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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Eipic1-F移ろいゆく季節~The First Secret~

 
前書き
肺炎って恐ぇー! さすがに、ヤバいこれ死ぬわ、と思った!
しかし! 私は帰って来たぞ! そーら、暁さまに「ただいま!」だ! 

 
†††Sideすずか†††

中学生になってから、チーム海鳴のみんなと同じ空を飛ぶっていうことが極端に減って寂しい今日この頃。内勤の代表格である技術官の私は余計に飛ぶ機会が少なくなった。だから時折、何らかの任務で誰かが同じ空を飛べたって話を聞くと、あぅ~、ってなっちゃう。自分で技術屋っていう道を選んでおいてなんだけど・・・。

「この前も、なのはちゃんがルシル君に助けてもらったって言ってたし」

ハイジャックされた輸送機が墜落するというところで、ルシル君が巨腕生成の魔法のコード・イロウエルで防いだ。それはニュースになって、ルシル君をまた有名にした。墜落しかけようとも、ルシル君が居れば安心だ、って。そしてルシル君の仕事がまた増えてく。
特別救助隊からのスカウトがあったけど、ただでさえ忙しいっていう内務調査部としての仕事との両立は難しいから丁重にお断りした。って、“エヴェストルム”のメンテナンスのために私のところに来てくれたルシル君自身からそう聞いた。

(その事をはやてちゃん達に伝えたら、本当に心配してたし・・・)

それなのに、通信もあんまり出ないし、メールもなかなか返って来ないし、直接逢うことも出来ないルシル君。心配の言葉も掛けられないってことで、もうみんながお怒りモード。でも今週、ルシル君は1年ちょっとぶりに海鳴市に帰ってくる・・・予定。はやてちゃんと直接指切りをして約束したって言うことだから、たぶん帰って来てくれるとは思う。

(一応その休みを利用して、みんなでシャルちゃんの応援に行こうって話はしてるけど・・・)

ちょうどその期間は、ザンクト・オルフェンでシャルちゃんたち騎士の昇進試験がある。チーム海鳴のみんなでシャルちゃんを応援しに行こうって話していて、休暇も揃うように調整済み。ルシル君にもお誘いのメールを出しているけど、今のところはまだ返って来てない。

「もう。メール返信くらいすぐに出来るはずなのに・・・」

作業の手を止めて、なのはちゃん達の誰からかのメールが来てないかを確認。けどやっぱり来てなかった。はぁ、と溜息を吐いて凝った肩をコキコキ鳴らしてると、「お疲れ様、すずか。休憩してはいかが?」背後から声を掛けられた。

「あ、お疲れ様です、ドゥーエさん」

ドゥーエ・スカリエッティ。ここ第零技術部(通称スカラボ)の部長、ジェイル・スカリエッティ少将の義理の娘の1人で、次女にあたる女性。教育隊や情報部に出向することが多々ある一等陸尉さん。

「ローズティーを用意したから、少し休みましょ」

「ありがとうございます、いただきます!」

作用を中断して、ドゥーエさんが淹れてくれた紅茶や作ってくれたクッキーを美味しく頂く。ドゥーエさんもそうだけど、長女のウーノさんの作る焼き菓子も本当に美味しい。それもこれも義理のお父さんであり、上司でもあるドクター(スカリエッティ少将の愛称)への愛の賜物・・・らしい。

「コレが今、すずかが造っている自立型の魔導端末ね」

ドゥーエさんが私の作業デスクの上に展開されてるモニターを指差した。モニターに映ってるのは、「はい。動物型の汎用型デバイス、その猫タイプの試作機です」私の作品の1つで、プロトタイプの猫型デバイス。
ずっと気にはなってたんだよね。デバイスなんてとんでもない物を開発していながら、自立型デバイスがあんまり開発されてないことに。どこかの魔導端末メーカーは人型の自立型デバイスを開発して、試験運用を繰り返してるのに。だったら私は色んな用途に応えられる動物型のデバイスを開発しようと思い至った。そしてようやく、試作機の1体が完成した。

「可愛いわね。けど見たことない種類の猫ね」

「ペルシャっていう種類の猫をモデルにして作りました」

「コレって本物の猫をベースにした物ではないのよね?」

さすがに本物の猫を改造するわけにはいかないから、外装はリアル重視のぬいぐるみ。だけど本物と見分けがつかないレベルのぬいぐるみは市販されていないから困ってた。それをポロっとみんなに漏らしたら、はやてちゃんがある人に協力をお願いしてくれたことで、その人は本物と見分けがつかない程のペルシャ猫のぬいぐるみを編んでくれた。

「はい。特別技能捜査課のトゥーリア・サクロス一尉に作ってもらったんです」

「あぁ、人形師の・・・」

特別技能捜査課に所属する人は特別捜査官と呼ばれて、全員が何かしらのレアスキルや固有スキルを持ってる。そして、いろんな部署からの応援要請を受けて短期出向、捜査協力を行う。戦闘系スキルだったら武装隊にも出向くことがある。
トゥーリア一尉のスキルは人形師で、自作の人形やぬいぐるみを使い魔に出来るというもの。自作と言う条件もあって、デザインは凝りに凝ってるから完成度はとんでもない。その作成レベルは最早プロ・・・なんて目じゃない程のもの。

「(私だって初めて見た時は鳴き真似して呼んじゃったし)すごいですよね。近くで見ても、触れても本物だって思えちゃいますから」

毛並みや柔らかさまで本物そっくりで、生物特有の温かさが無いってことで初めて偽物だって判る。それほどの精巧さ。とまぁ、そんなトンデモぬいぐるみを使って私は自立型のデバイスを作ってみた。

「すずか、あなたがスカラボに来てから本当に毎日が楽しくなったわ。最近だとほら、アレ。自動掃除機♪ アレ、ドクターの手伝いや仕事などで忙しい時には大助かり♪」

「壱式くんと弐式くんですか? そう言ってもらえると嬉しいです♪」

私の作品第2号(第1号はエヴェストルム・アルタだ)である自動掃除機。1つはル○バをモデルにした壱式。小さな埃などを吸い込むための物。もう1つは業務用掃除機(あの大きな円柱型のやつ)をモデルにした弐式。キャスター付きだから自動で動いて、壱式では処理しきれない大きなゴミを、マニピュレーター2本で拾い上げて背部に連結されたゴミ箱に捨てるという機能を持ってる。

≪≪≪某、参上≫≫≫

噂をすればなんとやら。ドゥーエさんと話をしてると、壱式が3機とやって来た。壱式と弐式には言語機能を付けておいた。使用言語は侍言葉。発案者は時代劇が好きなシャルちゃんで、使用音声も立候補したシャルちゃんとアリシアちゃんの声を録ったものだ。

≪≪≪推して参る≫≫≫

「お掃除ご苦労さま」

≪苦しゅうない≫

≪恐悦至極≫

ドゥーエさんが労いの言葉を掛けると、ドゥーエさんの側に向かっていた2機がそう返して掃除を始めた。

「あ、今退くね」

≪かたじけない≫

私がそう言って席を立つと、もう1機がそう言って私の足があった場所を掃除し始めた。インテリジェントデバイス程の知能は無いけど、簡単な応答くらいは出来るようにした。これが結構好評で、特にドクターやセインは、侍言葉を真似しちゃうほど気に入っちゃってる。ちなみにシャルちゃんとアリシアちゃんにも人気だ。
そんな予想外の人気者になってる壱式の掃除の様子を横目に、ちゃちゃっと作業の続きをやってると・・・

≪猪口才な≫

≪小癪な≫

≪洒落臭ぇ≫

何かしらの問題が発生した場合に発せられる音声が聞こえてきた。そっちに目を向けるとデスクの陰に壱式3機が固まっていた。様子を確認するために席から断とうとしたら「私が行くわね」ドゥーエさんがヒールを鳴らして向かって行って、「ちょっとごめんなさいね」壱式3機を散らした。

「お菓子の空き袋(ゴミ)・・・?」

ドゥーエさんがそう漏らしたのが聞こえた。ドゥーエさんがしゃがんでそのゴミを拾おうとしたら・・・

≪あいや、待たれい≫

≪御無体を≫

≪某に成敗をさせて候≫

壱式たちが止めに入った。壱式たちはどうも掃除ロボットとしてのプライドが高いというか。開発者の私もビックリ。自分たちのスペック以上のゴミも処理しようとして、結果ゴミを詰まらせてフルメンテ、なんてことも何度かあった。さすがにそう何度も同じ轍は踏んでほしくないから、「開発者命令~! 壱式~、たいきゃ~く!」命令を出す。

≪無念でござる≫

≪是非も無し≫

≪余儀ない≫

ゴミ処理を諦めた壱式たちが他の場所の掃除を終えて、ここ第2研究・開発室から出て行った。ドゥーエさんが「すずかの出したゴミではない、わよね?」そのお菓子の空き袋を摘み上げて私に見せてきた。

「はい。そう言った物を持ち込むこともしないですし・・・」

スカラボに居る内でのお菓子などは、ウーノさんやドゥーエさんがお皿に盛ったものしか食べない。じゃあ誰が?って考えたところで「セインね、間違いなく」ドゥーエさんが呆れた声でそう漏らした。

「あー・・・」

言われてみれば、って納得しちゃう私。私がウーノさん達からのお願いで、日本のお菓子をお土産として持って来ることがある。なんでもこっちじゃ見たこともないのに美味しい物が多くて、こっちで再現したいということで。だから色々と持って来るんだけど・・・

――うんめー! このデカカツってやつが特に!――

駄菓子の定番、デカカツを特に気に入ったセインが食べながらスカラボ内を歩き回ることが多くなった。ドゥーエさんが摘み上げてるデカカツの空き袋が何よりの証拠。ドゥーエさんはくしゃくしゃと空き袋を丸めて制服のポケットに入れながら「叱っておくわ」ちょっと怖い声色でそう言った。

「えっと、あ、お茶とコーヒー美味しかったです、ごちそうさまでした」

「お粗末さま。それじゃあ私は――」

ドゥーエさんがそこまで言い掛けたところで、ビィービィー!って警報が鳴り響いた。私がスカラボに通うことになってから約5年の中で初めてのことだから「え? え、なに・・・!?」うろたえる。

「っ! ・・・良い機会ね・・・。すずか、あなたも来て!」

「え、は、はい!」

ドゥーエさんと一緒に開発室を出て応接室へと向かう。そこにはドクターやウーノさん、三女のトーレさん、四女のクアットロさん、五女のチンク、六女のセイン、スカリエッティ家が勢揃いしてた。

「すずか君も来てくれたのかい?」

「あの・・・」

どういう状況か判らないからどう答えて良いのか迷う。そんな私に「とりあえず座りましょう」ウーノさんがソファに座るように勧めてくれた。言われるままにソファに座ると、テーブル上にモニターが展開された。表示されてるのは白衣を着たお爺さんなんだけど、なんか表情から狂気を感じる。

「彼の名はヘンリー・ヨーゼフ・リー・メンゲレ。通称はプロフェッサー・ヘンリー。かつては次元世界に名を馳せた生物学、特に遺伝学などの権威だったんだが、少し前に広域指名手配を受けてしまった」

「管理・管理外世界問わずに特別なスキルなどを有した子供たちを拉致、もしくは高額で買い取り、そのスキルを再現できないかを研究するため人道に外れた実験を行っている犯罪者集団です。すでに何人もの犠牲者も出ていて、死を免れたとしても再起不能状態だったりするとのことです」

ドクターとウーノさんからそう伝えられた。プロフェッサー・ヘンリー。吐き気を催すほどの悪党だった。セインまでもが「うわっ、絶対に許せないね」怒りを露わにした。だけど、こう言った人たちを取り締まるのは次元航行部に所属してる局員たちだ。なのにどうして、ドクター達はこの人の事について話をしてるんだろう・・・。

「そんな彼プロフェッサーが、次元犯罪者プライソンの研究施設から子供たちを拉致したという報告が入った。その子たちを、おそらくすでに解き放っているであろうプライソンの追手より先に確保するのが今回の任務だ」

プライソン。ドクターと同じ通称で呼ばれてる次元犯罪者。プレシアさんがフェイトちゃんを生み出した技術、“プロジェクトF.A.T.E.”の基礎を確立させた科学者でもある人。さらに、ルシル君が存在意義としてる“エグリゴリ”であるレーゼフェアさんとフィヨルツェンさんを従えてる。

「トーレ、チンク、セイン!」

「「はいっ!」」「んっ!」

「君たちが先発として、プロフェッサーの拠点である次元航行船に突入。情報によれば、次元航行部所属のアースラが支局からの要請でプロフェッサーの逮捕に動いているらしい。子供の救出を最優先に、余裕があれば逮捕に協力するんだ」

アースラ。確か今回の任務では、フェイトちゃんとアリシアちゃんとアルフの、チーム・テスタロッサが同乗してるって聞いてるけど・・・。ううん、不安も心配もない。だって、フェイトちゃん達にクロノ君が加わればそれこそ無敵だから。

「後発はドゥーエ、クアットロ。支局やアースラと連絡し合って所定の場所までプロフェッサーの艦を操縦するんだ」

「判りました」「はぁ~い♪」

そういうわけで、拉致されたという子供の救出のため、トーレさん達が出動することになった。アースラのリンディ提督に向けてスカラボが捜査協力することを連絡し終えたウーノさんが、「ドクター。転移先座標の設定が完了しました」そう報告した。

「ああ。最優先目標は子供の救出。向かってくる敵は殲滅だ!」

ドクターが命令を下した。そして、ウーノさんがプロフェッサーの艦へと直通転送できるように設定し直したトランスポーターから「行ってきます!」トーレさん達は出動した。3人を見送った私やドクター達は応接室に戻って、3人から送られてくる視界映像が表示されてる3分割にされたモニターを観る。

『こちら先発班。無事に目標の艦へと転送完了。これより任務を実行します』

客船のような内装をしてる艦内を進む映像が映る。だけどすぐに『止まれ、チンク、セイン!』トーレがそう叫んで、さらに『すずか! お前は今すぐに席を外せ!』そう言われた。今、何か赤い物が映り込んだような気がするけど・・・。ドクターが「何か問題が生まれたのかい?」そう訊くと・・・

『死体が複数転がっています。パッと見でしたがデータにあったプロフェッサー傘下のスタッフのようです。どれもかなり残虐な殺し方をされていまして、すずかには刺激が強過ぎるかと・・・』

そんな報告が入った。出来たばかりの死体がフェイトちゃん達が今居る艦の中にある。殺したのはフェイトちゃん達じゃない。なら他に、人を殺せるような危ない人が艦の中に居るということになる。それが判ったからモニターから目を離すことが出来ない。

「・・・トーレ、チンク、セイン。こちらで死体が表示されないよう設定をする。少し時間をくれたまえ」

『判りました』

ドクターは手元に展開したキーボードモニターのキーを軽快に打ち込んで、「完了だ。任務を続行したくれたまえ」10秒とせずに作業を終わらせた。指示通りにトーレさん達が再び歩き出す。死体と思われるものは、見せられないよ、って書かれたカンペを持ってるデフォルメされたドクターのイラストで隠されてた。

「ドクター。不謹慎です」

「え、ダメかい? 力作だと思ったんだがね・・・」

「あの、これで良いですから。直す時間も勿体ないですし」

ウーノさんに叱られてしょんぼりしてるドクターに私がそう言った途端、『AMF!?』トーレさんとチンクが叫んだ。AMFって、魔力結合や魔力効果発生を阻害する高ランクの魔法だ。

『まさか、全域に展開されているのか・・・!?』

「艦内精査完了しました。AMFは艦内システムとはまた別の系統なようで、こちらからの解除は不可能です。それと、生命反応のある部屋のカメラを支配下に置きました」

ウーノさんが忙しなくキーボードモニターのキーを打って、モニターを2枚追加。映し出されたのは男の子2人が診察台のような物に寝かされたものと、「フェイトちゃん、アリシアちゃん、クロノ君、アルフ・・・!」の4人と、プロフェッサーと呼ばれるお爺さん。あと、藍色のブレザー、白のブラウス、赤いリボン、裾付近に白のラインが1本入った黒のプリーツスカートを着た、ウェーブのかかった金髪の女子高生さん?が1人が映るもの。ううん、そんなことより・・・

「苦しそう・・・!」

フェイトちゃんとクロノ君はデバイスを支えにようやく立っていられてるって風で、アルフはぐったり倒れていて、アリシアちゃんに至っては防護服が解除されて制服姿になっちゃってる。そんな中で、女子高生さんがプロフェッサーに向かって歩き出した。

「セイン、プロフェッサーを殺害させるな! プライソンのラボの所在地を吐かせる!」

『りょ、了解! IS発動、ディープダイバー!』

セインが隔たれた壁の中に潜った。シスターズはそれぞれ固有スキルを持っていて、セインのは無機物に潜行し、自在に通り抜けることが出来るというもの。無機物の内部を泳ぐように移動することで、地下や建造物の内部も自由に移動できる。
実際に壁の中を潜ったセインは、『セインさん、颯爽登場!』なんて言って、プロフェッサーを確保、そしてまた壁の中に潜って廊下へ脱出。そして金属の壁に両手を当てているチンクが『離れていろ』警告を出した。

『IS発動、ランブルデトネイター!』

チンクも遅れて壁から離れた直後、壁が大爆発。チンクのスキルは、触れた金属を爆発物に変えるというものだ。それで金属壁を爆発物として爆破させた。

『ん? なんだアイツらは・・・?』

トーレさんの視界映像に映るのは全身が真っ黒な人、その数10人。装甲のあるフルフェイスヘルメットや、体の部分部分にも分割装甲を装着してる。一番目が行くのは、両前腕部に装着された装甲から飛び出してる剣で、血に塗れてた。それだけで、あの黒い人たちがスタッフの殺害犯なんだって判った。

『『『『『ぎぃぃぃぃーーーーー!!』』』』』

『『『『『ぎゃぁぁぁぁぁ・・・・!』』』』』

黒い人たちは聞くに堪えない叫び声を上げて、トーレさん達に襲い掛かり始めた。トーレさんと一緒に黒い人たちを殴っては蹴って迎撃するチンクが『私が対処する。トーレはクロノ執務官たちを!』そう促した。

『判った! IS発動、ライドインパルス!』

トーレさんもスキルを発動。頑強な素体構築と全身の加速機能によって可能になるっていう、飛行能力を含む超高速機動スキルで、腿や足首、それに手首から魔力じゃないエネルギーの翼・“インパルスブレード”を発生させる。この翼は攻撃にも使うことが出来る。そんなトーレさんが、チンクが開けた壁の中に突撃していった。

「チンク! 構うな、排除せよ!」

黒い人たちを殴っては蹴り続けるチンクにドクターがそう命令を下した。でもチンクは『しかし、相手は人間・・・!』そう言う理由で渋った。

「彼らはすでに亡くなっている者たちだ! プライソンの非人道兵器、LAS! Livingdead Arms Soldier・・・! 死体をベースに改造して造られたサイボーグだ! チンク! 死してなお辱められた彼らを解放してやるんだ!」

あまりの真実にクラっときた。死体を改造する? そんなこと、考えついても実行しないし、そもそも考えつくこと自体が異常。もう吐き気すら催してきた。

『・・・了解です! ランブルデトネイター!』

チンクがスキルを用いての迎撃を開始。黒い人たちは次々と爆破されてバラバラになってく。その光景に私はチンクの視界映像から堪らず目を背ける。ウーノさんが「チンクからの映像は一時遮断しますね」と、私を気遣って消してくれた。

「ごめんなさい・・・」

「いいえ。私としても、すずかさんにお見せするのは心苦しいので」

そしてトーレさんの視界映像が大きく表示される。トーレさんが相対するのは女子高生みたいな女の人。

『偽者とは、酷い言い草ですね! 言うなれば私たちは姉妹になると言うのに!』

――メタルダイナスト――

『姉妹だと? ドクターが長年掛けて生み出した医療技術を盗み、それを兵器開発に転用したプライソン! そして初めから戦闘兵器として造られたお前たちと我々を・・・一緒にするな!」』

――ライドインパルス――

その女子高生さんはどうやら金属を操ることの出来るスキルを持ってるみたいで、室内の内装を破って飛び出して来た金属壁などを使ってトーレさんを追い込む。

「トーレ。彼女も生け獲りするんだ。プライソンについて、話を聞かせて頂こう」

『了解です!』

「あの、ドクター。今のトーレさんとあの人の話・・・」

「ん?・・・あぁ、そうだね。すずか君にも話しておくべきか。プライソンという男がどういった人間なのか」

ドクターが語り始めた。ドクター・プライソン。有機・無機問わずに兵器開発を主とする科学者。兵器開発技能においては、ドクター以上の天才だって。管理局の艦載兵装の1つである魔導砲アルカンシェルも、プライソンが構築した基礎理論が使われてるみたい。
そんなプライソンが、元々ドクターが生み出した医療のためだけのBNAC技術を、どういう手段で盗みだしたのか判らないけど兵器開発に転用した。これはトーレさんの話通り。セキュリティの高さが次元世界屈指なのにどうやって盗まれているのかは、ドクター達も未だに判らないとのこと。

「彼は探求欲の塊さ。思い付いたら即実行。人道、倫理、そんなものなど持ち合わせない正真正銘の外道。LASが良い証拠さ。それに、今トーレと相対している彼女、おそらく私の娘たちと同様に全身が機械化されたサイボーグだろう」

「私たちとあの女が姉妹だっていう話は、おそらくソレが起因してるのでしょうねぇ~」

「しかしアレは初めから兵器として生み出されたもの。生きるために、そして後世の障害を持つ人たちのために施術を受けた私たちとはその存在意義が違います」

「一緒にされたくないものね」

ドクターの怒り混じりの話にクアットロさん、ウーノさん、ドゥーエさんも怒りを露わにした。

「自分が神様にでもなったつもりなのかね。・・・彼は、自分の思い通りの作品を造るために人間を造っているんだよ」

「人間を・・・造る・・・?」

「試験管ベビーとか聞いたことあるかい? 彼は、目的の兵器を造るために適性遺伝子を組み合わせたり、プロジェクトF.A.T.E.のような技術を使ってクローンを造りだすんだ。そして狙い通りに造れた子供を、あの娘のように機械化させて兵器とし、道具とする」

もうフィクション作品の中の物語みたいな話に私の頭はパンクしそう。もちろん原因は怒り。プロフェッサーも外道だったけど、プライソンはさらに酷い。

「私たちスカリエッティ家はね、プライソンが道具として生み出した子供たちを救出するっていう任務を独自に負ってるの」

「プライソンのラボがあると聞けばそこに攻め込んでぇ~、ラボや技術の破壊、子供たちの救出を行うのよぉ~」

「局の仕事より最優先だから、まぁ色々と先方からお叱りを受けるけど」

「故に今回は、ラボどころかプライソンの居場所を知っているであろう彼女の確保も大事になったというわけさ。さて、ドゥーエ、クアットロ。今の内に子供たちの救出を」

「はいっ!」「判りましたぁ~♪」

「ウーノ。君は第1室のメインコンピュータから5人をサポート」

「畏まりました、ドクター」

ウーノさんとドゥーエさんとクアットロさんが応接室から出て、ウーノさんは私が未だに入れない第1研究・開発室へ移動して、ドゥーエさんとクアットロさんは隣のトランスポーターからプロフェッサーの艦へと向けて転移した。

「では続きを話そうか。実はね、これはウーノ達にも隠している事なのだが、実は彼女たちもプライソンによって生み出された試験管ベビーなのだよ」

「え・・・?」

なにかトンデモない話を聞かされてる・・・?

「プライソンがそう言った技術を使って生体兵器を造っているという情報を受けた私は、ミミル君ら古い友人とチームを組んでプライソンの研究施設に潜入。そこでウーノ達を発見して連れ帰った」

ミミル君。ザンクト・オルフェンに拠点を置いてる技術者さんだったよね。リイン――リインフォースⅡの誕生のためにはやてちゃんに協力してくれた、あのミミルさんのことだよね・・・。

「しかしどんな酷い事をされたのか、体はボロボロの状態だった。だから私は、生み出したばかりのBNAC技術を用いてあの子たちをサイボーグ化させた」

「あの、ドクターが運営してる孤児院出身で、障害のある子供だったって言う、あの話は・・・」

「改造時に記憶を書き換えさせてもらったのだよ。プライソンによる実験やら研究で負った心の傷をどうにかしたくてね。私は実際に孤児院を運営しているが、ウーノ達が孤児院に居たことはないのだよ。偽りの記憶さ。たとえ後に知られて恨まれようとも、彼女たちの荒みきった心をどうにかしたかった」

とても辛そうに、悲しそうに眉を顰めるドクター。これは責めていいものじゃないよね。だから「今のウーノさん達が笑っていられるのは、ドクターのおかげなんですね」って優しく語りかけた。

「・・・いつかは真実を伝えるよ。それでも私を父と慕ってくれるのなら、私は今以上にあの子たちのために、この人生の全てを費やすつもりさ」

「はい」

「しかしね。救えない子供も居るのもまた事実さ。少し前にプライソンのラボより救出した子供たちを、再び奪い返されてしまったことがあった。今も捜索しているのだがね、見つけられていない」

半年ほど前、ドクター達が荒れてた時期があった。私が来たことを知ると努めて普段通りに装っていたけど、結構バレバレだった。何があったのかを訊いたこともあったけど、何でもないよ、ってはぐらかされてばっかりで・・・。でも、そうなんだ。今の話を聴いて、そうなっちゃうのも理解できる。

「だから何としてもトーレには頑張ってもらい、彼女を確保してもらいたい。・・・セッテ、オットー、ノーヴェ、ディエチ、ウェンディ、ディード。あの子たちの居場所を聴き出さなくてはね」

(その6人が、プライソンに奪い返された子たちの名前なんだ・・・)

モニターに視線を移して、戦闘領域を室内から廊下へと変えたトーレさんと女子高生さんの戦いを見る。機動力向上のスキルと金属操作のスキル。1人は動、1人は静。2人は拮抗した戦いを続けてた。

『こちらチンク、セイン。執務官たちとプロフェッサーを無事にアースラへ収容しました』

そんな中でチンクから報告が入った。フェイトちゃん達の無事が確認できて心底ホッと出来た。

「ありがとう、チンク、セイン。申し訳ないがチンクはトーレの、セインはドゥーエ達のサポートを」

『了解です』『はーい!』

セインのスキルで一気に下層にまで戻ったチンク達は途中で分かれて、チンクはトーレさんと合流、セインはドゥーエさんとクアットロさんと合流を果たした。ドクターは「これで子供たちを救出できるね」ソファの背もたれに全体重を預けた。

『こちらドゥーエ。子供2名の確保完了しました』

それから間もなく幽閉されてた子供たちの救出が完了したって報告が入った。セインからの視界映像に映るのは、薬か何かで眠らされてるのかぐったりしてる男の子2人がドゥーエさんとクアットロさんに抱っこされてる姿。

「こちらでも確認した。とりあえずドゥーエとセインは一度帰還してくれたまえ」

『判りました』『はーい』

「クアットロはブリッジに赴き、その艦の操縦を」

『はーい♪』

ドクターの指示に従って、ドゥーエさんとセインは甲板へ、クアットロさんはブリッジへと移動開始。ドクターは「よし。これであとは・・・」トーレさんとチンクの戦闘が映るモニターに視線を戻した。

『一気に決めに掛かるぞチンク!』

――ライドインパルス――

『ああ!』

――ランブルデトネイター――

トーレさんとチンクによる2人がかりの攻撃に、『くぅ・・・!』女子高生さんが次第に押され始めてた。負けじと金属を操って2人に突撃させるけど、トーレさんはフェイトちゃん以上の速度で攻撃の隙間を駆け抜け、チンクも避けつつ“スティンガー”で女子高生さんを狙い撃ち。そんな攻防が繰り返されてとうとう・・・

『あ゛っ!?・・・あがあああああああああああ!!』

女子高生さんの右腕が、トーレさんの右手首から展開されてる“インパルスブレード”で斬り落とされて、チンクの“スティンガー”の爆破を受けた左脚が破壊された。

『この、この・・・このぉぉぉぉーーーー!!』

『こちらトーレ、チンク。敵性戦力を撃破。これより確保します』

手錠を取り出したトーレさんとチンクが女子高生さんに歩み寄って行く。女子高生さんは心底悔しそうに表情を歪めた後、『イプシロン!!』そう叫んだ。その直後、『っ!?』トーレさん達と女子高生さんの合間を光の柱が通過していった。

『砲撃だと!?』

『魔力ではない! これは・・・私たちと同じエネルギー運用の砲撃だ!』

トーレさんとチンクがその衝撃で廊下の床に伏せた。揺れる視界映像の中、『この屈辱、必ず果たす!』女子高生さんがそう怒声を上げながら床を這って、砲撃で出来た穴へと落ちて行った。トーレさんとチンクが『待て!』穴に向かって駆け寄るけど穴の底は次元空間で、女子高生さんの姿は無かった。

『チッ・・・!』

『申し訳ありません、ドクター。逃しました』

「いや、大丈夫さ。あの娘の確保は失敗したが、ラボの在り処を知るプロフェッサーの確保は出来、子供たちも救出できた。悪くはない結果さ。みんな、御苦労だったね」

こうしてプロフェッサー・ヘンリーを巡る戦いは終わった。救出された男の子2人はやっぱり、プライソンの手によって生み出された子たちだった。2人は特別保護施設に預けることになって、プライソンが逮捕されるまではドクターが保護責任者になることになった。
そして、プロフェッサーからプライソンのラボの所在地を聴き出したドクターはシスターズをその地へと向かわせたけど、すでにもぬけの殻になってたって後で知らされた。

 
 

 
後書き
ブエノス・ディアス。ブエナス・タルデス。ブエナス・ノーチェス。
永らくお待たせしまして申し訳ないです! ちょこーっと入院してました。
1週間と咳が続き、今回の風邪はしつけぇな、となり・・・1ヵ月と続き、ハウスダストかよ、となり・・・前話を投稿して4日後、ドカンと高熱からの呼吸困難のコンボ。本気でもうダメかと思いました。

ま、そんなことはもうどうでもよく、今話はすずか視点でのプロフェッサー事件と、スカリエッティ家の第1の秘密をお送りしました。ウーノ達は元々プライソンが生み出した存在で、ジェイルやミミル他によって救出された過去を持つ、と。
第2の秘密は、すでに登場していますね。ジェイルとプライソンが兄弟であること。それが開かされるのはまだまだ先です。

次回は、アリサ視点でヴァイスの誤射事件をお送りします。

 
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