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歌集「春雪花」

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 愛しきし

  君ぞ想いて

    眺むれど

 曇に隠れし

    春の夕暮れ



 愛しく彼を想いながら眺めた空には、薄い雨雲がかかっていた。

 遠くの山並みも霞み、寂しさだけが辺りを覆っている…。

 いかに恋しくとも…私がそれを口にすることは憚られる…。
 生きる…とは、何とも無情なものだ…。

 そんな春の夕暮れを、ただ独り…眺めた…。



 想いても

  時ぞ還らぬ

   夕暮は

 君なきけふを

   刻みたりけり



 どれだけ想いを募らせようと、叶わぬ恋…。
 どれだけ恋い焦がれようとも…得られぬ愛…。

 時を逆巻くことは出来ようもなく、ただただ過ぎ去るのみ…。

 夕暮れ時には想いが胸へと押し迫り、自分の意味の無さを痛感する…。

 日が沈めば今日も終わる…。

 彼がいない今日…時はただそれだけを私へと刻み付けるだけなのだ…。




 
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