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女子高生!?

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2部分:第二章


第二章

「美味しいスイーツがあればね」
「意外とそういうところはふつうなのね」
「誰だって普通よ」
 洋子はまた笑って答えてみせた。
「それで誰だって変なのよ」
「矛盾してない?それって」
「全然」
 しかしそうではないと言う。やはりいささか矛盾していると言えばしていた。
「人間ってそういうものじゃない」
「そうかしら」
「そうよ。だから変身するのもいいのよ」
 またそちらに話をやるのだった。
「これがね。じゃあ来週ね」
「ええ。じゃあ今は二人でデートね」
「ホテルなしのね」
「レズじゃないから」
 倫子は今の洋子の言葉には少し顔を顰めさせた。
「そういう冗談は止めてね」
「また随分とお堅いわね。私だってレズじゃないわよ」
「じゃあ何でそんな冗談言うのよ」
「ほんの挨拶よ」 
 くすりと笑って述べる洋子だった。
「ほんのね」
「本気に見えるわ」
「私は男の子一本だから」
「男の子ね」
 少し聞いただけなら普通だがそれでも妙に引っ掛かるものがある、倫子は話を聞いていてこう思った。
「あんたひょっとして女子高生に化けるのって」
「ああ、言っておくけれど最後はなしだから」
「なしなのね」
「そういうこと」
 その最後が何のことかはもう言うまでもない。ホテルのことだ。
「制服でホテルには入られないから」
「入ったら勇者よ」
「まあとにかく。そうした遊びもいい気分転換だからね」
「わかったわ。一回だけよ」
「それでもどうぞどうぞ」
 こんなやり取りで来週のことが決まった。時間が経つのは実に早くその来週になった。倫子は洋子のアパートに寄ってバッグの中にある服を手渡され百貨店のトイレで着替えて。そのトイレの鏡で二人並んで姿を見ると。
「似合うじゃない」
「そうかしら」
 髪型はそのままで服装を変えただけだ。化粧もそのままだ。
 倫子は黒いスカートとブイネックの紺色のセーターとリボン、それに白いシャツだ。靴は黒でヒールではない。靴下は黒のハイソックスにしている。見れば洋子も同じ格好だ。やはり洋子の方がかなり背が高く大人びて見える。実際の年齢がそうなのだから当然であるが。
「何か変に見えるんだけれど」
「自分自身だからそう思えるのよ」
 しかし洋子は倫子の心配を一言で終わらせてしまった。そしてまた言う。
「他人から見ればわからないわよ」
「そんなものかしら」
「そうよ。わかったら行くわよ」
「街になのね」
「街に出なくて何処に行くのよ」
 こうも倫子に言う。
「まさかずっとこのおトイレでいるの?」
「それは」
「それは嫌よね。じゃあわかるわよね」
「ええ」
 鏡に自分の顔が見えていた。憮然とした如何にも納得していないという顔だ。それに対して洋子はにこにことしている。一見するときつそうな顔だが笑うとくしゃり、と崩れて優しい感じに見える。実に不思議な笑顔だった。
「わかったわ。じゃあ行きましょう」
「ええ。買い物しながらね」
「買い物!?」
「制服なのよ」
 そのくしゃりとなった顔で倫子に言うのだった。
「高校生のアクセサリーとか買い放題よ」
「そうなの」
「そうなのって。普通スーツとかでそういうものは買えないでしょ」
 くしゃりとなっていた笑顔が苦笑いになっていた。今度は学者めいた顔になっている。知的できつめの顔だが色々な笑顔に合っていた。
「だからよ。こうした機会にね」
「あんたって意外と少女趣味だったの?」
「悪いかしら」
 倫子にこう言われると顔を少し赤くさせてきた。
「意外っていうか何ていうか」
「学生の頃から好きなのよ」
 今度はそれを完全に肯定してみせてきた。
「制服もね」
「成程ね」
「流石に体操服とかは持っていないけれど」
 それは否定するのだった。
「ブルマーとか。嫌いだし」
「あれ着ていたら変態よ、完全に」
「男の人でそういうの好きな人は入るけれどね」
「完全に変態ね」
 それは思いきり否定する倫子だった。
「制服だってやばいのに。本当に大丈夫かしら」
「大丈夫よ。じゃあ話が決まったら」
「行くのね」
「そういうこと」
 洋子の笑顔がまたくしゃりとしたものになっていた。
「いいわね」
「わかったわ。ここまで来たらね」
 まずはトイレを出て白い百貨店の店の中を進みピンク色の如何にもといった店の中に入る。店の中は制服の女の子で一杯だった。誰も彼もがミニスカートから足を見せている。にこにことしてアクセサリーを物色する洋子の隣で倫子はその女の子達と自分、そして洋子を見比べていた。とりわけその足を。自分達の足が気になって仕方ないのだ。
「やっぱり足は」
「まだ言ってるの?ばれる筈ないわよ」
 洋子はこう倫子に言葉をかけながらアクセサリーを物色し続けている。ブローチをあれかこれかといった感じで探すその姿は確かに女子高生のものだった。
「安心しなさいって」
「足が」
「足!?」
「ミニだから。余計に」
「そういえばあんた普段はタイトかズボンよね。タイトっていっても膝までの」
「あんただってズボンばかりじゃない」
 倫子は眉を顰めさせて洋子に告げた。
「違うの?スカートなんて全然穿かないじゃない」
「今穿いてるわよ」
「そういう問題じゃなくて」
 今度は口も顰めさせてきた。
「足が。気になって」
「奇麗な足してるじゃない」
 倫子の足をちらりと見てからの言葉だった。
「色も白いしソックスも似合ってるし」
「そうかしら」
「制服はミニスカートだからいいのよ」
 赤いブローチを手に取りながら半分意に介さずといった態度で述べる。
 
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