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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Epico?女子は相身互い

 
前書き
女子は相身互い/意:友情に熱い女子は、お互いに思いやり、そして助け合えば、今よりもっと仲良くなれるというたとえ。

先の投稿時に何故か数話前になってしまったので修正したのですが、一向に修正されなかったので一度削除して投稿し直しました。ご迷惑をお掛けして済みませんでした。 

 
†††Sideなのは†††

「あー、風が気持ち良い~♪」

今日から1泊2日の臨海学校になる聖祥小の6年生。私も6年生なので参加して、そして今は目の前に広がる大海原から吹いてくる潮風に身を晒してる。しかも季節は夏真っ盛りな7月中旬だから、冷ややかな風がとっても気持ち良い。小さな丘の上から海を眺めていると、隣に立つシャルちゃんが「気持ち良いけど、新鮮さはないよね・・・」ポツリと漏らした。

「まぁ、住んでる所が海と隣接した海鳴市やからな~」

「でも知らない海だってこともあるから、私は新鮮さがあると思うよ?」

私はすずかちゃんの感想と同意見かな。一応ここは県外だし、ちょっと違う雰囲気があると思う。

「潮風を堪能するのは後でも出来るでしょ。ほら、早くコテージに荷物を置きに行くわよ」

「そうですわね。みなさん、置いて行かれますわよ」

アリサちゃんと咲耶ちゃんが私たちにそう声を掛けて、後ろをすぃ~っと通り過ぎてく。私たちは「は~い!」返事をして、どんどん先を行ってる担任の矢川先生やクラスメイトに追いつくために走って、私たち4組が寝泊りをする第4コテージ村へ向かう。
そして、コテージ村の入り口近くにある管理棟前広場で一度整列をして、管理人さん達に挨拶をした後はコテージ村の施設紹介。炊事場やゴミ捨て場、管理棟には医務室があることなどを実際に回って教えてもらった後・・・

「コテージの鍵を渡すから、各班の班長は取りに来て。コテージに荷物を置いたら、調理場に集合。お昼のカレー作りの準備を始めてください」

先生がこれからの予定を改めて私たちに伝えた。そして、「鍵貰ってくるね」私は7班の班長として先生の元に行って、私とアリサちゃんとアリシアちゃんと咲耶ちゃんの班が寝泊まりするコテージのひも付き鍵を先生から受け取る。そんな私の後に、「せんせ~、鍵くださ~い」8班の班長になったシャルちゃんが鍵を受け取りにきた。

「それじゃあみんな、コテージに行こう!」

「わたし達もゴーゴー!」

私たち7班とシャルちゃん達8班のコテージは隣合わせだから、そこまで一緒に行くことに。8棟のコテージは、円形の広場の縁に沿うように並んで建てられていて、片側に男子・女子って分けられる。どっちかが異性のコテージに行くには必ず間にある広場を通り抜けないといけないから、そこを先生たちが監視することで行き来できないようになってる。

「また後でね♪」

「うん、また後で!」

シャルちゃん達8班と分かれて、私たち7班は鍵を開けてコテージの中に入る。1階はリビングとお風呂とトイレ、洗面所、それにキッチンも冷蔵庫(炊飯器や電子レンジなんかも完備だ)。リビングには暖炉、四角い脚長のテーブルを囲うソファが4脚。あそこで課題をするんだね。

(確か冷蔵庫には自販機で買ったお茶を入れても良いんだよね)

水筒のお茶は今日1日分だから、明日の分の飲み物は自販機で自由に買っていいってことになってる。室内をぐるりと見てコテージ内を4人で確認してると、「ロフトに4人分の布団が折り畳まれてる!」アリシアちゃんがハシゴを上ってロフトを確認してくれた。

「なのはさん、アリシアさん。そろそろ行きますわよ」

「「は~い!」」

ボストンバッグをリビングに置いた私たちはコテージを出て「っと、鍵を掛けておかないと」ドアに鍵を掛けて、落とさないようにするために首に掛けておく。そして向かうのはコテージ村の奥にある調理場。
そこで集まって、管理人さん達から諸注意のお話しを聴く。調理場はもちろん屋外にあるから薪で火を起こすかまどを使うことになる。ご飯を炊くのに使うのは飯ごう。林間学校でも使ったから大丈夫なはず。

「では、各班に分かれて食材と薪を所定の位置から貰って来て、調理を始めてください。力が必要な時は、男子の手を借りてください。男子諸君! 女の子からのお願いはきちんと聞いてあげること! それが良い男への一日なのだから!」

グッと握り拳を作って力説する先生。クラスの男子たちは「おおおおっ!」力強く答えた。そして早速「おらぁ、ルシル! 手伝え!」シャルちゃんの大声が聞こえてきた。これには「シャルさんは相変わらずですわね」咲耶ちゃんが苦笑した。

「咲耶はいいの? 今ならルシルを馬車馬のようにこき使えそうだけど?」

「馬車馬って・・・アリシア。確かにさっきから声を掛けられてるし・・・。ていうか、別の男子班からも声を掛けられて怒ってんじゃない」

「にゃはは・・・大変だね、ルシル君も・・・」

咲耶ちゃんも実はルシル君のことが好きだったりする。それはチーム海鳴どころかクラスのみんなが知ってる事実だ。たぶんルシル君も気付いているだろうけど、ほとんど待ちの構えだから咲耶ちゃんには何も言わないし、何もしない。まぁ、ルシル君もルシル君で、シャルちゃん、はやてちゃん、それにトリシュタンちゃん、3人から慕われているから大変のようだし。

「わたくしは構いませんわ。想いにかまけて頼るのは、わたくしの意義に反しますわ。薪を貰ってきますわ」

サッとドリルポニーテール払って私たちに用意されたかまど前から離れようとする咲耶ちゃん。私は「待って。薪は私が持ってくるよ。咲耶ちゃんは食材をお願い」そんな咲耶ちゃんを止める。

「なのはさん。あなたは最近まで入院なさっていたのですよ? そんなあなたに薪を持って来させるわけには・・・」

「咲耶の言う通りよ、なのは。あたし達2人で薪を持って来るわ。あんたはアリシアと一緒に食材の方を持って来て。ルシル! こっちには病み上がりのなのはと非力なアリシアと咲耶が居んのよ! 頼まれる前にあんたから手伝いに来なさい!」

アリサちゃんが他の男子たちと薪運びに勤しんでるルシル君を指差して怒鳴った。ルシル君はハッとして「悪い、なのは! 今行く!」運んでた薪を急いで別の女子班のところに置いて、また薪置き場に走って行った。

「それでよし! 薪はルシルに任せて、あたし達は食材と飯ごうの準備に入るわよ! オー!」

「「「オ、オー・・・」」」

そして私たちはカレーの材料のお肉や野菜、4人分のお米がすでに入れられてる飯ごうを取りに行くことに。私は力があんまり要らない飯ごうを取りに行って、他の班がお米を研いでる水場に向かう途中に私たち7班の薪を運び終えようとしてた「ルシル君!」を呼び止めた。

「あぁ、なのは。何か男手があるなら言ってくれ。最優先で手伝わせてもらうから」

「ありがとう、ルシル君。でも私ももう完治してるし。アリサちゃんの気遣いは嬉しいけど、こういう力仕事もリハビリ次いで良いかな~、なんて」

今のところ体に不調は起きてない。だから「私は大丈夫。ルシル君は自分の班を優先してね」そう伝えた。ルシル君はかまどの中に薪をくべた後、「なのはの意思を尊重するけど、本当に困ったら言ってくれな」微笑んで、自分の班の方に戻って行った。

(ルシル君。少しずつ元の笑顔になってきて嬉しいな)

クイント准陸尉のお葬式の後からずっと酷い顔をしてたけど、少しずつ、ほんの少しずつだけど、以前みたいに曇りの無い笑顔を浮かべてくれるようになってきた。でもやっぱり本当の笑顔を浮かべるのは、スバルちゃんと仲直りしてからかな・・・。
ルシル君を見送った後、私は改めて水場へ。そこでお米を研ぎ終わってかまどのところに戻る。アリサちゃん達からの「おかえりー!」に「ただいまー!」応えて、早速飯ごうをかまどの上に乗せる。上手に炊くにはまずお米に水を含ませないといけない。だからまだ火が点いてない方のかまどに乗せる。確か30分置くんだったかな。

「アリサちゃんが火加減を見てるんだね」

「まあね。『仮にも炎熱系の魔導師だし。火の扱いは慣れっこよ』」

『にゃはは。そうだね。じゃあ、お願いするね』

『ご飯の炊き加減は林間学校で学んだからね。はやてやルシルの班よりも美味しいご飯を炊いてやるわ!』

アリサちゃんは火吹き竹を使って火加減の調整を始めた。そしてアリシアちゃんは「涙が~!」泣きながら玉ねぎを刻んで、咲耶ちゃんはニンジンを切ってる。なら私は「ジャガイモを任せてもらうね」残りの食材、ジャガイモの皮むき、刻みを担当する。
野菜を切り終わったあとは、野菜や豚肉を鍋で炒める。そこにお水を入れてぐつぐつ煮込む。アクを取り終えたらカレールーを入れるて完成。次はご飯。約15分くらい炊いた後は5分くらい蒸す。そうすることでご飯が掬い易くなるから。そして・・・

「7班特製カレー、かんせー!」

アリシアちゃんがお皿にご飯をよそって、カレーを掛けるとそう高らかに声を上げた。私とアリサちゃんと咲耶ちゃんはパチパチと拍手。それから私たちもご飯をよそってカレーをかける。食べる場所は炊事場の近くに設けられてる食事場。木組みのテーブルと長椅子が2脚で、一度に6人掛け出来そうな大きさだ。

「カレールーに底の焦げが浮いてきてる・・・」

「だぁ~(涙)」

「米の芯が残っててまずい・・・」

「やっぱり男だけじゃまともに料理できないんだよぉ(泣)」

他のテーブル席から男子たちの悲鳴や泣き言が聞こえてくる。そんな中で「いただきます!」私たちは手を合わせて挨拶していると、「なのはちゃん達も無事に出来たようでなによりや」隣のテーブルにはやてちゃん達が着いた。

「うん。去年の林間学校でも作ったし、あれからどうすれば上手くご飯が炊けるかも勉強したから」

「やっぱり何事も復習さえすれば次は上手く行くよね~」

「「「ね~」」」

それから私たちはお互いの班のカレーを食べ比べしながら昼食を終えた。やっぱりはやてちゃんの料理の腕にはまだまだ敵わないってことは判った。ちなみにルシル君の班は何事もなく上手く作れたみたいで、亮介君たちからは「美味っ!」絶賛の声が上がった。
そのおかげで、カレーやご飯作りに失敗しちゃった他の男子の班が集まって来ちゃって、僅かに残ったルシル君のお手製なカレールーの争奪戦が始まっちゃって、それはそれは大騒ぎになったのはまた別の話。

†††Sideなのは⇒すずか†††

お昼を食べて食器や調理器具を洗って後片付けを終えた後は、1時間の自由時間。コテージ村の少し奥にある平原(他のクラスの居るコテージ村に繋がってる)でボール遊びをしたり、寝転がって日向ぼっこしたり、好きなように遊んで時間を潰すアウトドア派の子も居れば、コテージでお喋りしたりするインドア派の子も居る。
そして私、シャルちゃん、フェイトちゃん、はやてちゃんの8班と、なのはちゃん、アリサちゃん、アリシアちゃん、咲耶ちゃんの7班は合流しての8人で、フライディングディスクを同時に2枚飛ばして遊んでる。

「行ったよ、フェイト!」

「すずかさん!」

「うん!」「はーい!」

シャルちゃんのディスクはフェイトちゃんへ、咲耶ちゃんのディスクは私へ飛んで来た。私は落下地点を予測してそこに走るけど、フェイトちゃんはいつかの体育でのドッジボールみたくハイジャンプして空中でキャッチ。

「いつ見てもとんでもない運動神経と言いますか身体能力と言いますか・・・。フェイトさんとすずかさんは何気に子供やめてますわよね」

咲耶ちゃんがポツリと漏らすのが聞こえた。何気に私も入ってるけど、ある意味普通の子はやめてるから実は正しいと思う。そしてフェイトちゃんは空中で「アリサ!」ちゃんに向けてディスクを投げた。私は私でディS九をキャッチして「なのはちゃん!」に向かって投げる。
今やってるゲームは、投げる時に誰かの名前を呼ぶ。呼ばれた名前の子は必ずキャッチしないといけなくて、キャッチできなかったら罰ゲーム、と決めたディスクキャッチ。最低限のルールとして、一度に同じ人を指名しないこと。

(真逆に飛ばされちゃったら取れないからね)

防護服に変身して魔法を使えばキャッチ出来ると思うけど、さすがにこんな人前でそんなことをするのはダメだから出来ないし、やろうとも思わないかな。だって私の身体能力には自信があるから。

「よしっ、取れたわ!」

「よいしょ!」

アリサちゃんとなのはちゃんも無事に取れた。そして次のこの名前を呼んでディスクを投げる。名前を呼ぶだけじゃ簡単だからって、しりとりや計算問題なんかを出題したりして、誰かをアウトにしようってことになったんだけど、誰1人としてミスをしなかった。

「ああもう! そういやここに今、集まってんのって頭の出来も運動能力も平均以上の子ばかりじゃないの!」

とうとうアリサちゃんが決着の見えないこのゲームに苛立ちを見せちゃった。咲耶ちゃんも「確かに埒が飽きませんわね~」ディスクをイジりながら、アリサちゃんに同意。そういう私たちもなかなか終わらないゲームに飽きが出て来てたところ。それに比べてルシル君たち男子組は、他のクラスの男子たちと一緒にサッカーをやっていてすごく楽しそう。

「だったらさ。この自由時間の後は待ちに待った海水浴だし、泳ぎで勝負とか良いんじゃないかな?」

「明日は川で鮎の掴み取りもあるね~」

「生きた魚を触るのは少し躊躇しますわね・・・」

「掴み取りか~。それやったらわたしが勝ちそうやな♪」

「はやてちゃんはこういうのに強そうだね」

「生魚の捌き方はルシル君直伝なんよ♪」

「さすがは無人島に一緒に流れ着くなら誰?ランキングで堂々の1位に輝いたというか・・・」

ルシル君の万能さはもう聖祥小の生徒や先生たちにも知れ渡ってる。そんな中で6年生全体を対象に作られた6年生の手によるランキングで、ルシル君は三冠王に輝いた。1つは今の無人島云々。もう1つは女装させたら可愛い男子ランキングで1位。最後の1つはお婿さんに欲しい男子ランキングで1位。女装ランキングで1位を獲った時、ルシル君は泣いた。そしてお婿さんランキングで、シャルちゃんとはやてちゃんが不機嫌になった。

「えっと・・・じゃあ、そろそろコテージに戻って、水着に着替えとく?」

「そう、だね。時間も良い頃合いだし」

時刻を確認すれば13時16分。30分から海水浴の時間だから、今から着替えてもそんなに早すぎるってこともないし。そういうわけで、私たちはディスクを片付けて、それぞれのコテージに戻ることに。水着は一応自由ということもあって、私は水色のティアードワンピース型の水着を新調しちゃった。

「あ、すずかの水着可愛い❤」

「ありがとう、シャルちゃん♪ シャルちゃんの水着も可愛いよ!」

シャルちゃんのセパレートの水着はチューブトップで、上下ともに3wayのフリルがあって可愛い。フェイトちゃんの水着はビキニで、パレオを腰に巻いてる。はやてちゃんの水着はAラインのワンピース型で、キャミソールとブルームスカートが一緒のやつだ。そんな4人で記念写真を撮っていると・・・

『なのはだけど、そろそろ海岸に向かおうか・・・?』

なのはちゃんからお誘いの念話が来た。30分まで残り5分だし『うん。行こうか』海岸へ向かうことを決めた。コテージ村から海岸までは歩いて1分くらいの距離。夏とは言ってもその間に水着で歩くのはちょっと恥ずかしいし、それに風邪をひいたらいけないということで、上着を着てくるように事前に伝えられてるから、私たちみんな指定のジャージの袖に腕を通して、バスタオルを1枚持つ。

「よーし、泳ぐぞ~!」

シャルちゃんに続いてコテージを出て、「おーい!」なのはちゃん達と合流。シャルちゃんが「なのは達の水着も可愛い♪」シャルちゃんが携帯電話のカメラで写真を撮り始める。

「なのはの水着はAラインのワンピースね。はやてと同じキャミソールだけどスカートは3wayフリルなんだね。とっても可愛い❤」

「にゃはは、ありがとう♪」

「アリサは大胆にもホルター・ビキニかぁ♪ なになに? そんな大胆ビキニでお目当ての男の子でもオトそうって?」

「違うわよ! あたしらしさを考えたらこうなったわけ。どうよ? 似合うでしょ?」

「うんっ! バッチリ! んでんで? アリシアの水着は無難にワンピースなんだね。フェイトとお揃いくらいの水着かと思ったけど」

「えー? う~ん・・・それでも良いと思ったけど、今日はなんとな~くこの水着にしたかったの。でもこの胸にあるリボンは可愛いでしょ?」

「それはもう! アリシアらしくてとってもグッド♪」

「ありがと~♪」

「さ~い~ご~にっ♪ 咲耶の水着はロングスカートのワンピースドレス・・・?」

「いいえ。下に水着を着てますわよ。このドレスも一応は水着ですけど、泳ぐ際には脱ぎますわ」

ちょっと照れた風に水着の上から来てるドレスを捲り上げた咲耶ちゃん。シャルちゃんは「バンドゥ・ビキニとショートパンツ・・・。うん、可愛い♪」水着の種類の名前を言って、ドレスの裾を捲れているその隙を狙ってカシャカシャって写真を撮る。

「シャルさんのエッチ!」

慌ててスカートの裾を押さえる咲耶ちゃんに「どうせ泳ぐ時に脱ぐんでしょ~?」シャルちゃんは厭らしい笑顔を浮かべた。と言うか「シャルちゃん、携帯電話置いてこないと」笑顔で写真のタイトルを入力してるシャルちゃんにそう言う。

「あー、大丈夫。わたしんところのコテージの鍵はまだ閉めてないから。あ、みんなは先に行ってて。まだ撮っておきたい被写体たちが残ってるからさ」

「しょうないわね、あんたも」

「捕まっても知らないよ?」

「訴えられても知らないからね~♪」

「ルシル君に見つかったら酷い目に遭うかもやから要注意な~」

アリサちゃんとフェイトちゃんとアリシアちゃんとはやてが苦笑して、海岸に向かって歩き出す。なのはちゃんは「撮る前に許可を取ってね、シャルちゃん」そう注意してから歩きだして、私も「それじゃあお先に」アリサちゃん達の後を追った。

「砂浜に降りるとまた一段と気持ち良いですわね!」

「うん!」

「早く時間にならないかな~!」

真っ白な砂浜と真っ青は海が広がる海岸に到着すると、すでにクラスメイトや別のクラスの子たちも集まっていて、海に入らないようにしてはいるけど波打ち際ではしゃいでる。海に入るのは全クラスの子が集まって、体操してからって話だからかな。とりあえず残り時間が2分を切ってることもあって、私たちは4組の集合場所へ向かうことに。

「あ、シャルちゃん!・・・とルシル君・・・」

なのはちゃんの視線の先、そこにはルシル君に連行されてるシャルちゃんの姿があった。はやてちゃんが「あちゃ~」顔を手で覆う。ルシル君はシャルちゃんの首根っこを持って、私たちのところへ歩いて来た。ちなみにルシル君の水着は黒のハーフパンツだ。

「なぁ。シャルが携帯電話で女子たちの水着を盗撮したわけだが。君たちは知っていたか?」

『『『『『『無許可だったぁぁぁぁーーーーっ!!』』』』』』

『だって写真を撮らせてってお願いしても恥ずかしがって撮らせてくれないから』

馬鹿だよ、シャルちゃん。そう言う場合は素直に諦めるんだよ。シャルちゃんは『ヘルプ・ミー』って救助を求めてるんだけど・・・

「ううん。知らんかったよ♪」

はやてちゃんが笑顔で無関係を装うと「み゛っ!?」シャルちゃんがビクッと肩を跳ねさせた。

「あたしも知んなかったわ」

「わたしもー♪」

アリサちゃんとアリシアちゃんも、シャルちゃんが携帯電話で写真を撮ろうとしてたことを知らなかったって伝えた。シャルちゃんは『うっそ~ん!』首を横に振った。ルシル君が「まぁ、そういうわけだ。有罪」シャルちゃんの頭をポンポン叩きながら宣告した。

「ま、待って! なのはとすずかとフェイト、咲耶にも聞いてみて!」

「足掻くのはよせ。どの道、君が盗撮するのをみんなが知っていようが知っていまいが、注意していようがしていまいが、盗撮したことには変わりなし。シャル。次の誕生日、俺からのプレゼントは無しな」

「みゃっ!? そんな殺生な!」

「はーい。この話は終了~。はやて、みんな。良い海水浴を」

そう言ってルシル君は男子グループのところに向かった。ガクッと四つん這いになって落ち込むシャルちゃん。そんなシャルちゃんに「えっと・・・。やっぱり許可は必要だよ」なのはちゃんが声をかけた。

「うぅ~・・・。だって~」

「シャルさん。諦めもまた大事ですわよ」

「あぅ~。時間を戻したいよ~」

そんなこんなで、海水浴が始まった。クラス単位で集まって準備運動。そのあとは時間まで好きなように過ごして良いことになってる。私たち7・8班は一緒になって、競泳をしたり、浮輪を使ってのんびり浮いたり、ビーチバレーをしたり、いろんな方法で海水浴を満喫した。定められた休憩時間の後、もう一度海に入って遊んでいると、ドォーンって大きな音と一緒に少し離れたところに水柱が立った。

「な、なんですの!?」

「こんな事が出来るのって・・・」

「うん。ルシル君だけよね・・・」

さらにドォーンって大きな音と一緒に水柱が立ち続ける。はやてちゃんが『今の水柱、ひょっとせんでもルシル君・・・?』ルシル君に念話を送った。

『ん? そうだけど』

『ルシル。もしかして魔法を使ったりなんかは・・・・?』

『あはは。そんなわけないだろ、フェイト。純粋な技術だよ。水斬りって言うらしいんだが』

またドォーンと水柱が上がって、男子たちが楽しそうにはしゃいでる。とここで『ねえねえ、どうやるの!?』アリシアちゃんが水斬りの方法を訊くと、『それはだな・・・』ルシル君はその方法を話した。すると早速、アリシアちゃんは真似を始めるわけで・・・。

『最初は脱力気味に。途中はゆっくりで・・・。打つ時に鋭く加速させて・・・。その流れを速く、そして力を入れれば・・・』

ルシル君に教わった通りにアリシアちゃんがやるんだけど、「あれ・・・?」失敗のようで水が少し爆ぜる程度で終わった。咲耶ちゃんは「何をしてるのですか? アリシアさん」そう訊ねる。

「ちょっと、ルシルの真似をしてみようかなって。よ~い~せっ!」

「あたしもやってみようかしら」

「あ、私も」

アリサちゃんとフェイトちゃんまで水斬りに参加。さすがに3人となると結構派手な水しぶきが上がり始めて、私たちまで注目され始めちゃった。しかも回数を追うごとに水柱の高さが上がっていって、さらに勢いも強くなってく。爆ぜた水がまるで土砂降りの雨のように降ってくる。

「ちょっ、アリサさん、フェイトさん、アリシアさん! そろそろお止めになった方が・・・!」

「わぷっ!? 先生にそろそろ怒られへんかな~?」

「ルシル君の方もやめてるし、3人もそろそろやめたらどうかな~?」

「なんか嫌な予感が・・・って、あっ!」

気付けば水柱はもう立ってなくて、ルシル君たちは海から出て砂浜に寝転んで砂に埋められてるみたいだった。そして私はアリサちゃん達に視線を戻して・・・見た。アリサちゃんの水着のトップスが水に煽られて取れちゃったのが。
アリサちゃん本人もそれに気付いて「きゃぁぁぁぁ!」両腕で胸を隠して海に潜った。咲耶ちゃんがいち早く「言わんこっちゃないですわね!」飛ばされたアリサちゃんの水着を取るために泳ぎ始める。

「と、とにかく男の子たちに気付かれないようにしないと・・・!」

「アリサちゃん、取れた瞬間は水柱が壁になってくれたからきっと見られてないよ」

頭だけ海面に出したアリサちゃん。私たちはそんなアリサちゃんの周囲に立って壁になる。とりあえず他の子たちは今の惨状に気付いてないみたいで、首から下が砂に埋もれたルシル君たちのところに人目が集まってる。

「うぅ、まさかこんな恥ずかしめを受けることになるなんて・・・!」

「「ごめん、アリサ」」

「フェイトとアリシアの所為じゃないわよ。元はと言えばルシルが・・・!」

「それはさすがにルシル君が可哀想だよ・・・」

「ルシル君もルシル君で大変な目に遭ってるようやしな~」

「なにやってんのよ?」

「寝転んだ体の上にお城が作られてる」

よーく目を凝らして見ると、確かにルシル君や他の男子たちの体の上にお城や塔が建てられ始めてた。そのおかげでアリサちゃんのハプニングには気付かれてないみたい。

「アリサさん。水着を拾って来ましたわよ。早く着けてください」

「咲耶・・・。ありがと」

「どういたしましてですわ」

咲耶ちゃんから水着を受け取ったアリサちゃんは、急いで水着を着け直した。それからはもう水斬りもやめて、スイカ割りイベントの時間になったことで海岸に上がる。その最中、「ルシル君・・・」が可哀想な目に遭ってるのを見た。ルシル君の上に乗ってたはずの砂の塔は崩されていて、その代わりモデルさんのように豊満な女性のスタイルに変更されてた。

「うわぁー、見るな、見ないでくれ~!(泣)」

私たちに気付いたルシル君が顔を背けた。何と言っていいのか。ルシル君も6年生になって男の子っぽいしっかりとした顔立ちにはなったけど、それでもまだ中性的だからその・・・「美人さんだよね」たとえ砂で作られた女性の体でも、顔がそんなんだから綺麗な女性に見えちゃう不思議。

「可愛いというよ表現よりはまだマシだよ、すずか」

「チッ。カメラあれば絶対撮ってたのに・・・!」

「こんな恥ずかしい今の俺を撮ったら本気で怒るからな! というか、助けてくれ!」

助けを求めてきたルシル君にアリサちゃんは腕を組んで「助けてください、でしょ?」ニッコリ笑った。ルシル君だそれだけで「俺、何かしたか?」察したみたい。アリシアちゃんが「実はね。さっきアリサの水着が――」そこまで言いかけて、「わーわー!」アリサちゃんが止めに入った。

「と、とにかく助けてください、お願いします!」

「はぁ・・・。まったく、しょうがないわね」

「あ、わたしも手伝うわ」

「わたくしも」

みんなで砂に埋まってるルシル君を救出する。砂まみれのルシル君は「ありがとう。助かったよ」軽くストレッチを始めて、海の中に飛び込んだ。そして「ぷはっ。亮介たちめ。俺を辱めた報いは必ず受けてもらうからな・・・!」砂を全部洗い流してから海岸に戻ってきた。

「ルシル。助けてあげたんだから、わたしのバースデープレゼント・・・」

「・・・判ってる。そもそもさっきのあれは冗談だ。ちゃんと渡すつもりだったよ」

「っ! ルシル、だいすき~❤」

シャルちゃんがルシル君に抱き付いて喜びを示した。すると「ほら、シャルちゃん!」はやてちゃんと、「そろそろ行きますわよ!」咲耶ちゃんがシャルちゃんを引き剥がして、4組の集合場所に向かって歩き出した。

「あ~ん、もうちょっとだけ~」

「ルシル君。スイカ割りが始まるよ」

「あぁ、そっか。もうそんな時間か。ありがとう、なのは。じゃあ、俺も行くよ」

駆け出したルシル君は、「亮介ぇぇぇぇーーーー!」大声で名前を叫びながら集合場所にすでに居る亮介君に突撃して行って、「な、なんだよルシル!」うろたえる亮介君を軽々と抱え上げた後に「そぉーい!」海の中に投げ込んだ。さらに数人の男子を同じように抱え上げて海に投げ込む。

「にゃはは。元気だね~」

「でもアイツがあんなに楽しそうに笑ってるのを見ると、安心できるわね」

「うん。このまま素直に自分を出してくれると良いね」

騒ぎも一段落して、いよいよスイカ割りの時間になった。スイカ1玉に対して2つの班でスイカ割りをすることになってる。事前に7班と8班が組むことを決めてたから、他の班より早くスイカ割りを始めることが出来た。

「ルールは、7人で目隠しした子にスイカの位置を知らせる。だけどその内の6人はデタラメに指示を出して、1人だけが本当のことを言うの。ミスは3回まで。3回ミスしたら次の子にバトンタッチ。みんなに順番を回せるようにしたいけど・・・」

「まぁ、1玉だけですし。順番が回らなくても恨みっこ無しですわよ」

そういうわけで、1順目開始。ジャンケンで打順を決める。トップバッターは「高町なのは、いきます!」で、タオルで目隠しをしたうえでその場で回る。これでどこを向いてるのか判らなくなるはず。私たちからの指示になのはちゃんはしっかりとした足取りで、手に持ったバットを振るう。

「なのはさん。三半規管が強いのかしら。まったく目が回っていないようだわ・・・」

咲耶ちゃんがポツリと呟いたのが聞こえた。そしてなのはちゃんは、正解を出してるアリシアちゃんの指示に応えられずに空振り三振。続けてフェイトちゃん、はやてちゃん、シャルちゃん、咲耶ちゃん、アリシアちゃんと続くけど、さすがに7人中6人からの誤情報に惑わされちゃって、みんな空振りで終わった。

「次はすずちゃんやね」

「うんっ」

タオルで目隠しをして、その場でくるくる回る。そして「あ・・・」目が回ってないことに気付いた。理由は考えるまでもない。空戦なんて360度を飛び回る戦いをこれまでに何度も経験してるから、知らないうちに三半規管が鍛えられていたんだ。

「すずかちゃん、もうちょっと右だよ!」

「いいえ。左ですわ!」

「そのままでいいのよ、すずか!」

「残念。回れ右だよ!」

「そのまま直進でいいよ!」

「アカン、アカン。行き過ぎてるよ!」

でもどれが本当の指示か判らないから、「バッターアウト~!」私も空振り三振で終わっちゃった。最後は「まさかあたしにまで回ってくるとは思いもしなかったわ」アリサちゃんだ。私からタオルとバットを受け取ったアリサちゃんから離れて、誰が本当の指示を出すかを決める。

『よーし。ここで咲耶を推そう』

シャルちゃんの提案に私たちは『さんせー!』した。アリサちゃんと咲耶ちゃんの仲良しになろう作戦。今日はずっとそのために動いていたからね。そしてジャンケンでみんなパーを出すことを決める。勝っても負けても関係なく、咲耶ちゃんがグーかチョキを出したらそれで決定だ。

「ジャンケン・・・ポイ!」

作戦通り咲耶ちゃん以外の私たちはパーで、「指示者はわたくしですわね」自分が出したチョキを見詰める咲耶ちゃんは、アリサちゃんを導くナビゲーターになった。

「アリサ・バニングス、行くわよ!」

くるくる回るアリサちゃん。回り終えたら早速「右ですわ!」咲耶ちゃんが指示を出す。続けて私たちも誤まった指示を出した。そしてアリサちゃんは「ここね!」バットを勢いよく振った。だけど「ハズレ!」残念ながらスイカには当たらなかった。すぐに2回目の指示を出し始める。でもその2回目も「ハズレ!」だった。

「あー、なかなか当たらないわねこれ」

バッドを肩に担いでトントンと叩くアリサちゃん。次で当てさせたいけど、変に気遣うと気付かれちゃうかもしれないし。とにかくアリサちゃんを信じよう。そして3回目、最後の指示出しを始める。出来るだけ咲耶ちゃんの声を掻き消さないように気を付けながら「右だよ!」私も指示を出す。

「いいえ! アリサさん! そのまま5歩ほど直進ですわよ!」

「・・・。信じるわよ、咲耶! うりゃぁぁぁぁーーーーっ!」

振り下ろされたバッドは、スイカのちょうど真ん中を打って真っ二つに砕いた。私たちは「やったぁー!」喜び合う。咲耶ちゃんも「素晴らしいフルスイングでしたわよ」アリサちゃんを称えた。

「あ、ありがと。あんたも良いナビだったわ」

アリサちゃんも嬉しそうに笑顔で応えた。これで少しは仲も良くなったはずだ。それから私たちはスイカを美味しく頂いた。さぁ、夜はバーベキューとキャンプファイア、そして肝試し。もっともっと良い思い出を作らないと。
 
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