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普通の刑事の特殊な日々

作者:時雨日和
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第3話 乗り越えるべき障害

弥生さんに会ったその日俺はそのまま署の方に戻ってひとまず華那先輩にあの家にはまだ人が住んでいる事などを話した。華那先輩はその話を聞いてすぐに上に話に言ってくれた。帰ってきたらまあニヤニヤしながら明日からは行かなくてもいいそうで明日からまたいつも通りの仕事に戻って良いそうで俺はまたいつも通りの職務に戻った。それでも毎日とはいかないが行ける時は出来るだけ弥生さんの所に行き話をするようになった。
それから大体1ヶ月ちょっと経って少しずつ夏にも近づいてくる頃その日は万引き犯を捕まえてそしてまあまあ早めに帰れて妹と一緒に晩御飯を食べている時
恋心「ねぇお兄ちゃん」
響希「どうした?」
恋心「この前話してた弥生さんってどんなひとなの?この前からずっと気になっててね、写真とかないの?」
響希「ああ、そういえば恋心は弥生さんと会って無かったな」
恋心「ねえどんなひとなの?」
響希「グイグイ来るな、そうだなとりあえずハーフで綺麗な人だな、そうか今度の休みの時にでも一緒に会いに行くか?」
恋心「いいの?でも迷惑じゃないかな?」
響希「なら聞いてみるか、ちょっと連絡してみる」
と言ってとりあえずメールを入れてみた。そしたら10分後位に『今度の土曜日なら大丈夫です、私も妹さんに会ってみたいです』と返ってきた。
響希「土曜日なら大丈夫だって」
恋心「やった、ちゃんと土曜日空けとかないと」
学校ではクールビューティとか噂されているらしいが、学校と家との差を見せてみたいものだ。ちなみに今日は火曜日で約束まで今日を含めて5日ある。
~~~~つぎの日~~~~
今日もまたいつも通り出勤して自分の机に向かったところ一つの置き手紙があった。
響希「ん?」
『藤原 響希巡査、私は貴方を許さない』
脅迫?そんなような内容の手紙が置いてあった、その時誰もいなかったのである程度良くさせて貰っている捜査一課の天月警部の所に行った。
響希「失礼します。おはようございます天月警部少しご相談がらあります」
天月「よう、響希もしかして手紙の話か?」
響希「はいそうです。これはどういった事なのでしょうか?」
天月「ワシも聞いた話だからな、朝清掃の方が入口近くの壁に貼ってあったようだ。一応鑑識に簡単ではあるが指紋とか調べたらしいが何も出ないらしいからな、何があるか分からない、しっかり用心しなければいけないからな、何かあったらワシにまた相談してくれな」
響希「ありがとうございます、それでは失礼します」
俺は警部に挨拶しその場を後にした。その後華那先輩と沙耶さんが来てその話をして、気をつけなさいと言われあまり1人で行動しないようにしていた。珍しく事件も回って来なくその日は事務仕事をこなしその日は無事に過ごしました。
~~~~つぎの日~~~~
この日ニュースがあった、そのため署はかなり慌ただしい様子だが、基本的にうちの課は事件から何日か経ってからうちの課に流れてくるものだが、俺が呼ばれた。しかし現場ではなく会議室に呼ばれた。
俺は失礼しますと中に入り会議に参加することになった。
会議の内容は今回の事件は午後11時46分街灯の少ない一方通行の道でそこを通ったサラリーマンの男性が通報した事件、付近はほぼ人が通らない場所で通報が遅れていて死亡推定時刻との差が出来死亡推定時刻は発見の約一時間前の10時40分、死因はナイフで腹部と胸部を刺されたことによる失血死、などを話し合っていた。そして会議も終わりに差し掛かっていた時。
司会の警部「さて、特殊捜査課藤原 響希巡査、君が呼ばれたのは実は犯人は被害者の横にナイフで刺さっていたんだがそれに手紙が刺さっていた」
響希「手紙…ですか?」
会議室のボードに1部血に濡れているが『次は貴方だ藤原 響希巡査」
と書かれた手紙が貼り出された。少々ざわめいたがその後すぐに終わり俺は戻っていった。
会議の日の次の日、木曜日その日から事件の捜査に特殊捜査課も駆り出される事になった。今回は俺と華那先輩ペアだった、事件のあった現場はまだ事件があって間もないだけあって現場には割と大勢で作業していた。
響希「華那先輩はこの事件どう見ます?どう考えても俺に対しての憎しみ的なもんありますよね」
華那「そうだよね、響希君何か恨まれるような事ないの?」
響希「正直刑事やってれば恨まれる事なんて死ぬほどありますよ」
華那「それもそうかぁ、ま、響希君も犯人捕まえないと危ないっぽいしすぐに捕まえないとね」
響希「はい」
と意気込んだものの証拠が少なく、被害者の知り合いとかのアリバイも動機も見つからない、ドラマのようにダイイングメッセージとかも無い、実際捜査は結構難航しあまり進まない。今までとは違い何も関連が無く証拠も残りにくいただの道端、しかもあまり人が通らない一方通行、血液も被害者のみ被害者の衣服にも証拠なし、かなり慣れているのかこれほどまで捜査しにくいのは小説やドラマでも見ているようだった。
華那「どう?何か見つかった?」
響希「いえ、犯人は慣れているかのように証拠も残っていません。それで華那先輩はどうみます?」
華那「そうだね、無差別の可能性があるかも知れないよ。それこそ響希君のみせしめのためとか」
響希「…つまり」
華那「おっと、だからって自分を責めない事だよ別に響希君がやった訳じゃ無いんだから」
響希「華那先輩には敵わないですよ、何でわかるんですか?」
華那「響希君、実は結構顔に出てるんだよ?響希君は分かってないかもだけど」
響希「そうだったんですか?俺的にはちゃんと冷静にポーカーフェイスにしているつもりなんですけど」
華那「まあ、真面目な話私は響希君と沙耶ちゃんの上司なんだから、何かあったら私にしっかり相談するんだよ」
響希「はい!ありがとうございます!」
そう言って今までのように自分に出来る限り調査した。しかし今までとは違いさっきも言ったとおり証拠が全然出てこない。そんなこんなで今日の調査は終了し、その場で解散となった。
その日はそのまま帰るため少し人気が少ない道を通ることになった。そこで今回の事件の事を考えながら歩いていたが人気がない電柱の隣に1人で立っている人影が見え、少し夜も更けている時間で人気もないのでその電柱の隣の人に注意しようと思いその人の前に立つ。
響希「失礼します、ここは人気も少ない」
すると腹部に激痛がはしった。
響希「は?…」
すぐに腹部に刺さったものを抜かれ、すぐに痛みで膝をついたとたん目の所に刃物が横に過ぎる瞬間少し仰け反っていた為目の所の傷は浅く済んだが仰け反った勢いでそのまま後ろに倒れてしまった。俺はそのまま意識が薄れていく、死ぬ前の後悔とかそんなものを考えている余裕も痛みに耐える余裕もない。ただ過ぎるだけだった、そして俺は死ぬのかと思いながらまた別の声が聞こえそのまま閉じた。
目が覚めた。目が覚めたはずだったが目の前が真っ暗だった、夜なのか?電気が付いてないのか?とか呑気な事を思っていた。体を起こそうと力を入れると腹部に激痛が走った。
響希「いっ…つぅ…」
その痛みで全て思い出した。と言うより感覚が流れてきたという方があってるかも知れない。俺は刺された、しかし生きている、目をやられたそのために目が覚めても真っ暗だった、しかし生きている。
恋心「お兄ちゃん!!」
目が見えないのでちょっとキョロキョロしていると抱きつかれた感覚がした。
響希「恋心?」
恋心「お兄ちゃん…お兄ちゃん…良かった、良かったよぉ…死んじゃったかと思った…」
そうか、ほんとに恋心に心配かけちゃってたか反省しなければな、恋心の事泣かせちゃったな。
響希「恋心、ごめんな心配させちゃって」
恋心「ほんとだよ…お兄ちゃんのばかぁ…」
両親が死んだ時と同じように恋心は泣いていた。抱きつかれている感覚を頼りに恋心の頭を撫でてあげよう、と思ったが思うように体自体動かない。こんな感覚は初めてだ。
沙耶「あのぉ、お取り込みの所ごめんねぇ」
響希「ん?…この声は、沙耶さんですか?」
華那「私もいるんだよね」
響希「華那先輩…ですか?」
恋心は多分2人が来てすぐに離れたと思う、そして2人から聞いたところ今は金曜日の昼前頃、そして昨日俺は通りすがりの男性が俺が襲われているのを目撃しすぐに大声を掛けて犯人と思われる人物は逃げて男性はすぐに救急車を呼びもし遅ければ危なかったそうで、でも腹部の傷が深く絶対安静のもと入院、そして目はある程度問題はないそうで瞼の所を切っただけなそうだ、しかし何日かは包帯で塞がれて目を開けれないようになった。それを聞いてまた恋心が泣いていたと思う。この話をした後沙耶さんと華那先輩は仕事に戻った。恋心は昨日の夜からずっと看病してくれていて今日学校を休んだそうだ、そしてニュースで俺の事が取り上げられていたようだ。正直ちょっと悔しかった、不意打ちとはいえそれに対応出来なかった事に。まあ華那先輩も言っていたが今回の事件に関しては2人で解決しておくから響希君は絶対安静ねとの事で、それはそうだろうな目が見えないんだし。そして昼、目が見えないのでちょっと恥ずかしいが恋心に食べさせて貰った。ただそこを考慮してくれたのか、ただ部屋がここしか空いてなかったのか知らないが個室らしい、見えないが。昼食が終わった頃、ドアをノックする音が聞こえどうぞと声をかけた。あまり聞き覚えがあるような無いような車輪の音が聞こえた。
響希「もしかして弥生さんですか?」
弥生「よく分かりましたね。響希さんこの度は災難な事に、大丈夫ですか?」
響希「少し腹部の方に痛みは残りますが安静にすれば大丈夫なようです」
弥生「そうですか…良かったです」
響希「あ、そういえば紹介してませんでしたね、ええと妹の恋心です。それで恋心、こちらが弥生さんだ」
弥生「初めましてファーディナンド・弥生です。響希さんから良くお話は聞いております」
恋心「いえこちらこそ初めまして、藤原 恋心です。こちらも兄からお話は聞いております。聞いていたようにとてもお綺麗ですね」
弥生「いえいえ、恋心さんもお綺麗ですよ。私なんかよりも」
恋心「そんな事はありません。って、こんな事繰り返してたらキリがありませんね」
弥生「ふふ、そうですね…響希さん」
響希「なんですか?」
声の感覚から恋心が俺の右側、弥生さんが俺の左側に車椅子を寄せる。声は出していないが天道さんもいるのだろう、きっと弥生さんの後ろに立っているだろうな。
弥生「本当に無事で良かったです。ニュースで響希さんの事が出て意識不明の重体だと聞いた時はどうなるかと…」
と話しながら俺の手を握っているのがわかった。
響希「弥生さん…」
弥生「心配でした、両親と同じようにまた親しい人を亡くしてしまうのかと…思って…」
弥生さんは多分泣いていたと思う、出来る限り押し殺そうとしていたが少し泣き声が漏れていた。
響希「すいません、弥生さんご心配をおかけしてしまい申し訳ありません」
恋心「お兄ちゃん」
響希「ん?」
恋心「私も…お父さんとお母さん…いや2人よりも一緒に私のために…頑張っていた…お兄ちゃんが…」
恋心も泣いていた、そして俺の右手を握っていた。流石に俺も泣きそうだった。
響希「二人とも心配させてしまって申し訳ありませんでした。ただ…こんな俺でも、こんなに悲しんでくれる人がいて、泣いてくれる人がいて、不謹慎かも知れませんが嬉しいです」
恋心「ばかぁ…お兄ちゃんのばかぁ…そんなの当たり前だよ」
弥生「そうです…当たり前ですよ…」
俺には勿体ない、少し包帯の所から涙が流れたような気がする。2人は泣き止んだ頃、俺は眠っていた。
昔の事を思い出していた。高校時代の事、イジメられ暴力を振るわれ体に傷も痣も増えていった。恋心に見つけられても転んだとかぶつけたとかして隠していた。そんな高校生活を続けていた、少しでも心配をかけないように、かけないようにと自分に言い聞かせて生活していた。だから今の状態、心配させてしまっているけど恋心も弥生さんも傍にいてくれている。今まで気を張りながらだから安心出来た、こんな感覚は久しぶりだった。
目が覚めた、と言うより起きた。目が見えない今誰がいるのかも分からないけど二人ともまだ手を握っていた。
響希「すいません、眠っていたみたいです今何時ですか?」
恋心「午後6時位だよ、お兄ちゃん最初寝てるの気づかなかったよ分かりづらいね」
弥生「すいません、ずっと握ってしまって」
響希「いえ、あのむしろ…ちょっと安心してしまいました」
弥生「響希さんって意外に可愛い所あるんですね」
恋心「本当ですね、お兄ちゃん家でも私の事ばっかり気にして自分の事何にも気にしないんですよ」
弥生「そういえば私の家に来てもすぐ私のこと気にして、むしろ天道にまで気をつかってしまうんですよ」
そういうのは俺のいないところで話してて欲しかったな。とか思いながらも安心していられた。
~~~~次の日~~~~
土曜日、この日も恋心が付き添ってくれた。弥生さんは昨日の7時には帰っていった。入院してしかも目が見えないというのは暇で仕方が無かった、たまに検査があったがすぐ終わるもので今の状態とこれからも安静にと簡単に言われるだけですぐに終わった。昼に沙耶さんが御見舞に来て下さり主に事件の話をしてくれた。そんな感じで1日が過ぎてしまった、正直何も出来なくて後悔する時とかもあったが、そんな時その気を感じたのか恋心がいいタイミングで励ましてくれる。本当に良く出来た妹だ。
~~~~次の日~~~~
日曜日、順調なら次の日にでも目の包帯が外れると一昨日から聞かされていた。そんな中今日から担当の医師が変わった。以前の担当の先生よりは口調がゆっくりで何となく穏やかな雰囲気を感じた。でも話す事は前の先生と変わらずこれからも安静にと言われた、しかし順調なので今日の夜にでも包帯が外れると言われ夜まで待っていた。気持ちは正直高鳴っていたと思う、これからまた捜査の手伝いが出来るかもとか色々考えてた。
そんなこんなで夜になり手術室へと運ばれた、先生は包帯を外す、しかしまだ目は開けないでくださいと言われていたので待っていることにした。待っていると少し痛みを感じた、麻酔かなとか見えないながら想像していた。
響希(ん?麻酔?傷の調子とか傷の傾向とかを見るのに麻酔?)
嫌な予感がした、ただ麻酔なのか何なのかは定かではないが突然眠気に襲われた。その感覚はこの前刺された時の感覚に似ていた。
しばらくして目が覚めた、泣き声、恋心の泣き声が聞こえた。何を泣いているんだ?俺の目が見える様になったと聞いたからか?そんな考えはすぐに吹きとんだ、包帯は取れていた。瞼も開いていた。でも見えない、視界が無い、盲目となってしまった。
放心状態だったと思う、無理もないのかな刑事の仕事だけでなくこれからの生活も目を使えずに過ごすと考えると正直絶望した。恋心は泣いていた、抱きつきもしてた。でも俺は何も出来なかった、反応も出来なかった、弥生さんも来ていたと思う、沙耶さんも華那先輩も来ていたと思う、でも俺には何も見えない。これはもう心配させないようにとかの次元ではない、1人では生活もままならない、誰の話も耳に入って来ない。みんな頑張ってくれているのにな、無理もないのかな、もう涙も出てこない別に泣き過ぎとかではない、ただ、出なかった。
響希「ごめんなさい、みなさん」
華那「こら、別に響希君が何かしたからこうなった訳じゃないんでしょ?だったら謝らなくていいんだよ」
弥生「響希さん、自分1人で抱え込まないで下さい。私は少し体は不自由ですが出来ることはあるのです、出来ることは何でも手伝いますだから…」
沙耶「いつも1人で事件解決しちゃうし、なのに物凄い謙虚で自分の事悪くしか見ないし、変に気が効く所とかあったり、恋心ちゃんの事大好きだったり、そんなのが響希だから、でもだからって目が見えなくなっただけでそれが響希じゃ無くなるのは絶対違う!」
恋心「私はお兄ちゃんの目が見えなくなろうが動けなくなろうがみんなが見捨てようが、私はお兄ちゃんの事助けるしお兄ちゃんの事大好きのままだから」
瞼は開いていた、見えないままだがさっきまでと違って俺は泣いていた。
響希「すいません、俺…昔からイジメられてて人にこんなに心配されたり、俺の事助けてくれるのとか、そういうの無かったので…嬉しくて、安心して…」
人の前で泣くなんて、昔なら出来なかった、今は子どものように泣いていたと思う。その日は解散したようで俺が落ち着いた時には恋心だけだった。
恋心「落ち着いた?お兄ちゃん」
響希「ああ、嬉しかったよ。本当は皆さんにお礼を言いたかったんだけど」
恋心「私が代わりに言っておいたから安心して、ほらお兄ちゃんさっき何も食べてないでしょ?看護師さんが心配して新しく作ってくれたよ、食べよ?」
響希「ありがとう、よろしく」
恋心「うん、はい、あーん」
響希「ん」
これからは価値観が変わった。頼る時はみんなに頼ろう、1人じゃ生きていけないからな…
~~~~次の日~~~~
月曜日、沙耶さんが朝早くに来た。
響希「沙耶さん?どうしたんですか?こんなに朝早くに」
沙耶「実は署の玄関の所に手紙があって、響希宛に」
響希「…また前のと同じ感じですか?」
沙耶「それが…何か違くて、ひとまず読んでみるね『藤原 響希巡査僕は君が受けた不幸を見ることが出来ます。それが何か知りたかったら、今日の昼貴方が入院している病院の受付前のロビーの椅子に座って待っていて下さい』…と」
響希「俺が受けた…不幸」
恋心「見ることが出来ますって、どういう事なんでしょうか?」
沙耶「それは私もちょっと分からないかな、ただもしかしたら罠とかかも知れないから用心してね、それじゃ私は署に戻るから」
沙耶さんは帰っていった、俺は迷っていたそれよりも怯えていたと思う。前のようになるのではないか?今度は本当に死んでしまうのではないか?…そんな事は知らない、俺は昼に言われた通りロビーに行った。恋心に連れて貰って、恋心はその場から少しだけ離れた所に居てもらった。俺は話を聞くか触らなければ分からない、そんな考えを持っていたら1人ぶつかってきた。その瞬間ポケットに違和感がした、そして俺は必死でそのぶつかってきた人の腕を掴んだ。
響希「すいません、私今目が見えないんです。そして連れが今受け付けにいて時間がかかるのですがすぐに病室に戻りたいので私を連れていってはくれませんか?」
ぶつかってきた人は合図のように掴んでいた所を1回上げて連れていってくれた。病室に着いてベッドに戻る時。
響希「貴方は何者ですか?俺のポケットに入れたのは何ですか?これは…CDか、DVDですか?」
その人物は無言だった、もしかして居ないのか?とも思ったが足音が聞こえなかったからここにいる。
大和「藤原 響希巡査僕は君が受けた不幸を見ることが出来ます。それが何か知りたかったら、今日の昼貴方が入院している病院の受け付け前のロビーの椅子に座って待っていて下さい」
響希「それは…やはり貴方だったんですね朝の手紙は」
大和「俺は北条 大和、こう見えてもアメリカ生まれのアメリカ育ち、いわゆる日系アメリカ人だ歳は今年で19歳。貴方に渡したのはDVD、中身は監視カメラの映像」
響希「は?」
大和「監視カメラの映像、貴方が襲われた時と目の手術を受けている時の映像だ」
響希「なん…で、そんなものを?」
大和「日本のセキュリティはザルだからな、簡単に侵入出来たさそれも一つも証拠も残さずな」
響希「ハッキングか?」
大和「その通り、おっとだからって逮捕するとかは無しだ。日本に来てからは今回しかして無いからな」
こいつは…何者なんだ?
響希「お前何者なんだ?」
大和「さっきも言ったじゃないか、日系アメリカ人だって」
響希「そういう事じゃなくて…なんて言うか一つずつ質問していく。何でハッキング出来るほどの知識を持っているんだ?」
大和「父さんが情報系の仕事してて良くパソコン弄っててそれをたまに見てて興味持ってそれをこじらせたらここまでになった」
響希「じゃあ次、なんで俺の事を知っている?」
大和「貴方がちょうど襲われる二日前に日本に来てニュース見て知った、そっからは個人的に調べた」
響希「どうして俺の事を助けようとするんだ?」
大和「別に貴方だからって訳ではないとだけは最初に言っておくよ、ただ日本に来て住んでいる地域で殺人とか傷害とかあったら怖いから、調べて監視カメラ探っているうちに貴方にたどり着いてさっきの質問の答えで言ったように貴方の事を調べてああ、こんな奴もいるんだなぁ、正直同情みたいな感じで最初はそう思ってとりあえずDVD渡して帰ろうとした」
響希「日本に来る前は何をしていた?」
大和「日本で言う高校卒業程度までは学校に行っていた。そっからは色んな企業のコンピューターとかのセキュリティとかを管理する所に就いたけど『お前は仕事は誰よりも出来るが命令に従わない』って言われて1年でクビになって、ただ『お前の力は役に立つ、日本の方にお前の事を知らせたら仕事先を作ったからそこに行け』って言われてこの街に来た」
響希「…」
大和「質問は終わりか?」
響希「あ、ああ」
途中から恋心は戻ってきていたようだが呆然としていたみたいだ。斯く言う俺は背筋がゾクゾクとするような、寒気がした。そこにいる大和に対してもそうだが、手術の時の映像もあると聞いたからだ。
響希「すまない、もう一つだけあった。この目は…仕組まれた事だったって事なのか?」
大和「そうだ、詳しい説明は本人のいる前でやった方が早いと思う今すぐにでも連れてきて欲しい」
響希「…恋心」
恋心「わかった、呼んでくるねお兄ちゃん」
程なくして担当の先生が来た。
医師「どうかしたのかい?響希君」
響希「お聞きしたいことがありまして、僕の目の包帯を外す時何をしていましたか?」
医師「何って、包帯を外して検査したら異変を見つけたからすぐに手術を行ったんだよ」
大和「嘘だな」
医師「は?何を言うのかね?君は」
大和「嘘だと言ったんだ、お前は意図して響希の目を奪った。命令されたか?医師を操る程の絶対的な権力者にでも」
医師「何をデタラメな」
大和「証拠を出せっていうんだろ?なら見せてやるよ」
何やらパソコンを立ち上げ準備をしているようだ、多分さっき言った手術の時の映像を見せていたと思う。
大和「どうだ?よーく映ってるぜ、響希を睡眠薬と麻酔で眠らせてそのまま眼球に傷をつけている所がな。あ、それと前任の医師はお前を操っている奴によって別の場所に飛ばされた」
医師「お前…何者なんだ!!こんなこと…犯罪だぞ!!プライバシーの侵害だ!!」
大和「お前にだけは犯罪とか言われたくないが、そうかもな日本なら。でも俺は許可されているんだよ、ハッキングする事なんてな。あ、何者かって質問な、紹介も無くてすまなかった。衣更市警察署特殊捜査課所属北条 大和巡査だ」
響希「は!?」
俺の驚きを無視し大和は続ける。
大和「それじゃ刑事らしく、午後2時40分逮捕」
手錠をかけると警察の方に連絡をとり少し経つと医師の人を連れていった。
響希「大和…お前」
大和「まあ言ってなかったな、と言うより報告されてるものだと思ってたぜ昨日から配属されてたのにな」
響希「全くされてなかった、まあ昨日はそんな空気じゃなかったからか」
大和「まあそんな訳だからよろしく頼むぜ先輩」
そして大和は証拠を犯人の元へ持っていき捕まえたという。その相手が前に捕まえた蓮の両親だった。蓮の両親は議員と裁判官で結構な権力者だった、息子の事を溺愛していて逮捕された事に激怒したそうで逮捕された日から計画していたそうだ。ちなみに俺の襲ったのは母親だった。そして大和は有無を言わさず手錠かけ逮捕をしようとしたが抵抗されたそうだが何か脅しのような事を言ったら抵抗も無くなったようだ。本人に色々と凄い後輩が入ってきたな。
~~~~2日後~~~~
安静を約束にこの日退院出来る事になった。恋心はもちろんの事弥生さんまでも来てくれた。
響希「弥生さん、わざわざありがとうございます」
弥生「いえいえ、とにかく犯人も捕まって無事退院できて私も安心しましたよ」
恋心「いきなり大和が来た時は驚いたよ」
響希「そうだな、あの時は俺も驚いたよしかも同じ職場って所もな」
恋心「あ、大事なこと忘れてた」
響希「どうした?」
恋心「手術費とか入院費とか色々払ってないけどどうしよう」
弥生「あ、それなら私払っておきましたよ?」
2人「え?!」
弥生「最初に来た時の帰りに払っておきましたよ、いつまでとか分からなかったので多分ちょっと多めだと思いますけど」
響希「それは悪いですよ、ちゃんと返します」
弥生「良いですよ、気にしないでください。これが私に出来る手助けですから。」
流石社長…


 
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