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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Eipic3探索者~First Contact~

†††Sideアリシア†††

チーム海鳴のメンバーが勢揃いした久しぶりの任務の内容は、ここ第162観測指定世界の遺跡発掘現場から掘り起こされたロストロギアを回収するっていうもの。発見場所は2ヵ所あることで、わたし達も2チームに分かれて現場へ向かってる途中。んでその道中・・・

「シャリオも言ってたけど、わたし達の年齢で尉官って珍しいのかな~?」

暇だったから休憩中の会話の続きをやろうって思って、わたし達Aチームのメンバー、なのはとアリサ、それにルシルとヴィータとシャマル先生とアイリに話を振ってみた。

「私は二等空尉で、フェイトちゃんも二等空尉相当、アリシアちゃんは准陸尉相当、はやてちゃんが一等陸尉・・・」

「あたしは三等陸尉、シャルは一等空尉、シグナムは三等空尉、ヴィータは准空尉・・・」

「アイリちゃんは一等空士、ルシル君は二等空尉、リインちゃんは空曹ね」

入局6年目の15歳で尉官クラスってすごいってことだけど、普通に昇進試験を受けていればなんとかなりそうな気もするし、「俺たちは入局した年齢が若かったからな」ルシルが言うように管理局に勤める時期が普通の人に比べて早かったってこともあると思う。

「シャリオだって9歳くらいで入ってみれば、尉官クラスになってたんじゃないかな~」

「いやいや~。アイリも結構頑張ってるけど、まだ一士だよ? ルシル達の昇進スピードが速過ぎるだけだと思うね」

「おめぇ、昇進試験ほとんど受けてねぇじゃねぇかよ。だから未だに一士止まりなんだよ」

「別にアイリは偉くなろうって思ってないも~ん」

ヴィータの周りを器用にバレルロールしながら追翔するアイリ。でも確かに自分のマイスターやロード以上の階級や役職に就いたりしたら、ちょーっと不自然になっちゃうかも。

「しかし、はやての昇進速度はさすがに速いと言わざるを得ないだろうな」

「にゃはは。はやてちゃん、このまま順調に試験を突破していくと10代で二等陸佐くらいまでいくんだよね? チーム海鳴で一番の出世頭だって、ちょっと前に話してたんだよ」

「もう。キャリア試験のためにはやてちゃんは睡眠時間削って猛勉強して、私は気が気じゃなかったわ。ルシル君が居れば少しは止められたと思うのだけど?」

わたしを背後から抱っこしてくれてるシャマル先生の顔は見えないけど、きっとジト目でルシルを見てると思う。そんな声色だったし。スカート組が多いことで一番前を飛ぶルシルが「俺でもきっと無理だったよ」そう言った。

「はやてにははやてのやりたいことがある。そのための勉強だった。俺は応援するけどな」

「でもねルシル君。ニキビが出来た~とか、体調崩した~とか、お寝坊で遅刻する~とか、そういう日が結構あったのよ。それなのにルシル君とは連絡とれないし!」

「おっと、藪蛇だったか」

「もう!」

「そういやルシル。お前、調査官になるんだよな」

「ん? あぁ、研修も順調だからな。試験を1発合格できるなら、最速で18歳で調査官の仲間入りになると思う。まぁ調査官は結構狭き門だから、さすがに1発とはいかないだろうが」

「調査官になると自然と准将の階級持ちになるんだったっけ? はやてもそうだけどアンタも負けてないわよ、ルシル」

「そうは言っても資格を返上したら即調査官になる前の階級に戻されるという、一時的なものだぞ。しかもあくまで調査官だからこその階級で、それ以上の命令権は無し。形だけさ」

「それでも准将っていう階級はすごいと思うよ、ルシル君。調査官を続ければさらに少将、中将になれるって聞いたし」

「そこまでなる気はないかな。准将止まりで俺には十分だ」

そんな会話をしながら空を翔けること15分ちょっと。ようやく「あ、見えてきた!」目的地の遺跡発掘現場上空に到着。ゆっくりと降下して荒野に降り立つ。そこには作業服を着た男女ペアが1組居て、側には一抱えあるケースが1つ。

「大変お待たせしてすみませんでした、管理局の派遣護送隊です!」

「「お待ちしておりました!」」

発掘作業員さんに敬礼。そしてケースの中身を確認させてもらった。作業員さんの話によると「レリック、と呼ばれる結晶型のロストロギアです」とのことで、ケースの中には赤い宝石のような“レリック”が1個収められてた。“ジュエルシード”より少し大きいかな。とっても綺麗。

「レリック、か・・・」

ルシルがふむって唸ったから、シャマル先生が「ルシル君のデータベースにあるの?」そう訊いた。ルシルのトンデモな知識量の中にはロストロギアのリストがある。セインテスト家の遺伝的な特性ってことで、魔術や固有スキル・複製、さらに知識や知恵などが先祖代々受け継がれてる。その中にはロストロギアのリストもあるってこと。

「詳しいデータが無いのは許してほしいが・・・。レリック。その数は最低でも50個あるとされている。その性質は、高エネルギーを帯びる結晶体で、外部から大きな魔力を受けると規模はまちまちだが大爆発を起こすという危険度の高い物だ。管理局からも第一級捜索指定を受けた、秘匿級のロストロギアだ」

ルシルの話を聞いたわたし達や作業員さん達も「大爆発・・・!?」ケースから距離を取った。

「魔力を受けなければ爆発はしないよ。中継、こちらAチームのルシリオン。発見されたロストロギア・レリックの情報を、本部(アースラ)とBチームに伝えてくれ。決して魔力を当てないように、と」

『りょ、了解です!』

ルシルが中継――観測基地のシャリオに通信を繋げた。これでフェイト達やクロノにも連絡が行くから、きっと最悪の事態には陥らないはず。そういうわけで「お預かりします」“レリックケース”をルシルが持ち上げようとしたその時・・・

『こちら観測基地! 第2発掘現場に正体不明の機械兵器群が出現しました! 危険認定、破壊指定許可が出たことでBチームが交戦開始! Aチームのみなさんも周囲警戒をお願いします!』

シャリオから切羽詰まった報告が入って、同時にフェイト達の交戦映像が映るモニターが展開された。なんかカプセルみたいな形をして、カメラレンズのような部位から光線を出したり、さらに「AMFだね・・・!」なのはの言うように、魔力結合を分断する高位の防御魔法アンチ・マギリンク・シールドを搭載してる。

「おいおい。こっちにもお出ましだぞ!」

「団体さんだね♪」

「所詮は烏合の衆よ」

周囲を警戒してくれてたヴィータとアイリとアリサから報告が入った。3人が指差す方に視線を向ければ、フェイト達が交戦してる機械兵器と同じタイプの物が「うわぁ、20機ぐらい居る」こちらに向かって来てた。

「なのは。指示をくれ」

「え? 私・・・?」

「俺は小隊指揮官の資格は持っていないんだ。しがない査察・監査・監察官だよ。公式な任務中である以上は、俺が現場指揮を執ることは出来ない」

「あー、そっかぁ。うん、判った。・・・シャマル先生とアイリは作業員2名の安全を最優先! ルシル君は4人の護衛! アリシアちゃんは後衛で遊撃! 私、アリサちゃん、ヴィータちゃんで迎撃!」

そう言って肩を竦めるルシルになのはは嘆息したんだけど、すぐにそう指示を出した。わたし達は「了解!」頷き応えて、指示通りに行動開始。シャマル先生とアイリは作業員さんを護りやすいように陣取り、ルシルはその4人を護りながらわたし達が撃ち漏らしたり新手への対処がしやすいところに立った。

「ドロップ! ブレイブスナイパーお願い! 狙撃での先制で潰す!」

≪ほーい!≫

キャンディポット型のインテリジェントデバイス・“フォーチュンドロップ”から、ライフル型ストレージデバイス・“ブレイブスナイパー”の待機モードである宝石がポンっと飛び出して、わたしはソレをキャッチして即座に起動。

「ルシル。フローターフィールドお願い出来る? 立射したいんだけど・・・」

「ああ、良いぞ。どこでいい?」

「この辺りでお願い」

快諾してくれたルシルがわたしの指定したところにベルカ魔法陣の足場を展開してくれた。わたしは「ありがとう!」お礼を言って、直立させて持ってた“ブレイブスナイパー”を前に向かって降ろして、二脚銃架(バイポット)を魔法陣上に接地させる。後床を右肩に当てて、スコープを覗き込む。

「ターゲッティングシステム・オン!」

銃口が今向いてる先を表す大円とターゲットの位置を表す小円、2つの照準円(レティクル)がスコープ内に作られた。続けて前床下部にマガジンを装着して、「カートリッジロード!」と指示。一時的に魔力を増加させて、その魔力をある魔法を発動する糧にする。

「ヴァリアブルシュート・・・」

銃口の先端に攻撃用の魔力弾を作り出す。さらにAMFを突破するための外殻の膜状バリアを生成して魔力弾を包む。外側の膜状バリアが敵のフィールドに反応してその効果を中和、その間に中の魔力弾をフィールド内に打ち込むっていう多重弾殻射撃。本来はAAランク魔導師のスキルで、射撃型最初の奥義、なんて言われる魔法だ。

「ファイア!」

トリガーを引いてヴァリアブルシュートを発射すると同時に機関部の上部にある排莢口から空薬莢が飛び出した。そして放った魔力弾は一直線に機械兵器群の先頭の1機に着弾、爆発四散させた。

「よっしゃ、アリシアに続け! アイゼン!」

――シュワルベフリーゲン――

先制攻撃はヴィータの物質弾8発。AMFは魔力を打ち消すことが出来る強力な防御魔法だけど、純粋な物理攻撃は防げないデメリットがある。だからヴィータのただでさえ強烈な一撃の直撃を受けた機械兵器8機もまた爆発四散。

「機械兵器ごときがあたしらの護りを突破できると思うなよ!」

「あたしもアリシアと同じ魔法にしようかしらね・・・!」

――ヴァリアブルフレア――

銃剣形態バヨネットフォームな“フレイムアイズ”の銃口に、わたしの魔力弾とは違って火炎弾を作り出して、対AMF用の外殻バリアで火炎弾を包んだ。そして「シュート!」発射したんだけど、アリサは立て続けに同じ魔法を発動して、最終的に6連射した。全弾直撃させて、機械兵器6機は今まで以上の爆炎に呑まれて破壊された。

「やっぱりすごいな~、アリサも」

どちらかと言えば騎士寄りのアリサだけど、しっかりミッド式魔導師としての射撃魔法もなかなかの精度を有してる。なのはにはもう追いつけないって諦めてるけど、アリサには追いつきたいって思ってるわたし。だから負けてられないって強く思う。

「私も3人に負けていられないね! レイジングハート!」

そう言ってなのはは近くにあった大きな岩塊を砲撃で破砕。?マークを浮かべてると、大小様々な岩の破片に桜色に輝く環状魔法陣が取り巻くように展開された。それを見てなのはが何をやろうとしてるのかが判った。アレってフェイトのランサーと同じやつだ。

「スターダスト・・・フォール!!」

宙に浮いてた破片が残りの機械兵器に向かって高速で射出された。やっぱりあの環状魔法陣、加速発射システムだったんだ。自分の大きさ以上の破片をまともに食らった機械兵器はぺしゃんこに押し潰されて、そして爆発四散した。

「・・・ふと思ったんだが、機械兵器の詳細や開発者の手掛かりを調べるために1機くらい確保した方が良かったんじゃないか・・・?」

「「「・・・・」」」

ルシルからそう言われてわたしとなのはとアリサが黙り込む。するとシャマル先生が「こちらAチーム」中継に連絡を入れて、Bチームは機械兵器の確保が出来たかどうかを確認した。

『あ、はい。すずか技官が3機を凍結捕縛したのですが、機密保持のためか自爆されてしまいました。おそらく完全体での確保は無理かと思います。ですが破片はある程度残っているようでして、調査隊を派遣してもらう予定です』

「そう。ありがとう、シャリオ」

「自爆しちゃうんだ。徹底されてるね」

「元より確保は無理だったわけか」

「どうせ今回だけってことはねぇだろ、勘だけどな。自爆させねぇように少しずつ捕縛方法を考えてくしかねぇだろうな」

「ではAチームはこれよりアースラへの転送ポートへと向かい、そのままアースラへ帰艦します」

『了解です。Bチームも転送ポートへ移動を開始しました。こちらからナビしますね』

そういうわけでわたし達は、襲撃は受けちゃったけど“レリック”を無事に回収できた。ケースはこの中で両手が塞がってても魔法を使えるルシルが持って、そしてわたしはシャマル先生が抱っこしてくれた。準備を整えて、作業員さん達に手を振って空へと飛び立った。

「これで一応は任務完了だね」

「アイリちゃん。アースラに戻るまでが任務よ」

「空に上がった以上は何があっても突破できる確信があるんだけどね」

「それには同意できるけど、油断はしちゃダメよ?」

アイリとシャマル先生がそんなやり取りをしてる中、「確かに、まだまだ続きそうだ」ルシルがそう言って地上を指差した。見ればさっき襲撃して来た機械兵器、その数9機が荒野を突き進んでる。わたしは待機モードにしてる“ブレイブスナイパー”を掲げて見せて「今のうちに潰す?」そう訊く。

「いや。アレらの目的は十中八九ロストロギアだろう。つまり未だ発掘されていないレリックのところへ行こうとしているんだ。そこまで案内してもらおうじゃないか」

「こちらAチーム。先ほどと同じタイプの機械兵器の一群を視認。ひょっとしたらレリックが他のところにも在るかもしれない・・・!」

『こちらでも確認できました。Bチームからも同じ報告が入っています。両方の機械兵器の進路から目的地を算出します』

機械兵器を上空から追跡しつつ、シャリオからの連絡を待つ。

†††Sideアリシア⇒すずか†††

ロストロギア・“レリック”の回収と護送という任務を請け負った私たちチーム海鳴は、受け取り場所である遺跡発掘現場にて未確認の機械兵器から襲撃を受けた。でもチーム海鳴の前に単なる機械兵器が敵うわけもなく、私たちは余裕を持って20機中17機を撃破した。うち3機は私が氷結魔法で捕らえたんだけど、自爆されちゃった。

「――それにしても最低でも50個とか」

「しかも大きな魔力を当てると爆発を危険物となると、万が一の二次被害が恐ろしいな・・・」

そして今は、“レリック”を受け取ってアースラへ転送するためのトランスポートへと向かってる最中。陸路だと時間が掛かるし、何よりチーム海鳴はアリシアちゃんを除いて全員が飛行魔法を扱えるから。そういうわけで空路で“レリック”を運搬していたところで・・・

「む。どうやら先の20機だけではなかったようだ」

人型に変身してるザフィーラが眼下に広がる森のある一点を注視してそう言った。鬱蒼と生い茂っている木々の所為で全く見えないけど、「先の機械兵器が居るのか・・・?」シグナムさんの言うように、新手が出現したのかもしれない。

「ああ。森が動いている。先より数は減っているだろうが、おそらく同型の物だろう」

「主はやて」

「うん。こちらBチーム。未確認の機械兵器の新手を確認。一直線に突き進んでることから、ひょっとすると未発見のレリックがあるのかもしれへん。このまま空から追跡します」

『こちら観測基地。Aチームからも同じ報告が入っています。機械兵器の進路から目的地を算出します』

一旦通信が切れる。次の連絡が入るまで、ザフィーラのナビ通りに空から機械兵器を追跡する。未確認の機械兵器。技術官の1人としてかなり興味深い。AMFを搭載してるってことは、動力は魔力じゃない。あと攻撃も魔力を使用していなくて、詳しくは調査しないと判らないけど一種の光学兵器。完全に違法だ。

特別捜査官(はやてとシャル)は今回の件、どう考える?」

「そうやなぁ。まず今回現れた機体すべてにAMFが積まれてるってゆうんが怖いな。AMFは魔導師や現魔法文明にとって天敵や。この世界に出現してるだけで全部って思いたいな。あんなんが他の世界にでもわんさか現れるようなことになった時は、大規模な事件に発展するやろうし」

「機械兵器がレリック、というよりはロストロギアを狙って来たのが引っ掛かるね。製作者はそれを意図して開発したんだから、まだ続くと思うよ今回のような事。まだ40個以上が未発見だしさ。執務官(フェイト)はどう考える?」

「シャルと同じかな。それにプラスで技術者タイプの広域犯罪者は何かと厄介だよ。自分の欲のために手段を選ばないのが多いし。被害が拡大する前になんとかして首謀者を付き止めて確保しておきたいね」

今後の事もきちんと視野に入れたフェイトちゃんとシャルちゃんとはやてちゃんの会話に耳を傾けてると、『こちら観測基地。予測座標を送ります』待ってた連絡がシャリオから来た。モニターに表示されたのマップに、機械兵器の予想進路とその目的地を表す矢印と光点が表示される。

「両方とも1ヵ所に向かってるんだね」

私はそう言って指で矢印をなぞる。私たちBチームと、なのはちゃん達Aチームが今追跡してる機械兵器の行き先は同じで、このまま追跡を続ければAチームと挟撃できる構図だ。

「シャリオ。予測進路の先、何があるか判ってる?」

『遺跡と深い縦穴がありますけど、発掘作業員の話ではレリックは発見できなかったそうです・・・』

「でも向かってる以上は何かあるのかもしれないね」

「とにかくレリックがあると思われるところに着いたところで挟撃しよか」

『Aチームもそのようにしたいとのことです。おそらくレリック付近での交戦ということで、騎士だけで戦闘を行いたいということなんですが・・・』

“レリック”は大きな魔力に当てられると大爆発を起こす代物というのは、シャリオ伝手に聞いたルシル君からの情報だ。確かに中遠距離から魔力攻撃を行うミッド式よりは、直接攻撃を行うベルカ式の方が“レリック”の誘爆を引き起こすリスクは低いと思う。

「メンバーはルシル君、シグナム、ヴィータ、ザフィーラ、シャルちゃん、とゆうところか・・・。提案はルシル君か?」

『はい。それでそのプラスでアリサ捜査官を入れた6名で、とのことですけど・・・』

そう聞いたはやてちゃんが私たちを見た。その意図を察した私は「異議なし」戦闘班を騎士だけにすることに賛成する。するとフェイトちゃん達も「異議なし」賛成していって、最後に「決まりやな」はやてちゃんも、ルシル君の提案に賛成した。

「シャリオ。こちらから反対意見は無しや。ルシル君たちに機械兵器の迎撃を任せて、わたしらは上空で待機するわ」

『了解です。その旨をAチームのみなさんに伝えますね』

シャリオとの通信が切れて、そのままナビ通りに空を飛んでいた時に「下がれ!」ザフィーラが突然大きな声を上げて、私たちの前に躍り出たかと思えばシールドを展開した。その直後、視界の端で何か光るものを捉えたって思ってからすぐ、「きゃああ!?」何かがザフィーラのシールドに何かが着弾。その際に発せられた爆発音と衝撃波、そして爆炎に思わず悲鳴を上げちゃった。

「攻撃か!?」

「さらに来ます!」

「スノーホワイト! 全力防御!」

≪お任せを!≫

――アイスミラー八陣の2・ワイドサークル――

中央に1枚、周囲に7枚という広域防御形態で8枚のシールドを展開。直後、また遠くに何かが光ったと思った瞬間に「っ!」シールドに何かが着弾して爆発を起こした。本当にチラッとだけど、どういった攻撃なのかは見えた。

「はやてちゃん! 大口径の銃弾による物理攻撃と視認!」

さっき戦った機械兵器は熱線による光学攻撃で、未確認の新手は銃弾による物理攻撃。どれもこれも殺傷力が高すぎる攻撃手段だ。そう伝えると「銃撃・・・。これまた完全に違法やな」はやてちゃんは苦い表情を浮かべた。

「フェイト、シグナム! 攻撃が続くかもしれないから潰しに行くよ! いいよね、はやて?」

「お願い出来るか? 3人とも」

「うん!」「もちろんです!」

「はやて達は下の機械兵器の追跡を続けて。わたし達は後で追い付くから」

「了解や」

3発目の銃弾が私のシールドに着弾したと同時に、「行くよ!」シャルちゃんとフェイトちゃんとシグナムさんが、砲弾が発射されてるだろう地点に向かって飛び去って行った。それを見送ると、「ダメです、はやてちゃん。観測基地と連絡が取れません。明らかにジャミングを受けてるです」リインからそんな報告が。

「新手の機能の1つやもしれんな。とにかく今は追跡続行や。新手がもしわたしらの足止めやと考えると、このまま残るんは得策やない」

はやてちゃんの言葉に首肯して、私たちは少し高度を下げたうえで森の中を突き進む機械兵器の追跡を続行。その途中で何度も観測基地やAチームに念話を送るけど、ジャミングがなかなか解けずにノイズだけが返ってきてた。シャルちゃん達にも念話を送るけど、やっぱり返って来ない。

「すずかちゃん。新手の攻撃は銃弾って話やったけど、いくら銃弾でもあんなに速く、しかも威力のあるって物あるん?」

「う~ん。知らない魔法技術とか使われてたりしたら答えられないけど、でも今回の機械兵器はAMFや純粋な科学を用いた兵装を積んでる。となると、私の知識の中で考えられるのは1つ。レールガン、だと思う」

「レールガン・・・?」

「です?」

「うん、レールガン。Electro Magnetic Launcher――EML、電磁投射砲、電磁加速砲とも言うね。電磁誘導・・・ローレンツ力を使って物体を加速させて撃ち出す物で、音速の7倍くらい。直撃してたら確実に死んじゃうような攻撃だったけど・・・、ザフィーラが初撃を防いでくれたおかげで、みんな無事だったね」

知識を総動員して導き出した未確認兵器の兵装。推測になっちゃうけど、考えられるのはレールガンだけ。レールガンの発射に必要な大がかりな設備の問題については、地球の科学技術より魔法技術の方がずっと高次なものだから、小型化することくらいさほど問題じゃないはず。

「そうか。おおきにな、ザフィーラ」

「いえ。それが守護獣としての役目ゆえに」

『・・ちら・・・基地・・・こちら観測基地! Bチーム、応答願います!』

ノイズがクリアになって、観測基地のシャリオからの通信が届いたから、はやてちゃんが「こちらBチーム。すまんな。ジャミングされてたんよ」通信に応じた。

『はい。こちらでもジャミングを確認しました。ジャミング機能を搭載していた飛行型の未確認兵器は交戦したフェイト執務官たちの手によって破壊されて、今ははやて特別捜査官たちと合流すべく飛行中です。あと、Aチームの方にも同型の飛行機械が多数出現したそうで、これを撃破したとたった今、連絡が入りました』

シャリオからの報告に「本格的にまずい展開になって来たね」私はそう唸った。AMFを搭載した陸戦兵器と、ジャミングとレールガンを搭載した空戦兵器。どれも並の魔導師じゃ太刀打ち出来ないものだから。

「そうやな~・・・。技術者タイプの広域犯罪者が解き放つ質量兵器。対処できる局員は多くはないとは言え居るやろうけど、そんな局員や必要機材などを集めて部隊を立ち上げ、稼働させるまで数年は掛かるやろうな。指揮官研修を受けてる身としてその状況を考えると・・・頭が痛いわ」

そう言ってはやてちゃんが頭を抱えた。時空管理局はその大きさからして色々と複雑で、派閥や縄張り争いはもちろんあるし、それ以前に部隊立ち上げや人員確保の手続きとか、1つの部隊における魔導師保有数にも制限があるし、かなり窮屈な組織だったりする。

『こちら観測基地。間もなく機械兵器が目的としているポイントです。Aチームがそろそろ視認できませんか?』

シャリオからの通信で私は周囲を見回してみて「あ、なのはちゃん達だ!」Aチームのみんなの姿が見えたから、「うん。こちらでも視認できた。おーい!」はやてちゃんがシャリオにそう返しながら大手を振った。
私たちはなのはちゃん達と合流して、ハイタッチをし合う。そのすぐ後に、「お待たせ~!」汚れ1つと負ってないシャルちゃん達とも合流できたことで、再度追跡を続行。そして追跡してた機械兵器がとある地点で停止したのを上空から視認した。

「あれが件の遺跡と縦穴か」

「縦穴の中はどうなってるか判る?」

『かなり入り組んでいて、魔法戦を繰り広げるには狭すぎるかと思います』

縦穴内のマップがモニターに表示される。確かに戦闘行為は難しそう。機械兵器を追って縦穴内に突入するかどうか渋る私たち。そんな中で「とりあえずサーチャーを放っておくよ」そう言ってなのはちゃんが桜色の魔力スフィア――サーチャーを3基と作り出して、縦穴へ解き放った。

「ま、レリックを回収して外に出て来た機械兵器から奪っちゃえば問題ないでしょ」

「うはー。アリサってまるで泥棒みたいだね♪」

「うっさいわよアイリ。犯罪者に渡すことに比べたら優しいもんでしょ」

「交戦して奪取することには賛成かな。シャルちゃんたち騎士でお願い出来る?」

「もちろん! AMFだろうが熱線だろうが、レールガンだろうがミサイルポッドだろうが、そんな物を積んでるだけの機械兵器相手など、ベルカの騎士の敵じゃない。そう、私たちに――」

「「「「「負けは、無い」」」」」

シャルちゃん、ルシル君、シグナムさん、ヴィータちゃん、あとミッド式だけどアリサちゃんが強く頷いた。ルシル君は持ってた“レリック”ケースをザフィーラに預けて、「エヴェストルム」を起動させた。それから上空で待機してると、突然ルシル君とザフィーラがビクッと肩を震わせた。

「「上がれ!!」」

そして同時に大声を上げた。私たちは、何?なんて聞き返すよりすぐに空へと上がって、その直後に縦穴から強烈な閃光が発せられたかと思えばとんでもない爆発が起こった。視界を覆い潰す閃光と、聴覚をマヒさせる爆音に、意識がちょっと飛びそうになった。

「うげぇ、おい、マジかよ・・・」

「うそ・・・。全部吹っ飛んだ・・・」

ヴィータちゃんとアリシアちゃんのそんな声が聞こえた。頭を振って私も地上を見下ろして「そんな・・・」絶句した。直系3km、深さは大体1kmほどのクレーターが出来ていた。

『・・・護送・・・こち・・・基地・・・こちら・・・観測・・・護送隊・・・』

今の爆発の影響の所為か観測基地との通信にノイズが入る。ノイズが治まるのを待ってから「こちら護送隊。映像、届いてるか?」はやてちゃんが応じて、こちらの映像を送ると通信越しにシャリオ、それにグリフィスが息を飲むのが判った。

「3つ目のレリックの爆発やと思われる。他の遺跡は確認できてるんか?」

『いえ。今のところは・・・。ですが、とりあえず護送隊のみなさんはアースラへ帰艦してください。転送ポートまでナビしますので』

私たちの任務は“レリック”2つをアースラにまで護送すること。これからここ観測指定世界を調査するのは仕事じゃない。そういうことで「了解」私たちは回収した“レリック”2つを持って、再び転送ポートへと向かって飛び立った。
 
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