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魔法少女リリカルなのはStrikerS~赤き弓兵と青の槍兵

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本編
  九話~試合と死合

 
前書き
タイトル、内容の大幅変更を行いました

再びタイトル変更 

 
side ティアナ


隊舎に帰ってきた後、皆に言った。



「私、一人で自主練してくるから」
「ならあたしも行くよ!
「僕も!」
「私も!」


みんなこういうことはわかっていた。だから、



「悪いけど、一人でやりたい気分なの。隊長たちにも休めって言われたでしょ?だから先に帰ってて。スバルも、ちゃんと休みなさいよ」


ミスをしないようにするには練習しかない。だから私はやる。徹底的に。




side なのは


隊舎に戻り、ヴィータちゃん、フェイトちゃん、シグナムさん、士郎君、シャーリーと歩いているとき、ヴィータちゃんが話しかけてきた。


「なあ。ちょっといいか?ティアナの事なんだが……」



ヴィータちゃんも気になっていたみたいだ。





……………………………………………………………





「若い魔導士なら強くなりてえってのは当然だし、無茶だって多少はする。でも、あいつは……時々度を超えてる。あいつ、ここに来る前になんかあったのか?」


話しておくべきだろう。ティアナのためにもここにいる人たちには



「執務官志望のお兄さんが、いたんだよ」
「魔導士だったのか?」
「うん、ティアナのお兄さん、ティーダ・ランスター。当時の階級は一等空尉。所属は首都航空隊。享年二一歳。親を亡くしたティアナを育てていた人物でもあるんだ」
「結構なエリートだな……」
「エリートだったから、なんだよね………。任務中、追跡していた違法魔導士に手傷は負わせたんだけど……」
「犯人は陸士部隊に協力を仰いだおかげでその日のうちに捕まったんだけど、心無い上司がひどいコメントをしてね」
「コメントって、なんて?」
「犯人を取り逃がすなんて首都航空隊の魔導士としてあるまじき失態だ。たとえ死んでも取り押さえるべきだった、って…………」
「それだけじゃなくて、任務を失敗するような役立たずは………とか」
「ティアナはその時まだ10才。たった一人の肉親の最後の仕事が無意味で役立たずなものだって言われて、きっとものすごく苦しんで、悲しんで………」
「それであんなにも躍起になっているのか。代わりに兄の夢を追おうと………」



士郎君の物言い。私にしてくれたお義父さんの話と似ているところがあるからだろう。どこか遠いところに思いを馳せているようだった。


(士郎君………)
(反対はしないさ。彼女はエミヤシロウとは違う。理想の果てに絶望したりはしないだろう)
(うん、そうだね…………)




追い求める理想は違うが、過程が似ている士郎君ならティアナの力になってくれるかな……





side ヴァイス




「もう4時間も続けてるぜ。いい加減倒れるぞ」
「ヴァイス陸曹………見てたんですか?」
「ヘリの整備中にスコープでチラチラとな。……ミスショットが悔しいのはわかるが、精密射撃何ざホイホイうまくなるもんじゃねえし、無理な詰め込みで、変な癖つけるのもよくねえぞ」
「…………」
「……って、前になのはさんが言ってたんだよ。俺はなのはさんやシグナム姉さんとは割と古い付き合いでね」
「それでも、詰め込んで練習しないとうまくなんないんです。凡人なもので!」
「凡人、ねぇ……俺からすればお前は十分に優秀なんだがな。羨ましいくれぇだ」
「………」
「はぁ……ともかく、お前らは体が資本なんだ。体調には、気ぃ使えよ」
「ありがとうございます。大丈夫ですから」



これはまた頑固だねぇ、しかし、どうしたもんか………





side スバル



マッハキャリバーの整備中にようやくティアが戻ってきた。



「スバル、あんたまだ起きてたの?」
「……うん」
「まあいいわ。私、明日4時起きだから。目覚ましうるさかったらごめん」
「いいけど………大丈夫?」
「うん………」



そうはいっているがやっぱり心配。ここはパートナーのあたしが支えてあげないと!




……………………………………………………




「ティア、起きて~。4時だよ。ティ~ア~」
「う…………」


ティアが目覚ましを止める。


「ごめん。起きた………」
「練習、いけそう?」
「……行く」
「そう。じゃあこれ、トレーニング服」
「ありがと……」
「さて、じゃああたしも……」
「………って、なんであんたまで!?」
「一人より二人の方が色んな練習できるしね」
「いいわよ、平気だから………私に付き合ってたらまともに休めないわよ?」
「知ってるでしょ?あたし、日常行動だったら4、5日寝なくても平気だって」
「日常じゃないでしょ……アンタの訓練は特にきついんだから、ちゃんと休みなさいよ」
「や~だよ。あたしとティアはコンビなんだから。一緒に頑張るの!」
「…………か、勝手にすれば?」
「へへへ………」





……………………………………………………



「で、ティアの考えてることって?」
「短期間での現状戦力の向上。うまくいけば、アンタとのコンビネーションの幅も広がるし、エリオやキャロのフォローももっとできる」
「それはワクワクだね。で、どうするの?」
「まずは技数を増やす。幻術は切り札にはならないし、中距離射撃だけじゃ、それが通用しなくなったときに行き詰る。私のメインは兄さんに教わった精密射撃だけどそれだけじゃだめなんだ」
「攻撃手段を増やすんだね」



これは頑張らないと、だね。





side なのは




「それじゃ、今日も個別スキルの基礎、行ってみよう。ここは大事だから地味だけど、しっかりやろう!」
「「「「はい!」」」」


そんなとき、ティアナとスバルが嬉しそうにしていたのが目に入った。


「二人とも、今日はご機嫌だね。なんかいいことあった?」
「い、いえ……」
「そういうわけじゃないです」



やる気を出してるのはいいことだね。





………………………………………





二週間ほどたったある日の午前
の訓練。



「それじゃ、2オン1で模擬戦やるよ。まずはスターズから。相手は………」
「私がやろう。丁度頼んでいた調整が終わったところだしな」
「でも……」
「君もたまには見る方に回るといい。最近働きすぎだ」
「う………」


それを言われると弱い。


「なのはもあたしたちと一緒に見学だな」
「……うん。じゃあ、三人とも、バリアジャケット装着して」




準備が整う。



「やるわよ、スバル!」
「おう!」
「いつでもいいぞ」




side フェイト




「もう模擬戦始まってる?」
「フェイトさん!」
「あれ?なのはも見学?」
「うん。士郎君が私の代わりにやってくれてるよ」
「あいつの言うとおりだ。なのはは少し休め」
「そうだよ。部屋に帰ってからも休まないし」
「訓練中も僕たちにつきっきりで休めてないんですから」
「こんな時くらい休んでください」
「みんな………ごめんね」
「あれ?そういえばランスは?」
「デバイスメンテ中だからってサボりだ。まったくあいつは………」
「でも、実際教えるものはもうないよ。収束砲に追尾弾、バインドも完璧だし転移魔法すら使えるからね」
「お、ティアナたちが仕掛けるぞ。アレはクロスシフトか」



その時は、あんなことが起きるなんて誰も思っていなかった。




side ティアナ




「クロスファイアー……シュート!!」


コントロール重視の誘導用の攻撃。これで!



(スバル!)


「うおおおおおおおおおお!!」
「ずいぶん無茶苦茶な突っ込み方だな。だが、まだまだ甘いぞ」


突っ込んだスバルは士郎さんの双剣に軽くあしらわれてしまった。でも、十分だ。



「ティアナは……あそこか」
「ティアナが砲撃!?」


見学しているなのはさんの驚きの声。隣にはフェイトさんもいる。


(よし、スバル。特訓成果、クロスシフトC、いくわよ!)
(おう!)


「うりゃあああああああ!!!」
「く、仕方がない。ワーカー!」
[Gun form.]
「な!?」


スバルも士郎さんの手にある双銃に驚いだようだが、それも一瞬。バリアで射撃を防ぎながら突っ込む。
士郎さんは左手の銃を剣に変え、受け止める。よし、タイミングは今!



「あっちのティアさんは幻影!?」




特訓の成果であるダガーを展開し、ウイングロードを駆け、士郎さんに向かっていく。
バリアを切り裂いて一撃で決める。



「ええええええええええい!」


そんなときに聞こえた。




―――莫迦者が―――



そして、攻撃を加えた後に会った光景。それは、
















右腕でダガーの刀身を受け止める士郎さんの姿だった。
刀身が貫通し、かなり血が出ている。



「ぁ、あの…………」
「君たちは何がしたい?私は君たちにとってなんだ?訓練の相手か?それとも、殺すべき敵か?」



その声のトーンには聞き覚えがあった。



あの時のランスさんと同じ………いや、もっと……



スバルは驚きに声も出せないみたいだ。
沈黙を破ったのは士郎さん。


「それが君たちの望みなら………殺し合いがどういうものか教えてやる。投影、開始(トレース・オン)


刀身が刺さったままの右手には長さ2メートルほどの真っ赤な槍。その槍で貫通している刀身に触れると、ダガーは霧散して消えた。


「なんだよ、あの槍………」


ヴィータ副隊長のつぶやきがやけに大きく聞こえた。


「どうした?言いたいことがあるなら言え」
「…………私は!!!!もう何も失いたくないから!!!!強くなりたいんです!!!!」


射撃を乱発するが、


「穿て、破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)


その言葉とともに振るわれた槍にすべてかき消された。



side なのは


ティアナが士郎君に向けて射撃を行うがその手にある赤い槍に阻まれ、一発も通らなかった。



「そんな………」
「ティア!!!!」


スバルの叫びが聞こえた時にはもう遅かった。


そこにあった光景は鮮烈で誰もが言葉を失った。


明らかに両手もちであろう大剣を左手一本で持っている士郎君。






大なる激情(モラルタ)!」


その言葉と共に振るわれた大剣は発光し、ウイングロードを紙のように切り裂いた。その上にいたティアナが落ちていく。そして先に地面に着地した士郎君は剣を未だ座ったままのティアナの首筋に当て、


「これで一度死んだ。まだやるか?」
「う、うあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


ダガーを展開したティアナが斬りかかる。が、大剣に弾かれたクロスミラージュは遥か後方へ飛んでいった。そしてティアナの眼前に剣を突きつける士郎君。


「二回だ」
「……………ぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


その後、クロスミラージュを拾ったティアナは何度も何度も繰り返しやられる。三回、四回、…………十を越えた当たりで、


「………もう眠っていろ」


士郎君は大剣を空中に投げ捨て、呟く。



壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)


とたんに剣が大爆発を引き起こす。爆風は闘技場全体に広がった。



「なんだよあの威力………」



ヴィータちゃんの言うとおり、アレは私の出力最大のディバインバスターをも越えるかもしれない威力だった。


煙が張れると……





「ティア、ティア―!!」



爆風に吹き飛ばされて気絶したであろうティアナと巻き込まれ、ぼろぼろになりながらも駆け寄るスバルが。



「直撃はしていない。じきに目覚める」
「どうして………!」
「どうして、だと?甘えるな」


その声のあまりの威圧感にへたり込んでしまったスバル。
その威圧感は遠くにいた私たちですら言葉を失うほどだったのだから。


「教導を無視した行動を起こしたのは君たちだ。意味くらい、自分で考えろ」


そういってバリアジャケットを解除し、戻ってくる士郎君。



「すまなかった。君に言われていながらティアナがあのような行動を起こすと予想できなかった」
「う、うん………」
「それより士郎、ティアナは………」
「気絶しているだけだ。大事には及ばん」
「そう………」



皆聞けなかった。あの爆発した剣は、射撃を打ち消した槍はなんなのか。だからティアナの無事が分かった私は別の事を聞いた。


「士郎君の傷は?」
「これからシャマルのところへ行くさ。それよりも二人を頼む、なのは」
「う、うん……わかった」


ここは士郎君の言うとおり、二人のことを優先しよう。でも………







去っていく士郎君の後ろ姿は、とても儚いように見えた。






side シャマル




これは…………



「何をしたの?」
「何、とは?」
「体中の魔力が著しく低下しているわ。その理由よ」
「魔術を使った。それだけだ」
「こんなに魔力を使うなんて………」
「カートリッジを使えば問題はなかったのだが、生憎と時間がなかったのでね」
「あなたはただでさえ魔力値が低いんだから、多用しないで」
「ああ」



それにしてもひどい。なのはちゃんの1/10ほどしかない魔力でディバインバスタークラスの魔力消費をするなんて……



side 士郎



完全再現したモラルタの真名解放を行ったが、投影に比べ真名解放は消費魔力が多い。前の世界でもそうだったが、この世界ではかなり多くなっている。フルンディングやカラドボルグを放った時は魔力をほとんど込めなかったから負担が少なかったが、今後はカートリッジによる補正が必要だろう。そして、気づいたことがある。
自身の魔力の少ない理由。どうやらマスターとのラインが上手く形成されていないようなのだ。
カリバーン投影の際はパスからできるだけ魔力を得ようとしたため魔力不足にはギリギリならなかったが、今回はしなかった。そうして魔力が少なくなって分かったのだが、マスターの魔力総量からすると本来このくらいで魔力不足にはならないはずなのだ。それで、パスを解析してわかったのだが、ランサーと私の間でお互いのパスに悪影響を及ぼしているらしいことがつかめた。つまり……



本来得られるはずの魔力はもっと多いはずなのだ。しかし、こればかりはどうしようもない。
なるべく魔術を使うことは控えよう。私は一人ではないのだから。


side スバル



ヴィータ副隊長に付き添われて医務室へ行くと、


「ヴィータとスバルか」


士郎さんがいた。



「…………」
「シャマル、私はこれで失礼する。」
「そう……傷の方はすぐに治ると思うけど、魔力の方はわからないわ。」
「大丈夫だ。休んでいれば2、3日で元に戻るさ」



そういって出て行ってしまった。言いたいことはあったけど、今はティアのことが心配。もうすぐなのはさんが連れてくると思うけど……



「ごめんね、遅れちゃって」
「なのはさん………」
「何?スバル」
「わからないんです……強くなるために頑張ったのに、どうして士郎さんはあんなに怒ったんですか?どうして…………」
「もし士郎君じゃなくて私が模擬戦の相手だったとしても怒るよ」
「なのはさんでも……?」
「あたしでもだ」
「ヴィータちゃんはいつも怒ってるけどね……」
「ぐ、むむう…………」
「とにかく、何がいけなかったのかちゃんと自分で考えて、謝ってきな」
「はい………」



なのはさんも、ヴィータ副隊長も、あたしたちの行動を認めてくれなかった。
そんなにいけないの?なんで……?どうして……? 
 

 
後書き
九話です。


魔王降臨はしませんでした。


士郎が銃モードを取得。ケースバイケースで使います。


それではまた~


またまたまた修正しました。 
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