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普通の刑事の特殊な日々

作者:時雨日和
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第4話 人生の決断

あれから4ヶ月経った。傷は完治して今では普通に動ける様になった、目は見えないままだけど。そのせいで署でも家でもいろんな所で迷惑掛けてた、でも謝ると何故か逆に謝るなって怒られる。不思議な気分。今では少しずつ慣れて携帯とかも電話だけなら場所を覚えて掛けれるようにまでなった、確認はするけど。移動も杖の様な物を使っている。前に言ったようにうちの課に大和が来て4人になって、しかも名前も未解決事件特殊捜査課という長い名前になった。最初の頃本当に続けるのかと何度も何度も聞かれ続けたが『続けられないと決めるのは俺ではありません。それは上の人が決めることです。俺が必要ないと思ったらいつでもクビにして構いません、自分から辞める事はありませんので』と返した所それから聞かれなくなった。ただ大和には冷やかされる。そんなこんなで11月25日俺は今日は大和に連れられて署まできた。
響希「おはようございます」
2人「おはよう」
大和「おはようっす」
響希「今日は何か事件は流れて来てないんですか?」
華那「珍しくね、今日は何も来てないよ」
沙耶「なら外回りだけかな、今日はー…響希と大和君だね」
大和「俺か、なら昼前に行こうぜ響希。それでついでに昼もついでに食べようぜ」
響希「何か外回りを良いように使ってないか?」
大和「仕事はちゃんとやるから問題ない」
華那「ほんと、2人を見てると兄弟みたいだね」
響希「最近よく言われる様になったんでやめて下さい。嫌ですよこんな弟、毎日観察してきそうで怖いです」
大和「よく分かったな」
響希「は!?」
なんて冗談言えるほど平和であった。そして昼前大和に連れられて近くのアパートが何個か並んだ住宅街の近くの外回りをする。お前外回り出来るのか?って?俺が頼んでいる、今まで通りのように仕事させてくれ。と、でも流石に捕まえるのとか机仕事とか現場の確認とかは出来ないけど他のは手伝ってもらいながらやっている。
響希「どうだ?何か変わったこととかあるか?」
大和「今んとこ問題無し、寧ろ全然人気がないくらいだ」
響希「なるほど、ここ確かにこの時間は少なかったはずかな。平日だし結構共働きとか母子家庭、父子家庭の家庭が多かったはずだからな」
大和「ふーん、あ、そうだお前に大事なこと教えとく」
響希「なんだよいきなり」
大和「今日11月25日って弥生の誕生日だぜ」
響希「は?」
大和「だから弥生の誕生日だって、知らなかったのか?」
響希「全然…」
大和「なんだ、お前ら仲いいから知ってるもんだと思ってたぜ」
響希「嘘つけ知らないと思ってたから言ったんだろうが」
大和「たりめぇだろ、つーかお前奥手過ぎんぜ早く告っちまえ」
響希「うるせぇよ」
大和「なんだよ?やる前から諦めんのか?」
響希「いや違う…なんて言うか、もし仮に付き合う事になったら、俺目見えないし迷惑とか死ぬほどかけると思うから…それがずっと続くとか」
デコピンされた。
響希「痛っ!?何すんだよ」
大和「うだうだ言ってねぇで」
と言った直後俺の服の袖を引っ張っている感覚がした。
夜「おじさん…助けて…」
女の子の声がした、声からして小さな大体幼稚園、5、6歳くらいだと思う。ただ泣いていた。
響希「どうしたの?何かあったの?」
夜「ママが…ママが…」
響希「お母さんがどうかしたの?」
夜「ママが…血だらけなの…」
響希「お家はどこ?何号室?鍵は開いてる?」
夜「307号室、鍵は開いてる…」
響希「大和!!頼む」
大和「言われなくても」
大和は勢いよく言われた307号室に向かっていったと思う。俺はひとまず署の方に連絡した。人が来るまで女の子の事を撫でたりして女の子を落ち着かせてた。
被害者は三笠 愛子、手首を切ったことにより出血多量により現在意識不明の重体で病院に搬送させられた。被害者は娘と二人暮らしの母子家庭で近くのスーパーでパートとして働いていたようだ。しかし今日は朝行かなかったようで、そして女の子が朝起きた時母親が見つからないので家中を探してたら風呂場で血だらけになっているのを見つけて助けを呼ぼうと家を出たようだ。前半は調べた刑事の人から聞いて後半は俺が女の子から聞いた話。
大和「血液量から見て大体30分から1時間前くらい経ってたと思う。正直油断ならない状態だ。その子どうするんだ?」
響希「今はまだこの子のお母さんが助かることを信じよう。それで事件性とかは?」
大和「分からないな、状況から見たらどう考えても自殺だな。近所の人も最近被害者がやつれてきたとか、何か思い詰めたような感じになってきたと言っていた」
響希「…自殺か」
夜「おじさん…」
響希「ん?どうかした?」
夜「ママ、大丈夫なの?」
響希「…おじさんはお医者さんじゃないから分からないけど、今はお医者さんを信じるしかないからね。だから今はおじさんと一緒に」
夜「おじさん、ママねいつも悲しい顔してたの。でもねたまにママに会いに来る男の人がいたの、その時はママ元気になるの」
響希「それはほんとう?その男の人ってどんな人?」
夜「えっとね、おじさんよりもおっきくて眼鏡をかけててママはこの人はサラリーマンなんだよって言ってた」
響希「大和、目撃情報とかって」
大和「いるな、何人か見た人がいた。ついでに言うと監視カメラにも映ってる。…しかも今日もな」
響希「つまり…」
大和「今日の朝9時半頃、発見の1時間前に被害者の家から出てきている」
響希「ならそいつを問い詰めるか」
大和「必要ないかな」
響希「なんで?」
大和「…こいつ、自殺してる」
響希「は!?どこで?」
大和「普段使われない、被害者のアパートの非常階段。さっきこの子に聞いた時エレベーター使わないで階段で行ったら偶然見つけた。さっき鑑識の人が連れて行ってた。多分殺したと思ったんだろうな」
響希「何なんだよ…無責任な」
大和「ひとまず俺は報告してくる」
大和がこの現場の責任者の方に説明しに行った。俺は女の子の目線に合わせようと見えないが感覚でしゃがみ見ていた。この子も1人になったらどうなるんだろう?身寄りはあるのか?祖父母とかいるのかな?それよりもこの子のお母さんは助かるのかな?携帯が突然なった。沙耶さんが病院からかけていた、沙耶さんがお母さんの担当になったんだなとか思ってたら。
沙耶「響希、さっき運ばれた女性だけど」
響希「どうでした?間に合いましたか?」
沙耶「駄目だったよ」
響希「え…」
沙耶「遅かったって、出血が多すぎて血が足りなくての失血死だった」
俺は通話を消す事さえ忘れてそのまま力が抜けるように携帯を持っている手がだらんと落ちた。
夜「おじさん泣いてる、どこか痛いの?」
言われてから気づいた、俺は涙を流してた。女の子は小さな手で俺の頭を撫でた、俺は涙が止まらなくなった。今日初めて会った女の子に対して泣いていた。泣きながらではあったが女の子にお母さんが亡くなったことを子どもに伝わるように話した。女の子もわんわん泣いていた、俺はそのまま女の子の事を抱っこした。
大和「おいどうしたんだ?…あ、そう言うことか」
響希「この子これからどうなるんだ?身寄りは?」
大和「身寄りは…無いらしいな、これからは施設とかにあずけられるんじゃないかな」
響希「…まだ、決まってないんだよな?」
大和「一応な」
響希「なら…」
大和「引き取るとかは言わないよな?俺が調べたところお前だってこれから考えれば生活厳しいだろ?それに1人増えればお前はもっと厳しい事になる。ましてやお前は障害持ちだ、正直こんな事は言いたくなかったよ、俺だって障害持ってるからとかの差別もしたくないそれにお前は頑張っていると思う。だけど限界ってもんがあるんだよ」
響希「ごめん…だけどな、ほっとけないんだよ」
大和「弥生に相談すればいいんじゃないか?」
すぐに電話をかけた。
弥生「もしもしこんにちは響希さん、どうしたんですか?」
響希「それが…今日たまたま外回りに行った時事件がありまして、その家母子家庭でお母さんが亡くなったんですけどその家のお子さんだけ残されて身寄りも無く施設とかにあずけられるかも…」
弥生「響希さん」
今まで俺が話している時は最後まで話を聞いていた弥生さんが途中で話しかけた。
響希「はい?」
弥生「響希さんはその子をどうしたいんですか?私はそれだけ聞きたいです」
響希「俺は…俺も恋心もそして弥生さんもまだ歳も間もない頃に両親を失って寂しい思いをしてきました。それで、お節介かも知れませんが俺はこの子に同じような思いをさせたくないと思いました。本当は俺が引き取ってあげたかったんですが、恥ずかしい話俺にはそんな余裕がありません。なので…俺は…」
怖かった、否定されたり貶されたりするかも…弥生さんはそんな人じゃないとは頭では分かっている、だけどトラウマなのかな、俺は口篭ってしまった。
弥生「響希さん」
響希「ぁ…はい」
弥生「頑張って下さい、私はちゃんと聞きますから」
響希「ぁ…はい!ですから、その俺は、同じ気持ちを、同じ思いをした弥生さんに引き取って欲しいと思います。」
弥生「響希さんらしいですね、きっと今日初めてあった子なのにその子のためを思って真剣に考えてあげられるのは…分かりました、私が引き取りますよ」
響希「本当に…いいんですか?」
弥生「はい、うちは経済的にも衣食住も余裕ありますから。ただ引き取る時の手続きの時は手伝ってください」
響希「もちろんです。では今から向かいます」
弥生「はい、待ってますね」
それを聞くと俺は通話を切り女の子に説明した。女の子はちょっと不安そうな顔をしていたそうだが、大和が俺に聞こえない声で女の子に耳打ちした。すると女の子はびっくりした顔をした後安心したような顔をしたそうだ。そして説明した後すぐに大和の運転で俺と夜ちゃんを弥生さんの家まで送ってくれた。
大和「俺は待ってるからお前ら2人で行ってこいよ」
夜「ありがとう、おにいさん」
響希「なあ夜ちゃん、なんで大和の事はおにいさんで俺の事はおじさんなんだ?」
夜「だっておじさん杖使ってたから、杖使ってる人はおじさんでしょ?」
響希「うーん、まあ大半はそうだけど」
大和「良いじゃんおじさん、ほら行ってこいって」
響希「はいはい」
夜「おじさん、はいは1回なんだよ?」
響希「…はい」
大和が笑っていたがすぐに車を出て家に向かった。もちろん杖をつきながら夜ちゃんは俺の手を繋いでついてきていた。チャイムを鳴らすと天道さんが出てきて弥生さんの所まで連れていってくれた。弥生さんに会ってまた改めて説明した、さっきと同じように弥生さんは快く引き受けてくれた。弥生さんと夜ちゃんはすぐに仲良くなった、夜ちゃんは全くと言っていいほど人見知りはしないし人懐っこい感じだった。顔は大和が言うには漫画とかアニメとかに出てくる女の子みたいに可愛らしい顔をしているらしい、ちなみに大和曰く母親は微妙らしい
要らないなそんな情報。その後夜ちゃんは天道さんに連れられて自分がこれから使う部屋に案内しにいった。
響希「本当にありがとうございます」
弥生「いえいえ、響希さんらしい事だと思うので私は引き受けたんですから。それに私を頼ってくれてありがとうございます」
響希「むしろ頼ってばかりで…」
弥生「謝らないで下さいね、響希さんすぐ謝るんですから。気にしないでください私が前にお願いしたんですからいいんですよ」
響希「ぁ…はい、それでその…」
弥生「なんですか?」
響希「大和にきいたんですが…弥生さん今日誕生日…何ですよね?」
弥生「そうなんです、本当に凄いですね大和さんは」
響希「おめでとうございます、そしてすいません、聞いたの今日でプレゼントとかそういうの用意してなくて」
弥生「気にしないでください、誕生日を祝ってくれるだけで私は嬉しいので」
響希「あの…迷惑になる事かも知れませんが」
弥生「ん?何ですか?言ってみて下さい」
響希「では…あの、初めて会ったときとか俺が怪我した時とか今日の事とか今まで一緒に話してた時いつも安心出来ました。だからいつも弥生さんに頼ってばかりいたかも知れません。俺は目が見えないとか色々障害あっていっぱい迷惑とかかけると思いますが…俺と付き合って貰えませんか?」
弥生「…」
響希「…」
少しだけ無言の空間が生まれた。表情とかはみえないから、あ、やってしまったと思い訂正しかけた。
弥生「回りくどいですよ、でもそれが響希さんらしい事何ですよね」
響希「すいません」
弥生「私も人のこと言えないくらい障害とかいっぱいあっていっぱい迷惑と かけると思います、でもこれは響希さんも思ってることだと思いますがその事のせいにしたくないと思ってます。なのでこちらこそお願いします」
響希「本当…ですか?」
弥生「こんな時に嘘は言いませんよ」
響希「あ…ありがとうございます!改めてこれからもよろしくお願いします」
最後に手を握って家を出てそのまますぐに車に戻った。
大和「よお、遅かったな」
響希「ちょっとな、説明とかあったし」
大和「頑張ったじゃないか、おめでと」
響希「はぁ!?おま…お前聞いて…」
大和「実は恋心も聞いている」
大和はスピーカーのようなものとそれの近くに置いた携帯には恋心と表示されていた。
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