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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Epico?確率の支配者~Dice of Controller~

†††Sideはやて†††

夏休みは何事もなく無事に終わっての2学期の始業式。今日は式だけの午前授業で、式が終わればそのまま本局にお仕事へ、とゆうスケジュールや。家族や友達、そんで同僚でもあるルシル君やすずかちゃん達と一緒に昇降口に入ると「ごきげんよう、みなさん」咲耶ちゃんが、いつもビシッと整えてるドリルポニーテールを揺らして挨拶してくれた。わたしらも「おはよう!」挨拶を返して、一緒に校舎に上がる。

「アリシアさん、シャルさん。宿題は終わりまして?」

「もちろん!」

「小学生最後の夏休みだしね~」

えっへん、って胸を張るアリシアちゃんとシャルちゃんやけど「何を偉そうに言うかなこの2人は」アリサちゃんが呆れながら鼻を鳴らすと、「それはどういうことですの・・・?」咲耶ちゃんは喧嘩腰やなくて、普通にアリサちゃんに訊き返した。夏休み前の臨海学校を機にようやくホンマに仲が良くなったとゆうか、以前のように会えば衝突なんてことは完全になくなった。

「シャルとアリシアは、俺たちの宿題を写したんだよ」

「「えへへ~」」

「読書感想文は昨日一日で済ませてたよね~?」

「「あはは~・・・、はぁ」」

しょんぼりするシャルちゃんとアリシアちゃん。咲耶ちゃんも「なるほどですわ」呆れた。小学校最後の夏休みやってことで散々遊んで、その結果が夏休み終盤恒例の大慌てってわけや。

「おはよう」「おはよ~!」

後ろから挨拶を受けたわたしらは振り返って、挨拶をくれたクラスメイトの依姫ちゃんと天音ちゃんに「おはよう!」挨拶を返した。

「ねえねえ、今日も魔法の仕事?」

アリサちゃんやフェイトちゃん、アリシアちゃんとおんなじ綺麗な金髪をした天音ちゃんがそう訊いてきた。すると「コラ!」依姫ちゃんと、「他の方に聞かれたらどうしますの!?」咲耶ちゃんが天音ちゃんを叱った。
臨海学校先で発動したロストロギアによって、わたしらが魔法使いやってことが咲耶ちゃん達に知られてしもうたんや。

・―・―・回想や・―・―・

肝試しが終わって、臨海学校初日の最後のイベント・キャンプファイアと花火。焚火を囲んで踊ったり歌ったりした後は、それぞれ自由に花火をすることになってる。他のクラスメイトが花火を楽しんでる中、「約束通り、お話ししてもらいましょうか」咲耶ちゃんがわたしらチーム海鳴を見た。
咲耶ちゃん、依姫ちゃん、天音ちゃん、亮介くん、護くん、天守くんの6人を護るためにわたしらは魔法を使って、ロストロギアによって作られたテレサもどき(ルシル君命名)を迎撃したわけや。そんで今、その事について説明するところ。

「わたし達は、魔法を使って、魔法による事件・事故を解決する時空管理局って組織に属する魔法使いなの」

シャルちゃんが管理局についてかなり大雑把に伝える。解決する手段も事件・事故も魔法が全てやないけど、そんな詳しく話さへんくてもええやろうし、わたしらがなんなのかを判ってもらえれば今はええ。

「魔法・・・。時空管理局・・・。にわかには信じられませんけど、あの炎の剣や弾丸を見てしまった以上は信じるしかありませんわね」

「そんな組織、聞いたこともないけど・・・。まぁ、魔法なんてファンタジー自体が認知されてないから当然なんだろうけど」

「それで、シャルさん達は時空管理局ってところの魔法使いだってことだけど、あの幽霊みたいなのが、魔法による事件の1つってことかな?」

咲耶ちゃんと依姫ちゃんが唸って、護くんからの問いに「そうやよ」わたしが答えた。ロストロギアってゆう、ほとんどが今は滅んでしもうてる超文明の世界が生み出した遺失物の1つって伝えると、「滅んだ世界・・・ってどういうこと?」天音ちゃんが首を傾げた。

「次元世界って言って、人類が住む星はこの地球だけじゃないんだ。たくさんの人が住む星がある。文化もそれぞれで、魔法文化を持ってる星もあれば、地球みたく魔法文化の無い星もある」

「ちなみにわたしとフェイトとシャル、それとルシルは、この地球出身じゃないんだよ。魔法文化のある世界出身♪」

フェイトちゃんとアリシアちゃんの発言に「えええ!?」咲耶ちゃん達は驚きを見せた。まぁ、それが普通のリアクションやろうね。地球以外に人が住む星があるってこともそうやけど、知り合いが異世界出身なんて誰でも驚くことやと思うわ。

「マジか! ルシル達って宇宙人なんか!」

「火星人!? それとも木星人!? あ、金星人か!」

「ある意味宇宙人だと言ってもおかしくはないけど、俺やシャル達からすれば、亮介たちも宇宙人だぞ。ちなみに俺はフェティギア、シャルとフェイトとアリシアはミッドチルダという世界の出身だ」

テンションが上がる亮介くんと天守くんにそう返すルシル君。咲耶ちゃんは「あの、どうして魔法文化の無い地球生まれのはやてさん達が魔法使いに?」そう訊いてきたから、なのはちゃんはとても珍しい先天性魔導師の才能があって、すずかちゃんとアリサちゃんは願いを叶えるロストロギアの力で、わたしもまたロストロギアの力で魔導師になったことを話した。

「もしかするとシグナムさん達も別の世界の方なのですか?」

「うん、そうやよ。ベルカって世界の生まれや」

さすがに魔法生命体やんて言えへんからそう答えとく。咲耶ちゃん達も授業参観でシグナム達と知り合うてるし、わたしもシグナム達を大切な家族って紹介してるしな。魔法生命体やなんて野暮や。

「1つ気になったんだけど。局っていうことはちゃんとした組織なのよねやっぱり。となると、なのは達ってひょっとして公務員だったりするの?」

依姫ちゃんに「まぁ一応は」ってわたしらは答える。今はもう役職も階級も頂いた正式な局員として登録してるしな。わたしらは自分の役職と階級を咲耶ちゃん達に伝えた。

「捜査官とか陸士とか、警察と軍隊を混ぜ合わせたような組織なんだな管理局って」

「それで合ってるよ。次元世界の秩序と平和を護る組織だからね」

「ですけどみなさんはまだ12歳。ですのにもう公務員として働ているなんて。労働基準法はないのですか?」

「あー、うん、正直言ってね、人手不足なんだよ管理局って。だからやる気があるなら子供でも勤めることが出来るの。なのは達も、自分の意思と覚悟で管理局に入ることを決めてくれた」

シャルちゃんがわたしらを見たから「うんっ」力強く頷き返した。何かを助けたり救えたりする力を持っているなら、それを困っている人たちの為に使いたい。管理局に入ってこの魔法をみんなの為に役立てたい。その気持ちのうえで管理局務めを選んだことを伝える。

「・・・何ヵ月も入院するようなことになってもその気持ちは変わらないんだ・・・」

さっきから妙に鋭い依姫ちゃんがルシル君となのはちゃんを見てそう言うと、咲耶ちゃん達が「え・・・!?」目を見張った。護くんが「本当なの?」って訊くとなのはちゃんとルシル君は頷いて、怪我を負った経緯をみんなに話した。ルシル君は犯罪者シュヴァリエルとの戦闘で、なのはちゃんはロストロギア(ホンマは神器やけど)との戦闘で。

「事故じゃなかったのかよ!」

「ロストロギアや犯罪者の所為で半年以上も入院って、どんなに危ないことやってんの!」

「やめた方が良いって!」

「いやですわよ! そんな・・・もし最悪な事になるようなこと・・・!」

亮介くん、天音ちゃん、天守くん、咲耶ちゃんが立ち上がった。近くに居った他のクラスメイトの視線が集まった。依姫ちゃんが「何でもないから気にしないで」って言うとその視線もすぐに外れた。

「じゃ、じゃあルシルの目も、怪我の後遺症なんか・・・?」

「・・・ああ。目が悪くなったって言っていたけど、完全に失明してる。一種の呪いのようなもので、術者に解除させれば元に戻るはずなんだ。このモノクルは、それまでの間に少しでも呪いを弱めておくための道具だ」

魔法に加えて呪いなんて単語も出て来て、ホンマに心配そうにしてくれる咲耶ちゃん達。

「心配してくれてありがとう、みんな。だけど、それでもやっぱりやめるつもりはないんだ」

「ああ。確かに危険な目に遭う、命懸けの現場だってこれからも多くあるだろうが、そんな危険な目に遭うのは俺たちだけじゃない、何の罪もない一般市民も巻き込まれてる可能性がある。それだけは阻止しないといけないんだ。俺たち力を持つ者が。だから・・・退けない」

なのはちゃんとルシル君がそう言うと咲耶ちゃん達は押し黙った。ルシル君となのはちゃんの眼に宿る強い光を見たからや。そんでわたしらの顔を見た時、諦め顔になった。わたしらも説得しようと思うたんやろうけど、わたしらの目にももちろん宿ってる光を見て・・・。

「決意の固さは理解できました。ですからやめてくださいとはもう申しません。ですが、無理だけはしないでください。どうか・・・」

そう懇願する咲耶ちゃんにわたしらは頷くだけで応えた。それからわたしらが困った時は何か力になるって言うてくれたから、もしチーム海鳴メンバーが重なって学校を休んでしもうた時のノート写しとかをお願いした。

・―・―・終わりや・―・―・

咲耶ちゃんの両手で口を塞がれた天音ちゃんがもごもごってなんか言うてるけど、聞きとれへんなぁ。すると「ひゃあん!?」咲耶ちゃんが変な声を上げて慌てて天音ちゃんの口から手を離した。

「な、な、舐めるとは何事ですか!」

「だって苦しかったから!」

「もう、もう・・・!」

ちょう涙目になってしもうてる咲耶ちゃんがポケットからハンカチを取り出そうとするより早く「ほら、咲耶。使ってくれ」ルシル君がハンカチを差し出した。

「えっと・・・ですが・・・」

「構わないよ。まだ別のを持ってる♪」

ルシル君は逆のポケットから、シャマルがアイロンがけしてくれてるもう1枚のハンカチを取り出した。それを見た依姫ちゃんと天音ちゃんが「さすがお婿にしたナンバー1」拍手すると、「そこの2人、うるさいぞ~」ルシル君はそう言いつつ咲耶ちゃんの手にハンカチを被せた。

「ありがとうございます。洗って返しますから、今日はこのまま預からせてください」

「あー、いいよ。ここで返してもらっても」

「ん? ルシル君はわたしの唾液が付いたハンカチを持ち返って何するのぉ~?」

「お黙り」

「きゃん!? 依姫がお尻蹴って来たぁ~!」

魔法を通じてもっと仲良くなれた咲耶ちゃん達とわいわい騒ぎながら、今日もまた楽しい学校生活が始まる。

†††Sideはやて⇒イリス†††

特別技能捜査課の仕事としてわたしとルミナはペアを組んで、第3管理世界ヴァイゼンの首都防衛隊と一緒に、広域指名手配を受けてた次元犯罪組織をねじ伏せたばかり。特捜課の課長ガアプ一佐に報告を済ませた後、わたし達は隊員輸送車に乗って地上本部へ戻るその途中で・・・

『こちら地上本部・通信指令室。東部アリエース地方にて検挙を受けた違法賭博場より逃走してきた被疑者1名が首都に入りました。これより追跡は首都防衛隊に任されます。至急、現場に急行してください』

そう通信が入った。先頭を行く指揮車に乗る防衛隊長から『フライハイト特別捜査官、マルスヴァローグ特別捜査官。申し訳ないが・・・』わたし達宛に通信が入った。わたしとルミナは顔を見合わせて「お手伝いさせてください」捜査協力をこちらから願い出た。

『協力感謝します。2号車と3号車は護送車と共に本部へ。指揮車と1号車は現場へ向かう』

『被疑者は逃走途中にカージャックをした模様で、運転していた車の持ち主を降ろした後、セカンドアベニュー・T8区画へ進行中。武器を所持しているとの報告も入っており、十分警戒して任務に当たってください』

『了解!』

わたし達の乗る1号車と指揮車は進路変更をして、逃走車が入り込んだとされるセカンドアベニュー・T8区画へと向かう。それから少しして『逃走車両を確認した』指揮車の隊長からの指示にわたし達はそれぞれグッとデバイスを握る手に力を込める。
そして、逃走車両に停止するよう呼びかける隊長の勧告が耳に入る。その停止勧告が続けられること1分。とうとう『こちら1号車。逃走車両に体当たりをし、力ずくで止めます!』わたし達が乗ってる1号車のドライバーが指揮車にそう伝えた。なんて力ずくな方法なんだろう。ちょっとビックリ。

「私たちが出て止めたい、って提案するのはやっぱりまずいのかな・・・?」

「あー、やっぱりダメなんじゃない?」

ルミナの提案にそう答える。わたし達の立場は提案できるようなものじゃないし。ルミナが「だよね~」って苦笑していると、「いやいや、それ良いですって!」若い防衛隊員の1人から力強い賛成が。

「「え・・・?」」

「車で体当たりするより、マルスヴァローグ空曹長とフライハイト一士が対処する方が被害も大きくならないかな~っと」

「確かに車の体当たりは双方の車体にダメージがあり、尚且つ向こうの車は盗難車。可能な限り損害を与えない方法で止めるべきだと、私も考えている」

分隊長のおじさんが渋い声で、その隊員の意見に賛成した。ルミナが「では、私たちから提案するのは憚れますので・・・」隊長にこの案を通してもらえるようにお願いする。分隊長さんは隊長に通信を繋げて、わたしとルミナに逃走車両を止めてもらおうって提案してくれた。その結果・・・

『マルスヴァローグ空曹長、フライハイト一士、お願い出来るか? 飛行許可はこちらから申請する』

「「お任せを!」」

輸送車の後部の扉が開けられる。そこから出て車体の屋根に上る。わたしは飛行魔法・真紅の両翼ルビーン・フリューゲルを展開。

「アルテルミナス・マルスヴァローグ!」

「イリス・ド・シャルロッテ・フライハイト!」

「「参ります!」」

そしてルミナと一緒に輸送車の屋根から飛び立って、先頭を爆走する逃走車両(ハマーみたいな車種だね)へ向かう。徐々に距離を詰めてくそんな中で「お?」あることに気付いた。ルミナも「イリス。これって・・・!」気付いたみたい。この感じは間違いなく「神秘・・・!」だね。

「こちらフライハイト一士! 逃走犯はリンドヴルムのロストロギアを所持している模様! 申し訳ないですが、この瞬間を以って機動一課員として本事件を担当します!」

『りょ、了解!』

リンドヴルムのロストロギアっていう括りになると、どんな事件でも機動一課主導となる。それほどまでにリンドヴルムが管理世界に影響を与えちゃったってことなんだろうけど。

「さて、問題はどんな神器かってことなんだけど・・・」

「武器を持ってるっていうことだし、やっぱりヤバい神器なんだろうと思うよ」

とりあえず、偶然にもヴァイゼンに査察官として来てるはずのルシルに「シャルだけど。ルシル、今、時間とか大丈夫?」念話を送る。

『シャル? あ、ああ、問題ないよ。何か困り事か? ま、ルミナと一緒だから早々困る事なんてないだろうけどな・・・って、神器か?』

「正解! 今さ、違法賭博場から逃げたっていう被疑者を追ってるんだけど、どうやら武器を持ってるってことみたいでね。もしかすると武器型の神器なんかじゃないかなって思って」

『どんな物かは視認できるか? 剣とか銃とか』

わたしとルミナは飛行速度を上げて逃走車両の両脇に陣取る。そして左右からフロントドアの窓をこんこんとノック。逃走犯は右左のフロントドアの外を飛ぶわたし達の姿にギョッとした。性別は男性。歳は50代くらいかな。予想以上におじさんでビックリしたよ。白髪混じりでちょこっとやつれてる。ひょっとしたら見た目以上に若いかも・・・?

「子供の局員・・・!? まさか、あの有名な・・・! ひぃ・・・!? か、神さま・・・!」

わたしとルミナの姿を見たその人は血相を変えた。子供の局員。15歳以下の局員は限りなく少ない。そんな中で有名なわたし達チーム海鳴。子供の局員は自然と限られてくるからね。自然とわたし達だって思い至るのも仕方ない。

「有名人かぁ~」

「ルシルとはやて、それにアリサ、ファンだって人にサインをお願いされたって」

「でもそれってチーム海鳴としてなのよね? 別にサインが欲しいわけじゃないけどなんか羨ましい」

その男の人は運転席と助手席の間にあるコンソールボックスに手を伸ばして、普通のサイズより一回り大きいクリスタルのようなサイコロを振った。明らかにおかしな所作。ブォン!と大きな音を立てて速度を上げた車。

「サイコロっぽいのを突然振り出したんだけど、それって何か意味あるのかな?」

「半透明なクリスタル状のサイコロよ」

『サイコロ・・・。サイコロ・・・』

ルシルにしては珍しくすぐには神器の正体にたどり着けないみたい。ううん、もしかするとあのサイコロは神器じゃないのかも。とにかくこのまま逃がすわけにはいかないから、わたしは翼を大きく羽ばたかせて逃走車を追跡する。

「ちょっ、アイツ、デパートの中に突っ込んでった!?」

「隊長! 救急車両の手配をお願いします!」

『判った! 被疑者の方はよろしく頼む!』

「「了解です!」」

車が突っ込んだデパートへと突入する。建物の中はもうメチャクチャで、ベンチやら観葉植物やらがボロボロだ。わたしは「負傷者は居ませんか!?」そう声を掛ける。返ってくるのは「無事です!」の声。

「すぐに救急隊が来ますので安心してください!」

デパートの中を飛ぶんじゃなくて走りながら、店内に声を掛けながら突っ切る。その結果、突然暴走車が突っ込んで来たのに、なんと軽傷者1人すら出ていなかったってことが判った。

「マジ・・・?」

「どんな偶然と奇跡が起きればそんな都合の良いことが起きるわけ?」

『偶然と奇跡・・・。あっ! くそ、何ですぐに思い出せなかった!』

ルシルと念話を繋げたままだったのを忘れてた。ううん、今はそんなことより「神器の正体が判ったの!?」だ。デパートの外に出てもまだ暴走してる車を追いかけ続けるんだけど、あれだけの速度で物損も人身も起こさないなんて・・・って、さっきと同じこと思ってる・・・。

『ああ。印象に残っていない神器だったからすっかり記憶の底に沈んでいた。パリ・デ・パスカル。確率操作を行える神器だ』

「「確率操作・・・!?」」

『ああ。自分と対象の確率を反転させるんだ。どんなに不利な状況でも常に自分が有利になる確率を引き寄せる効果を持っている。現場中継を同僚たちと観ているが、正しく効果が発揮されているな。推測だが、高確率で市民を撥ねるという結果を、高確率で撥ねないという結果に反転しているんだろう』

「ある種、最強の神器じゃないソレ・・・!」

耳を疑ったよ。だってそれって「つまりさ。確実に当たる攻撃も、絶対に当たらない攻撃になるんでしょ?」そういうわけだもん。戦闘で使われたら、勝てる確率が負ける確率に変更される。それはさすがに反則だよ。

「ああ。結果の確率反転だ。当たる確率が高い結果を、当たらない確率の結果に反転させる。戦闘に持ち込まれると厄介だが、記録には残っていないからなかなか出て来なかった」

「それでルシル。攻略法は!?」

『パリ・デ・パスカルの所有者との戦闘は、常にこちらが不利になるという圧倒的なディスアドバンテージを負うことになるわけだ。しかし、だからと言って絶対にこちらが負けるという結果にはならない。ちゃんと攻略法がある』

「それを早く教えてってば!」

逃走車はなおも暴走してる。だけど決して人は撥ねないし、車が潰れるようなダメージが起きるほどの物損事故も起こさない。それでも被害が出てることに変わりはないんだから、さっさと止めないといけない。

「なんとなくだけど攻略法わかっちゃった! ルシル、その攻略法ってかなり危険だったりする?」

『・・・ああ。俺がその現場に行ければその役を買って出るんだが、そこに行けるまではあと1時間は掛かりそうなんだ。それまで待っていてくれ・・・なんて言えないしな』

「大丈夫、私がやるから。攻略には神秘は必要ないみたいだしね」

『ああ。パリ・デ・パスカルには防御機構は無いからな。確率反転だけの神器だ』

ルミナが嬉しそうにほくそ笑んだ。ちょっと、ムッとなるわたし。わたしも必死に頭を働かせる。わたし達の勝利確率が、神器の能力によって敗北確率に反転する。反転しない方法。そんなものあるのかなぁ・・・。

「(確率を反転させない方法・・・。上も下もない、平等の・・・)あっ!」

「イリスも判ったようで何より」

『さすがというか、やはり、だな』

「ありがと♪ でもこの攻略法ってかなり難しいよ。50/50の確率で仕掛けないといけないなんて」

そう。それが“パリ・デ・パスカル”の唯一の攻略法。確率を50%にした中で逃走犯を捕まえる。だけど攻撃やバインドも確実と思えるから発動するし、おそらく牽制も意味はないだろうし、どうすればいいんだろ。

「ルシル。少し思ったんだけど、たとえば絶対に外れる確率の攻撃をしたら、その確率も反転して絶対当たる・・・なんて・・・」

『それが出来たら苦労しないよ、ルミナ。アレは自分が不利な確率時にしか発動しないんだ。サイコロなんてギャンブルっぽいが神器だが、歴とした反則神器だよ、まったく』

「やっぱりか・・・」

とにかく攻略の手立ては出来た。あとはその方法を考えて、実行に移すだけ。ていうか、「どんだけ物壊してくわけ!?」気弱そうなオッサン(オジサンなんてもう呼んであげない)だったのに、行くとこ行くとこ標識やら信号やらをぶっ壊してく。

『きっとあれだろう。君たちが、自分が損害にかまけている間に逃げ切ろう、そう考えているんだろうな』

「させる・・・かぁぁぁぁぁぁーーーーーーっ!」

「ちょっ、イリス!」

『馬鹿、突っ込むな!』

意地でも食いついて地べたに這わせてやる。逃走車が撥ね飛ばしてく街路樹や街灯が次々と襲ってくる。だって言うのに車は未だに快調に走り続けてる。それに、事故を回避すると言っても、間接的に事故に巻き込まれる車も増えて来てる。しかも「危ない!!」倒れ込む街灯の先に、小さな男の子と女の子、それに1匹のわんちゃんが。

「ゲシュウィンディヒカイト・アオフシュティーク!」

両翼を羽ばたかせて進路変更、飛行速度を跳ね上げさせて子供たちのもとへ。“キルシュブリューテ”のカートリッジをロードして「伏せて!」あの子たちを庇うように前に躍り出て、「せぇぇぇぇい!」倒れてきた街灯に連撃を叩き込んでバラバラに斬り裂いた。

「わぁ・・・!」

「きれ~な羽~・・・」

背後から呑気な声が。振り向いて「大丈夫!? 怪我はない!?」片膝立ちして、2人の体にかすり傷1つないか確認する。そこに「イリス!」ルミナが追いついて来た。わたしは「子供たちも、わんちゃんも怪我は無し!」2人やわんちゃんの頭を撫でながら報告。

「みたいね。君たち。お姉ちゃん達、悪い人を捕まえに行かないとダメなんだ。君たちだけで避難できるかな?」

「「うんっ!」」

「良い子たちだ。イリス、急ごう!」

「・・・うんっ!」

両翼を羽ばたかせて地を蹴って空へ上がると、「頑張ってねお姉ちゃん達!」男の子と女の子が大手を振って見送ってくれた。2人に手を振り返しながら、わたし達は逃走車の追跡を再開する。

『シャル。下手に手を出すと余計に被害が出る。手を出して良いのは確実に奴を止めることが出来る方法を得た時だ』

「解ってる! でも・・・!」

『今、出撃をさせてもらえるように申請を出している。君たちは出来るだけ被害が出ないようにしてくれ』

ルシルがそんなことを言ってきた。わたしは「嫌!」拒絶した。何も出来ないから、何か出来るルシルに預けるなんて、そんなの悔しいし、それまでの時間を放置するわけにはいかない。

「そうね。・・・ルシル。作戦を1つ立てたから、少し聞いてほしい」

ルミナが対“パリ・デ・パスカル”の作戦をルシルとわたしに提示した。攻略法は危険。ルミナとルシルが言っていたその意味を理解する。ルミナは「私がやる。いいよね? イリス」そう言って、力強い目でわたしを見てきた。

「どうしたってもう止めること出来ないんでしょ・・・」

「もし私がここで倒れても、残り1つの神器回収に大きなデメリットは起きない。けど、あなたは違う。私と違って魔術師となれる、対神器に優れた戦力になれる。ならここでリタイアする可能性がある行為を行うのは私でいい」

「そんなこと・・・!」

「ま、リタイアするつもりなんてそもそもないけど。相手も単なる一般人みたいだし、そんなに出力を上げた魔力攻撃も出来ない。なら、私の防御力の方が上回るはずだしね」

ルミナはそう言って微笑んで、「どう? これでいける?」ルシルに問う。ルシルは少し黙った後、『俺の知識にある攻略法もそれしかない』答えた。

「よし。じゃあ早速、行ってみようか!」

ルミナが速度を上げて先を行く。わたしも何度も翼を羽ばたかせて追翔する。そして逃走車を視界内に収める距離にまで近付いたところで、「あとはよろしく、イリス」ルミナはさらに飛行速度を上げて、逃走車の直上にまで最接近。でもすぐには仕掛けない。場所がまだ人の密集地だからだ。でもすぐに、避難誘導が行われて人の往来が完全になくなった大通りに入ったところで・・・

「車は弁償するから許してよ、持ち主さん!」

魔力を纏わせた両拳を「せいっ!」車の直上で思いっきり打ち付けたルミナ。その瞬間、ルミナと車が青緑色に輝く魔力爆発に呑み込まれた。魔力爆発の直撃を食らった車は白煙の中から横転を繰り返しながら飛び出してきて、何回目かの横転のあと火花を散らしながら滑って・・・ようやく停車した。
これが作戦だった。わざわざ50/50を狙うのは難しい。だから100/100を目指した自爆作戦。自分と相手、共に100%被害を受けるなら確率を反転させても意味はない。どっちにしろ同じ被害が待っているんだから。

「ルミナ!? ルミナ!」

爆発地点に立ち上る白煙の中に居るだろう「無事!? ルミナ!」に呼びかけ続ける。すると「けほっ。私より、被疑者を・・・!」髪の毛をぼさぼさにしたルミナがしっかりした足取りで歩き出てきた。ルミナは「かなりやり過ぎたけど、大丈夫かな・・・?」逃走犯の身の安全を気遣った。

「人身事故を起こさなかったとはいえ、ここまで派手に暴れたんだから骨の1本や2本くらいは覚悟してほしいものだよ」

そうしてわたしとルミナは、廃車確定と化してる車の中で完全に伸びてる被疑者を逮捕した。サイコロ型の神器“パリ・デ・パスカル”も無事に回収完了。けどま、もう少し穏便に、被害が大きくなる前に捕まえてほしかったって、首都防衛隊の隊長にちょこっと叱られたけどね。
 
 

 
後書き
ラーバス・リータス。ラバ・ディアナ。ラーバス・ヴァーカラス。
神器回収編パート4をサクサク終わらせました。変に伸ばしてもグダるのは目に見えていますからね。次回の最後の神器回収編もサクッと1話で終わらせたいと思います。何せ今度はルシルを含めた八神家が回収を行う予定なので。戦力としては文句なしです。
その後にラスボス・スマウグ竜との決戦なのですが、文字数によっては半日常編を1話挟むかもしれません。スマウグ竜は創世結界の使えないルシルにとってはエグリゴリに勝る強敵。その為の援軍を用意しないといけないので、その援軍の描写に1話使うかもです。
 
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