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歌集「春雪花」

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 月隠れ

  恋しさつのり

   雨ぞ降る

 君なき里に

   忍びたりけり



 雲に覆われた空に月はなく…星影も映さぬ闇夜に彼を想い、恋しさだけが募ってゆく…。

 そんな寂しき空から、いつの間にか雨が降ってきて地を濡らす…。

 涙のような雨…しとしとと更けゆく夜に響き渡る…。

 この君のいない里に、ただ寂しさをこだまさせ…より一層、彼のことを思い出させた…。



 儘ならぬ

  恋しき想いに

   時雨しも

 哀れとぞ思ふ

    人もなかりき



 彼を愛し…忘れようも出来ぬこの想いは、私の胸を締め付け続ける…。

 涙を流すまいとすれば…心に初冬の冷たい雨のような涙がそぼ降り、自分がいかに惨めな存在かを再認識させるのだ…。

 そんな私を、一体誰が哀れに思うだろうか…?


 いや、そんな人はきっと…一人もいまい…。




 
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