。
もしかしたら寮長さんは、零のそんな内面を見抜いていたのかもしれない。

普通だと出所してからの1人暮らしなんだけど、零は異例。
先に1人暮らしの家を借りた。
中古の家電や家具を買ったり譲ってもらったり。
荷物も運んで外での生活が始まった。

籍は施設にあるまま。
児童達には疑問が生まれる。
出所してないのに居ないから。

携帯を契約した。
出勤時と帰宅時は施設へ連絡するのが決まりだった。

正確に出所したのは誕生日を過ぎていた。
式をしたのは12月。
自転車で施設の門をくぐった。
新鮮な気持ちだった。
入所した際に抱いてた気持ちとは違って、此処に来て良かったと心底感謝できていた。
それだけ成長できたと実感した。

悔いてどうにもならぬなら流されてみるのも必要。
その流れの中で大切な何かを見つけ出せれたなら後は努力のみ。

此処で新たな目標を貰った。
『成長し続ける』

強く逞しく自分らしく生き抜く為に零は成長し続ける。


 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧